
共有不動産の活用について考えた場合「売却」「賃貸」のいずれかがメジャーな手法です。一方で、物件の状態や他共有者の意見次第では、どちらを優先すればいいかの判断基準が異なります。
今回の記事では、共有不動産を売却・賃貸する際に、どちらを選択するべきかの判断基準について解説しますので、ぜひお役立てください。
目次
共有不動産を売却・賃貸がそれぞれ有効なケース
共有不動産の売却・賃貸を選択する際の判断基準としては、以下の通りです。
<売却>
共有不動産を手放したい
早急にまとまったお金が欲しい
<賃貸>
共有不動産を保有し続けたい
安定した副収入が欲しい
共有不動産の売却が有効なケース
共有不動産が自分にとって不要であったり、早急にまとまった資金が必要であったりするケースでは共有不動産の売却が有効です。共有不動産を売却すれば、毎年の固定資産税の支払いも必要なくなります。
共有不動産はただでさえ利活用が難しいため、“ただ所有しているだけの状態”になるケースも多々あります。そういった場合は「固定資産税の支払いが負担になる」「共有者同士のトラブルが億劫だ」などの悩みを抱える方もいらっしゃるでしょう。
共有不動産を売却すれば、所有権を手放せるため、それ以降は税負担や共有者同士のトラブルなどの悩みからは開放されます。
さらに、早急にまとまった資金が必要である場合も、共有不動産を売却しましょう。
「共有不動産って売却に時間がかかるのでは?」との認識を持っている方も多いと思われますが、訳あり物件を積極的に買い取っている専門業者なら、最短即日から1週間で売却することも可能です。
共有不動産の賃貸活用が有効なケース
「共有不動産であっても保有し続けたい」
「短期的な収益ではなく、継続的な家賃収入が欲しい」
上記のような考えがある場合は、手間こそかかりますが共有不動産の賃貸活用も視野に入ります。将来的に利活用したかったり、老後に備えて継続的な家賃収入を得られる状態を作ったりする場合などです。
共有不動産が生まれ育った実家のため思い入れがある場合は、売主から買主に所有権が移るため以降の利用が一切できなくなる売却は特に選択しづらいでしょう。
一方で、賃貸物件として貸し出す場合なら物件の所有権を保有し続けられますので、将来的に自分で住んだり、別の形で利活用したりする余地を残せます。
さらに、一度にまとまった売却益を得るのではなく、毎月小額ずつでも家賃収入を得て、安定的な副収入の基盤作りをしておきたいケースでも賃貸活用は有用な選択肢です。
何を基準にして共有不動産の売却 ・賃貸を決めればいいのか?
共有不動産の売却・賃貸のどちらを選べばいいのかについて悩んだ場合、以下の観点から判断しましょう。
- 自分にとって共有不動産は必要であるか?
- どのタイミングで資金が欲しいか?
共有不動産の扱い方について考える上では、自分や他共有者の意見を尊重するだけでなく、どのタイミングで利益が得られるのかについても検討することが必要です。
① 自分にとって共有不動産は必要であるか?
共有不動産のすべてを売却、あるいは賃貸として活用したいと考えた場合、いずれにしても以下のように一定割合以上の他共有者の同意が求められます。
- 売却…共有者全員の同意
- 賃貸…過半数の同意
共有不動産の扱い方については他の共有者の意見を聞き、その上で「はたして自分にとって共有不動産は必要であるのかどうか」について判断すると良いでしょう。
共有持分を所有し続ける必要がない場合、自分の持分だけなら他共有者の同意がなくとも売却可能です。
一方で、「自分は賃貸活用したいけど、他の共有者は手放したがっている」などの場合では、他の共有者の持分を自分で買い取って、そこから賃貸利用をするという選択肢もあります。
② どのタイミングで資金が欲しいか?
