共有持分【基礎知識】

共有持分が差し押さえられた場合の対処法とは?強制執行の影響も踏まえて詳しく解説

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共有持分を所有していると、さまざまなトラブルに見舞われます。なかでも「共有持分の差押え」は、ある共有者の債務が原因で、不動産の一部が強制的に処分対象となる深刻な問題です。

場合によっては、まったく関係のない第三者が新たな共有者になることもあり、精神的・実務的な負担が一気に増しかねません。

本記事では、こうした共有持分の差押えが発生した場合の対処方法について、不動産を「所有し続けたい場合」「手放しても構わない場合」の2パターンに分けて解説します。

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不動産の差押えとは

不動産の差押えとは、債務者が債務を履行しない場合に、債権者が債務者の財産である不動産を強制的に換価して債権を回収するための法的手続きです。

差押えは、債務者の財産を法的に拘束し、債務者がその財産を自由に処分できないようにする効果があります。通常、差押えは裁判所の命令に基づいて行われ、不動産登記簿に差押えの記録が記載されます。

これにより、第三者に対しても差押えの事実が公示されます。差押えは債権回収の一手段であり、最終的には競売などを通じて不動産を換価し、その売却代金から債権の満足を得ることを目的としています。

共有持分では債務者本人の持分のみが差押え対象

共有不動産の場合、債務者が所有する持分のみが差押えの対象となります。これは、他の共有者の権利を保護するためです。

例えば、AとBが50%ずつ所有する不動産があり、Aに債務がある場合、債権者はAの50%の持分のみを差し押さえることができます。Bの持分は差押えの対象外となり、Bの権利は保護されます。

ただし、固定資産税の滞納の場合は例外で、共有者全員に連帯納付義務があるため、不動産全体が差押えの対象となる可能性があります

差押えられた持分は、通常、競売にかけられますが、共有持分のみの競売は買主が限られるため、一般的な不動産競売よりも安値で落札されることが多いです。

 

共有持分が差し押さえられる原因

では、共有持分はどのようなケースで差し押さえられるのでしょうか。代表的なものとしては、次のシチュエーションが挙げられます。

  • 原因①:住宅ローンの返済を数か月滞納した
  • 原因②:固定資産税がが長期間未納になった
  • 原因③:個人間の借金を返済しなかった
  • 原因④:交通事故の損害賠償金を支払わなかった

それぞれ詳しく解説します。

原因①:住宅ローンの返済を数か月滞納した

住宅ローンの返済を数か月滞納すると、金融機関が差押え手続きを開始する可能性が高くなります。例えば、Aさんが共有マンションの住宅ローンを6か月間滞納し続けたケースを考えてみましょう。

通常、金融機関は滞納が3〜4か月続くと、督促状の送付や電話連絡などの対応を強化します。それでも返済が行われない場合、金融機関は法的手続きに移行し、最終的にAさんの共有持分を差し押さえる可能性があります。

住宅ローンの場合、多くは抵当権が設定されているため、金融機関は比較的速やかに差押え手続きを進めることができます。

この状況を避けるためには、返済が困難になった時点で早めに金融機関と相談し、返済計画の見直しや任意売却などの対策を検討することが重要です。

原因②:固定資産税が長期間未納になった

固定資産税の長期未納は、自治体による差押えのリスクを高めます。Bさんが実家の土地を兄弟で共有していたが、数年間固定資産税を払わなかったケースを例に挙げましょう。

固定資産税は毎年課税される地方税で、通常、1年目の滞納で督促状が送られ、その後も未納が続くと催告書が送付されます。それでも支払いがない場合、自治体は差押え手続きを開始することができます。

固定資産税の場合、共有者全員に連帯納付義務があるため、Bさんの持分だけでなく、不動産全体が差押えの対象となる可能性があります。

このような事態を避けるためには、共有者間で税金の支払い責任を明確にし、定期的に納税状況を確認することが重要です。また、支払いが困難な場合は、早めに自治体に相談し、分割納付などの対応を検討することをおすすめします。

原因③:個人間の借金を返済しなかった

個人間の借金を返済しなかった場合、債権者が法的手段を講じて差押えに至るケースがあります。Cさんが友人から100万円を借りたが、約束の返済日を過ぎても返済しなかった事例を考えてみましょう。

このような場合、まず債権者(友人)は裁判所に訴えを起こし、勝訴判決を得る必要があります。判決が確定した後、債権者は債務名義を取得し、それを基に執行裁判所に強制執行の申立てを行います。その結果、Cさんの共有アパートの持分が差し押さえられる可能性があります。

