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不動産を購入したり、相続したり、住宅ローンを組んだりする際には、法務局での登記手続きが必要となります。その際に納める税金が登録免許税です。登録免許税の税率は登記の種類によって異なり、計算方法も複雑なため、多くの人が戸惑いを感じています。
とくに軽減措置の適用を受けるためには、床面積や建築時期といった要件を満たす必要があり、必要書類の準備も重要です。
そこで本記事では、登録免許税の基本から計算方法、軽減措置の活用方法まで、実務的な観点から詳しく解説します。
目次
登録免許税とは
登録免許税は、不動産登記の際に国に納める税金です。法務局で登記簿に所有者の名前を記載したり、権利関係を示したりする際に必要な税金ななっています。
登記の種類による税率の違い
登録免許税の税率は、登記の種類によって大きく異なります。新築住宅の場合、建物の所有権を新しく登記する「所有権保存登記」の税率は0.4%です。一方、中古住宅の購入時などに行う「所有権移転登記」は2.0%となっています。
土地の所有権移転登記も同様に2.0%ですが、2026年3月末までは1.5%に軽減されています。住宅ローンを組む際の抵当権設定登記は0.4%の税率が適用されます。
税率の基準となる金額は、土地・建物の場合は固定資産税評価額、抵当権設定の場合は借入金額です。納税額は、これらの金額に税率を掛けて計算します。なお、実際の取引価格ではなく、固定資産税評価額が基準となる点は重要な特徴といえます。
登録免許税が課税される主な3つのケース
不動産取引において登録免許税は避けて通れない税金です。税率は登記の種類によって異なり、また軽減措置の適用条件も異なります。
ここでは主な3つのケースについて、それぞれの特徴と実務上の注意点を解説します。
- ①:住宅を購入したときの所有権移転登記
- ②:住宅を新築したときの所有権保存登記
- ③:住宅ローンを組むときの抵当権設定登記
それぞれ個別に解説します。
①:住宅を購入したときの所有権移転登記
不動産を購入する際、前所有者から買主へと所有権を移転する登記が必要です。この登記にかかる税率は、土地と建物それぞれで異なります。
土地は2.0%(2026年3月末までは1.5%に軽減)、建物は2.0%です。重要なのは、税額の計算に用いる金額が実際の売買価格ではなく、固定資産税評価額という点。一般的に評価額は取引価格の7割程度とされています。
②:住宅を新築したときの所有権保存登記
新築住宅の建築後、最初に行う登記が所有権保存登記です。これは建物の初めての登記であり、税率は0.4%となります。
土地については、既に所有している場合は登記不要ですが、土地と建物を同時に購入する場合は、前述の所有権移転登記も必要となります。評価額の算定方法は後ほど詳しく解説します。
③:住宅ローンを組むときの抵当権設定登記
住宅ローン利用時は、融資の担保として不動産に抵当権を設定します。この登記にかかる税率は0.4%で、計算の基準となるのは借入金額。
ローンが完済されたときには抵当権の抹消登記が必要となりますが、これは不動産1件につき1,000円の定額です。軽減措置の活用方法については後述します。
登録免許税の計算例
登録免許税は住宅取得時の大きな支出項目となります。新築・中古で税率が異なり、具体的な計算例を見ながら理解を深めていきましょう。
登録免許税は次の計算式で算出します。
- 登録免許税額 = 課税標準額 × 税率
課税標準額は登記の種類によって異なります。
- 土地・建物:固定資産税評価額(取引価格の約7割が目安)
- 抵当権設定:借入金額(住宅ローンの場合)
主な税率は以下のとおりです。
<建物の登記>
内容 | 税率 |
---|---|
所有権の保存 | 0.4% |
売買または競売による所有権の移転 | 2% |
相続または法人の合併による所有権の移転 | 0.4% |
その他の所有権の移転(贈与・交換・収用等) | 2% |
新築住宅を購入する場合の計算例
4,000万円の新築一戸建てを、3,000万円の住宅ローンで購入するケースを見てみましょう。固定資産税評価額を土地2,000万円、建物1,500万円と仮定します。
<登録免許税の計算(軽減税率適用時)>
