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共有不動産とは?トラブルを避けるために知っておくべきことを徹底解説

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こんにちは。ワケガイ編集部です。

相続をきっかけに実家を兄弟で共有したまま年月が経ったり、夫婦で購入したマンションが離婚後も共有名義として残ったりするケースは少なくありません。

普段は気にならなくても、売却したいときに意見が合わない、修繕や管理の負担が偏る、固定資産税の支払いで揉める、といった問題が表面化しやすくなります。

背景には、「共有不動産」という仕組み特有のルールがあります。単独所有とは異なり、誰がどこまで判断できるのか、どの場面で全員の合意が必要なのかが明確でないまま放置されやすく、結果として手続きが進まない状態に陥るケースが目立ちます。

本記事では、共有不動産の基本的な仕組み、起こりやすいトラブル、解消の方法を順を追ってわかりやすく整理して解説します。

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目次

共有不動産とは

共有不動産とは、ひとつの土地や建物を複数人で所有している状態を指します。登記上の名義人が2人以上いる場合には共有名義となり、それぞれが不動産全体に対する「共有持分」を持つ仕組みです。この持分は、相続や出資額、購入時の負担割合などによって決まります。

(参考:e-Gov 法令検索「民法」)

共有不動産では、持分が「2分の1」「5分の1」といった形で割合として示されますが、物理的に建物を分けるわけではありません。持分の大小に関わらず、不動産全体に対して所有権が及ぶ点が特徴です。

共有不動産の概要

そのため、「持分が多いから玄関側を使える」「持分が少ないからベランダを使えない」といった分け方はできず、利用や処分については共有者全員の権利が重なり合う構造になります。

この性質が、後々の売却・管理・相続に大きく影響します。共有者が増えれば意思決定が複雑になり、利用の仕方や修繕費の負担、売却時の方針などで意見が分かれることも珍しくありません

 

共有不動産の民法上の管理ルール

共有不動産では、「誰がどの範囲まで意思決定できるのか」を知っておく必要があります。

民法では、行為の内容によって必要な同意の範囲が明確に分けられています。専門的な言葉に見えますが、日常的な管理や売却を考える上で避けて通れないポイントです。

(参考:e-Gov 法令検索「民法」)

ここからは、民法が定める3つの行為区分と、2023年の改正による考え方を順に整理します。

①:保存行為(単独でできる範囲)

保存行為とは、不動産を保全し、価値を維持するために必要な最小限の行為を指します。例えば、雨漏りの応急処置や鍵の交換といった、放置すると状態が悪化するような場面の対応がこれに該当します。

こうした行為は、共有者全員の同意を待っていると対応が遅れてしまうため、民法では「共有者の1人が単独で行える」とされています。

②:管理行為(持分の過半数で決める範囲)

管理行為は、不動産の維持や利用に関する行為が該当します。代表例としては、建物の修繕計画、共用部分の使用方法、賃貸募集の可否などがあります。保存行為よりも踏み込んだ内容となるため、単独では決められず「持分の過半数」による決定が必要になります。

③:変更・処分行為(全員一致が必要な範囲)

変更・処分行為は、共有不動産そのものの価値や形状、所有関係に大きな影響を及ぼす行為を指します。建物の建替えや大規模な改修、土地の分筆、そして不動産全体の売却などが典型的な例です。

これらは不動産の性質を変える行為であるため、民法では「共有者全員の一致」が求められます。

2023年改正の管理ルールの考え方

2023年の民法改正では、所有者不明土地問題に対応するため、共有不動産の管理に関する仕組みが見直されました。特に「共有者の一部が不明・非協力で手続きが進まない」ケースを前提に、裁判所が関与しやすくなる制度が整えられた点が特徴です。

例えば、持分の過半数で管理行為を決められるルールが整理されたほか、共有者の一部の所在がわからない場合に裁判所が代わりに意思決定をサポートできる仕組みも整備されました。

これにより、従来は行き詰まりがちな共有不動産でも、適切に管理・利用を進めやすくなっています。共有状態が長期化しやすい現代の状況を踏まえた現実的な見直しといえます。

 

