
不動産を所有すると、たとえ住んでいなかったとしても「固定資産税」を支払わなければいけません。また、所有地によっては「都市計画税」が課税されることもあります。
今回は、共有名義の不動産にかかる固定資産税や都市計画税の支払い方についてご紹介します。
また支払いたくない場合の対処法もお伝えするので、ぜひ参考にして下さい。
目次
■固定資産税と都市計画税とは?
まずは固定資産税と都市計画税について説明します。
・固定資産税とは
土地や家屋・建物・設備などの固定資産を所有している人にかかる市町村税で、毎年1月1日に所有している人に納付義務があります。税額は不動産の「評価額」に対して基本的に土地・建物ともに1.4%の税率を掛けて算出されます。
市町村によっては1.4%以上の税率に定められている場合もあるため確認しましょう。
–土地の評価額について
「土地」とは、田畑や山林なども含まれ、用途によって地目と呼ばれる区分があります。地目が宅地の場合は、「路線価方式」などを元にして評価額が決められます。固定資産税路線価は各自治体のホームページなどで確認することが可能です。
–家屋の評価額について
固定資産税における「家屋」とは、新築住宅や中古住宅などの住家や、店舗・倉庫など土地に定着した構造物のことを指します。家屋の評価額は、「同じ建物を同じ土地に建てた場合にいくらになるか」を算出した後、経年劣化分を減価することで決められます。
・都市計画税とは
所有する不動産が、都市計画法による市街化区域に位置する場合に必要となる税金です。道路や公園・下水道整備など土地区画整理事業に必要な費用にあてることを目的としており、固定資産税と一緒に課税されます。
税額は、固定資産税評価額に0.3%を掛けて算出する自治体が多いです。
・固定資産税や都市計画税は「必要費」
不動産を維持するために欠かせない費用を「必要費」と言いますが、固定資産税や都市計画税はこれにあたります。所有し続けるためには必ずかかる費用だと言えるでしょう。
■共有名義の固定資産税・都市計画税の支払い方
単有の場合であれば、納付書が送られてきた人が支払う、という流れが一般的ですが、複数人で共有している不動産の場合はどうなるのでしょうか?
共有不動産の固定資産税や都市計画税の支払い方についてご紹介します。
・共有持分に応じて負担する
共有名義の不動産にかかる支払いは、それぞれの共有者が、共有持分に応じて費用を負担する必要があります。
民法253条にて「各共有者は、公平の観点から、その持分に応じ、管理費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う」と定められている通りです。
例えば、A・Bの2人で不動産を共有しており、Aの共有持分が3分の2・Bの共有持分が3分の1だった場合、30万円の固定資産税納付書が届いたとしたら、Aは20万円・Bは10万円を支払う必要があるということです。
・連帯納付義務がある
固定資産税は、共有持分権者全員が全額の支払い義務を負っています。
法律でも「連帯債務」であることが明記されており、持分割合とは関係なく支払う必要があるのです。
共有者の中の誰か一人が全額支払えば租税債務は消滅します。
・全額支払った代表者から他の共有者へ求償
上述したように、各共有者は共有持分に応じて費用を負担する必要があります。
そのため、固定資産税や都市計画税を支払った「代表者」から、他の共有者へ持分に応じた金額を求償することが可能です。
・代表者一人に納付書が送られてくる
固定資産税や都市計画税の納付書は、共有者に分割して送られてくるわけではなく、代表者一人に送付されます。自治体は登記されている中から誰に請求してもよいことになっています。
そのため、納付書が送られてきた代表者が全額支払い、その後共有持分に応じて他の共有者に請求する、という流れが一般的です。
それでは、納付書が送られてくる「代表者」は、どのようにして決まるのでしょうか?
■納付書が送られる代表者の選ばれ方と変更方法
基本的に、固定資産税や都市計画税の納付書は、共有名義の不動産であっても代表者一人に送られてきます。しかし自治体によっては他の共有者にも金額を知らせることを目的として通知書が送られることもあります。また特例で分割納付を認めるケースもありますが、ごく稀だと言えるでしょう。
それでは、納付書が送られる「代表者」の選ばれ方と変更方法をご紹介します。
・代表者として選ばれる一例
自治体が代表者を選ぶ場合は、下記を参考にするケースが多いです。
・共有持分が一番多い人
・不動産がある場所に住んでいる人
・登記簿に記載している順番が早い人
自治体は「いかに未回収を防ぐか」を基準に判断するため、実際に住んでいる人や共有持分が多い人に納付書を送ることが多いようです。
しかし上述したように、固定資産税は「連帯債務」であるため、納付書が送られていない共有持分権者にも支払い義務はあります。
・代表者を自分たちで決めることも可能
共有者全員で話し合い、代表者を決めて自治体に申し出ることも可能です。
「共有資産代表者選定届(自治体により名前は異なる)」を、不動産が所在している自治体の役所に提出しましょう。届け出の締め切りがいつなのかは各自治体にお問い合わせください。
・代表者を変更する方法
いったん代表者を決めたものの、あらゆる理由により変更したい場合もあるでしょう。
そのようなときは「代表者変更届」を提出することで変えることができます。
・税額を確認する方法
原則として、代表者のみ納付書が届くとお伝えしました。
しかし、代表者以外の共有者が税額を知りたい場合もあると思います。そのようなときは、不動産が所在している自治体の役所で「固定資産税評価証明書」を取得する、という方法があります。取得する際には、身分証明書や相続などによるものであれば戸籍なども必要になってくるため、事前に確認しましょう。
■固定資産税や都市計画税の支払い時期と方法
固定資産税や都市計画税はいつまでに、どのようにして支払えばいいのでしょうか?