- 土地の所有権移転登記:2,000万円×1.5% = 30万円
- 建物の所有権保存登記:1,500万円×0.15% = 2.25万円
- 抵当権設定登記:3,000万円×0.1% = 3万円
- 合計:35.25万円
中古住宅を購入する場合の計算例
3,500万円の中古一戸建てを、2,500万円の住宅ローンで購入する場合を計算してみましょう。固定資産税評価額は土地2,000万円、建物1,000万円と想定します。
<登録免許税の計算(軽減税率適用時)>
- 土地の所有権移転登記:2,000万円×1.5% = 30万円
- 建物の所有権移転登記:1,000万円×0.3% = 3万円
- 抵当権設定登記:2,500万円×0.1% = 2.5万円
- 合計:35.5万円
このように中古住宅の場合、建物は「所有権移転登記」となるため、新築時の「所有権保存登記」と比べて税率が高くなります。ただし、いずれの場合も軽減税率の適用により、本則税率と比べて大幅な負担軽減が可能です。
登録免許税の軽減措置を活用しよう
住宅購入時の大きな支出となる登録免許税ですが、一定の条件を満たすと税率が大幅に軽減される制度があります。
2024年度の税制改正では、これらの軽減措置の期限が2027年3月末まで延長されました。この制度をうまく活用することで、初期費用を抑えた住宅取得が可能となります。
軽減措置の種類と概要
現在適用されている主な軽減措置には、土地・建物それぞれの特例があります。土地の所有権移転登記は、通常の税率2.0%が1.5%まで引き下げられます。
この措置は2026年3月末まで有効です。建物については、新築時の所有権保存登記が0.4%から0.15%へ、中古住宅購入時の所有権移転登記は2.0%から0.3%へと大幅に軽減されます。住宅ローン利用時の抵当権設定登記も0.4%から0.1%となります。
これらの建物に関する軽減措置は2027年3月末まで適用可能です。
条件や適用要件を理解する
軽減措置の適用には、いくつかの要件を満たす必要があります。
まず住宅の床面積が50平方メートル以上であることが求められます。この面積はマンションの場合、一般的な広告表示の専有面積とは異なり、登記簿上の床面積を基準とします。
中古住宅の場合は、1982年1月1日以降に建築された物件であることも条件となります。それ以前の建物では、耐震基準適合証明書などの提出が必要。住宅の取得から1年以内に登記を行うことも、軽減措置適用の重要な要件です。
手続きの方法と必要書類
軽減措置を受けるには、登記申請時に「住宅用家屋証明書」の提出が不可欠です。この証明書は物件が所在する市区町村で発行され、床面積や建築時期などの要件を満たしていることを証明します。
証明書の発行には通常1週間程度かかるため、余裕を持った準備が必要です。なお、証明書は登記申請後に提出しても軽減措置は適用されませんので、申請時の添付を忘れないようにしましょう。一般的には、これらの手続きは司法書士が代行してくれます。
登録免許税の軽減措置を活用する恩恵
以上のとおり、軽減措置を活用することで、支払額を大幅に抑えることができます。具体的な恩恵としては、以下のとおり。
- 住宅取得時の負担を軽くできる
- 住宅ローンと組み合わせて計画的に対応できる
それぞれ個別にみていきましょう。
住宅取得時の負担を軽くできる
軽減措置により、登録免許税の実質的な負担は大きく軽減されます。例えば、4,000万円の新築住宅を購入する場合、土地・建物の登記で通常なら60万円程度必要な登録免許税が、軽減措置の適用により約35万円に抑えられます。
この差額の25万円は、引越し費用や家具・家電の購入費用に充てることができ、新生活のスタートをより余裕を持って迎えることができます。
住宅ローンと組み合わせて計画的に対応できる
登録免許税の軽減措置は、住宅ローンの諸費用にも適用されます。住宅ローン借入時の抵当権設定登記の税率は、通常の0.4%から0.1%まで引き下げられます。
3,000万円の住宅ローンを組む場合、12万円の税負担が3万円まで軽減されるため、借入時の諸費用を抑えることができます。この軽減分を頭金に回すことで、より有利な条件での住宅ローン借入が可能となります。
登録免許税の軽減措置を利用する際の注意点
