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築年数が古い住宅では、大地震の際に倒壊するリスクが高まり、家族の命が危険にさらされる可能性があります。そこで検討すべきなのが耐震補強工事です。耐震補強工事とは、建物の強度を上げ、地震に対する安全性を確保するための改修工事のこと。
ただし、工事費用は平均150万円前後と高額なため、補助金制度の活用や施工方法の選択が重要になります。
本記事では、築年数や床面積による費用相場、効果的な補強方法、補助金の活用方法、信頼できる業者の選び方について詳しく解説します。
目次
耐震補強工事の費用相場を知ろう
築年数が長い家屋の耐震補強を検討する際、多くの方が「いったいいくらかかるのだろう」と不安を感じています。
実際の工事費用は建物の状態や工法によって大きく異なりますが、まずは目安となる相場を押さえておくことで具体的な計画を立てやすくなります。
築年数・床面積別の具体的な費用相場
一般的な木造住宅の耐震補強工事費用は、平均で150万円前後となっています。ただし、築年数や床面積によって大きな差が生じます。
日本木造住宅耐震補強事業者協同組合の調査によると、築40年以上の住宅では平均180万円程度、築20年前後の住宅では140万円程度と、築年数による価格差が明確に表れています。
一方、床面積が広くなるほど補強箇所も増えるため、施工費用も上昇傾向にあります。80㎡未満の住宅では平均130万円程度ですが、100㎡を超えると200万円以上かかるケースも珍しくありません。
補強方法別の工事費用と特徴
耐震補強工事には主に3つの方法があります。最も一般的な「耐力壁補強工事」は、筋交いや耐震パネルを設置して建物の強度を高める方法で、1箇所あたり5~20万円が目安です。
屋根を軽量化する工事は80~150万円ほどかかりますが、建物全体の負担を軽減する効果が大きく、特に築年数の古い和瓦の家屋では検討する価値があるといえます。
また、柱や基礎の補強工事は、老朽化の状態によって費用が大きく変動し、場合によっては300万円以上必要となることもあります。
見落としがちな追加費用と対策
工事費用を見積もる際に見落としがちなのが、耐震診断や設計費用です。耐震診断には10~40万円ほどかかりますが、多くの自治体で補助制度が設けられているため、あらかじめ確認しておくと費用を抑えられます。
また、外壁の補修や内装の復旧など、付随する工事費用も考慮に入れる必要があります。賢く費用を抑えるには、他のリフォーム工事と同時に行うことをおすすめします。
例えば、屋根の葺き替えや外壁塗装と組み合わせることで、足場代などの経費を節約できる可能性があります。
建築年代別の耐震基準と補強の必要性
日本の耐震基準は、大地震のたびに見直されてきました。特に大きな転換点となったのが1981年の建築基準法改正です。現在の住宅がどの程度の耐震性能を持っているのか、建築年代に応じて確認していきましょう。
1981年以前の旧耐震基準の住宅
1981年5月以前に建てられた住宅は、「旧耐震基準」と呼ばれる基準で建築されています。この時期の基準では、震度5強程度の地震で倒壊せず、補修すれば再利用できることを目標としていました。
しかし、阪神・淡路大震災では、こうした建物に大きな被害が集中。震度6以上の揺れには十分な耐力を持っていないことが明らかになりました。築40年以上が経過し、老朽化も進んでいることから、早急な耐震診断と補強工事が推奨されます。
1981年から2000年までの新耐震基準の住宅
1981年6月以降に建てられた住宅には、「新耐震基準」が適用されています。震度6強から7程度の大地震でも倒壊しないことを目標とした、より厳格な基準です。ただし、2016年の熊本地震では、この時期の住宅でも2割程度が大きな被害を受けました。
特に、接合部の金物による補強が不十分だったり、壁の配置バランスが悪かったりする建物では、耐震補強の検討が必要です。築30~40年が経過していることを考えると、一度は耐震診断を受けることをおすすめします。
2000年以降の現行基準による住宅
2000年の建築基準法改正では、さらに細かい規定が追加されました。地盤調査の実施や、柱と土台の接合部における金物使用の義務付けなど、より実践的な基準となっています。この基準で建てられた住宅は、一般的に高い耐震性能を備えているといえます。
ただし、軟弱地盤や崖地など、特殊な立地条件がある場合は、追加の耐震対策を検討する必要があるかもしれません。建物の状態や立地条件に不安がある場合は、専門家による診断を受けることが賢明です。
予算で選ぶ3つの補強方法
住宅の耐震補強では、建物の状態や予算に応じて最適な工法を選択することが重要です。費用対効果の高い工事を実現するため、予算別に選べる3つの代表的な工法について解説します。
- ①:低予算でできる筋交いの設置
- ②:中予算で選ぶ耐震パネル工事
- ③:本格的な耐震化を実現する屋根の軽量化
それぞれ個別にみていきましょう。
①:低予算でできる筋交いの設置
最も手頃な耐震補強工法として知られる筋交いの設置は、1か所あたり5~20万円程度で施工できます。柱と柱の間に斜め材を入れることで、建物の揺れに対する抵抗力を高める効果があります。
工事期間も短く、壁の一部を解体するだけで施工できるため、住みながらの工事が可能です。特に築年数が浅く、比較的状態の良い住宅では、この工法だけでも十分な耐震性を確保できる場合があります。
