共有持分への抵当権設定とは、複数の所有者が共有する不動産において、各所有者が自分の持分のみに抵当権を設定することです。
不動産を共有していると、自身の持分を担保に融資を受けたいと考える場合もあるでしょう。しかし、安易に抵当権を設定すると、他の共有者との関係悪化や将来的な不動産管理の複雑化といったリスクがあります。
そのため、共有持分への抵当権設定の法的根拠や手順、影響について正しく理解しておくことが大切です。
そこで本記事では、共有持分への抵当権設定に関する重要な情報を詳しく解説します。
目次
共有持分への抵当権設定とは
共有持分への抵当権設定とは、複数の所有者が共有する不動産において、個々の所有者がその持分のみに抵当権を設定することを指します。これは、共有不動産全体ではなく、自身の所有する部分だけを担保として提供する方法です。
例えば、AとBが50%ずつ所有する土地がある場合、Aは自身の50%の持分にのみ抵当権を設定することができます。この方法により、共有者は他の共有者の同意を得ることなく、自身の持分を活用して資金調達を行うことが可能となります。
ただし、実際の運用においては、金融機関の判断や他の共有者への影響など、さまざまな要素を考慮する必要があります。
そもそも抵当権とは
抵当権とは、債権者が債務者の不動産を担保として設定する権利のことです。主に住宅ローンなどの借入れの際に利用され、債務者が返済不能に陥った場合、債権者はこの権利を行使して担保不動産を競売にかけ、その売却代金から債権を回収することができます。
抵当権の特徴は、債務者が不動産を使用・収益・処分することを妨げないという点です。つまり、抵当権が設定されていても、所有者は通常通りその不動産を利用し続けることができます。
ただし、抵当権が設定された不動産を売却する際には、抵当権者(通常は金融機関)の承諾が必要となります。
抵当権は登記することで第三者にも対抗できる強力な担保権となり、債権者にとっては安全な融資手段となります。
共有持分に抵当権設定はできる
法律上、共有持分に抵当権を設定する際に他の共有者の同意は必要ありません。これは民法上、各共有者が自身の持分を自由に処分できるという原則に基づいています。
つまり、自身の共有持分のみに抵当権を設定する場合、他の共有者に許可を求める必要はありません。
ただし、実務上はいくつかの課題があります。多くの金融機関は、共有持分のみを担保として認めることに消極的です。これは、共有持分の評価が難しく、また将来的な権利関係の複雑化を懸念するためです。
また、抵当権が実行された場合、新たな共有者が加わることになり、他の共有者にも影響が及ぶ可能性があります。そのため、共有持分への抵当権設定を検討する際は、法的な可能性だけでなく、実務上の課題や他の共有者への影響も慎重に考慮する必要があります。
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抵当権設定の民法上の規定
民法上、共有持分への抵当権設定に関する直接的な規定はありませんが、いくつかの関連する条文が存在します。まず、民法第206条では、所有者は法令の制限内において自由に所有物の使用、収益、処分をする権利を有すると規定されています。
これは共有持分にも適用され、各共有者は自身の持分を自由に処分できることを意味します。また、民法第252条では、共有物の管理に関する事項は共有者の持分の価格に従い、その過半数で決するとありますが、これは各共有者の持分の処分には適用されません。
つまり、自身の持分への抵当権設定は、他の共有者の同意を必要としない単独行為として認められています。ただし、民法第251条により、共有物の変更には共有者全員の同意が必要となるため、共有不動産全体に影響を及ぼすような抵当権設定は、全共有者の合意が必要となります。
共有持分への抵当権設定のメリットとデメリット
ここからは、共有持分に抵当権を設定するメリットとデメリットを解説します。
抵当権設定のメリット
共有持分への抵当権設定の最大のメリットは、個人の経済的自由度を高められることです。他の共有者の同意を得ることなく、自身の持分を担保として資金調達ができるため、迅速な判断と行動が可能となります。
例えば、事業資金や緊急時の資金需要に対して、柔軟に対応できます。また、共有不動産全体ではなく自身の持分のみを担保とすることで、理論上は融資額が抑えられ、過剰な債務負担を避けられる可能性があります。
さらに、他の共有者の経済状況や信用力に左右されることなく、自身の信用力のみで融資を受けられるというメリットもあります。
加えて、共有不動産全体に抵当権を設定する場合と比較して、他の共有者への影響を最小限に抑えられるため、共有者間の関係性を維持しやすいという利点もあります。
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抵当権設定のデメリット
共有持分への抵当権設定には、いくつかの重要なデメリットが存在します。最も大きな課題は、多くの金融機関が共有持分のみを担保として認めないという点です。これは、共有持分の評価が難しく、将来的な権利関係の複雑化を懸念するためです。