個人間の借金の場合、通常は抵当権などが設定されていないため、住宅ローンの場合と比べて差押えまでの過程が長くなりがちです。

このような事態を避けるためには、借金をする際に返済計画を慎重に立て、困難が生じた場合は早めに債権者と相談し、分割返済などの対応を検討することが重要です。

原因④:交通事故の損害賠償金を支払わなかった

交通事故の損害賠償金を支払わなかった場合も、被害者が法的手段を講じて差押えに至る可能性があります。Dさんが交通事故を起こし、相手に怪我をさせたケースを考えてみましょう。

示談で損害賠償金の支払いに合意したにもかかわらず、Dさんが約束を守らなかった場合、被害者は裁判所に訴えを起こすことができます。裁判で勝訴した場合、被害者は判決に基づいてDさんの財産、この場合は共有持分を差し押さえる手続きを取ることができます。

交通事故の損害賠償金の場合、示談書や判決文が債務名義となり、これを基に強制執行が行われます。このような事態を避けるためには、事故発生時に適切な保険に加入していることが重要です。

また、支払いが困難な場合は、早めに被害者や弁護士と相談し、分割払いなどの対応を検討することが賢明です。

 

自身の共有持分が差し押さえられそうな場合の対処法

共有不動産の持分に差押えのリスクが生じた場合、放置すれば他の共有者との関係や不動産そのものの価値に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

適切な対処法を講じるには、「不動産を手放すのか」「今後も所有を続けたいのか」というスタンスを明確にすることが出発点となります。

ここでは、所有を継続する場合に考えられる具体策を整理します。

【不動産を所有し続けたい場合】

他の共有者に持分を買い取ってもらう

差押えを回避する方法の一つは、債務者本人が他の共有者に自身の持分を買い取ってもらうことです。

その際、債務を肩代わりしてもらう形で合意することも可能です。この方法は、共有者側にとっても不特定の第三者が新たな共有者になる事態を防ぐ手段となり得ます。交渉にあたっては、持分の時価評価や支払条件を事前に整理しておくことが重要です。

ローンのリスケジュール(返済条件変更)を申し入れる

債務が住宅ローンや事業資金等で金融機関との契約に基づくものである場合、返済条件の変更(リスケジュール)を求めることで、差押えを回避できる場合があります

たとえば、返済期間の延長や一時的な元本据え置きなどの措置が典型です。早期の相談が前提となるため、返済の遅延が見込まれる段階で速やかに金融機関に連絡を取りましょう。

相続財産である場合は、遺産分割協議で整理する

共有状態が相続に起因している場合、遺産分割協議を通じて持分の整理を図ることで、差押えの回避や将来的なトラブル防止につながります

協議の結果、債務者の持分を他の相続人に集約することができれば、名義変更後に売却や資金化も視野に入ります。なお、遺産分割後には相続登記や税務対応が必要になるため、関係者とともに速やかに手続きを進める必要があります。

関連記事:遺産分割協議書とは?共有持分を遺言書なしで相続する場合に必要な理由

【不動産を手放す場合】

任意売却を選択し、債務を整理する

返済が困難な状態にある場合、差押えを受ける前に「任意売却」を検討することで、より有利な条件で持分を処分できる可能性があります。任意売却とは、債権者(主に金融機関)と合意のうえで債務者が自ら不動産を売却し、その売却代金を返済に充てる方法です。

特に共有持分は市場での流動性が低いため、専門の買取業者などを通じて迅速に手続きを進める必要があります。競売よりも売却価格が高くなりやすいことから、債務者・債権者双方にとってメリットがある手段といえるでしょう。

関連記事:共有持分を任意売却する方法を徹底解説!メリット・デメリットについても詳しく紹介

共有者と相談して全体売却を進める

共有者全員の同意が得られる場合、不動産全体を売却し、その売却代金を債務返済に充てる方法も有効です。

この方法であれば、第三者に持分のみを売却するよりも高値での取引が期待でき、共有関係も解消されるため、他の共有者にとっても利点があります。

ただし、共有者の同意形成が前提条件となるため、事前に事情を説明し、信頼関係を損なわないよう配慮したうえで協議を進めることが求められます。具体的な売却方法や分配割合についても、専門家を交えて合意形成を図るのが望ましいです。

関連記事:共有持分の売却は「買取」「仲介」のどちらにするべき?

