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借地権を相続する際、地代の種類によって相続税評価額が大きく変わるということをご存知でしょうか。借地権を相続したものの、地代について理解していないために、思わぬ相続税の負担増に悩まされているケースが見受けられます。
適切な地代設定がなされていないと、借地権の評価額が高くなり、相続税が重くなるリスクがあります。そのため、借地権を相続する可能性がある方は、地代の種類と計算方法、相続税評価への影響について知っておくことが大切です。
本記事では、地代の基本的な知識から相続税評価への影響、適正な地代設定のポイントまで、詳しく解説します。
目次
地代とは
地代とは、借地契約において借主が土地を利用する対価として地主に支払う金銭を指します。
借地契約とは、地主が土地を貸し、借主がその土地の上に建物を所有することを目的とした契約です。借主は地代を支払うことで、土地を利用する権利である借地権を得ることができます。
地代が発生するのは、借地借家法に基づく借地契約が結ばれた場合です。一般的な借地契約では、契約締結時に借主が地主に権利金を支払い、さらに月々の地代を支払います。
地代の金額は、土地の価値や周辺の相場などを考慮して決められます。
地代の種類と計算方法
借地契約における地代は、「通常の地代」と「相当の地代」の2種類に分けられます。権利金の授受があったかどうかで、この2つの地代の種類が決まります。それぞれの特徴と計算方法を詳しく見ていきましょう。
通常の地代
通常の地代とは、借地契約締結時に借主が地主に権利金を支払った場合に適用される地代です。権利金の支払いにより、借主は土地の一部である借地権を取得します。通常の地代は、土地全体から借地権を除いた残りの部分、つまり底地部分に対する賃料として位置づけられます。
通常の地代が適用されるのは、権利金の授受があった一般的な借地契約のケースです。権利金の金額は、土地価格に借地権割合を掛けて計算します。
借地権割合は、その土地の属性によって定められた割合で、「路線価図」と呼ばれる国税庁の資料で確認することができます。
通常の地代の計算式は以下のとおりです。
<通常の地代の計算式>
- 年間の通常の地代 = 土地価格 × (1 – 借地権割合) × 6%
土地価格は、固定資産税評価額や相続税路線価などを参考にして決めます。借地権割合を差し引いた残りの割合が、地主の取り分である底地部分の割合となります。その割合に6%をかけることで、年間の通常の地代が計算できます。
相当の地代
相当の地代とは、借地契約締結時に権利金の授受がなかった場合に適用される地代です。借主は権利金を支払っていないため、地主に対して借地権部分を含めた土地全体の賃料を支払う必要があります。つまり、相当の地代は通常の地代よりも高額になります。
相当の地代が適用されるのは、親族間での借地契約など、権利金の授受を行わないケースです。親族といっても、地主側が不利にならないよう、適正な地代設定が求められます。権利金をもらわない代わりに、地代で調整を行うわけです。
相当の地代の計算式は以下のとおりです。
<相当の地代の計算式>
- 年間の相当の地代 = 土地価格 × 6%
権利金の授受がないため、土地全体が地代の対象となります。土地価格に直接6%を掛けることで、年間の相当の地代が計算できます。この計算式から、相当の地代は通常の地代よりも高くなることが分かります。
地代の計算例
ここまでの内容を踏まえて、地代の具体的な計算例をみてみましょう。
<設定条件>
- 土地価格:5,000万円
- 借地権割合:70%(0.7)
<通常の地代の計算>
- 年間の通常の地代 = 5,000万円 ×(1 – 0.7)× 6%= = 90万円
<相当の地代の計算>
- 年間の相当の地代 = 5,000万円 × 6% = 300万円
計算結果を比較すると、相当の地代は通常の地代の3倍以上になっています。借地契約において権利金の授受があるかないかで、地代の金額に大きな差が出ることが分かります。
以上が、地代の種類と計算方法についての詳しい解説です。地代は借地契約における重要な要素ですので、地主側も借主側もその内容をしっかりと理解しておく必要があります。
特に相続対策の観点からは、地代の種類によって借地権の評価額が変わるため、注意が必要です。
地代の種類による借地権の相続税評価への影響
借地権を相続した場合、相続税の計算において借地権の評価額を算出する必要があります。借地権の評価額は、地代の種類や金額によって変わってきます。
ここでは、権利金の支払いの有無や実際の地代と評価額の関係について詳しく解説します。
権利金の支払いがある場合の借地権評価
権利金の支払いがある一般的な借地契約の場合、借地権の評価額は以下の計算式で求められます。
<借地権評価額の計算式>