共有不動産の扱いを決めるもうひとつの判断基準は、収益を得られるタイミングです。以下のようにどういった形で利益を得たいのかによって、共有不動産を売却するか、それとも賃貸活用するのかについて判断します。
- 短期で利益が欲しい…物件を売却する
- 長期間にわたって安定収入にしたい…物件を貸し出す
まとまった資金が必要な場合は物件を売却し、長期的に利益を安定的に得たいなら共有不動産を賃貸物件として活用します。
一方で、不動産は時間が経過するほど資産価値が減っていき、売却価格も少額になってしまいますので、将来的に利活用する予定がないなら早期に売却の判断をするのが賢明です。
共有不動産を売却するメリットとデメリット
共有不動産を売却する際に考えられるメリット・デメリットとしては、以下のようなものが考えられます。
<売却のメリット>
- 自分の持分だけなら自由に売却できる
- 他共有者とのトラブルから開放
<売却デメリット>
- 全体売却には共有者全員の同意が必要
共有不動産売却のメリット
共有不動産の持分のみであれば、他の共有者の同意がなくても自由に売却できるだけでなく、そのことを事前に報告する義務もありません。
共有不動産を売却すれば、他の共有者との関係も解消できますので、物件の処遇に関する話し合いといった煩わしさからも開放されます。
共有不動産売却のデメリット
前述の通り、共有状態にある物件のすべてを売却するなら、共有者全員の同意が必要です。共有不動産そのものを売ることに対して積極的なのが自分だけであった場合、他の共有者から反対されてしまえば、売却はできません。
もし、自分の共有持分のみを売却することになった場合、得られる売却益も全体売却に比べて割安になってしまいます。
共有不動産を賃貸活用するメリット・デメリット
共有不動産を賃貸する場合のメリット・デメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
<賃貸活用のメリット>
継続的な家賃収入が得られる
<賃貸活用のデメリット>
一方的に賃貸契約を解除できない
共有者同士でトラブルになりやすい
共有不動産を賃貸活用するメリット
共有不動産を賃貸物件として活用すれば、継続的な家賃収入が得られます。所有物件が戸建て物件であるなら、入居者が長く借り続ける傾向にあるため、長い間にわたって安定的に不動産収益を得られ、最終的な収益は売却したときに比べて多くなる可能性もあります。
共有不動産を賃貸活用するデメリット
一方で、賃貸物件として貸し出し、賃貸契約を締結すれば一方的に契約を解除できなくなる点がネックです。一度、入居者が賃貸物件の利用をはじめると、特殊な事情がない限り、一方的な契約解除は行えません。
共有不動産の場合は賃貸契約を解除するにも、不動産の持分割合における過半数の同意が必要であると「借地借家法第28条」で規定されているため、輪をかけて契約解除が難しいと言えます(※1)。
さらに、賃貸物件として貸し出すためにリフォームが必要であった場合でも、共有者全員の同意がなければならず、家賃収入の取り分について全員の意見を一致させておくことが必要です。
共有者全員で意見を揃えることは難易度は高く、共有不動産の賃貸活用の際には大きなハードルになると予測されます。
共有不動産を売却する方法
不動産仲介会社と仲介を結ぶ一般的な売却スキームの場合、共有持分として保有している物件の一部、あるいはすべてを売却するまでに、以下のステップを踏むことになります。
- 売却価格の決定
- 共有者全員の合意形成
- 不動産会社と媒介契約の締結
- 買い手探し
- 買主との売買契約の締結
- 物件の引き渡し
一般的な手法では上記のように非常に手間がかかり、売却までに時間も必要です。通常の不動産でさえ3ヶ月から半年の期間が必要ですので、共有不動産であれば、売却活動はさらに長期にわたると覚悟しておいた方がいいでしょう。
なるべく短期で売却したいなら、前述のように訳あり物件専門の買取業者への相談も検討できます。
共有不動産を売却する場合の費用
共有不動産の売却活動を行う場合、以下のような費用が必要です。
- 譲渡所得税
- 印紙税
- 登記費用
- 仲介手数料(仲介業者を利用した場合)
上記のうち、譲渡所得税や印紙税、登記費用などの税金は必ず納めることになります。一方で、仲介手数料については自分で他の共有者などに売却するか、専門業者へ売却するならその限りではありません。
共有不動産の賃貸活用をする手順
共有不動産を賃貸物件として活用する場合、以下の手順で実施します。
- 家賃相場の調査
- 他の共有者の過半数の同意を得る
- 管理会社との契約(管理委託する場合)
- 入居者の募集
- 借主と賃貸契約の締結
前述した通り、賃貸活用する際には入居者探し以上に他の共有者との意見合意で課題を抱えるケースも少なくありません。そういった場合は、自分で他の共有者の持分を買い取ることも選択肢となるでしょう。
共有不動産を貸し出す場合の費用
共有不動産を賃貸活用する際に必要と思われる費用に関して、以下のものが考えられます。
- 宣伝広告費
- 管理費用
- リフォーム費用
賃貸物件として貸し出す場合、不動産会社に宣伝広告を依頼し、管理を委託するのが通例ですので、その費用が必要です。さらに、物件が老朽化している場合などでは、追加でリフォーム費用も必要になるでしょう。
まとめ
共有不動産の扱いについて、売却・賃貸のいずれかで悩んだ場合は、基本的には売却を選択すれば手間がかかりません。売却なら、賃貸活用に比べて手間が少なく、自分の共有持分飲みなら自由に売りに出せるためです。
一方で、思い入れのある物件を残したいなら、賃貸活用でも十分に収益を得られる余地はあります。さらには、共有不動産を利活用する場合には、他の共有者となるべく禍根を残さないような落としどころを見つける努力も大切だと言えます。
参考:
※1 e-Gov 法令検索,「借地借家法」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=403AC0000000090,(2022/03/29)