共有持分【法律・税金】

共有持分の「移転登記」の方法は?手続きや費用について解説

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不動産の共有持分を得た場合、所有していることを法的に証明するための「共有持分移転登記」が求められます。しかし、不動産の登記に慣れていないと、いざ登記をしようとしても何から手をつけていいのかわからないケースは珍しくないでしょう。

今回は、移転登記をスムーズに行うために必要な方法や費用に加え、共有持分と単有の移転登記の違いなどを解説します。共有持分を登記する予定のある方は、ぜひご覧ください。

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共有持分移転登記とは?

不動産が1人の名義(単有)ではなく、2人以上の名義で登記されていることを「共有」といいます。つまり共有持分とは、それぞれが持っている所有権の割合のこと。

共有持分移転登記は、共有持分が他の人に移ったときに名義変更をする手続きを指します。移転登記をすることで、登記簿に載っている共有者の名前の変更が可能です。

共有持分移転登記と所有権移転登記の違い

不動産の所有権が移るときは「所有権移転登記」を行います。所有権が移る不動産が共有名義である場合は、所有権移転登記に加えて「共有持分移転登記」が必要です。

不動産を単独で所有しているのであれば所有権移転登記を、共有であればさらに共有持分移転登記が必要になると認識しましょう。

共有持分移転登記が必要となるケース

共有持分移転登記をしなくてはいけないのはどのようなケースでしょうか。代表的なものとしては、以下のとおりです。

  1. 共有持分を相続した
  2. 離婚による財産分与で共有持分を得た
  3. 共有持分の贈与を受けた
  4. 共有持分を売買した
  5. 共有持分を放棄した
  6. 共有物分割請求により代償分割が選択された

ここからは、それぞれについて個別に解説します。

①共有持分を相続した

被相続人が不動産を他の人と共有していた場合、その共有持分が相続の対象となります。移転登記では、法定相続人の中から誰か1人、共有持分を相続する人を決めておきましょう。

もし法定相続人の中から1人に絞ることができないのであれば、2人以上で相続することも可能。その場合、もともと分割されていた持分をさらに分割し、共有することになります。

被相続人が単有(名義人が自分のみ)の不動産を所有しており、遺言や遺産分割協議などの結果、2人以上で相続することが決まった場合、不動産は単有から共有状態になります。

しかし、もとの不動産が単独名義であれば、共有持分移転登記ではなく所有権移転登記のみとなるので注意が必要です。

②離婚による財産分与で共有持分を得た

離婚した場合、夫婦共有名義の不動産を財産分与として、どちらか一方の単有にするケースがあります。その際、共有持分移転登記を行わなければなりません。

住宅ローンが残っている場合は、勝手に持分移転をしてしまうと契約違反になることがあるため、登記の前に金融機関に相談しましょう。

離婚する際には、原則として、夫婦が共同生活を送る中で形成した財産は公平に分配する必要があります。

つまり、登記されている共有持分とは関係なく、法律的な考えによって「2分の1ずつ」とされているのです。どちらか一方が不動産を取得した場合、同等の価値ある財産を相手に分配する必要があります。

③共有持分の贈与を受けた

親から子へ、または夫婦間や兄弟間などで共有持分の贈与が発生したとき、共有持分移転登記を実施します。贈与の場合、贈与税がかかることもあります。

④共有持分を売買した

共有持分を買い取ったときや、共有している相手の持分を買い取って単独名義にしたときなどに、共有持分移転登記が必要になります。

⑤共有持分を放棄した

共有持分を放棄したときにも、共有持分移転登記を行います。共有持分放棄は、他の共有者の合意なしに行うことができますが、移転登記の際に他の共有者の協力も必要です。そのため、合意を得られなければスムーズに移行することができないかもしれません。

民法第255条において「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」と定められているとおり、共有者持分権者は持分放棄をすることが可能。

放棄した持分は自動的に他の共有者に移ることになります。

⑥共有物分割請求により代償分割が選択された

共有者の中の誰かが「共有関係を解消したい」と考え共有物分割請求をし、裁判所で代償分割の判決をされたとき、共有持分移転登記が必要になります。

共有関係解消のためには、まず共有者同士で話し合いを行います。しかし、誰か1人が話し合いに応じなかったり、解決に導くことができなかったりした場合、裁判所を通して決めることも可能です。

共有物分割請求とは?