②:中予算で選ぶ耐震パネル工事
耐震パネルによる補強は、25~65万円程度の中程度の予算で実施できる工法です。面材と呼ばれる板状の部材を壁に設置することで、建物全体の強度を向上させます。
筋交いよりも広い面積を補強できるため、耐震性能の向上効果が高いのが特徴です。壁全体の解体が必要となりますが、断熱材の入れ替えなど、他の改修工事と組み合わせやすい利点もあります。
③:本格的な耐震化を実現する屋根の軽量化
最も本格的な対策として、80~150万円程度の予算で実施できる屋根の軽量化があります。重い瓦屋根を軽量な金属やスレートに葺き替えることで、地震時の建物への負担を大幅に軽減できます。
特に築40年以上の和風住宅では、屋根の重さが耐震性能を低下させている可能性が高いため、効果的な対策となります。
工事費用は高額になりますが、雨漏り対策や断熱性能の向上など、複合的な効果も期待できます。
補強効果で選ぶ工事の優先順位
予算に限りがある場合、どの部分から補強すべきか悩むところです。建物の安全性を効率的に高めるため、耐震診断の結果に基づいて補強箇所の優先順位を決めていきましょう。
ここからは、補強効果の高い順に、重要な工事内容を見ていきます。
最優先で行うべき土台・柱の補強
建物の耐震性を左右する最も重要な要素が、土台と柱の状態です。特に築年数が古い住宅では、シロアリ被害や腐朽によって構造材が劣化している可能性があります。これらの部材は建物の骨格となる部分であり、ここに問題があると他の補強工事を行っても十分な効果が得られません。
土台や柱の補強には100~300万円程度の費用がかかりますが、建物の倒壊を防ぐ上で最も重要な投資といえるでしょう。腐朽やシロアリ被害が見つかった場合は、部材の交換を含めた本格的な補強工事を検討する必要があります。
次に必要な壁と基礎の補強
土台・柱の状態が確認できたら、次に検討すべきなのが壁と基礎の補強です。筋交いや耐震パネルを効果的に配置することで、建物全体のバランスを整えることができます。特に1階の壁が少ない住宅や、大きな開口部がある場合は、壁の補強が重要になってきます。
基礎については、ひび割れの補修や鉄筋の追加など、状況に応じた対策を講じます。これらの工事には50~200万円程度の予算が必要ですが、建物の強度を総合的に高める効果があります。
工事箇所の選定は、必ず専門家の診断に基づいて行うようにしましょう。
このように優先順位を付けることで、限られた予算でも効果的な耐震補強を実現できます。重要なのは、建物の状態を正確に把握し、それぞれの工事がもたらす効果を理解した上で、計画的に補強を進めていくことです。補強工事は一度に全てを行う必要はなく、予算と相談しながら段階的に進めていくことも可能です。
自己負担を軽くできる補助金制度とは
耐震補強工事では、国と地方自治体による手厚い補助金制度を活用できます。特に1981年以前に建てられた木造住宅については、多くの自治体が工事費用の最大100万円程度までを補助する制度を設けています。
例えば東京都千代田区では、耐震改修工事費用の最大120万円を補助する制度があります。工事内容や地域によって補助金額は異なりますが、一般的な耐震補強工事であれば、総費用の半分程度を補助金でまかなえる可能性が高いでしょう。
申請を失敗しないためのポイント
補助金申請で最も重要なのは、工事着工前の申請です。契約や工事を始めてからの申請は認められないため、必ず事前に申請を済ませておく必要があります。
具体的な手順としては、まず耐震診断を受けて補強の必要性を確認し、その結果を添えて自治体に申請します。申請が認められてから工事業者と契約を結び、着工するという流れになります。
<申請に必要な主な書類>
- 耐震診断結果報告書
- 補強計画書
- 見積書
- 建物の登記事項証明書
- 住民票
自治体によって提出書類や申請時期が異なるため、早めに窓口で確認することをおすすめします。
信頼できる業者選びのコツ
耐震補強工事の成否を分けるのは、施工業者の技術力と信頼性です。優良な業者を見分けるポイントとして「耐震診断士」の資格を持つスタッフが在籍していることが挙げられます。
また「日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)」に加盟している業者は、一定の技術水準が保証されています。見積もりは必ず複数の業者から取得し、工事内容や価格を比較検討することが大切です。
その際、補助金申請のサポートや工事保証の内容についても確認しておきましょう。
見積書の比較で確認すべきこと
適切な見積書には、工事の具体的な内容が明確に記載されているはずです。特に重要なチェックポイントを3つ紹介します。
①:工事範囲と補強方法
補強を行う場所や使用する工法を具体的に示した記載が必要である。「耐震補強一式」といった曖昧な表現は避けるべき。
②:使用する材料の仕様
筋交いや耐震パネルなど、使用する材料の品質や規格が明確に記載されていることを確認する必要がある。
③:諸経費の内訳
足場代、養生費、運搬費など、工事に付随する経費が適切に計上されているかを精査する。見積金額の妥当性は、一般的な相場(150万円前後)を参考にしながら、建物の状態や工事内容に見合った金額かどうかで判断する。相見積もりの金額に大きな開きがある場合は、その理由を各業者に確認すべきである。
耐震補強するなら建て替えた方がお得?
