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インスペクションとは?不動産売買で行うメリットや目的を詳しく解説

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中古住宅の売買で、インスペクション(建物状況調査)という言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。

インスペクションを適切に実施すれば、中古住宅の売買をスムーズに進め、トラブルを未然に防ぐことが可能です。特に、2020年の民法改正で導入された「契約不適合責任」との関係性を理解することは、これからの不動産取引に欠かせない視点といえるでしょう。

そこで今回は、インスペクションの基本的な仕組みからメリット、費用や依頼先の選び方まで、売主・買主双方に知っておいていただきたい情報を詳しく解説します。

インスペクションとは

インスペクションとは、売買時に専門家が建物の状態を調査し、劣化や欠陥の有無をチェックすることです。「inspection」は「検査、点検」という意味で、日本では「建物状況調査」とも呼ばれています。

インスペクションは、建物の基礎、外壁、屋根、設備など幅広い箇所を対象に、目視や計測、作動確認などの方法で検査が行われます。建物の状態を客観的に評価し、修繕の必要性や今後の維持管理についてアドバイスを行うのが目的です。

2018年の宅地建物取引業法改正により、宅建業者には媒介契約時にインスペクションに関する説明が義務付けられました。安心・安全な中古住宅の取引のために、今後ますます重要性が高まるサービスだといえるでしょう。

インスペクションの目的

インスペクションの主な目的は、中古住宅の売買において、取引の透明性を高め、トラブルを未然に防ぐことにあります。

売主にとっては、建物の状態を把握し、必要な箇所を補修・改修することで、買主への説明責任を果たせます。インスペクション済みの物件は、買主に安心感を与えるため、スムーズな売却につながる可能性があります。

一方、買主は、購入前に建物の状態を正確に理解したうえで、リフォームの要否や費用を検討できます。隠れた不具合によるトラブルを避けられるだけでなく、長期的な資金計画が立てやすくなるというメリットがあります。

このように、インスペクションを活用することで、売主・買主双方の不安を解消し、円滑な不動産取引の実現を目指すことができるのです。

インスペクションの検査項目

インスペクションの具体的な検査項目は、実施する業者によって多少の違いはありますが、おおむね以下のような内容が含まれます。

  • 建物の傾斜や不同沈下の有無
  • 基礎や土台の劣化、シロアリ被害の有無
  • 外壁や屋根の劣化、雨漏りの形跡
  • 柱や梁などの構造部分の損傷
  • 内壁や天井、床のひび割れや変形
  • 建具の開閉や気密性、断熱性
  • 給排水管の劣化、漏水の有無
  • 電気設備の作動、配線の状態
  • 換気設備や空調設備の作動状況
  • シックハウス症候群の原因となる有害物質の使用

これらの項目を総合的にチェックすることで、建物の現状を多角的に診断します。買主の要望に応じて、オプションで耐震診断などを追加で行うこともできます。

インスペクションの調査方法

インスペクションの調査は、原則として目視と簡易な計測機器を用いた非破壊検査で行われます。具体的には以下のような手法がとられます。

  • 目視:肉眼で表面的な劣化や変形、仕上げ材の割れやはがれなどをチェック
  • 指触:手で触れて部材の浮きや緩みを確認
  • 叩打:調査箇所を軽く叩いて、音の変化から内部の空洞や剥離を推測
  • 傾斜計:床や柱の傾きを計測し、沈下の有無を調べる
  • 水分計:壁や床の含水率を測定し、雨漏りなどの可能性を探る
  • 赤外線カメラ:建物の断熱性能を可視化し、熱の漏れや結露リスクを診断
  • 内視鏡カメラ:壁や天井裏、床下などの目視しにくい箇所を撮影

建物の構造や規模、築年数によって調査の範囲や方法は異なりますが、2~3時間程度で一通りの検査が完了します。破壊を伴う精密検査が必要と判断された場合は、別途、詳細診断を行うことになります。

インスペクションと既存住宅売買瑕疵保険の違い

インスペクションと混同されやすいものに、既存住宅売買瑕疵保険があります。どちらも中古住宅の品質や安全性に関わるサービスですが、役割は大きく異なります。

インスペクションが売買前に建物の状態を調査・診断するのに対し、既存住宅売買瑕疵保険は、引渡し後の一定期間に発見された瑕疵に対して保証を提供するものです。具体的には、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分を対象に、修補費用や損害賠償金などを保険金でカバーします。

瑕疵保険への加入には、原則として第三者機関による現場検査に合格する必要があります。その意味で、インスペクションの実施が加入への第一歩と言えますが、保険適用の検査は必ずしも建物全体の状態を診断するものではありません。

したがって、購入前の住宅診断としては、インスペクションを別途依頼することが望ましいといえるでしょう。

インスペクションは契約不適合責任の関係性

2020年に施行された改正民法により、住宅の売買には「契約不適合責任」が導入されました。これは、売主が契約の内容に適合しない物件を引き渡した場合、買主に対して責任を負うというルールです。

具体的には、雨漏りや水回りの不具合など、物件に隠れた瑕疵があった場合、売主は原則として無過失でも責任を問われます。買主は、損害賠償請求や契約解除、修理費用の請求などの権利を行使できるようになったのです。

こうした法改正を背景に、インスペクションの重要性はさらに高まっています。売主がインスペクションを実施し、その結果を開示することで、取引時の物件状態を明確にできます。契約内容との齟齬を防ぎ、トラブルのリスクを大幅に減らせるのです。

買主にとっても、インスペクション結果を確認することで、購入の意思決定や契約交渉に役立てられます。売買後のトラブルを未然に防止し、安心して中古住宅を選ぶことができるでしょう。

