こんにちは。ワケガイ編集部です。
不動産が相続財産に含まれると、相続人同士の話し合いが思うように進まず、関係が悪化してしまうケースが見られます。現金とは異なり、不動産は分割しづらく、評価方法や将来の負担についても考え方が分かれやすいためです。
実家を誰が引き継ぐのか、売却するのか、それとも共有のまま残すのかといった判断を巡って、相続人間で意見が対立することも珍しくありません。
さらに、不動産の評価額や維持費に対する認識の違い、家族それぞれの思い入れが重なることで、話し合いが感情的になりやすい点も特徴です。
そこで本記事では、不動産相続でもめやすい理由や典型的なトラブル例、実際にもめてしまった場合の対応手順について解説します。
目次
不動産が相続財産に含まれるとトラブルになりやすい理由
不動産を含む相続では、現金や預貯金とは異なる性質が多く、相続人の考え方や利害がぶつかりやすい状況が生まれがちです。土地や建物は形として一つしかなく、自由に分けられないという特徴があります。
不動産相続がトラブルになりやすい理由を整理すると、以下のものが代表例となります。
- 不動産は分割しにくく公平性の判断が難しいため
- 共有名義になると意思決定が複雑になるから
- 評価額・負担の認識が相続人ごとにずれやすいため
- 思い入れや感情の差が衝突を生みやすいから
次項より、詳しく解説します。
不動産は分割しにくく公平性の判断が難しいため
不動産には「一つの物を複数人で分けられない」という根本的な特徴があります。相続人が三人いても、家や土地そのものを三等分にして渡すことはできません。その結果、誰が不動産を引き継ぐのか、あるいは売却して現金化するのかといった大きな判断が必要になります。
こうした選択は、相続人それぞれの生活状況や価値観に左右されやすく、公平性の評価も個々で大きく異なります。
例えば、長男が実家に住み続けたいと考えていても、他の相続人が「売却して現金で分けたい」と主張するケースはよく見られます。また、不動産の評価額に対する感じ方にも差が出ます。固定資産税評価額や路線価、実勢価格など複数の算定基準が存在し、どれを基準にするかで数百万円単位の差が生まれることもあります。
共有名義になると意思決定が複雑になるから
不動産を相続すると、多くの場合は「共有名義」という形で複数人が権利を持つ状態になります。ところが、この共有状態は相続後の意思決定を著しく難しくします。
売却や大規模修繕といった重要な判断は、原則として共有者全員の合意が必要になるためです。相続人の一人でも反対すれば手続きは進まず、話し合いが停滞することも珍しくありません。
(参考:e-Gov 法令検索「民法」)
共有名義が長期化すると、管理の負担にも偏りが生じます。草刈りや清掃などの管理を一部の相続人だけが担っているのに、他の相続人は何も協力しないという状況が続けば、不満は蓄積します。
売却の際にも、連絡が取れない共有者がいるだけで契約が進まないというケースがあります。
関連記事:共有名義での相続登記はしても大丈夫?メリット・デメリットを詳しく解説
評価額・負担の認識が相続人ごとにずれやすいため
不動産の価値は、ひとつの数字で明確に示せるものではありません。固定資産税評価額、路線価、実勢価格など複数の算出基準が並立しており、どれを採用するかによって評価が大きく変わります。
相続人の誰かが「この家はもっと高く売れるはずだ」と考え、別の相続人が「この立地では期待できない」と感じていれば、話し合いの前提がそろわない状態になります。こうした背景が、遺産をどう分けるかの協議を難しくさせています。
さらに、相続後の不動産には維持費がかかり続けます。固定資産税だけではなく、老朽化した建物の場合は修繕や庭木の管理など、目に見えにくい負担も発生します。
その支払いを誰が担うのか、将来的な負担をどの程度見込めるのかといった点について、相続人それぞれの認識が一致しないまま話し合いが始まると、不満が蓄積しやすくなります。
思い入れや感情の差が衝突を生みやすいから
不動産は単なる資産ではなく、家族の記憶や生活の痕跡が刻まれた場所でもあります。幼い頃に過ごした実家であれば、相続人ごとに抱く感情は大きく異なります。