仮に融資を受けられたとしても、条件が厳しくなる可能性が高くなります。また、抵当権が実行された場合、新たな共有者が加わることになり、他の共有者との関係が複雑化する恐れがあります。これは、共有物の管理や将来的な売却に支障をきたす可能性があります。
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共有持分への抵当権設定の5つの注意点
ここからは、具体的な留意点について詳しく説明します。具体的には、以下の5つが挙げられます。
- 注意点①:金融機関によっては融資を受けられない
- 注意点②:他の共有者との関係が悪化する可能性がある
- 注意点③:共有持分の一部のみには抵当権を設定できない
- 注意点④:抵当権が実行されると、第三者が共有者になる可能性がある
- 注意点⑤:売却時に抵当権の解除が必要になる
それぞれ個別にみていきましょう。
注意点①:金融機関によっては融資を受けられない
共有持分のみを担保にした融資は、金融機関によって取り扱いが異なります。一般的に、共有持分は流動性が低く、評価額の算定が難しいため、担保価値が低く見積もられます。
そのため、多くの銀行は共有持分単独での融資を敬遠する傾向があります。融資を検討する場合は、共有持分を担保にできる金融機関があるか事前に確認しておくことが重要です。
注意点②:他の共有者との関係が悪化する可能性がある
共有持分に抵当権を設定すると、将来的に金融機関が担保権を実行し、競売にかけられる可能性が考えられます。
競売によって新たな第三者が共有者として加わると、不動産の管理や活用に影響を及ぼすことになり、既存の共有者との関係が悪化する原因になり得ます。家族間や親族間で共有している不動産では、特に慎重な判断が求められます。
注意点③:共有持分の一部のみには抵当権を設定できない
共有持分に抵当権を設定する際は、自分が所有する持分の全体に対して 設定する必要があります。
例えば、2分の1の共有持分を持っている場合、その2分の1全体に抵当権を設定することはできますが、その一部(例えば4分の1)だけに抵当権を設定することはできません。
ただし、抵当権を設定する際に他の共有者の同意は不要 です。これは、自分の持分を自由に処分できる権利があるためであり、他の共有者の承諾がなくても設定手続きを進めることができます。
ただし、実務上は他の共有者に影響を及ぼす可能性があるため、事前に説明して理解を得ることが望ましいでしょう。
注意点④:抵当権が実行されると、第三者が共有者になる可能性がある
抵当権が実行されると、金融機関などの債権者が競売を申し立て、最終的に新たな買い手が共有者として加わる可能性があります。新たな共有者は不動産の共同所有に関する意識や意向が異なる場合があり、共有者間でトラブルが発生することも考えられます。
特に、不動産の利用や売却について意見が対立するケースでは、共有持分の管理がより複雑化するリスクがあるため、慎重に判断すべきポイントです。
注意点⑤:売却時に抵当権の解除が必要になる
共有持分を売却する際、抵当権が設定されている場合は、金融機関の承諾を得る必要があります。通常、買主は抵当権が付いた状態の共有持分を購入することを避けるため、売却前に抵当権を解除しなければならないケースがほとんどです。
抵当権の解除には、借入金の完済や債権者との交渉が必要となるため、売却を検討する際は事前に金融機関と調整しておくことが重要です。
共有持分に抵当権を設定するための4ステップ
共有持分への抵当権設定に当たっては、以下の4つの手順で進めることになります。
- STEP1:金銭消費貸借契約の締結
- STEP2:抵当権設定契約の締結
- STEP3:登記申請
- STEP4:必要書類の準備と提出
各手順について、個別に解説します。
STEP1:金銭消費貸借契約の締結
金銭消費貸借契約の締結は、抵当権設定プロセスの最初のステップです。
この契約は、借り手(債務者)と貸し手(債権者、通常は金融機関)の間で交わされる、融資に関する基本的な合意。契約書には、借入金額、返済期間、金利、返済方法などの条件が明記されます。
共有持分への抵当権設定の場合、契約書には担保として提供する共有持分の詳細(持分割合、不動産の所在地など)も記載されます。この段階で、金融機関は融資の審査を行い、共有持分を担保として認めるかどうかを判断します。
借り手は契約内容を十分に理解し、返済計画を立てる必要があります。また、他の共有者への影響を考慮し、必要に応じて事前に説明することも重要です。
STEP2:抵当権設定契約の締結
金銭消費貸借契約の締結後に行うのは、抵当権設定契約の締結です。この契約は、借り手(抵当権設定者)が自身の共有持分を担保として提供し、貸し手(抵当権者)がその担保に対して抵当権を設定することを合意するものです。
契約書には、担保となる共有持分の詳細、抵当権の内容(極度額など)、実行の条件などが明記されます。共有持分への抵当権設定の場合、契約書に他の共有者の権利を侵害しない旨の条項が含まれることもあります。
この契約により、万が一借り手が債務を履行できない場合、貸し手は担保となっている共有持分を競売にかけて債権を回収する権利を得ます。借り手は契約内容を慎重に確認し、将来的なリスクを十分に理解した上で契約を締結する必要があります。
STEP3:登記申請
