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不動産を購入する際には、売買代金以外にもさまざまな諸費用がかかります。特に見落としがちなのが、不動産取得後に納付する必要がある不動産取得税です。
不動産取得税とは、土地や建物を取得した際に一度だけ課される税金のこと。税率は原則4%と高めに設定されていますが、2027年3月末までの特例措置やさまざまな軽減制度を利用することで、大幅な節税が可能です。
しかし、これらの制度は適切な申請手続きを行わないと受けられません。
本記事では、不動産取得税の基本的な仕組みから、計算方法や支払い時期、軽減措置の申請方法まで、初めての方にもわかりやすく解説します。
目次
不動産取得税とは
不動産取得税は、土地や建物など不動産の取得時に一度だけ課される都道府県税です。購入価格に関係なく、固定資産税評価額をもとに算出された金額に税率を掛けて計算されます。
税率は原則4%で設定されていますが、2027年3月31日までに取得した住宅用の土地・建物については3%に軽減される特例が適用されます。この税金は取得方法を問わず課税されるため、売買だけでなく、贈与や交換、建物の新築など、さまざまなケースで納税義務が生じます。
課税対象となる不動産の種類
課税対象となる不動産は以下のように分類されます。
<土地の場合>
- 住宅地、商業地、工業地などの宅地
- 田んぼ、畑などの農地
- 山林、原野、牧場
- 温泉地、鉱泉地
- 池沼、埋立地
<建物の場合>
- 住宅(一戸建て、マンション、アパート)
- 店舗、事務所
- 工場、倉庫
- 車庫、物置などの付属建物
特に注意が必要なのは、建物の増改築です。工事によって価値が上がった部分は新規取得とみなされ、その部分について課税対象となります。
また、マンションの共有持分を取得した場合や、土地の共有持分が変更された場合も、その持分について課税されます。
非課税・免税になるケース
非課税や免税となる主なケースは、大きく分けて以下の3つです。
相続による取得 | 法定相続人が相続によって不動産を取得した場合は非課税となる。ただし、遺言による遺贈で法定相続人以外が取得した場合は、課税対象となるため注意が必要。 包括遺贈の場合は、法定相続人以外でも非課税。 |
少額物件の取得 | 取得した不動産の価格が一定額に満たない場合は、免税点制度により課税されない。具体的な基準は以下のとおり。
|
国や地方公共団体による取得 | 公用または公共用に供する目的で、国や地方公共団体が取得する不動産は非課税となる。この場合、取得後の用途が重要な判断基準。 |
なお、複数の土地や建物を1年以内に取得した場合は、取得額が合算して判断されます。
そのため、それぞれの取得額が免税点以下でも、合計額が基準を超えると課税対象となる可能性があります。このような細かな規定も把握しておくことで、想定外の課税を防ぐことができます。
不動産取得税の計算方法
不動産取得税を算出する際に重要なのは、実際の取引価格ではなく固定資産税評価額を基準とする点です。
この評価額は一般的に実勢価格より低く設定されており、土地では7割程度、建物では5~6割程度が目安となっています。そのため、購入価格が高額でも、実際の税額は想定より抑えられる可能性があります。
基本的な計算式と税率
不動産取得税の基本的な計算式は「固定資産税評価額×税率」です。税率は原則4%ですが、2027年3月31日までに取得した住宅用の土地・建物については3%に軽減されています。
ただし、土地については宅地評価土地の特例により、さらに評価額が2分の1に減額されます。
そのため、実質的な計算式は「土地の評価額 × 1/2 ×3%」となります。この特例により、土地にかかる税負担は大幅に軽減されることになります。なお、この計算式は基本となるものであり、後述する各種軽減措置を適用することで、さらに税額を抑えることも可能です。
固定資産税評価額の調べ方
固定資産税評価額は、毎年1月1日時点で市区町村が評価し、3年ごとに見直される公的な価格です。この金額を知るには主に3つの方法があります。
- 市区町村から毎年5月頃に送付される固定資産税の納税通知書で確認する。
- 市区町村の窓口で固定資産課税台帳を閲覧する。
- 固定資産評価証明書を取得する。
新規に不動産を取得する場合は、不動産会社や売主に評価額を確認することも一般的です。
【新築・中古別】具体的な計算例