- 借地権評価額 = 土地価格 × 借地権割合
権利金を支払って借地権を取得しているため、借地権部分は借主のものとして評価されます。土地価格に借地権割合を掛けることで、借地権の評価額が計算できます。
例えば、土地価格が5,000万円、借地権割合が70%の場合、借地権評価額は3,500万円となります。
権利金の支払いがない場合の借地権評価
権利金の支払いがない場合、借地権の評価額は実際の地代と通常の地代・相当の地代との関係によって変わります。
<実際の地代と通常の地代を比較>
- 実際の地代 ≦ 通常の地代の場合
- 借地権評価額 = 土地価格 × 借地権割合
<実際の地代と相当の地代を比較>
- 相当の地代 ≦ 実際の地代の場合
- 借地権評価額 = 0円
(※地主側の土地評価額は通常の自用地評価額の80%)
権利金の支払いがなく、実際の地代が通常の地代以下の場合は、権利金を支払った場合と同様に借地権評価額を計算します。一方、実際の地代が相当の地代以上の場合は、借地権の価値はないものとみなされ、評価額は0円となります。
実際の地代と相続税評価額の関係
実際の地代と通常の地代・相当の地代の関係によって、借地権の相続税評価額が変動します。以下のようなケースが考えられます。
- 実際の地代が通常の地代より低い場合
→ 借主に有利な契約で、借地権評価額は高くなる
- 実際の地代が通常の地代と相当の地代の間の場合
→ 借地権評価額は、実際の地代に応じて按分計算される
- 実際の地代が相当の地代以上の場合
→ 借地権評価額はゼロで、地主側の土地評価額も低くなる
一般的には、実際の地代が通常の地代と相当の地代の間に設定されることが多いでしょう。地代が高ければ借地権評価額は低くなり、地代が低ければ借地権評価額は高くなります。地代設定は、相続税の観点からも重要な意味を持つのです。
適正な地代設定のためのポイント
借地契約において適正な地代を設定するためには、いくつかの点に注意が必要です。具体的には、以下のとおり。
- 周辺相場を把握する
- 将来の地代増減を考慮する
- 相続税対策としての地代設定を行う
それぞれ個別にみていきましょう。
周辺相場の把握する
適正な地代を設定するには、まずは周辺の借地の相場を調べることが重要です。同じ地域の類似した土地の借地事例を参考にすることで、適切な水準の地代を判断することができます。
相場調査の方法としては、以下のようなものがあります。
- 不動産仲介業者に相談する
- 国土交通省の地価公示や都道府県の地価調査を確認する
- 周辺の土地の公示価格や路線価を調べる
地代は周辺相場から大きく乖離していると、将来的に地代の増減請求を受ける可能性があります。安易に相場より低い地代を設定すると、地主側に不利になってしまうこともあるので注意が必要です。
将来の地代増減を考慮する
借地契約は長期に渡るため、契約期間中に地代の増減が必要になるケースがあります。地代の増減に関しては借地借家法に規定があり、当事者間の協議で地代を改定することができます。
地代増減の要因としては、以下のようなものが考えられます。
- 土地の価格の変動
- 公租公課(固定資産税など)の増減
- 経済情勢の変化
このような要因を考慮し、将来の地代増減についてシミュレーションを行っておくことも重要です。特に契約当初の地代設定時には、今後の土地の価格動向などを見据えた金額設定が求められます。
相続税対策としての地代設定を行う
地代が低ければ借地権の評価額が高くなり、相続税が重くなる可能性があります。逆に、地代を高く設定すれば借地権の評価額は低くなり、相続税の負担を軽減することができます。
ただし、地代を不自然に高く設定すると、借地契約自体が成立しなくなるリスクもあります。借主側の負担が大きくなりすぎては、契約を継続することが難しくなるからです。
相続税対策としては、節税効果と適正な地代のバランスを考えることが重要です。地代設定には税務の専門家に相談するなど、慎重に検討する必要があるでしょう。
借地契約における地代設定は、単に貸主と借主の間で金額を決めれば良いというものではありません。
地代の種類によって借地権の相続税評価額が変わることを理解した上で、周辺相場や将来の地代増減なども考慮しながら、適正な水準の地代を設定することが求められます。
まとめ
借地契約における地代設定は、単なる貸主と借主の間での金額決定ではありません。通常の地代と相当の地代の違いを理解し、周辺相場や将来の地代増減を考慮しながら、適正な水準の地代を設定することが重要です。
特に、地代の種類や金額が借地権の相続税評価額に与える影響は大きいため、相続対策としての視点も必要不可欠です。しかし、地代設定には専門的な知識が求められるため、一般の方にとっては難しい面もあるでしょう。
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