共有持分

共有物分割訴訟の際に「権利濫用」に当たるケース とは?

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夫婦や親子、兄弟で不動産を共有することは珍しくありません。

穏やかな関係であれば問題はないかもしれませんが、関係が悪化すると、関係を解消したいと考える人もいるでしょう。

 

ここでは、共有関係を解消したい人が、いつでもそのような請求をすることができるのか、また、そのような請求が権利の濫用として認められないのかについて考えてみましょう。

 

■共有関係の分割請求とは?

共有物分割請求とは、共有者の一人が他の共有者に対して、他の共有者に提案して話し合いをしたり、それができない場合には訴訟を提起したりして、何らかの形で共有関係を解消することを求めるものです。

 

共有者が分割を希望する理由は、「現金化して売りたい」「他の共有者との関係が良くないので解消したい」など様々です。

 

・共有物分割請求訴訟とは

共有物分割訴訟とは、裁判所を通じて共有物を解消する共有物分割の方法です。

 

共有物を分割したいと考えている人が、他の共有者に話し合いを持ちかけても通じない場合があります。

例えば、Aさんは不動産全体を売ってお金で分けるのが公平だと考え、Bさんは土地を分割(物理的に分離)したいと考え、Cさんは自分の持ち分を他の人に買ってもらいたいと考えている、それぞれが違う意見でまとまらない場合などです。また、相手との話し合いや連絡ができない状況もあるでしょう。

 

そのような場合には、共有不動産の分割を求める訴訟を起こすしかありません。

 

共有不動産を分割したいと思っても、話し合いをしようとする前に、いきなり共有不動産の分割を求める訴訟を起こすことはできません。

 

共有者が共有物の分割について合意できないときは、裁判所に分割を請求することができるのですが、前提として、共有者で協議をしなければならないと規定されています。

この協議で合意ができなかったり、そもそも協議を拒んでいる共有者がいたりした場合には、協議不成立として共有物分割訴訟に進むことができます。

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・共有不動産の分割請求のタイミング

分割しないという特約がない限り、共有者はいつでも共有財産の分割を請求することができます。

また、当事者同士が合意すれば、共有財産を分割しないという約束をすることもできます。

 

民法第256条第1項

各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。

ただし、5年を超えない期間内は分割しない旨の契約をすることを妨げない

 

分割禁止の特約がなされている場合は、最長5年間の更新が可能です。また、自動更新された場合でも、分割を希望する共有者が反対すれば、分割禁止特約を解除することができます。

 

■権利の濫用とは?

これは、共有物の分割請求に限らず、日本の民法上のすべての行為に当てはまり、正当な権利を持っていても、それを濫用してはならないとされています(民法第1条第3項)。

権利があるからといって、事情に関係なくむやみに行使すると、社会秩序の乱れなどの不都合な事態を招くことがあります。

 

例えば、隣家との境界に目隠しをする必要性を超えて、単に嫌がらせのために高い塀を作って隣家の日照を遮った場合、違法ではなくても権利の濫用となります。

 

・権利の濫用の概要

権利の濫用とは、以下のように定義されます。

「正当な権利であっても、その権利を行使することによって他人に多大な損害を与える場合には、その権利の行使が許されないこと」をいいます。

したがって、共有不動産を分割したい側は、不分割の特約がない限り、基本的にいつでも共有不動産の分割を要求することができます。

 

これは、前述したように、そもそも共有は望ましくないものであり、最終的には解消すべきものであるという考えに基づいた法律だからです。

実際、共有者の一人が他の共有者に裁判で共有関係の解消を求めても、相手方(被告)は権利の濫用であるとして、請求を拒否してくる場合があります。

 

では、請求が認められるかどうかは別として、具体的にどのようなケースで「権利の濫用」という概念が出てくるのでしょうか。

 