民法第256条において「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない」とあるとおり、共有物分割請求は法的に認められた権利です(※1)。

裁判所は、現物分割・代償分割(価格賠償)・換価分割の中からいずれかの判決をくだします。

共有持分の移転登記を行うタイミングはいつ?

共有持分の移転登記は、どのようなタイミングで行ったらいいのでしょうか。通常、不動産売買において、売主は売買代金を受け取る代わりに、買主に所有権を渡す必要があります。

そのため、残金決済日に司法書士が立ち会い、売主に残金が支払われたタイミングで移転登記に必要な書類を預かり、移転登記を行う……という流れが一般的な流れとなります。

売主が移転登記手続きに協力しなければ、債務不履行責任を問われる可能性もあるため注意しましょう。

共有持分を移転登記しないリスク

移転登記をしないままにしておくと、どのようなことが起こるのでしょうか。考えられる一例としては、以下のとおりです。

  • 固定資産税の請求が前の共有者に届いてしまう
  • 融資を受けられない
  • 相続の場合、新たな相続人が増える

それぞれについて、個別に説明します。

固定資産税の請求が前の共有者に届いてしまう

固定資産税は毎年1月1日に所有している人に納付義務があります。そのため、移転登記のタイミング次第では、移転前の共有者に納付書が届くケースも存在しますが、移転登記をしないままでいると毎年そのような状態になってしまいかねません。

融資を受けられない

移転登記をしないと所有権も移行しないため、管理や売却などができません。当該不動産がマンションなど賃料収入があるものだった場合、賃料を受け取ることができなかったとしても、移転登記をしていなければ請求できないのが現状です。

そのため、不動産を担保に融資を受けることも不可能。銀行などから融資を受けたい場合、名義変更しておかないと不動産を担保にもできないでしょう。

相続の場合、新たな相続人が増える

相続により共有持分を得たが登記をせずに放置し年数が経つと、新たな相続人が増えてしまうことがあります。

協議により相続人が決まったにも関わらず、再度話し合いをしなくてはいけなくなったり、「気づいたら自分以外の相続人が登記をしていた」ということが起こったりするかもしれません。

そのため、共有持分の移転が決まったら、すぐに移転登記を行いましょう。共有者が協力してくれないなどの問題が起きたときは、裁判に持ち込むことも検討されます。

共有持分移転登記の方法

共有であっても単有であっても、名義変更の方法はほぼ同じとなっています。移転登記の「申請場所」「必要書類」については以下のとおりです。

【申請場所】

  • 名義変更をする不動産の管轄の法務局

【必要書類】

  • 登記申請書
  • 住民票
  • 登記原因書類(売買契約書など)
  • 印鑑登録証明書
  • 固定資産評価証明書

など

移転登記の手続きの流れについては、次のような手順を踏みます。

Step1:書類を準備する

上述した必要書類を準備します。相続の場合には戸籍謄本が必要になることもあるため、ケースに応じた書類を用意しましょう。登記申請書は法務局のホームページからダウンロードできます。

Step2:登録免許税を準備する

移転登記をするためには、後述する登録免許税の支払いが必要になりますので、準備を行いましょう。

Step3:法務局に提出

書類とお金を用意したら、法務局に提出します。

Step4:登記完了書類を受け取る

法務局で確認したあと、問題がなければ「登記識別情報通知書」が交付され、登記手続きが完了します。

単有と比べて気を付けなければいけないこと

共有持分の移転登記の際に、単有とは異なる点があるので注意しましょう。 代表的なものとしては、以下のとおりです。

  • 申請書の「登記の目的」欄に注意
  • 共有者全員の印鑑登録証明書が必要

上記について、個別に説明します。

申請書の「登記の目的」欄に注意

共有持分移転登記の場合、登記申請書の「登記の目的」欄の記載の仕方に注意が必要です。単有の場合、「所有権移転」と記載すればいいのですが、共有の場合は「誰から、どれくらい移転したか」を記載しなければいけません。

