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将来の相続対策として不動産の贈与を検討するケースは多いものの、税金の計算が複雑で思わぬ追加コストが発生したり、贈与の方法を誤って税負担が増えたりするといった問題が起こりがちです。その際に把握しておくべきなのが不動産の贈与税制度です。
贈与税制度は、贈与方法や贈与を受ける人との関係によって税率が異なり、特例措置も複数用意されています。
不適切な贈与方法を選択すると、予想以上の税負担が生じたり、将来の相続税対策に影響を及ぼしたりするリスクがあります。
そこで本稿では、不動産の贈与税の計算方法から節税のポイント、具体的な事例までを詳しく解説します。
目次
不動産の贈与税の基本知識
贈与税は、個人から財産をもらった際に課される税金です。親から子へ土地を無償で譲り受けたり、配偶者から建物の名義変更を受けたりした場合に発生します。贈与者が生存中に財産を移転することから、「生前贈与」とも呼ばれています。
相続と異なり、贈与は財産を受け取った人に課税されます。そのため、贈与を受ける側は納税資金の準備が欠かせません。贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに申告と納税を済ませる必要があり、期限を過ぎると加算税などのペナルティが科されます。
贈与税の計算方法
不動産の贈与税を計算するには、まず土地や建物の価値を正確に評価する必要があります。贈与税の計算に用いる不動産の評価方法は相続税と同様で、路線価や固定資産税評価額を基準とします。
例えば、土地は路線価に面積を乗じて評価額を算出します。一方、建物は固定資産税評価額がそのまま評価額となります。このように算出された評価額から基礎控除額110万円を差し引き、その金額に税率を掛けて贈与税額を計算します。
贈与税の税率の種類
贈与税の税率は、贈与を受ける人と贈与する人の関係によって2種類に分かれます。直系尊属から18歳以上の人が贈与を受ける場合は「特例税率」が適用され、それ以外は「一般税率」となります。
特例税率は一般税率と比べて低く設定されており、例えば課税価格が300万円の場合、一般税率では20%、特例税率では15%と5ポイントの差が生じます。
このように親や祖父母からの贈与は税負担が軽減される仕組みになっているため、世代間の資産移転を促進する効果があります。
贈与税の課税方式を比較
贈与税の課税方式には暦年課税と相続時精算課税の2種類があります。制度の特徴を理解することで、より適切な資産移転が可能になります。特に不動産のような高額資産の贈与では、課税方式の違いが税負担に大きく影響します。
暦年課税方式の特徴
暦年課税方式は、毎年110万円までの基礎控除を利用できる一般的な贈与の方法です。1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与財産の合計額から、110万円を差し引いた金額に対して課税されます。
この制度の最大の利点は、基礎控除を毎年使えることです。例えば3,000万円の不動産を贈与する場合、持分を分割して毎年110万円ずつ贈与すれば、贈与税を抑えながら資産を移転できます。
ただし、贈与が完了するまでの間、不動産は贈与する人と受け取る人の共有名義となるため、その間の管理や修繕などについて事前の取り決めが重要になります。
相続時精算課税方式の特徴
相続時精算課税方式は、60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与に限り選択できる特別な制度です。2024年1月からは年間110万円の基礎控除に加え、2,500万円までの特別控除が認められています。
<制度活用のイメージ>
- 贈与財産:3,000万円の不動産
- 基礎控除:110万円
- 特別控除:2,500万円
- 課税対象:390万円(3,000万円-110万円-2,500万円)
- 贈与税額:78万円(390万円×20%)
この方式の特徴的な点は、将来の相続財産に贈与財産が加算される点です。そのため、将来の相続税も見据えた計画が必要になります。一方で、不動産価値が上昇傾向にある地域では、現在の評価額で贈与できるメリットがあります。
都心部の不動産や再開発が予定されているエリアの物件では、この制度を検討する価値があるでしょう。