ある人にとっては「今も残しておきたい家」であっても、別の相続人にとっては「維持の負担が重い建物」と感じられることがあります。この温度差が、冷静な話し合いを難しくする場面につながります。
特に、親と同居していた相続人と遠方に住む相続人の間では、家に対する価値の感じ方が大きく乖離しやすい傾向があります。
前者は「親が暮らした家を守りたい」と考える一方、後者は「固定資産税の負担が増える前に売却したい」と判断するなど、優先するものが違います。誰かの記憶や思い入れが強いほど、合理的な判断よりも感情が先に立つことがあり、協議の場で意見がぶつかり合うきっかけとなります。
相続する不動産の価値算出の方法
相続の話し合いを進める上では、不動産がどれほどの価値を持つのかを相続人全員が共通の前提として持つ必要があります。ただ、不動産の価値には複数の算定基準が存在し、それぞれ用途や意味が異なります。
具体的には、以下の手法が存在します。
- 固定資産税評価額を用いて目安を把握する
- 路線価方式で土地の価値を算定する
- 実勢価格・査定価格で市場価値を確認する
- 相続税評価額と売却見込み額の違いを理解する
それぞれ個別にみていきましょう。
固定資産税評価額を用いて目安を把握する
固定資産税評価額は、市区町村が毎年通知する「固定資産税課税明細書」に記載されている金額です。税金を計算するための基準となる数値であり、一般の方が最も手軽に確認できる評価額でもあります。
相続財産の概算をつかむ段階では、この評価額を参考にすると大まかな不動産の規模や相場感を共有しやすくなります。
ただし、固定資産税評価額は市場価格とは一致していません。地域にもよりますが、市場価格より低めに設定されていることが多く、「売却できる金額」とは別物です。あくまで“最初の目安”として捉え、これだけで不動産の価値を判断しないことが大切です。
相続人間で前提をそろえるための土台として、まずはこの評価額を確認する流れが自然です。
路線価方式で土地の価値を算定する
相続税の申告において、土地の評価に使われるのが「路線価方式」です。国税庁が毎年公表する路線価図から、土地が接している道路の価値(1㎡あたりの単価)を確認し、敷地の広さや形状などを加味して計算します。
固定資産税評価額よりも相続税に直結する性質を持つため、相続の場面ではこちらの評価が重視されます。
路線価方式は、同じ地域でも通りによって単価が異なるなど、かなり細かい評価が行われます。土地の形状や奥行きによって補正が必要になるケースもあり、慣れていないと計算が難しいと感じやすい方法です。
実勢価格・査定価格で市場価値を確認する
実際に売却した場合の金額に近いのが「実勢価格」です。不動産会社が行う査定や、近隣の成約事例を参考にすると、市場でどれほどの価値があるかを把握できます。
遺産分割の協議では、相続人それぞれが納得できる基準として、この市場価格が重要になります。
査定は不動産会社によって金額の幅が出るため、複数社に依頼して傾向を見ると判断しやすくなります。売却を前提としていなくても、市場価格を知ることで「家を残すべきか」「現金化すべきか」といった判断材料が整います。特に、相続人の意見が割れやすい都市部や人気エリアでは、この実勢価格が協議全体の方向性を左右することもあります。
相続税評価額と売却見込み額の違いを理解する
相続の場面では、「相続税評価額」と「売却見込み額(市場価格)」が大きく異なることを理解しておかなければなりません。
相続税評価額は税務上の基準であり、売却を前提とした評価ではありません。地域の需要や建物の状態、周辺環境など、市場で価格を左右する要素は相続税評価に反映されていないことが多いのです。
相続人の中には「相続税評価額が高いから高く売れるはず」と誤解する人もいますが、現実には逆転するケースも見られます。
不動産相続でもめる典型的なケース
不動産を相続する場面では、相続人の生活状況や価値観の違いが表面化しやすく、協議が難航することがあります。家や土地は簡単に分けられず、一つの判断に複数人の合意が必要になるため、話し合いの途中で意見がぶつかることも珍しくありません。
ここからは、実務でも相談が集中しやすい典型的な争い方を取り上げ、それぞれがどのような構図で対立を生むのかを具体的に説明します。