例えば、Aの持分をすべてBに移転した場合、「A持分全部移転登記」と記載します。Aの持分の一部をBに移転した場合は、「A持分一部移転登記」と記載しましょう。

共有者全員の印鑑登録証明書が必要

3人の共有持分権者から共有持分を買い取った場合、その3人の印鑑登録証明書が必要になります。誰か1人でも協力してくれない人がいると、登記を進めることができません。共有者が多いほど煩雑になるといえるでしょう。

共有持分移転登記にかかる費用

移転登記をする際には、以下のような費用の支払いが必要です。

  • 登録免許税
  • 必要書類の取得費用
  • 不動産取得税
  • 司法書士への支払い

次項より、詳しくご紹介します。

登録免許税

登記にかかる手数料のような税金であり、登記申請の際に法務局に支払う必要があります。金額は不動産の「固定資産税評価額 × 登録免許税率を掛けて算出されます。共有持分移転登記の場合、持分割合も計算に含まれるため注意しましょう。

登録免許税率は下記の通りです(※1)。

相続人による相続の場合4%
贈与の場合2%
遺贈の場合2%
離婚による財産分与の場合2%

必要書類の取得費用

住民票や印鑑証明書を取得するためには、各種書類の取得費用が必要です。また相続の場合、戸籍謄本が必要になることもあります。

住民票300円程度
印鑑登録証明書300円程度
固定資産税評価証明書300円程度
戸籍謄本450円程度

取得費用は自治体によって異なる場合があるため、確認しましょう。

不動産取得税

贈与や売買によって共有持分を得た場合、不動産所得税がかかります。金額は、「固定資産税評価額 × 不動産取得税率」で、税率は下記のとおりです(※2)。

税率標準税率本則4% <税率の特例>
住宅及び土地3%(令和6年3月31日まで)
課税標準及び税額の特例

<住宅・住宅用地の特例>

  • 住宅・課税標準の特例措置

新築住宅→1,200万円を控除
中古住宅→住宅の新築時期により最高1,200万円を控除

  • 住宅用地 ・税額の減額措置(新築・中古とも)

150万円又は床面積の2倍の面積(200m2限度)に相当する土地の価格のいずれか大きい額に税率を乗じて得た額を減額

<住宅用地・商業地等の特例>

  • 住宅用地、商業地等の取得に係る課税標準としての価格を、評価額の1/2に圧縮

この費用は登記時に必要な訳ではなく、共有持分取得した翌年に納付書が送られてくるタイミングで支払います。離婚時の財産分与や相続の場合、不動産取得税はかかりません。

司法書士への支払い

共有持分移転登記は自分で行うことも可能ですが、司法書士に依頼するケースも多々あるでしょう。費用は依頼先によって異なりますが、相場は1件3~8万円となっています。複数の共有持分移転を行う際には、件数分の費用が必要になる場合もあります。依頼前に金額を確認しておくといいでしょう。

まとめ

移転登記の中で一番大きな費用はおそらく「登録免許税」ですが、固定資産税評価額によって変わってくるため、一概に「いくらかかる」という計算ができません。

専門家に頼めば、シミュレーションをして計算してくれることもあるため、事前の相談も検討されます。登記手続き自体も自分で行うことは可能ですが、書類ミス等があるとやり直しになるため、外部専門家への依頼も検討しましょう。

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この記事の監修者

監修者プロフィール写真

松本 大介(司法書士)

得意分野:相続全般、遺言書作成、不動産売却
お客様に「君にまかせてよかった」「君だから依頼したんだよ」そう言っていただけることを目標に、この仕事に誇りを持って取り組んでおり、お客様の立場に寄り添い考えるよう心がけています。

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