共有不動産を所有し続けるデメリット

共有不動産は、複数人で所有するという性質上、意思決定のハードルが高まりやすい構造があります。具体的なデメリットとしては、以下のとおり。

  • 売却や活用の自由度が低くなる
  • 維持費・固定資産税の負担が分担しづらい
  • 共有者の高齢化・相続で権利関係が複雑化する
  • 意思決定に時間がかかり、放置リスクが高まる
  • 資産価値が下がりやすく、売却時に不利になる 

それぞれ個別に解説します。

売却や活用の自由度が低くなる

共有不動産では、単独で勝手に売却したり、賃貸に出したり、建物を取り壊したりすることはできません。こうした行為は民法上「変更・処分行為」に該当し、共有者全員の一致が必要になるためです。

自分は売却したいと思っていても、他の共有者が「まだ手放したくない」「価格に納得できない」といった理由で反対すれば、手続きを先に進められません。

また、建物の用途変更や大規模修繕のように、資産の性質に影響する決定も同様で、ひとりの意向では動かせません。そのため、共有者の一人が高齢になって判断が難しくなったり、連絡が取れない相続人が出たりすると、それだけで活用の選択肢が閉ざされてしまうことがあります。

維持費・固定資産税の負担が分担しづらい

共有不動産では、固定資産税や修繕費、管理に必要な費用は共有者全員が負担する立て付けになっています。しかし、実際には代表者がまとめて支払い、あとで精算する形が多く、全員が均等に負担するとは限りません。

支払いに協力的ではない共有者がいたり、資金的な余裕がなかったりすると、特定の共有者だけに負担が偏ることがあります。

空き家状態の共有不動産では、草刈りや不用品撤去など細かい維持費も積み重なります。問題なのは、これらの費用を必ずしも全員が自分ごととして認識しているとは限らない点です。

共有者の高齢化・相続で権利関係が複雑化する

共有不動産は、時間が経つほど所有者の構成が変化しやすく、関係が複雑になりがちです。共有者のひとりが高齢になり判断能力が低下すると、売却や修繕の話し合いそのものが進めにくくなります。

例えば、認知症の診断を受けた場合には、法律行為を単独で行えず、成年後見制度の利用を検討しなければならない場面も生まれます。こうした手続きには時間がかかり、関係者の負担が一気に増えることがあります。

さらに相続が発生すると、持分がその相続人へ引き継がれるため、共有者の人数が増え、意思統一が一段と難しくなります。兄弟姉妹だけで持っていた不動産が、次の世代に分散していくと、連絡が取れない人が出てきたり、不動産そのものに関心の薄い相続人が現れたりすることもあります。

意思決定に時間がかかり、放置リスクが高まる

共有不動産では、修繕や売却といった重要な決定を行うために、複数の共有者の意思をそろえる必要があります。内容によっては全員一致が求められる場合もあり、ひとりが反対するだけで計画が止まってしまうことになりかねません。

こうした状況が続くと、管理や修繕のタイミングを逃し、建物の劣化が加速します。空き家であれば倒壊や雨漏りのほか、周辺環境への影響も懸念され、行政から指導が入る可能性も出てきます。

資産価値が下がりやすく、売却時に不利になる

共有不動産は、単独所有の不動産に比べて市場での評価が下がりやすいといわれています

共有名義のままでは、買主側が将来のトラブルを懸念しやすいため、購入を敬遠される傾向があります。例えば「他の共有者が売却に応じないかもしれない」「修繕の合意形成が難しそう」といった心配が生じ、結果として価格が下がる。あるいは売却までに時間がかかったりすることがあります。

 

共有不動産でよく発生するトラブル例

共有不動産では、法律の仕組みだけでは解決できない「人間関係のズレ」が表面化しやすく、日常的な判断の積み重ねがトラブルの火種になりかねません。

特に発生しやすいと考えられるのが、以下のトラブルです。

  • 例①:共有者の一人が勝手に建物をリフォームしてしまった
  • 例②:固定資産税を立て替えたのに、他の共有者が精算に応じない
  • 例③:親の相続で兄弟全員が共有者になり、誰も管理しないまま放置
  • 例④:共有者の一人が持分を第三者に売却し、知らない人が共有者になった
  • 例⑤:共有地を駐車場にしたいが、反対されて利用できない 

上記について、個別にみていきましょう。

例①:共有者の一人が勝手に建物をリフォームしてしまった

建物の修繕やリフォームは「管理行為」または「変更行為」に当たる場合があり、単独で進められる範囲は限られています。それにもかかわらず、共有者の一人が事前の相談なく工事を進めてしまうと、費用負担や工事内容を巡って大きな争いに発展します。