- 実家を誰が相続するかで意見が対立する
- 売却・維持・賃貸など方針が一致せず協議が進まない
- 共有名義のまま放置され管理負担が一部に偏る
- 相続人の一部が無断で居住・利用してトラブルになる
- 連絡不能の相続人がいて遺産分割協議が成立しない
- 生前贈与や援助への不公平感から配分争いが起きる
それぞれ個別にみていきましょう。
実家を誰が相続するかで意見が対立する
家の相続では、相続人の立場や生活環境によって希望が分かれやすく、協議がまとまりにくくなります。自宅として使い続けたいと考える相続人がいる一方、遠方に住んでいる人や、すでに持ち家がある人にとっては実家を引き継ぐ必要性がありません。
この違いが「誰が実家を取得するべきか」という根本的な対立を生みます。特に、一人が居住を望んでいる場合、その人が他の相続人に対して金銭的な調整(代償金)を支払う必要が生じます。
しかし、この金額の妥当性について相続人同士の評価が一致しないことが多く、話し合いが長引く原因になります。
売却・維持・賃貸など方針が一致せず協議が進まない
不動産の扱い方は相続人によって考え方が大きく異なります。売却して現金化することを望む人もいれば、思い出のある家を残したいと考える人、賃貸に出して収益化したいと考える人など、方向性が揃わないまま議論が始まると調整が難しくなります。
維持には固定資産税のほか、老朽化した建物の修繕費や管理の手間もかかります。売却派からすれば維持コストは負担であり、早期に現金化したいという考えにつながります。
一方、維持派は「急いで売る必要はない」と判断することが多く、時間の感覚にも大きな差が生まれます。賃貸を検討する場合も、借主が付くかどうか、必要な初期投資を誰が負担するのかといった点で意見が割れがちです。
共有名義のまま放置され管理負担が一部に偏る
相続後に共有名義となった不動産は、意思決定のたびに相続人全員の同意が必要になります。売却や賃貸といった大きな判断に限らず、庭木の手入れや修繕といった日常的な管理でも、誰がどの程度関わるべきかを巡って不満が生まれやすい傾向があります。
特に、実家の近くに住んでいる相続人が日常の管理を担い、他の相続人は何も関与しないという状況が続くと、不公平感が強くなります。「自分だけが管理に時間と費用をかけている」という思いが膨らむ一方、遠方に住む相続人はその負担を十分に理解できず、話し合いの際に温度差が露呈します。
さらに、売却しようとしても一人でも反対すれば手続きが進まないため、共有状態が長期化しがちです。
相続人の一部が無断で居住・利用してトラブルになる
相続手続きが終わっていない段階で、特定の相続人が実家を独占的に使い始めると、ほかの相続人との摩擦が生じやすくなります。
本来、不動産は相続人全員の共有財産であり、誰か一人が許可なく使用すると、「自分たちの持分が侵害されている」と感じる相続人が出てきます。居住を続ける側に悪意がなくても、他の相続人から見れば「勝手に家を使っている」という印象が強く、不信感が積み重なりやすい状況となります。
無断使用が続くと、使用している相続人に対して「使用料相当額」を請求できる場合があります。これは、家賃のような性質を持つもので、共有者の一人が単独で利益を得ている状態を調整するための考え方です。
しかし、請求の可否や金額の妥当性について相続人同士で解釈が異なり、さらに対立を深めることもあります。
連絡不能の相続人がいて遺産分割協議が成立しない
遺産分割協議は相続人全員の参加が前提となっているため、誰か一人でも連絡が取れなくなると話し合いそのものが成立しません。遠方に住んでいる、連絡先がわからない、そもそも関係が疎遠で連絡がつかないといった状況は、実務でもしばしば見られます。
相続の話題に消極的で意図的に応じない相続人がいるケースでも、協議は前に進みません。連絡不能の状態が続くと、家庭裁判所で「不在者財産管理人」の選任を申し立てる手続きが必要になります。
この管理人が、連絡の取れない相続人に代わって協議に参加する仕組みですが、申し立てから選任まで一定の時間がかかります。費用負担も生じるため、相続人にとって負担が増える要因になります。
生前贈与や援助への不公平感から配分争いが起きる