不動産の贈与税の計算手順
不動産の贈与税を算出するには、以下の手順を踏む必要があります。
- 手順①:不動産の評価方法を確認する
- 手順②:土地の評価額を計算する
- 手順③:建物の評価額を計算する
- 手順④:贈与税の課税価格を算出する
- 手順⑤:適用する税率を決定する
- 手順⑥:贈与税額を計算する
それぞれ個別にみていきましょう。
手順①:不動産の評価方法を確認する
不動産の種類によって評価方法は大きく異なります。土地の場合、路線価が定められている地域では路線価方式、それ以外の地域では倍率方式を採用します。国税庁のWebサイトで路線価図を確認し、該当する評価方法を特定します。
建物は固定資産税評価額をもとに評価します。固定資産税評価額は、新築時の建築価額を基準として、経年による減価を考慮して計算されます。この評価額は市区町村の固定資産課税台帳に記載されており、固定資産税評価証明書で確認できます。
証明書の取得には本人確認書類が必要で、市区町村の窓口で200〜400円程度の手数料を支払います。同じ建物でも3年ごとの評価替えで評価額が変動するため、最新の評価証明書を入手することが重要です。
マンションの場合は2024年1月から新たな評価方法が導入され、区分所有建物の階層や築年数に応じた補正も必要です。特に高層階の物件は、従来より評価額が上がる可能性があるため、贈与のタイミングにも注意が必要です。
また、マンションは土地(敷地権)と建物を一体として評価するため、より慎重な計算が求められます。
手順②:土地の評価額を計算する
路線価方式が適用される地域では、国税庁のWebサイトで公開される路線価に基づいて計算します。まず該当する路線価を確認し、それに土地の面積を乗じて基本的な評価額を算出します。
ただし、実際の計算ではさまざまな補正が必要です。不整形な土地や間口が狭い土地では、形状に応じた補正率を乗じます。例えば、間口2メートルの土地では、間口狭小補正や奥行価格補正を加味します。
一方、路線価の設定されていない地域では倍率方式を採用します。この場合、市区町村が定める固定資産税評価額に、国税局長が定める倍率を掛けて評価額を算出します。地域によって倍率は大きく異なるため、正確な確認が欠かせません。
手順③:建物の評価額を計算する
建物の評価額は、市区町村の固定資産課税台帳に登録された価格をそのまま用います。ただし、築年数による減価や大規模改修による価値の変動も考慮する必要があります。
特に賃貸用建物の場合、将来の家賃収入にも影響するため、収益還元的な観点からの検討も求められます。
なお、マンションについては2024年1月からの新評価方法により、階層や眺望による価値の違いも評価額に反映されます。区分所有建物の補正計算は複雑なため、専門家への相談をおすすめします。
手順④:贈与税の課税価格を算出する
評価額が確定したら、土地・建物それぞれの価額を合算します。ここから基礎控除額110万円を差し引いた金額が、贈与税の課税価格となります。同一年中に複数の贈与を受けた場合は、すべての贈与財産を合算して基礎控除を適用します。
2024年からは相続時精算課税制度を選択した場合でも、この基礎控除が利用可能です。
手順⑤:適用する税率を決定する
贈与税率は、贈与を受けた人と贈与者の関係によって2種類に分かれます。
前述のとおり、直系尊属から18歳以上の受贈者への贈与には「特例税率」が適用され、それ以外は「一般税率」となります。課税価格が高額になるほど累進的に税率が上がり、最高で55%に達します。
ただし、配偶者控除など各種の特例制度も用意されているため、適用可能な制度の確認が重要です。
手順⑥:贈与税額を計算する
課税価格に税率を乗じ、控除額を差し引いて最終的な贈与税額を算出します。
<前提条件>
- 土地評価額2,000万円、建物評価額500万円の不動産を親から子(20歳)が贈与を受けた場合。
<計算例>
- 合計評価額:2,500万円
- 基礎控除後の課税価格:2,390万円(2,500万円-110万円)
- 適用税率:45%(特例税率)
- 控除額:265万円
- 贈与税額:809.5万円(2,390万円×45%-265万円)
このように段階を追って計算することで、正確な贈与税額を導き出すことができます。
不動産贈与の節税のポイント