メリットの大きい軽減措置ですが、いくつかの注意点があります。以下の要素を事前に把握し、適切に対応することで、確実に軽減措置の恩恵を受けることができます。
- 軽減措置には期限切れがある
- 床面積などの要件を満たせない場合がある
次項より、詳しく解説します。
軽減措置には期限切れがある
現行の軽減措置は期限付きの制度です。土地の所有権移転登記は2026年3月末まで、建物の登記関連は2027年3月末までとなっています。
これらの期限を過ぎると、本則税率での課税となります。住宅購入を検討している場合は、この期限を意識した計画を立てることが賢明です。
床面積などの要件を満たせない場合がある
軽減措置の適用には、いくつかの要件を満たす必要があります。
<主な要件>
- 床面積が50平方メートル以上
- 自己の居住用であること
- 取得から1年以内の登記
- 中古住宅の場合は1982年1月1日以降の建築(それ以前は耐震基準適合証明が必要)
特に注意が必要なのは床面積要件です。マンションの場合、一般的な広告表示の専有面積とは異なり、登記簿上の床面積で判断されます。
要件を満たさないと判明した場合、予想以上の税負担が生じる可能性があるため、物件選びの段階で十分な確認が必要です。
登録免許税の軽減措置を利用するための流れ
登録免許税の軽減措置は、適切な手順で申請を行うことで確実に適用を受けることができます。手順を間違えると、要件を満たしていても軽減措置を受けられないケースもあるため、しっかりと準備を進めていく必要があります。
具体的には、以下の手順を踏みます。
- 手順1:対象要件の確認とチェック
- 手順2:必要書類の準備と取得
- 手順3:登記申請と納付手続き
それぞれ個別にみていきましょう。
手順1:対象要件の確認とチェック
軽減措置の適用を受けるための第一歩は、購入予定の物件が要件を満たしているかどうかの確認です。新築・中古を問わず、住宅の床面積が50平方メートル以上あることが基本条件となります。
マンションの場合は、広告やパンフレットに記載された面積ではなく、登記簿上の床面積で判断されます。
中古住宅では、1982年1月1日以降に建築された物件であることも要件となりますが、それ以前の物件でも耐震基準適合証明書があれば対象となります。住宅の取得から1年以内に登記を行うことも必須要件です。
これらの要件は、不動産会社や住宅メーカーに事前に確認を依頼するとよいでしょう。
手順2:必要書類の準備と取得
要件を満たすことが確認できたら、次は「住宅用家屋証明書」の取得です。証明書は物件が所在する市区町村で発行されます。申請には建物の図面や、中古住宅の場合は建築時期を証明する書類などが必要です。
証明書の発行には通常1週間程度かかるため、余裕を持って申請することをおすすめします。併せて、固定資産税評価証明書も取得します。
これは登録免許税の計算の基礎となる固定資産税評価額を確認するために必要な書類です。市区町村の窓口で申請できますが、本人確認書類の提示が求められます。
手順3:登記申請と納付手続き
必要書類が揃ったら、いよいよ登記申請です。通常は司法書士に依頼することになります。
司法書士は、住宅用家屋証明書などの必要書類を確認し、軽減税率で計算した登録免許税額を算出します。
納付は、税務署や金融機関で行います。納付書を受け取り、金融機関の窓口で現金を支払うのが一般的。
登録免許税が3万円以下の場合は、収入印紙での納付も可能です。オンラインでの電子納付を利用することもできます。納付後は、領収証書を登記申請書に添付して法務局に提出します。軽減措置の適用には、この一連の手続きを漏れなく行うことが重要です。
なお、登記申請後に住宅用家屋証明書を提出しても軽減措置は適用されませんので、必ず申請時に添付することを忘れないようにしましょう。
まとめ
登録免許税は不動産取得時の大きな支出の1つですが、適切な知識と準備があれば、軽減措置を活用して税負担を抑えることが可能です。
重要なのは、物件探しの段階から床面積などの要件を確認し、取得後1年以内の登記を計画的に進めること。
住宅用家屋証明書は登記申請時に必須となるため、市区町村での発行手続きも早めに済ませましょう。
いずれにせよ、不動産購入の予算計画を立てる際は、登録免許税も含めた登記にかかる諸費用を考慮に入れることが大切です。