 

共有持分を差し押さえられた場合の影響

共有者の持分が差し押さえられると、共有不動産全体にさまざまな影響が及ぶ可能性があります。これは、共有不動産の性質上、各共有者の権利が互いに密接に関連しているためです。

差し押さえによって生じる影響は、共有者間の関係性や不動産の利用状況によって異なりますが、以下のものが挙げられます。

  • 第三者との共有状態になりかねない
  • 不動産の管理・処分が困難になる
  • 共有物分割請求を受ける可能性もある

それぞれ個別にみていきましょう。

第三者との共有状態になりかねない

共有者の持分が差し押さえられ、競売にかけられると、その持分を第三者が落札する可能性があります。これにより、それまで家族や知人間で共有していた不動産が、突如として見知らぬ第三者との共有状態になるリスクがあります。

例えば、兄弟で共有していた実家の土地について、兄の持分が差し押さえられ、不動産投資会社が落札した場合、弟は投資会社と共有関係になります。

この状況では、不動産の利用や管理について新たな共有者との調整が必要となり、これまでのように自由に不動産を使用することが難しくなる可能性があります

また、新たな共有者が不動産の売却や分割を求めてくる可能性もあり、長期的な不動産の保有や利用計画に大きな影響を与える可能性があります。

不動産の管理・処分が困難になる

共有不動産の管理や処分には、原則として共有者全員の合意が必要です。第三者が新たな共有者となった場合、この合意形成が極めて困難になる可能性があります。

例えば、不動産の修繕や改築、賃貸、売却などの重要な決定を行う際に、新しい共有者の同意を得るのが難しくなる可能性があります。特に、投資目的で持分を取得した第三者の場合、他の共有者とは異なる利害関係を持っている可能性が高く、意見の対立が生じやすくなります。

また、共有者間の信頼関係が損なわれることで、日常的な管理についても支障が出るリスクも懸念されます。このような状況は、不動産の価値低下や、共有者間のさらなる紛争につながる恐れがあります。

関連記事:共有不動産の管理費用の分担方法とは?費用を払わない共有者がいる場合の対応手段について

共有物分割請求を受ける可能性もある

新たな共有者、特に投資目的で持分を取得した第三者は、共有物分割請求を行う可能性があります。共有物分割請求とは、共有関係を解消し、各共有者が単独で所有権を持つ状態にすることを求める法的手続きです。

これが行われると、「不動産の現物分割(物理的に分割する)」「競売分割(競売にかけて売却代金を分配する)」「価格賠償(一部の共有者が他の共有者の持分を買い取る)」のいずれかの方法で共有関係が解消されることになります。

例えば、家族で代々受け継いできた土地について、新たな共有者が分割請求を行った場合、家族の意思に反して土地を手放さざるを得なくなる可能性があります。

このような事態は、残りの共有者にとって経済的・精神的に大きな負担となる可能性が高く、慎重な対応が求められます。

関連記事:共有物分割請求とは?請求方法や流れを解説

 

差押えリスクのある物件も「ワケガイ」にご相談ください!

当社(株式会社ネクスウィル)は、共有名義や持分不動産といった複雑な背景を抱える物件に対応するサービス「ワケガイ」を提供しています。

たとえば「共有者の債務で持分が差し押さえられた」「知らない第三者が共有者になってしまった」といったケースは、通常の売却が難航することも少なくありません。

ワケガイでは、法務・税務の専門家と連携しながら、こうした状況でも対応可能な選択肢をご提案しています。

まずは、お気軽に無料のお問い合わせをご活用ください。

 

まとめ

共有持分の差押えは、当事者だけでなく他の共有者にも影響を及ぼし、思わぬトラブルに発展する可能性があります。差押えの背景には、住宅ローンの滞納や税金の未納、損害賠償の不履行など、さまざまな事情が潜んでいます。

第三者との予期しない共有や、管理・処分の難航といった事態を防ぐためには、早期の情報共有と冷静な対応が不可欠です。債務状況や名義の整理を後回しにせず、共有者間で定期的に状況を確認しておくことが、将来的なリスクの回避につながります。

「まだ大丈夫」と思わず、気になる兆候がある場合は、早めに対応策を検討するようにしましょう。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

川村 有毅(司法書士)

私が司法書士になる前は、接客サービス・営業等、お客様と直に接する仕事に長く携わってきました。
そこから、お客様とのコミュニケーションを事務的にせず、お話をしっかりと拝聴し、問題を共有することの大切さを学びました。
お客様と接する機会をもっと重要視し、人と人とのつながりを大切にします。
お客様に人の手のぬくもりが感じられる「あたたかな安心」を提供いたします。

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