不動産の贈与には、複数の非課税制度が用意されています。これらの制度を賢く組み合わせることで、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。具体的には、以下のようなもの。
- 贈与税の非課税制度を活用できる
- 相続時精算課税制度で2,500万円まで非課税になる
- 配偶者控除で2,000万円まで非課税になる
それぞれ個別にみていきましょう。
贈与税の非課税制度を活用できる
住宅取得等資金の贈与税非課税制度は、親や祖父母から住宅購入資金の援助を受ける際に利用できる制度です。2024年12月末までに契約を結んだ場合、省エネ性能の高い住宅であれば最大1,000万円、それ以外の住宅でも最大500万円まで非課税となります。
この制度を利用するためには、贈与を受けた人が18歳以上で、前年の合計所得が2,000万円以下という条件を満たす必要があります。
土地と建物をセットで購入する場合も対象となるため、子世代の住宅取得を支援する際に有効な制度といえます。ただし、中古住宅の場合は築年数などの要件があるため、購入前に適用可否を確認することが重要です。
相続時精算課税制度で2,500万円まで非課税になる
相続時精算課税制度は、贈与財産の価額が2,500万円までなら贈与税が非課税になる特別な制度です。
2024年からは、この特別控除に加えて年間110万円の基礎控除も適用できるようになりました。つまり、初年度なら最大2,610万円まで贈与税がかからないことになります。
都心部のマンションや一戸建てなど、評価額の高い不動産を一括で贈与する際に効果的です。特に、将来の地価上昇が見込まれる地域の不動産は、現在の評価額で贈与できる点でメリットがあります。
ただし、この制度を選択すると贈与財産は将来の相続財産に加算されるため、相続税の対策も併せて検討する必要があります。
配偶者控除で2,000万円まで非課税になる
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産を贈与する場合に使える制度です。2,000万円までの配偶者控除に加え、110万円の基礎控除も適用できるため、最大2,110万円まで贈与税がかかりません。
この制度は「おしどり贈与」とも呼ばれ、相続税対策として広く活用されています。
例えば、自宅の土地・建物を資産価値の高い配偶者から低い配偶者に贈与することで、将来の相続税を軽減できる可能性があります。住宅ローンの残債がある場合でも、残債を含めた評価額が2,000万円を超えなければ非課税となります。
ただし、贈与後3年以内に贈与を受けた配偶者が亡くなった場合、税務上の優遇措置が受けられなくなる点には注意が必要です。
不動産贈与で注意が必要な贈与税以外の税金やコスト
贈与税の計算だけで安心してはいけません。不動産の贈与には、贈与税以外にもさまざまな税金や諸費用が発生します。具体的には、以下のようなもの。
- 不動産取得税
- 登録免許税
- その他の諸費用
それぞれ個別にみていきましょう。
不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物を取得した際に課される地方税です。贈与税が非課税になる場合でも、この税金は別途発生します。税率は原則として固定資産税評価額の4%ですが、令和9年3月31日までに取得する住宅用の土地・建物については3%に軽減されています。
さらに、土地については評価額の2分の1を課税標準とする特例も設けられています。例えば、固定資産税評価額1億円の土地を贈与で取得した場合、課税標準は5,000万円となり、軽減税率3%を適用すると、不動産取得税は150万円となります。
この税金は、物件が所在する都道府県に納付する必要があります。
登録免許税
登録免許税は、不動産の所有権を移転する際の登記に必要な国税です。贈与による所有権移転登記の場合、固定資産税評価額の2%が課税されます。これに対し、相続による登記では0.4%と大幅に軽減されるため、贈与と相続では5倍もの差が生じます。
高額な不動産の場合、この差額は無視できない金額になります。固定資産税評価額が1億円の不動産なら、贈与では200万円、相続なら40万円の登録免許税となり、160万円もの差が出ます。
この税金は登記申請時に納付する必要があり、登記完了までに用意しなければなりません。