新築マンション(評価額3,000万円)と中古マンション(評価額2,000万円、1990年築)の計算例を見てみましょう。新築の場合、住宅部分の価格から1、200万円が控除され、「(3,000万円-1、200万円)×3%=54万円」となります。
一方、中古の場合は築年数に応じた控除額が適用され、この場合1,000万円の控除となるため、「(2,000万円-1,000万円)×3%=30万円」と計算されます。
土地部分については、両者とも同じ計算方法が適用されます。例えば評価額2,000万円の土地であれば、まず評価額が2分の1になり、「2,000万円×1/2×3%=30万円」が基本税額となります。
そこからさらに住宅の床面積に応じた控除が適用されるため、最終的な税額はこれより低くなるのが一般的です。
支払いのタイミングと方法
不動産取得税の支払い時期は、住民税や固定資産税のように定められた期日はありません。
各都道府県の税務事務所から納税通知書が送付された後、そこに記載された期限までに納付する仕組みとなっています。
賢明な不動産購入を実現するためには、この税金の支払い時期を見据えた資金計画を立てることが欠かせません。
納税通知書が届くまでの流れ
新築住宅を取得した場合、一般的に取得(登記)した翌年の4月頃に納税通知書が届きます。物件によっては取得から1年以上経過してから通知が来ることもあるため、その間の資金繰りを考慮に入れる必要があります。
一方、中古住宅や土地の場合は比較的早く、取得から2~3ヶ月程度で納税通知書が届くのが通例です。
都道府県によっては、納税通知書の発送前に「不動産取得税の課税についてのお知らせ」というハガキが送られてくることもあり、これにより具体的な支払い時期の目安を把握することが可能です。
具体的な支払い方法と期限
納税通知書が届いてからの支払い期限は、通常1ヶ月程度と設定されています。支払い方法は自治体によって多様な選択肢が用意されており、従来の金融機関窓口や郵便局での支払いに加え、近年はコンビニ納付やスマートフォン決済アプリ、クレジットカード決済なども利用可能です。
例えば東京都の場合、毎月7日頃に納税通知書を発送し、支払期限は原則として発送月の月末までとなっています。
このように、各都道府県で運用方法が異なるため、自治体のウェブサイトや納税通知書で確認することをおすすめします。
期限を過ぎた場合の対応
納付期限を過ぎてしまった場合、延滞税が課されます。延滞税は納期限の翌日から起算して2ヶ月を経過する日までは年7.3%、それ以降は年14.6%という高額な税率となります。
最悪の場合、延滞が続くと財産の差し押さえなどの滞納処分を受ける可能性もあります。ただし、一時的な資金不足や特別な事情がある場合は、納税課への相談により分割納付が認められる可能性も懸念されます。
また、納期限前であれば、期限の延長を申請することも可能です。重要なのは、支払いが困難な状況に陥りそうな場合、早めに税務事務所に相談することです。このような誠実な対応が、柔軟な解決策を見出すためのカギとなります。
申請時の注意点と必要書類
不動産取得税の軽減措置を受けるためには、管轄の都道府県税事務所への申告が欠かせません。この手続きを怠ると、数十万円規模の税負担が発生する可能性もあります。
特に注意したいのは、不動産会社や税理士が自動的に手続きを行ってくれるわけではないという点です。取得者自身が期限内に必要書類を揃えて申請する必要があります。
近年は郵送やオンラインでの申請も認められている自治体が増えていますが、対面での申請の場合は、事前に税務事務所の窓口の混雑状況を確認しておくと安心です
申請に必要な書類リスト
必要書類は物件の種類や状況によって異なりますが、基本的な書類は以下のとおりです。
基本となる書類 |
| |
物件の種類別に追加で必要な書類 | 新築住宅の場合 |
|
中古住宅の場合 |
|
申請の期限と手続きの流れ
申請期限は、不動産を取得した日から原則60日以内とされています。ただし、都道府県によって異なる場合があり、東京都や大阪府などの大都市圏では30日以内となっているケースも少なくありません。
<申請の基本的な流れ>
- 手順1:申告書の入手
- 手順2:自治体の窓口で直接受け取るか、各都道府県のWebサイトからダウンロード
- 手順3:必要事項の記入(例:取得者の氏名、住所、物件情報など)
- 手順4:添付書類の準備
- 手順5:前述の必要書類を揃える(原本の提示を求められる場合もあり)
- 手順6:申請書の提出
- 手順7:窓口への持参、郵送、オンライン申請のいずれかの方法で提出
- 手順8:審査・受理
- 手順9:税務事務所での書類審査を経て受理