相続では、親から受けた生前贈与や過去の生活支援への捉え方が相続人ごとに異なり、その差が配分争いを引き起こしやすくなります。「あの時だけ特別に援助を受けていた」「住宅資金を支援してもらっていた」などの認識が残っていると、遺産分割の場面で過去の支援をめぐる不満が表面化しやすくなります。
法律上は「特別受益」や「寄与分」という考え方があり、生前贈与があった場合には相続分を調整することがあります。
しかし、この判断は一般の相続人には理解しづらく、「どこまでを生前贈与とみなすか」「その価値をどのように評価するか」などが曖昧になりやすいため、協議がかえって紛糾することがあります。
不動産相続でもめてしまった場合の対応手順
相続で意見がぶつかってしまったとき、感情的な対立だけが原因のように見えても、実際には「前提条件がそろっていない」「話し合いの形式が整っていない」といった構造的な理由が背景にあることが多いものです。
対立を放置しても問題は解決せず、不動産の劣化や固定資産税の負担など、むしろ状況が悪化してしまいます。
争いが始まってしまった段階でどのように協議を再構築し、前に進めていくべきかについて、対応手順を整理すると以下のようになります。
- 手順①:相続人全員で協議の場をあらためて設定する
- 手順②:不動産の評価額・維持費・権利関係を整理する
- 手順③:共有状態の解消方法(買取・代償・売却)を検討する
- 手順④:専門家に仲裁役として入ってもらう
- 手順⑤:調停・審判など法的手続きで解決を図る
次項より、詳しく解説します。
手順①:相続人全員で協議の場をあらためて設定する
相続でもめているときほど、あらためて「正式な協議の場」を持つことが必要になります。家族同士の雑談レベルで意見をぶつけ合っても、論点が散らばってしまい、かえって対立が深まることもあります。
誰がどのような意向を持っているのか、相続人全員が同じテーブルに座り、ひとつずつ確認していく場を整えることが出発点になります。
この段階で大切なのは、全員が参加していることを明確にすることです。誰かが話し合いに消極的な状態のまま協議を続けても、不動産の売却や分割は前に進みません。また、相続人同士だけでの話し合いが難しいと感じる場合には、早い段階で第三者に同席を依頼する方法もあります。
手順②:不動産の評価額・維持費・権利関係を整理する
話し合いの前提条件として、不動産に関する情報を相続人間で共有しておくことが必要です。価値について意見が割れる理由は、評価額を示す基準が複数あることや、誰がどの費用を負担してきたのかが曖昧なまま協議が始まるためです。
固定資産税評価額、路線価、査定価格など、それぞれの意味や用途を整理し、どの基準を話し合いの前提にするのかを全員で確認しておくことで、「いくらの財産をどう分けるか」の土台が整います。
同時に、これまでの維持費の支払い状況も整理しておく必要があります。管理を一人が担ってきた場合、その負担をどう考えるかは協議の過程で避けて通れません。
手順③:共有状態の解消方法(買取・代償・売却)を検討する
協議の前提が整理できた段階では、共有状態をどのように解消するかを検討する局面に進みます。不動産を複数人で共有している限り、意思決定のたびに全員の合意が必要になり、管理と調整の負担は続きます。
相続人の誰かが将来も不動産を持ち続けたいと思っていても、ほかの相続人が負担の偏りに納得できなければ共有のままでは問題が解決しません。
共有を解消する方法としては、主に三つの方向性があります。
- 相続人の一人が他の持分を買い取る方法(買取・代償分割)
- 不動産を売却して現金で分ける方法(換価分割)
- 不動産会社による持分買取を利用する方法
どの方法が適切かは、相続人の生活事情や不動産の状態によって変わります。共有を続けることが対立の元になっているなら、早い段階で解消の方向性を検討することが有効です。
手順④:専門家に仲裁役として入ってもらう
相続人同士での協議が進まないと感じたときは、第三者である専門家に仲裁役として入ってもらうことが現実的な選択肢になります。相続の話し合いには法律、税金、不動産の評価など複数の専門領域が関わるため、家族だけで判断するには限界があります。
専門家が同席することで、感情のぶつかり合いを避け、論点を整理しながら協議を進めやすくなります。