支払い忘れてしまうと「滞納」となってしまうため、注意が必要です。
・支払い時期
固定資産税や都市計画税の納付書は、4月~6月くらいに送られてくることが一般的です。自治体によって納付期限はさまざまですが、基本的には年4回となっています。また、一括払いを選択することも可能ですが割引はありません。手持ち資金に余裕が持てることから分割払いにメリットはありますが、納付期限を忘れやすいため気をつけましょう。
・支払い方法
自治体によって異なりますが、固定資産税や都市計画税の支払い方法は下記のケースが多くなっています。
–現金で支払う
納付書を、コンビニや銀行・郵便局などの金融機関、または市区町村の窓口に持っていき現金で支払う方法です。領収書と受領書を受け取ることができるため、支払ったことを振り返ることが可能となります。
–クレジットカードで支払う
自治体によっては未対応のところもありますが、クレジットカード支払いはWEB専用サイトで支払う方法とYahoo公金支払いで支払う2つの方法があります。ポイントが貯まるというメリットがある反面、手数料を取られるというデメリットがあります。
–口座振替で支払う
銀行や郵便局などの口座から、自動的に支払ってくれる方法です。
1度設定しておけば、毎年口座振替処理をしてくれます。面倒な支払いに手間を取ることもなく払い忘れを防ぐことができるため、便利な方法です。
しかし、口座のお金が足りず引き落としができなかった際には後日納付書が送られてきて、口座振替以外の方法で納付する必要があります。
–ペイジーで支払う
送られてきた納付書にペイジーマークが付いている場合は、インターネットバンキング(モバイルバンキング含む)やATMで納付が可能です。手数料はかかりませんが、領収書は発行されません。
・年の途中で所有者が変わった場合の支払い方
1月1日に登記されている人に納税義務があるため、その年の途中で所有者が変わっても1年分の固定資産税や都市計画税を支払わなければいけません。そのため、売主は取得日から年末までの固定資産税・都市計画税を算出し、買主に請求する必要があります。
■滞納した場合どうなるのか?
共有名義の不動産の固定資産税や都市計画税を滞納した場合、どうなるのでしょうか?
・延滞税がかかる
一括払いの場合でも年4回払いの場合でも、期限が設けられていますが、その日を過ぎても納税しない場合、延滞税がかかってしまいます。延滞金の税率は、納付期限の翌日から1ヶ月を超えると割合が大きく変わるため注意が必要です。
・督促状が届く
固定資産税や都市計画税を滞納すると、督促状が届きます。
地方税法第329条で「納期限から20日以内に督促状を発しなければならない」とされている通りです。督促状が届いた段階ですぐに支払いをしましょう。自分が支払えない場合は、他の共有者に相談するといいでしょう。納税が遅くなるほど延滞税がかさんでしまいます。
・督促状が届いてもさらに滞納する場合は差し押さえに
督促状が届いても納税をしない場合、財産を差し押さえられることになります。
地方税法では「督促状を発して10日以内」と定められていますが、実際にはすぐに差し押さえられることは少なく、何度か連絡が来るようです。
差し押さえは、建物や土地・預金、または給与が差し押さえられることがあり、給与の場合は勤務先に連絡が入るため、滞納の事実が露呈されてしまいます。
・他の共有者も差し押さえ対象に
共有名義の不動産の場合、滞納すると代表者だけではなく、他の共有者の財産も差し押さえられてしまいます。上述したように「連帯債務」であり、代表者以外の共有者も全額支払う義務があるからです。
・猶予や減額・免除などが認められる場合
やむをえない事情があり納付できない場合、条件を満たすことで1年の猶予や減額・免除などが認められるケースがあります。一例をご紹介します。
-震災や火災などの災害を受けた場合
-本人または生計を共にする親族が病気または負傷した場合
-営んでいる事業が廃止または休止した場合
など
上記以外でも、固定資産税などの減免を受けられる場合があるため、支払えない際には滞納せず相談してみるといいでしょう。
■固定資産税や都市計画税を支払いたくない場合の対処法
「共有名義の不動産の固定資産税や都市計画税を支払いたくない」と、考える場合もあるでしょう。そのときの対処法をご紹介します。
・不動産全体を売却
不動産を売却し手放せば、固定資産税や都市計画税を支払う必要がなくなります。
しかし、共有名義の不動産を売るためには共有者全員の合意が必要です。共有者のうち誰か1人でも反対の状態であれば売ることができません。
・自分の持分を他の共有者に売却
不動産全体を売却できないのであれば、共有状態を解消することで不動産の所有権を手放すことができます。その方法の一つが、自分の持分を他の共有者に買い取ってもらうことです。一度打診してみることもいいでしょう。
・自分の持分を業者に売却
他の共有者が自分の持分買い取りに乗り気ではない場合、業者に売ることもひとつの方法です。不動産全体の売却には共有者全員の合意が必要ですが、自分の共有持分のみの売却であれば自分1人の判断で決行することができます。
共有持分を売却できれば、固定資産税や都市計画税の支払いがなくなるだけでなく、厄介な共有関係に巻き込まれることもなくなるため、悩みが多い共有不動産を抱えている方にはおすすめです。
■共有状態の不動産の固定資産税支払いにお困りの場合、プロに相談を
「登記はしているけれど、不動産を活用できていない」「他の共有者が独占しており、得をすることがない」などといった理由から、共有名義の不動産の固定資産税や都市計画税を支払うことに躊躇することもあるでしょう。
しかし、支払いに応じない場合、差し押さえなどによって自分の財産を失うリスクが生じてしまいます。このようなときは「共有状態を解消する」ことがおすすめです。
共有解消の際は、他の共有者とトラブルになることもあるため、スムーズに解決するためにもプロに相談することをおすすめします。