「自分が住んでいるから」「急いでいたから」という理由で勝手に工事をしたとしても、他の共有者が同意していなければ、後から費用精算を求めても応じてもらえないことが多いです。

工事の規模が大きいほど、無断で進めたことの影響が深刻になり、修復が難しい関係性の亀裂につながります。

例②:固定資産税を立て替えたのに、他の共有者が精算に応じない

固定資産税は共有者全員に納税義務がありますが、実際には代表者がまとめて支払い、あとから持分に応じて負担を求める流れが一般的です。

しかし、共有者全員の意識が揃っているとは限らず、立て替えた費用を返してもらえない、そもそも話を聞いてもらえないといった問題が起こりがちです。

遠方に住んでいて不動産に関心の薄い共有者や、資金に余裕がない共有者がいると、精算が滞る原因になります。結果として、ひとりだけが負担を抱え込む状況が続き、不信感が積み重なって共有関係そのものが悪化することがあります。

関連記事:共有不動産の管理費用の分担方法とは?費用を払わない共有者がいる場合の対応手段について

例③:親の相続で兄弟全員が共有者になり、誰も管理しないまま放置

相続がきっかけで共有状態が生まれるケースは多いものの、相続人全員が不動産の管理に関心を持つとは限りません。誰も主体的に動かないまま時間が過ぎると、草木の繁茂・老朽化・近隣からの苦情など、外部から問題が表面化してきます

さらに管理を巡って責任を押しつけ合うような状況になると、兄弟間での信頼関係が損なわれ、共有状態を解消するための冷静な話し合いすら難しくなります。相続の段階で方向性を決めないと、気づけば誰も触れたくない“負動産”へと変わってしまう典型例です。

例④:共有者の一人が持分を第三者に売却し、知らない人が共有者になった

民法上、自分の持分は共有者の同意なく第三者へ売却できます。そのため、突然まったく面識のない人が共有者として関わってくるケースがあります。

第三者が共有持分の買取業者である場合、共有の解消を前提とした交渉が始まったり、利用方法について各人が好きに主張するケースが存在します。

共有者全員が同じ方向を見られなくなると、日常的な管理や売却の話し合いも一段と複雑化し、従来の共有者同士だけでは解決できない状況に陥ることがあります。

例⑤:共有地を駐車場にしたいが、一反対されて利用できない

共有不動産の用途変更は「管理行為」に該当するため、持分の過半数で決められる場合がありますが、売却や大きな利益が絡むケースでは全員の合意が必要です。

駐車場として活用したい共有者がいても、一人が「使いたくない」「リスクがある」と反対すれば、話し合いが進みません。

収益化したい共有者と、現状維持を望む共有者がぶつかると、双方の利害が対立して決着がつかず、活用の機会を逃す結果につながります。

 

不動産の共有状態を解消するための選択肢

共有状態を解消する方法はいくつか存在し、以下のものが代表例として挙げられます。いずれも、現在の共有関係を続けるより負担が少なく、将来の争いを避けやすい方法です。

  • 共有者全員で売却して現金化する
  • 共有物分割で単独所有に切り替える(現物・代償・換価の3パターン)
  • 自分の持分だけを他の共有者または専門業者へ売却する
  • 他の共有者に持分を譲渡・贈与して整理する
  • 裁判所の共有物分割請求を利用する(※合意が得られない場合)

それぞれ個別に解説します。

共有者全員で売却して現金化する

もっともシンプルで実務的に進めやすいのが、共有者全員で不動産を売却し、売却代金を持分割合に応じて分ける方法です。全員の同意が必要ですが、一度方向性が固まれば手続きは比較的スムーズに進みます。

不動産会社を介した一般的な売却手続きとなるため、共有特有の複雑な調整も最小限で済みます。

この方法のメリットは、共有状態を一度に清算できることと、現金で分配されるため公平性が担保されやすい点にあります。複雑な関係性があったとしても、最終的に現金という形に置き換えられることが多くの共有者にとって納得しやすいポイントです。

共有物分割で単独所有に切り替える(現物・代償・換価の3パターン)

共有物分割とは、不動産の共有状態そのものを解消し、最終的に誰か一人が単独で所有できる形に整理する方法です。分割には三つのパターンがあり、状況に応じて選択が変わります。