抵当権設定契約の締結後、次のステップは登記申請です。この手続きは通常、司法書士に依頼して行います。登記申請は、抵当権を法的に有効なものとし、第三者に対抗できるようにするために不可欠です。
共有持分への抵当権設定の場合、登記簿上で該当する共有持分にのみ抵当権が設定されることを確認することが重要です。登記申請には、抵当権設定契約書、印鑑証明書、登記原因証明情報などの書類が必要。
また、登録免許税の納付も必要となります。登記が完了すると、法務局から登記完了証が発行されます。
この登記により、抵当権の存在が公示され、将来的に不動産が売却された場合でも、抵当権者の権利が保護されます。登記申請の手続きは複雑なため、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。
STEP4:必要書類の準備と提出
抵当権設定の最終ステップは、必要書類の準備と提出です。この段階では、金融機関や法務局に提出するさまざまな書類を整えます。主な必要書類には以下のようなものがあります。
- 抵当権設定契約書(原本)
- 登記完了証(登記申請後に取得)
- 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
- 本人確認書類(運転免許証のコピーなど)
- 不動産の登記事項証明書
- 共有持分を証明する書類(必要な場合)
これらの書類を適切に準備し、期限内に提出することが重要です。特に共有持分への抵当権設定の場合、持分の証明や他の共有者との関係を示す書類が追加で必要になる可能性があります。
全ての書類が揃い、金融機関の確認が取れれば、抵当権設定のプロセスは完了します。書類の不備や提出の遅れは融資実行の遅延につながる可能性があるため、慎重かつ迅速な対応が求められます。
共有持分の抵当権設定にかかる費用
共有持分の抵当権設定においては、以下のような費用が発生します。
- 費用①:登録免許税
- 費用②:司法書士報酬
- 費用③:その他の諸経費
それぞれ個別に解説します。
費用①:登録免許税
前述した登録免許税は、抵当権設定登記を行う際に国に納付する税金です。この税金は、抵当権の債権額(借入金額)に応じて計算されます。一般的な計算方法は、債権額の1,000分の4(0.4%)です。
ただし、住宅ローンなどの場合、特例措置により税率が低減されることがあります。例えば、住宅取得時に設定される抵当権の場合、税率が0.1%に軽減されることがあります。共有持分への抵当権設定の場合、抵当権の対象となる持分の価値に基づいて計算されます。
例えば、1億円の不動産の2分の1の共有持分に対して抵当権を設定する場合、5,000万円を基準に登録免許税が計算されます。正確な税額は、最寄りの法務局や司法書士に確認することをお勧めします。
関連記事:共有持分の「登記費用」はいくら?計算方法や手続きについて解説
費用②:司法書士報酬
司法書士報酬は、抵当権設定登記の手続きを司法書士に依頼する際に発生する費用です。この報酬は、抵当権の債権額や業務の複雑さによって変動します。
一般的な報酬の目安は、10万円から30万円程度ですが、共有持分への抵当権設定の場合、通常より高くなる可能性があります。
これは、共有関係の確認や特殊な登記手続きが必要となる場合があるためです。司法書士報酬には、書類作成費、登記申請手続き費、相談料などが含まれます。
また、一部の金融機関では、提携している司法書士を利用することを条件としている場合もあります。報酬の詳細は司法書士によって異なるため、複数の事務所から見積もりを取り、比較検討することをおすすめします。
費用③:その他の諸経費
抵当権設定にかかるその他の諸経費には、さまざまなものがあります。主なものとしては、印紙税、印鑑証明書の取得費用、登記事項証明書の取得費用などがあります。印紙税は、抵当権設定契約書に貼付する収入印紙の費用で、契約金額に応じて変動します。
印鑑証明書や登記事項証明書の取得費用は、各自治体や法務局での発行手数料となります。また、金融機関によっては、事務手数料や融資手数料などを別途請求する場合もあります。
共有持分への抵当権設定の場合、共有関係を証明する追加書類の取得費用が発生する可能性もあります。
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特に、他の共有者が売却に協力的でない場合や、物件の活用方針が一致しない場合は、売却の手続きが長引くこともあります。
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まとめ
共有持分への抵当権設定は、法律上可能ですが、実務上の課題や他の共有者への影響を慎重に検討する必要があります。
抵当権設定の手順を正確に踏むこと、必要な費用を把握すること、そして他の共有者への影響や法定地上権の問題、共有物分割後の抵当権の効力などを理解することが重要です。
これらの知識は、将来的なトラブルを回避し、円滑な資金調達を行うために不可欠です。しかし、共有持分への抵当権設定は複雑な法律問題を含んでいるため、個々の状況に応じた適切な判断が必要。
そのため、抵当権設定を検討する際は、必ず弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。