内容 | 税率 |
---|---|
所有権の保存 | 0.4% |
売買または競売による所有権の移転 | 2% |
相続または法人の合併による所有権の移転 | 0.4% |
その他の所有権の移転(贈与・交換・収用等) | 2% |
その他の諸費用
不動産の贈与には、税金以外にもさまざまな費用がかかります。
まず、不動産の評価に必要な固定資産評価証明書の取得費用があります。証明書1通につき300円程度ですが、土地と建物で別々に必要になります。
また、贈与契約書の作成や登記申請は、正確を期すために司法書士に依頼することをおすすめします。
司法書士への報酬は物件の評価額や取引内容によって変動しますが、一般的に10万円から30万円程度が目安です。
さらに、将来のトラブルを防ぐために、贈与契約書には印紙税が必要です。契約書の記載金額に応じて税額が決まり、例えば5,000万円の不動産贈与なら、印紙税は2万円になります。
これらの諸費用は、贈与の時期や方法によって変動する可能性があります。
特に、分割贈与の場合は手続きの回数が増えるため、その分だけ諸費用も膨らむ点も把握しておきましょう。
不動産贈与の具体的な事例
不動産の贈与は、物件の種類や贈与の目的によって最適な方法が異なります。ここでは実際によくある3つのケースを取り上げ、具体的な金額と手順を示しながら解説します。
- 事例①:実家の土地建物を子供に贈与する
- 事例②:賃貸物件を子供に贈与する
- 事例③:マンションを配偶者に贈与する
それぞれ個別にみていきましょう。
事例①:実家の土地建物を子供に贈与する
土地評価額3,000万円、建物評価額1,000万円の実家を60歳の父から30歳の長男へ贈与するケースを考えます。
相続時精算課税制度を活用すると、特別控除2,500万円と基礎控除110万円により、2,610万円まで非課税となります。残りの1,390万円に対して20%の税率が適用され、贈与税は278万円で済みます。
このケースでは、土地と建物を一括贈与せず、まず建物だけを贈与して翌年以降に土地を贈与する方法も検討できます。これにより、不動産取得税や登録免許税の負担を分散させることが可能です。
ただし、建物だけの贈与期間中は、土地の固定資産税は父、建物の固定資産税は長男が負担するため、家族間で十分な話し合いが必要です
事例②:賃貸物件を子供に贈与する
築15年の賃貸アパート(土地評価額5,000万円、建物評価額2,000万円)を父から娘へ贈与するケースです。
この場合、まず建物だけを贈与し、家賃収入を娘に移転する方法が有効です。築年数が経過して建物の評価額が低くなっているため、暦年課税を利用しても贈与税の負担は比較的抑えられます。
土地は当面父が所有し、将来の相続時に小規模宅地等の特例の適用を検討します。この方法により、贈与税と相続税の両方を効果的に抑制できる可能性があります。
なお、建物の贈与後は賃貸経営に関する経費も娘の負担となるため、修繕費用などの資金計画も考慮に入れましょう。
事例③:マンションを配偶者に贈与する
築5年の住居用マンション(評価額4,000万円)を夫から妻へ贈与するケースです。婚姻期間が25年の場合、配偶者控除の特例により2,000万円まで非課税となります。さらに基礎控除110万円も適用できるため、残りの1,890万円に対して贈与税を計算します。
この事例では、マンションの贈与を分割して行うことで、税負担を抑える方法もあります。例えば、最初に2,110万円分の共有持分を配偶者控除と基礎控除を使って贈与し、残りは翌年以降に暦年課税の基礎控除を利用して少しずつ贈与していく方法です。
ただし、2024年からマンションの評価方法が変更されたため、区分所有建物の補正計算にも注意を払う必要があります。
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まとめ
空き家の防犯対策は、建物と資産を守るだけでなく、近隣住民の安全や地域の治安維持にも貢献する重要な取り組みです。しかし、継続的な費用負担や管理の手間、遠方からの対応の難しさなど、さまざまな課題に直面することも事実です。
防犯対策の実施が難しい場合は、賃貸活用や売却といった選択肢も視野に入れることをおすすめします。特に利用予定のない空き家の処遇については、年々進む建物の劣化を考えると、早めの決断が望ましいでしょう。