
相続などで取得した空き家の利活用の手段について思いつかない場合、早期の売却について検討するケースも多いのではないでしょうか。解体すら難しい場合は「古家付き土地」として売却するという選択肢があります。
本稿では、所有している不動産を古家付き土地として売却する方法やメリット・デメリットを解説します。
目次
古家つきの土地とは?
そもそも古家付き土地とは、築古で資産的価値のない物件が建っている土地のことです。このような物件は買い手探しが難航しやすいため、“築古の戸建てつきの土地”として売り出すことで、マイナス面をカバーします。
不動産検索サイトなどでも古家付き土地は「土地カテゴリ」のページに掲載されており、戸建て物件とは訴求対象となるターゲットユーザーが異なることがわかります。
古家付き土地扱いで売却するメリット
解体費用がかからない
実家を“土地として”売却する場合、家屋の解体費用が必要ですが、古家付き土地として売却するならその必要はありません。
一般的に、家屋を取り壊す際の費用は、以下のような費用がかかります。
l 木造住宅…1坪あたり3万円程度
l 鉄骨住宅…1坪あたり4〜5万円程度
l 鉄筋コンクリート…1坪あたり5〜6万円程度
例えば、木造住宅で面積40坪程度の空き家を解体する際の費用は、単純計算で120万円ほど必要ということになります。そのため、解体費用を抑えられるという点は大きな利点と言えるでしょう。
固定資産税の優遇措置が継続する
通常、所有する不動産には固定資産税や都市計画税が課税されますが、宅地用地に対しては税率を減税する特例措置が設けられています(※1)。
そのため、古家付き建物のまま売却を行うことで、もし買い手探しが長期に渡ったとしても少ない税負担のままで済みます。
買い手側は銀行融資を受けやすい
古家付き土地取引は、住宅ローン融資の対象になるため、買い手側としても資金繰りをしやすいという点がメリットです。
ただし、古家付き土地の購入を対象とした融資は、一般的な住宅ローンに比べて、借入期間が短くなるため月々の返済負担が増すなどの懸念点もあります。
古家付き土地扱いで売却するデメリット
古家付き土地の売買取引の際には、買い手側による空き家の解体が前提となるケースが一般的であるため、その分売却価格を高値で設定しづらい点がネックです。
解体費用については、購入時に利用するローンとは別枠となりますので、買い手側は別途捻出しなければなりません。
別枠の融資や自治体からの補助制度を活用したとしても、買い手側が解体のためにまとまった資金を出さなければならない可能性は非常に大きいため、古家付き土地のままの売却ではそこまで高値をつけることは難しいでしょう。
古家付き土地を売却する際の留意事項
契約不適合責任を問われる可能性
古家付きで土地を売却する場合、家屋部分に破損があったり、事故物件であったりするなどの瑕疵を抱えていた場合は契約不適合責任に問われないように注意する必要があります。
契約不適合責任は、不動産売買が完了するまでに生じていた瑕疵について契約内容に含まれないものがあった場合、売主が買主に対して責任を負わなければならないという取り決めです (※1)。
これは築古の物件も同様となりますので、売主はあらかじめ当該物件の瑕疵について把握し、契約内容に含めておくことが求められます。
築古物件の場合、築年数が経過しているためそもそも瑕疵を抱えていやすく、オーナー自身も気づいていない可能性が懸念されます。
古家付きの土地として売却する場合も、契約不適合責任を負う期間を決めておくか、あらかじめ免責事項に記載しておくなどの対応が有効です。
境界線を明示する
売買契約を締結する際には、売主は買主に対して隣地との境界線を明示しなければならないとされています。
しかし、築古の物件の場合は経年によりこの境界線が曖昧になっているか、そもそも境界線が引かれていない場合があります。そういったケースでは、売却よりも前に測量を行い、隣地との境界線を明確にするようにしましょう。
事前に実測値を把握しておかなければ、買い手や隣地の土地所有者間とのトラブルに発展する可能性が懸念されます。
残置物を処分する
古家付き土地の売却であっても、家屋部分に家具・寝具を残した状態での売却はできないため、あらかじめ処分しておく必要があります。
まだ価値の残っていそうな家具・調度品については、リサイクルに出すという手段も可能です。そうでないなら、専門業者に手数料を払って処分してもらわなければなりません。
古家付きではなく更地としての売却も検討しよう
以上の通り、古家付き土地としての売却はメリットもある一方で、いくつかの懸念点も存在します。そのため、場合によっては更地にしてから実家を売却することも検討しましょう。
更地として売却するメリット
更地にしておけば、買手側は解体費用を出す必要がないだけでなく、新築を検討している場合などに設計を行いやすく、早期に着工できるため好まれやすいと言えます。
更地であれば、地下の埋設物や土壌汚染に関する調査も行えるため、よりスムーズに買い手を見つけられるでしょう。
さらに、古家付き土地を検討している層は居住用物件を探していると想定されますが、更地の場合は新築や駐車場、事業店舗や駐車場など、より広いニーズを抱えたユーザーが対象となります。
そのため、売却価格自体は更地の方が古家付き土地よりも高くなりやすいと言えます。
更地として売却するデメリット
家屋部分を解体した場合、地中埋設物や土壌汚染、地盤状態に関する調査が求められ、その分の費用を負担しなければなりません。もし、地中に埋設物が見つかった場合は、その除去費用も必要です。
築年数が経過した築古物件を解体したあとの土地は地盤が固くなっているため、地盤の改良の工事を行わなければならないケースもあります。地盤改良工事では、以下のような費用が必要です。
- 表層改良…浅い部分を改良する工事で、相場感は30万円以上
- 柱状改良…深い部分の改良工事で相場感は50万円以上
上記に加え、より地中深くの工事が求められる場合は、鋼管杭の使用で70万円程度からの予算が求められます。
さらに、所有する土地の接道幅が建築基準法の要件を満たしていない場合は再建築不可物件となります。そのようなケースでは、セットバックを実施して再び建築可能の状態にしない限り、買い手はなかなか見つからないでしょう。
まとめ
築古の実家を古家付き土地として売却すれば、解体費用がかからず、固定資産税の優遇措置が継続されるなどのメリットがあります。一方で、あまり高値をつけることはできず、買い手の幅が狭くなくなるなどの懸念点もありますので、解体費用を支払って更地のみの売却を行うことも視野におき、総合的に判断しましょう。
参考:
※1 総務省,「固定資産税の概要」,https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_08.html, (2022/02/23)
※2 法務省,「売主の瑕疵担保責任に関する見直し①」,https://www.moj.go.jp/content/001255639.pdf,
(2022/02/23)