<共有物分割の代表的な3パターン>

分割方法内容向いているケースの傾向
現物分割実際に土地や建物を物理的に分けて、それぞれが取得する方法土地面積に十分な広さがある、分筆が可能なとき
代償分割共有者の一人が不動産の全部を取得し、他の共有者に代償金を支払う方法相続後の調整、一人が住み続けたいケース
換価分割不動産を売却し、売却代金を持分割合に応じて分ける方法協力関係が薄い、物件を手元に残したい人がいないとき

共有物分割の大きな特徴は、話し合いがまとまらない場合に家庭裁判所へ申立てができる点です。協議分割ができなくても、法的な手続きで共有状態を終わらせる道が残されているため、完全に行き詰まってしまうわけではありません。

関連記事:共有持分を売却するとどうなる?売却後のトラブルや対策を解説

自分の持分だけを他の共有者または専門業者へ売却する

共有状態を解消するために、自分の持分だけを切り離して売却する方法があります。民法上、持分の処分は共有者各自の自由とされているため、他の共有者の同意がなくても売却できます

ただし、持分のみを購入したいと考える個人は多くなく、実務では共有不動産の取り扱いに慣れた専門業者が主な買い手になります。

共有者が複数いると、不動産全体の利用が制限され、購入した側は他の共有者との調整が必要になります。

そのため、査定額は通常の不動産より低く提示されることが一般的です。一方で、業者に依頼すれば、手続きが速く、共有状態を短期間で抜けられるという利点があります。

他の共有者に持分を譲渡・贈与して整理する

共有者同士の関係が比較的良好で、全員が共有状態を解消したいと考えている場合には、特定の共有者に持分を集約する方法があります。持分を譲渡したり、状況に応じて贈与という形を選んだりすることで、最終的に単独所有へと近づけることができます。

特に代償分割と呼ばれる方法では、不動産を取得する共有者が他の共有者に金銭を支払い、持分を買い取ることで調整します。相続後の整理でよく選ばれる方法で、家を残したい人がそのまま住み続けられるという利点もあります。

一方で、代償金の額や支払い方法を巡って調整が必要となり、合意形成が難しい場合も存在します。一度まとまれば共有状態をすっきり整理できるため、話し合いがしやすい関係性であれば検討する価値のある方法です。

裁判所の共有物分割請求を利用する(※合意が得られない場合)

共有者同士で話し合いを続けても方向性がまとまらない場合には、裁判所に共有物分割を申し立てる方法があります。共有物分割請求は、共有状態を強制的に解消するための制度で、話し合いによる解決が難しいと判断されたときの最終手段といえます

裁判所は、不動産の状況や共有者の意見、利用価値などを踏まえて分割方法を決めます。物理的に土地を分ける現物分割が可能であればその案が選ばれますが、現実には困難なケースが多く、代償分割または売却して代金を分ける換価分割が選ばれることが一般的です。

この手続きは法的に確実ですが、時間と費用がかかる点は避けられません。また、家庭裁判所の判断によっては希望と異なる形で解消されることもあります。

とはいえ、共有者の一部が非協力的な場合や、相続で人数が増えすぎて合意形成が困難な場合には、現実的な打開策として機能します。

 

共有不動産を売却するために必要な手順

共有不動産の売却は、通常の不動産売却よりも段取りが複雑になります。共有者それぞれの考え方や生活状況が異なるため、初動でつまずくと話が進まなくなるケースも存在します。

そのため、共有不動産の売却は以下の手順で進める必要があります。

  • 手順①:共有者全員で売却方針を確認し、合意を取る
  • 手順②:不動産会社に査定を依頼し、適正価格を把握する
  • 手順③:媒介契約を結び、販売活動を開始する
  • 手順④:買主との交渉・契約手続きを進める
  • 手順⑤:決済・引き渡しを行い、持分割合に応じて代金を分配する

次項より、詳しく解説します。

手順①:共有者全員で売却方針を確認し、合意を取る

共有不動産の売却では、最初に全員が「売却するかどうか」を明確にする必要があります。不動産全体を売却することは「処分行為」にあたるため、共有者全員の意思を一致させることが求められます。