申請が受理されると、後日、納税通知書が送付されます。ただし、納税通知書が届く前に軽減措置の適用漏れに気付いた場合は、すぐに税務事務所に相談することをおすすめします。
多くの場合、納税前であれば事後的な申請も認められています。早めの確認と対応が、余計な税負担を防ぐポイントとなります。
不動産取得を節税できる軽減措置とは
不動産取得税にはさまざまな軽減措置が設けられており、 適切に申請することで大幅な節税が可能です。
これらの制度は不動産の種類や取得時期によって異なりますが、 最も基本的なものが2027年3月末までの税率引き下げです。
住宅用の土地・建物については、 原則4%から3%に軽減されます。加えて、 新築・中古・土地それぞれに独自の控除制度が設けられており、 これらを組み合わせることでさらなる節税効果が期待できます。
新築住宅で受けられる軽減措置
新築住宅の場合、 以下の要件を満たせば評価額から1,200万円が控除されます。
<基本的な要件>
- 床面積が50㎡以上240㎡以下
- 個人の居住用またはセカンドハウス用の住宅
- 2027年3月31日までに取得
特に注意したいのが長期優良住宅認定を受けた物件です。認定住宅の場合、 控除額が1、300万円に増額されます。これは通常の控除額に100万円が上乗せされる形となり、 税額にして3万円の追加軽減となります。
長期優良住宅の認定を受けるには耐震性や省エネ性などの基準を満たす必要がありますが、 取得後の維持管理計画も重視されます。
中古住宅で受けられる軽減措置
中古住宅の軽減措置は、 新築時期によって控除額が変動する仕組みとなっています。
<築年数別の控除額>
- 1997年4月1日以降に新築:1,200万円
- 1989年4月1日~1997年3月31日:1,000万円
- 1985年7月1日~1989年3月31日:450万円
- 1981年7月1日~1985年6月30日:420万円
- 1976年1月1日~1981年6月30日:350万円
ただし、 1981年以前に建築された住宅については、 新耐震基準への適合証明が必須となります。この証明には建築士による耐震診断が必要で、 取得前2年以内に調査を行ったものでなければなりません。リフォームによって耐震性を確保した場合も、 適切な証明書があれば軽減措置の対象となります。
土地取得時の軽減措置
土地の軽減措置は複数の制度が重層的に適用される仕組みとなっています。
<主な軽減の仕組み>
宅地評価土地の特例 | まず評価額が2分の1に減額される。 |
税率の軽減 | 2027年3月末までは3%の軽減税率が適用される。 |
住宅の床面積に応じた控除 | 以下のいずれか高い金額が控除される。
(※上限200㎡) |
ただし、これらの軽減措置を受けるには土地と建物の取得時期に注意が必要です。
<取得時期の条件>
- 土地を先に取得:3年以内に住宅を新築
- 住宅を先に取得:1年以内に土地を取得
- 同時取得:問題なし
この期間を超えると軽減措置を受けられなくなるため、 住宅建築や土地購入の計画段階から意識しておく必要があります。マンションの場合は、 専有面積に加えて共用部分の持分面積も床面積に含められる点も覚えておきましょう。
不動産取得税と確定申告
不動産取得税は、確定申告においてさまざまな形で関係してきます。住宅ローン控除の適用を受ける場合の諸費用としての取り扱いや、事業用・投資用不動産として取得した際の経費計上など、状況に応じて適切な処理が必要です。確定申告での取り扱いを正しく理解することで、税負担の適正化を図ることができます。
住宅ローン控除との関係性
不動産取得税は、住宅ローン控除を受ける際の「住宅の取得等に係る費用」に含まれます。この費用は住宅ローン控除の限度額を計算する際の基準となる重要な要素です。具体的には、土地や建物の購入価格に加えて、不動産取得税や登録免許税などの諸費用を合算した金額が対象となります。
ただし注意すべき点として、住宅ローン控除を受けるためには、これらの費用を住宅ローンで借り入れている必要があります。自己資金で不動産取得税を支払った場合は、住宅ローン控除の対象とはなりません。
そのため、住宅ローンの借入額を検討する際は、不動産取得税などの諸費用も含めて計画を立てることが賢明です。
経費計上のポイント
事業用や投資用として不動産を取得した場合、不動産取得税は取得費用の一部として経費計上することができます。ただし、その計上方法は不動産の用途や会計処理方法によって異なります。
個人事業主の場合、不動産取得税は固定資産の取得価額に算入して減価償却を行うか、支払時に必要経費として一括計上するか選択できます。