弁護士は相続人間の対立が深い場面で調整役を担いますし、司法書士は登記や共有関係の整理に詳しく、相続の手続き全体を把握しながら助言ができます。
手順⑤:調停・審判など法的手続きで解決を図る
協議や専門家の仲裁でも合意に至らない場合、家庭裁判所で調停や審判に進む選択肢があります。相続人全員が同意しない限り遺産分割は成立しないため、行き詰まった状態をそのままにしておくと、不動産は活用できず維持費だけがかかり続けます。
調停は、第三者である調停委員を交えて話し合いを進める手続きを指し、紛争を和らげながら合意点を探る仕組みです。
調停でも折り合いがつかない場合は、家庭裁判所の審判によって分割方法が決定されます。これは裁判所が法令に基づいて客観的に判断するため、相続人の意向がすべて反映されるわけではありません。
ただ、話し合いが完全に停滞している状況を動かす力があり、実務でも一定数利用されています。
不動産相続でもめないようにするための予防策
不動産が関わる相続では、揉めごとが表面化する前にどれだけ準備しておくかが大きく影響します。相続時に起きる対立の多くは、事前に情報が共有されていない、あるいは不動産の扱いが曖昧なまま時間だけが経過していくことで生じています。
ここからは、相続トラブルを避けるために生前から取り組める代表的な方法を解説します。
- 遺言書で不動産の扱いを明確に決めておく
- 相続人へ資産内容・維持費・将来負担を事前共有しておく
- 共有名義を回避する分割方法を早い段階から検討しておく
- 生前から相続人が対話できる環境を整えておく
- 専門家の関与により相続プランを見直しておく
それぞれ個別にみていきましょう。
遺言書で不動産の扱いを明確に決めておく
不動産を相続する場面で頼りになるのが遺言書です。遺言書があれば、誰がどの不動産を取得するのか、あるいは売却して現金化するのかといった判断が明確になります。家族内で意見が割れやすいテーマだからこそ、あらかじめ本人が意思を示しておくことで、相続人同士の衝突を避けやすくなります。
遺言がない場合、相続人全員で協議して結論を出す必要があります。しかし、実際には「自分が住み続けたい」「売却して分けたい」といった希望が交錯しやすく、まとまらない状態が長引きます。
遺言書に具体的な取り扱いを書き残しておけば、相続人はその意思を基準に判断できるため、不動産の処分に関する迷いが少なくなります。
相続人へ資産内容・維持費・将来負担を事前共有しておく
不動産相続で争いが起きる背景には、「どれほどの価値があるのか」「維持にいくらかかるのか」といった基本的な情報を家族が把握していないことがあります。前述のとおり、固定資産税、修繕費、管理にかかる手間など、実際に所有してみると負担は小さくありません。
こうした情報を生前に共有していないと、相続発生時に相続人の間で捉え方に差が生まれ、「聞いていなかった」「こんなに費用がかかるとは思わなかった」といった不満が積み重なります。
資産内容の共有と聞くと堅苦しい印象がありますが、難しいものではありません。固定資産税の通知書や管理状況のメモを家族に見せるだけでも、相続する側の理解は大きく変わります。
共有名義を回避する分割方法を早い段階から検討しておく
不動産を複数人で共有する形は、相続後の管理や意思決定を難しくする要因になりがちです。相続発生後に共有名義を解消しようとしても、相続人の意見が揃わず、結論が出るまでに長い時間を要することがあります。
こうした状況を避けるには、生前の段階で「誰がどの財産を引き継ぐのか」を検討し、共有名義にならない分割方法を整理しておくのが効果的です。
具体的には、特定の相続人が不動産を取得し、ほかの相続人には金銭で調整する代償分割という方法があります。また、不動産を残すことにこだわらず、あらかじめ売却して現金化しておく選択も現実的です。
いずれの方法でも、不動産という分けにくい財産をめぐる調整を、生前に整理しておくことで相続人の負担は大きく減ります。
生前から相続人が対話できる環境を整えておく
相続は資産の分配だけでなく、家族関係や価値観が交わる場面でもあります。生前に家族が自然に話し合える環境が整っていると、相続の際に意見がぶつかりにくくなります。