誰か一人でも反対している状態では売却手続きを進められず、後の工程でトラブルが起きやすくなります。

ここからは感情的な対立を避けるため、売却する理由や現状の維持に伴うリスク、費用負担などを丁寧に共有しておくことが大切です。

相続で共有になった物件のように、それぞれが別の生活をしている場合は、オンラインでの打ち合わせを使うなど、意思確認の方法も工夫するとスムーズです。

手順②:不動産会社に査定を依頼し、適正価格を把握する

方針が固まったら、不動産会社に査定を依頼し、現在の市場価値を把握します。共有者が複数いる場合、価格への感覚がバラバラなことも多く、根拠がないまま希望価格だけが先行すると意見がまとまりません

査定結果をもとに話し合いをすると、共有者同士の認識を揃えやすくなります。査定依頼は1社だけではなく、複数社に行うことで現実的な価格帯をつかみやすくなります。

売却後の分配額を見込んだうえで、追加で必要となる出費(測量・残置物処理など)も併せて把握しておくと、後の手続きが滞りにくくなります。

手順③:媒介契約を結び、販売活動を開始する

売却を依頼する不動産会社を決めたら、媒介契約を締結します。媒介契約には複数の種類がありますが、一般的な売却であれば「専任媒介」または「専属専任媒介」が選ばれることが多く、担当者が積極的に販売活動を進めやすい体制になります。

<媒介契約の種類>

  • 専属専任媒介契約:1社のみ、自己発見取引不可
  • 専任媒介契約:1社のみ、自己発見取引は可能
  • 一般媒介契約:複数の不動産会社へ依頼可能

この段階では、広告掲載の方法や販売価格の設定、内見対応の調整など、具体的な進め方を確認しておくと安心です。

共有不動産の場合、書類の確認や売却後の分配などで共有者が署名する場面が増えるため、連絡手段や役割分担を決めておくと手続きが滞りにくくなります。

手順④:買主との交渉・契約手続きを進める

購入希望者が現れたら、担当者を通じて条件交渉を行い、売買契約に進みます。契約書への署名は共有者全員が行う必要があるため、日程調整がスムーズに進むようあらかじめ準備しておきましょう

遠方の共有者がいる場合は、郵送での書類対応や、事前に委任状を作成する方法も検討されます。契約段階では、設備の状態や境界の確認、引き渡し時期など、細かい事項について買主とすり合わせる必要があります。

手順⑤:決済・引き渡しを行い、持分割合に応じて代金を分配する

売買契約後、買主の住宅ローン手続きや必要書類の準備が整ったら、決済と引き渡しを行います。当日は司法書士の立ち会いのもと、所有権移転登記の申請を行い、売却代金が共有者の口座に振り込まれます。

分配額は持分割合に基づいて計算され、共有者ごとに公平に配分されます。

なお、代金を受け取った後には、譲渡所得税の計算が必要になる場合があります。特に相続した家を売却するケースでは、各共有者の状況により税額が異なることもあるため、分配後の手続きも念頭に置いておくと安心です。

 

「自分の共有持分だけ」を売却する方法はある?

共有不動産の扱いに悩む方の中には、「共有者全員の合意がまとまらない」「自分の持分だけでも整理したい」と感じる人もいらっしゃるでしょう。

共有状態を解消するためには複数の選択肢がありますが、そのひとつが「自分の持分だけを売却する」という方法です。ただし、法律上は認められていても、実務では注意すべき点がいくつかあります。

ここからは、実際に可能なのか、どのような相手に売れるのか、事前に何を確認すべきかを順に取り上げます。

法的には可能だが、買い手は限られる

共有不動産では、各共有者が自分の持分を単独で処分できると民法で定められています。そのため、他の共有者の同意がなくても、自分の持分だけを第三者へ売却することは法的に認められています

(参考:e-Gov 法令検索「民法」)

共有者全員の同意を集める必要がない点は、共有状態から抜け出したい人にとって魅力的に映るかもしれません。

しかし、実務の世界では事情がまったく異なります。共有持分を購入しても、不動産全体を自由に使えるわけではなく、他の共有者との調整が必要であることから、共有持分を欲しがる一般の買主はほとんどおらず、市場でも流通しにくいのが現実です。