一方、不動産賃貸業を営む場合は、一般的に取得価額に算入して減価償却を行う方法が採用されます。
特に注意が必要なのは、居住用と事業用の併用物件です。この場合、居住用部分と事業用部分の床面積比などで按分し、事業用部分に対応する不動産取得税のみを経費として計上することになります。
還付申告のケースと手続き
不動産取得税の納付後に、過払いや誤納付が判明した場合は、還付申告を行うことで税金の還付を受けることができます。具体的には以下のようなケースが考えられます。
<還付申告が必要となる主なケース>
- 軽減措置の申請漏れがあった場合
- 評価額の計算に誤りがあった場合
- 非課税物件であることが後から判明した場合
- 二重に納付してしまった場合
還付申告の期限は、納付した日から5年以内とされています。申請には「不動産取得税還付請求書」のほか、納付証明書や誤りを証明する資料などが必要です。還付金の受取口座も指定する必要があるため、通帳のコピーなども用意しましょう。
還付申告が認められると、還付加算金(延滞税と同様の利率)も合わせて支払われます。ただし、単純な計算ミスなど、納税者側の責任による過払いの場合は、還付加算金は付かないことがあります。
不動産取得税と同時期に発生する税金
不動産を取得する際には、不動産取得税以外にもいくつかの税金が発生します。これらの税金は支払い時期や計算方法が異なるため、事前に把握しておくことで資金計画を適切に立てることができます。
特に、契約時、登記時、取得後と、タイミングによって必要となる税金が変わってくるため、時系列での整理が重要です。
登録免許税
登録免許税は不動産の所有権を登記する際に必要な税金です。不動産取得税が取得後に納付するのに対し、登録免許税は登記の申請時に納付する必要があります。
<登録免許税の計算方法>
- 土地:固定資産税評価額×1.5%
- 建物(新築):固定資産税評価額×0.4%
- 建物(中古):固定資産税評価額×2.0%
ただし、住宅用の土地・建物については、一定の要件を満たせば軽減措置が適用されます。例えば、新築住宅の場合は建物の税率が0.15%に軽減されます。この軽減措置は不動産取得税の軽減措置とは別個の制度であり、それぞれの要件を確認する必要があります。
印紙税・消費税
印紙税は不動産売買契約書の作成時に必要となる税金です。契約書の金額に応じて税額が決まり、1万円から20万円まで段階的に設定されています。
<印紙税額の例>
- 5,000万円以下:1万円
- 5,000万円超1億円以下:5万円
- 1億円超5億円以下:10万円
一方、消費税は新築物件の購入時や建築時にのみ課税されます。中古物件の売買には原則として課税されません。消費税は建物部分にのみ課税され、土地部分には課税されないことも重要なポイントです。
2023年10月以降は、住宅の税率は10%となっています。ただし、一定の要件を満たす場合は、住宅ローン減税などの優遇措置を受けることができます。
固定資産税の按分と精算方法
固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に対して課税される税金です。不動産取得の際には、その年度の固定資産税を売主と買主で期間按分して精算するのが一般的です。
<精算額の計算方法>
- その年度の固定資産税額を確認
- 1日あたりの税額を計算(年税額÷365日)
- 未経過日数分を計算(1日あたりの税額×取得日から次の3月31日までの日数)
例えば、年間の固定資産税が12万円の物件を9月1日に取得した場合、以下のように精算できます。
- 1日あたりの税額:12万円÷365日=約329円
- 未経過日数:212日(9月1日~翌年3月31日)
- 精算額:329円×212日=約69、748円
この精算額は、通常、売買代金と一緒に決済時に精算されます。なお、マンションの場合は、管理費や修繕積立金なども同様に期間按分による精算が必要となります。
まとめ
不動産取得税は一見複雑に思えますが、基本的な仕組みを理解し、適切な手続きを行えば、かなりの節税効果が期待できます。特に軽減措置の申請は、税額を大きく左右する重要な手続きとなります。
申請期限を過ぎてしまうと本来受けられるはずの軽減が受けられなくなる可能性もあるため、不動産取得後は速やかに手続きを進めることが重要です。
不明な点がある場合は、管轄の税務事務所に相談することをおすすめします。また、物件購入前の段階から不動産取得税について知っておくことで、より適切な資金計画を立てられるでしょう。