耐震補強工事の費用が平均150万円前後とわかっても、「このまま補強工事をすべきか、思い切って建て替えた方が良いのか」という判断に迷う方は多いでしょう。
築40年以上の住宅では、耐震補強後も水回りの老朽化やバリアフリー対応など、追加の改修が必要になるケースがほとんどです。
耐震補強と建て替えの総費用を比較する
耐震補強工事に150万円、水回りのリフォームに200万円、外壁・屋根の修繕に150万円など、部分的な改修を重ねると総額500万円を超えることもあります。
一方、建て替えの場合、2,000~3,000万円の費用が必要になりますが、新築住宅の補助金や住宅ローン減税といった支援制度を活用できます。また、断熱性能や省エネ性能も大幅に向上するため、光熱費の削減も期待できるでしょう。
維持費やメンテナンス費用も考慮に入れる
耐震補強をしても、築年数による老朽化は避けられません。屋根や外壁の塗り替え、設備の修繕など、定期的なメンテナンスは必須です。こうした維持費を10年、20年単位で計算すると、新築への建て替えと大きな差が出ない可能性も。
新築であれば、最低10年は大規模な修繕の心配がなく、計画的な資金計画が立てられます。
家族構成や将来設計も含めて判断しよう
単純な費用比較だけでなく、家族構成の変化や将来の暮らし方も重要な判断材料です。高齢化に備えたバリアフリー化や二世帯住宅への対応、在宅ワークスペースの確保など、新たなニーズに応えやすいのは建て替えの大きなメリット。逆に、数年以内に住み替えを考えている場合は、必要最小限の耐震補強で様子を見る選択肢もあるでしょう。
耐震補強が必要な古い物件を売るのは難しい?
築40年以上の物件を売却しようとすると、「耐震性が不安」という理由で買い手が見つかりにくいのが現状です。
特に1981年以前の旧耐震基準で建てられた住宅は、不動産市場での評価が厳しく、売却までに時間がかかったり、価格を大幅に下げざるを得なかったりするケースが少なくありません。
耐震性の不安が売却の大きな壁になる
一般の買主は、耐震補強工事費用の負担を考慮して購入を検討します。平均150万円前後の工事費用に加え、水回りの老朽化対策やバリアフリー化など、追加のリフォーム費用も必要になるため、築古物件の購入に二の足を踏むのが一般的です。
また、金融機関による住宅ローンの審査も厳しくなる傾向にあり、買主の選択肢が限られてしまいます。
売却のタイミングで大きく価格が変わる
耐震診断を受けずに売却すると、建物の評価額が大幅に下がってしまう可能性があります。一方で、耐震補強工事を実施してから売却しても、工事費用に見合う価格上昇は期待できないのが実情です。
そのため、「補強工事をして売るべきか」「現状のまま売却するべきか」という判断が難しく、所有者の大きな悩みとなっています。特に相続で取得した物件の場合、維持費の負担だけが重くのしかかることも懸念されます。
「ワケガイ」なら訳あり物件も短期で買取可能!
当社が提供するワケガイは、耐震性に不安のある築古物件や、耐震補強工事の費用負担に悩む所有者様の課題を解決する買取サービスです。全国47都道府県で、老朽化した空き家や耐震基準を満たさない物件も、現状のままでの買取が可能です。
特に1981年以前の旧耐震基準で建てられた物件や、補強工事に100万円以上の費用がかかる物件の所有者様からご相談もいただいています。物件調査から査定、買取までワンストップで対応し、最短即日での売却も可能です。
耐震工事の費用捻出にお悩みの方は、「不動産を手放す」という選択肢について、ぜひご検討ください。
まとめ
耐震補強工事は、家族の安全を守るための重要な投資ですが、平均150万円前後の費用に加え、他のリフォーム費用も考慮する必要があります。補強工事を検討する際は、まず耐震診断で建物の状態を正確に把握しましょう。
その上で、築年数や床面積に応じた費用相場を確認し、建物の状態に合わせた補強方法を選択することが大切です。最終的な判断は、建物の状態、予算、将来の住まい方などを総合的に考慮し、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。