■権利の濫用の可能性があるケース

共有物分割請求で、権利の濫用が問題になる可能性のある典型的なケースを見てみましょう。

・分割しない旨の特約がある場合

共有者間で分割しない合意があれば、最長5年間、「共有物を分割しない特約」を結ぶことができます。

特約があっても、共有者が共有物の分割を要求してきた場合、そもそも分割しないことが合意されているため、分割の要求は認められません。

 

・遺産相続の分割協議中の場合

相続によって、不動産が共有になることは珍しくありません。

しかし、遺産分割がまだ完了していない状況では、共有財産の分割請求よりも遺産分割が優先されなければなりません。

 

遺産の中に他の財産がなく、すぐに遺産分割協議がまとまるのであればよいのですが、預貯金などの相続財産が絡んでいる場合には、すぐに遺産分割が完了しないこともあります。

 

遺産分割確定前に分割訴訟すると権利の濫用と見なされる場合がありますので、共有物分割訴訟をする際は遺産分割確定後にする必要があります。

 

 

・離婚協議中の場合

共働き家庭の増加に伴い、夫婦で不動産を共有するケースが増えています。

しかし、夫婦の関係がこじれて別居する際に、どちらかが共有財産の分割を請求することがありますが、これが認められるかどうかが問題となります。

「妻は共有不動産に住んでいて、夫は出て行って別居している。夫の仕事がうまくいっておらず、妻に持分を買い取るか、全体を売却してお金を分ける要求してきました。

しかし、妻には持分を買い取るお金はありませんし、自分の生活の場である不動産を売却する気もありません。」

 

このような場合、裁判所がどう判断したかというと、

「離婚が成立していない場合、夫と妻は同居して協力する義務があり、家族の住居を確保することも義務のうちである」とし、権利の濫用と判断し請求を棄却した事例があります。

 

・共有の通路

住宅地では、複数の家が接している私道を、当事者全員で共有している場合がよくあります。

 

このような場合、「この道を分筆してそれぞれの単独所有にしたい」と言っても、(特段の事情がない限り)権利の濫用とみなされます。

そもそも、この私道の全体を誰もが通れるようにすることが利用形態として最も適しているので、共有のままにしておくことが実情に合っていると解釈できるからです。

 

 

・共有者が自分の住む家を失い、一方的に不利益を被る場合

共有者の一人が共有財産を生活の拠点としており、共有財産を処分されると他の場所に移動することが困難な場合、一方的に共有財産の分割を請求された側が不利益を被ることは、権利の濫用と解釈される傾向にあります。

 

・その他

・前述の共有道路の場合のように、分割することで本来の目的が果たせない場合

・共有分割を請求する人に、特に経済的な必要性がない場合

・不動産を継続して使用したいと考えている共有者がいて、その不動産を売却したくない場合

 

例えば、現物分割(物理的に分割すること)や代償分割(共有者の一人が不動産を取得し、他の共有者に金銭を支払うこと)ができる状態ではないのに、第三者に不動産を売却してしまうと、不動産を継続して使用したい人ができなくなってしまいます。

 

共有物分割請求が認められるかどうかは、財産の状況、当事者間の関係、経済状況など、あらゆる事情を総合的に考慮して判断されます。

迷ったときは、自分で判断せずに専門家に相談してください。

共有者の人数や背後にある関係性など、それぞれの事情によって状況は全く異なります。

 

迷ったときは、「できない」と決めつけるのではなく、まずは不動産を専門とする弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

裁判前の「相談」の段階でも、相手との話の進め方など、第三者の意見を聞くことも大切ですからね。

 

■まとめ

基本的には、共有者の一方は、いつでも他方に共有物の分割を請求して、共有関係を解消することができます。

協議をしてみても解決しない場合は、「共有物分割請求訴訟」を提起して、裁判所に判断してもらうことも可能です。

 

ただし、居住者の状況や分割請求者の経済状況、財産の現状などを考慮すると、「権利の濫用」として共有物の分割請求が認められない可能性もあります。

 

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