法的には売れるのに、実際には買い手が見つからないというギャップが生じやすい点が、この方法の大きな特徴といえます。

共有者への売却か、専門業者への買取が現実的

持分を売却する際、現実的な選択肢は大きく二つに絞られます。一つ目は、他の共有者に買い取ってもらう方法です。同じ不動産を共有している関係者であれば、持分をまとめて単独所有にしたいという意向を持っている場合もあります。

このルートは関係が良好なときには進みやすいものの、金額交渉や負担割合で意見が食い違うこともあり、必ずしも円滑とは限りません。

もう一つの選択肢が、共有持分の取引を専門に扱う業者への売却です。こうした業者は、共有不動産特有のリスクや調整の難しさを理解しており、占有状況・他の共有者の数・過去の交渉履歴などを踏まえて適正な買取価格を提示します。

売却前に登記と占有状況を確認しておこう

持分売却を検討する際は、事前準備を怠らないことが取引のスムーズさにつながります。まず、登記簿謄本を取得して自分の持分割合を確認し、共有者の人数や名前に誤りがないかを把握しておくことが必要です。

登記内容と現状の使用者が一致していないことも珍しくなく、居住者が誰なのか、空き家なのかといった占有状況も併せて整理しておくと、査定や説明が明確になります。

こうした基本情報にずれがあると、後になって「聞いていなかった」「そんな状況だとは知らなかった」といったトラブルが起きやすくなります。特に、占有中の人物が他の共有者でない場合や、相続後の名義変更が放置されている場合は注意が必要です。

 

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共有持分のみの売却にも対応しているため、「自分の持分だけ整理したい」というニーズにも応じられます。また、調査から契約までを社内外の専門家と連携して行うことで、共有特有の複雑な事情があってもスムーズに進められる体制を整えています。

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FAQ:共有不動産に関するよくある質問

マンションを複数人で所有している場合、戸建てとは異なるルールや注意点がいくつもあります。ここからは、共有名義のマンションでよく寄せられる疑問をまとめ、基本的な考え方をわかりやすく整理します。

不動産を共有するデメリットは?

共有名義では、所有者全員の意向をすり合わせながら物事を進める必要があります。売却・リフォーム・賃貸といった決定に幅広い合意が求められるため、意思が分かれた場合に手続きが停滞しやすくなります。

また、固定資産税や修繕積立金の負担をどのように分けるかで揉めることも珍しくありません。相続や名義変更によって共有者が増えていくと、誰が管理の主体なのか曖昧になり、結果として放置につながるという問題も起こりがちです。

共有者の1人が死亡した場合、不動産はどうなるのか?

共有者が亡くなると、その人の持分は相続人に引き継がれます。遺言書がなければ法定相続分に沿って分割されるため、持分が複数人に細かく分かれることもあります。

これによって共有者の人数が増え、意思決定の難易度が高まるケースは多々あります。誰が管理費を支払い、どの範囲で使ってよいかといった日常的な判断も複雑になり、売却や賃貸の合意形成に時間がかかる要因にもなります。

共有名義の不動産を売却したら3000万円控除は受けられますか?

共有名義のマンションであっても、居住用財産の譲渡に該当すれば「3,000万円の特別控除」が適用される可能性があります。

ただし、控除の対象になるかどうかは共有者ごとに判断されます。実際にその共有者自身や家族が住んでいたか、転居後の一定期間内に売却しているかなど、細かな要件があります。

共有名義にすると固定資産税は安くなる?

共有者が何人いても、固定資産税そのものの総額は変わりません。あくまで物件に対して課税される仕組みのため、所有者が複数になっても税額が減ることはありません。

支払い方法としては代表者がまとめて納付するケースが一般的ですが、後の精算でトラブルになることもあります。負担割合や支払い方法をあらかじめ取り決めておくと、無用な誤解を避けられます。

 

まとめ

共有不動産は、単独所有とは異なる管理ルールと合意形成の難しさを抱えており、相続や長期放置をきっかけに問題が顕在化することがよくあります。

将来的な対立を避けるためには、まず持分割合や登記内容を正確に把握し、共有者間で費用負担や活用方針を早い段階から話し合いをしておきましょう。

また、合意形成が困難な状況が続く場合には、共有物分割や持分売却など、法的に認められた選択肢を知っておくことで、停滞を解消するきっかけを作れます。

共有状態は時間が経つほど複雑化しやすいため、問題が小さいうちに状況を整理し、将来のリスクを少しずつ減らしていきましょう。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸(宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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