インスペクションを行うメリット

インスペクションは、中古住宅の売買において、売主と買主の双方にメリットをもたらします。ここでは、それぞれの立場から見た具体的な利点を詳しく解説します。

売主側のメリット

インスペクションを行うことで、物件の状態が明確になり、買主の安心感が高まります。これにより、買主の購入意欲が高まり、スムーズな売却取引が実現しやすくなるのです。インスペクション済みの物件は、そうでない物件と比べて、売却価格の正当性を主張しやすいというメリットもあります。

2020年の民法改正では、売主は物件の隠れた瑕疵について、原則無過失責任を負うことになりました。しかし、インスペクションを実施し、その結果を開示することで、物件の品質を明らかにできます。これにより、売主は契約不適合責任を問われるリスクを大幅に減らせるのです。

インスペクションで物件の状態を事前に把握し、必要な修繕を行っておくことで、売却後に買主からクレームや補修請求を受けるリスクを抑えられます。

買主側のメリット

中古住宅は、新築時から経年劣化が進んでいるため、その状態を正確に把握することが重要です。インスペクションを行えば、目視だけでは分からない不具合やリスクを事前に発見できます。これにより、買主は安心して物件を選べるようになるのです。

インスペクションの結果、修繕が必要な箇所が見つかれば、その費用を購入価格に反映させることができます。つまり、買主は物件の実際の価値に基づいて、適切な価格交渉を行えるようになるのです。売主が修繕に応じない場合は、購入を見送る判断材料にもなります。

インスペクションにかかる費用

インスペクションにかかる費用は、物件の種別や規模、調査項目によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。

  • マンション:5~8万円程度
  • 戸建て:7~15万円程度

マンションの場合、専有部分のみを対象とするため、戸建てと比べて費用は抑えられる傾向にあります。一方、戸建ては、屋根裏や床下、設備など、調査箇所が多岐にわたるため、費用は高めになります。

さらに、オプション検査を追加すると、1項目あたり数万円の費用がかかることも。ただし、シロアリの有無や配管の漏水などは、売買にも大きく影響する重要なポイントです。必要に応じて、追加費用を惜しまないことも肝心と言えるでしょう。

なお、インスペクションは安心を買うためのコストと捉えることが大切です。売買価格に対して大きな金額ではないうえ、取引の円滑化とトラブル回避に役立つのは間違いありません。

インスペクションにかかる時間はどのくらい?

インスペクションの所要時間は、建物の規模や構造、調査項目によって変動しますが、基本的な目安は以下の通りです。

  • マンション:2時間程度
  • 戸建て:3~4時間程度

マンションは、専有部分の床面積が戸建てより狭いことに加え、共用部分は管理組合の管轄になるため、調査範囲が限定的。一方、戸建ては屋根裏や小屋組み、床下などの箇所もチェックするため、およそ半日がかりになることが一般的です。

ただし、これはあくまで建物の検査にかかる時間です。事前の打ち合わせや、必要書類の収集、調査後の報告書作成などを含めると、案件によっては1週間から10日ほどの期間が必要になるケースもあります。

特に、築年数の古い戸建てや、増改築を繰り返した物件などは、劣化や不具合の可能性が高くなります。売主も買主も、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切だと言えるでしょう。

インスペクションはどこに頼むべき?

インスペクションは、信頼できる専門業者に依頼することが何より大切です。適切な診断と、丁寧な報告書の作成は、その後の売買取引にも大きな影響を与えかねません。

業者選びのポイントとしては、まず実績と専門性が挙げられます。住宅の種類や構造に応じた調査経験が豊富で、建築士などの有資格者が在籍しているかを確認する必要があります。

調査内容や報告書のサンプルを取り寄せ、非専門家にも分かりやすい説明がなされているかもチェックすべき点です。過去の顧客の評判や、問い合わせ時の対応なども、業者の誠実さを測る材料になるでしょう。

インスペクション業者は、宅建業者からの紹介を受けることも可能ですが、利害関係のない中立的な立場の業者を選ぶことが望ましいと言えます。不動産仲介を行う業者は、取引の円滑化を優先するあまり、物件の不具合を過小評価してしまう恐れがあるからです。

売主・買主の双方が納得できる形でインスペクションを行うためにも、第三者的な目線を持つ専門業者を選ぶことが肝要だといえるでしょう。

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まとめ

インスペクションは、中古住宅の売買において、物件の品質を客観的に評価し、取引の透明性を高めるための重要な仕組みです。

売主にとっては、契約不適合責任を回避し、円滑な売却を実現するメリットが。買主にとっては、安心して物件を選べるだけでなく、適切な購入価格の判断やリフォーム計画にも役立ちます。

ただし、インスペクションを依頼する際は、専門性や調査内容、費用対効果など、確認すべきポイントが少なくありません。特に、物件の種別や築年数によって、必要な調査の範囲や方法は大きく異なります。

そこで、インスペクションの実施を検討する際は、経験豊富で信頼できる専門家に相談することをおすすめします。

物件の特性を踏まえた適切な調査プランを提案してもらえるだけでなく、調査結果の解釈や、その後の売買条件の交渉についてもアドバイスが得られるでしょう。

運営団体
株式会社ネクスウィル

2019年1月29日設立。訳あり不動産の買取を行う不動産会社。相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産を買い取り、法的知識や専門知識を以って、再度市場に流通させている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を展開。
経済界(2022年)、日刊ゲンダイ(2022年)、TBSラジオ「BOOST!」(2023年)、夕刊フジ(2023年)などで訳あり不動産について解説している。2024年度ベストベンチャー100選出。
これまでの買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』(代表取締役 丸岡・著)を2024年5月2日に出版。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸 (宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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