具体的な議題を設けずとも、日常の会話の延長線上で「実家をどうするか」「不動産の管理をどう考えているか」といったテーマに触れられるだけでも、相続人の理解は深まります。
この段階では、結論を出すことが目的ではありません。相続人が気軽に意見を言えるような雰囲気を作ることで、相続発生後の協議でも対話の基盤が保たれます。普段から情報を共有し、価値観の違いを認識し合うことで、相続時の議論が建設的に進みやすくなります。
専門家の関与により相続プランを見直しておく
相続の準備を進める際、専門家に相談することで選択肢の幅が大きく広がります。不動産の評価や相続税の試算、分割方法の検討など、家族だけでは判断が難しい部分を客観的に整理してもらえるため、計画全体が具体的になります。
特に、不動産を含む相続では評価方法が複雑で、誤解が生じやすい点が多いことから、早めに専門家の目を入れることに意味があります。
生前のうちに専門家へ相談すれば、遺言書の内容を整えることもでき、税負担の見通しも具体的に把握できます。また、家族の状況に応じて無理のない分割方法を提示してもらえるため、感情だけで判断が偏ることを避けられます。
相続不動産を分割することになった場合の分け方
不動産は現金のように等分しにくい財産であるため、どのように分けるかを明確にしないと、協議が前に進みません。相続人の生活事情や不動産の性質によって適した方法は異なり、判断を誤ると後のトラブルにつながることもあります。
ここからは、相続の実務でよく利用される代表的な分割方法を取り上げ、それぞれの特徴と検討すべき点を整理します。
現物分割で不動産を物理的に分けて取得する
現物分割とは、不動産そのものを物理的に区分して相続人ごとに取得する方法です。土地の広さに余裕があり、複数の区画として利用できる場合に検討されます。建物を取り壊して土地を分筆するケースもありますが、現実には法規制や形状の問題など、分筆が可能な状況は限られています。
現物分割がうまく機能するのは、区画ごとに価値の差が大きくなく、相続人がそれぞれ独立して利用したい場合です。
ただ、建物がすでに建っている住宅地では、建物の解体費用や再建に関する負担も考慮する必要があります。無理に現物分割を選ぶと、いたずらにコストが増えるだけの結果になりかねません。
代償分割で一人が不動産を取得し他の相続人へ金銭で調整する
代償分割は、不動産を相続人の一人が取得し、その代わりに他の相続人へ「代償金」を支払うことでバランスを取る方法です。現物分割が難しい場合に選ばれることが多く、相続人の中に不動産を引き継いで住み続けたい人がいる場合に適した分割方法です。
代償分割を進める際の注意点は、代償金の額をどのように決めるかです。不動産の市場価格や相続税評価額、査定結果など、複数の基準を踏まえて算定しますが、相続人によって価値の捉え方が異なるため、合意形成が難しい場面もあります。
公平性を保ちながら特定の相続人が不動産を取得できる点では合理的な方法ですが、金銭の算定と支払い計画を丁寧に詰めることが求められます。
換価分割で不動産を売却し現金を按分する
換価分割は、不動産そのものを相続人が引き継ぐのではなく、売却して現金化した上で公平に分ける方法です。不動産は価値が一体化しており、相続人それぞれが等しく取得するのが難しいため、現金という形に変えることで分割の手続きがシンプルになります。
相続人の生活環境がばらばらで、誰も不動産を使う予定がない場合には特に選ばれやすい方法です。
売却を前提とするため、不動産会社の査定を複数取り、市場価格の妥当性を確認してから進めるのが一般的です。売却額が明確になれば、その金額を基準に相続分を計算できるため、相続人間で「どのくらいの価値があるのか」を巡って認識がずれる可能性が小さくなります。
また、維持管理の負担を誰が担うかで揉める心配もなくなり、相続開始後の管理コストを極力抑えることにもつながります。
共有分割で複数人が持分を持ち合う形を継続する(※非推奨)
共有分割は、不動産を売却せず、相続人がそれぞれ一定の割合の「持分」を取得して共有状態を維持する方法です。手続き上は簡単に見えますが、実務では将来の管理や意思決定が複雑になりやすく、慎重に判断すべきといえます。
共有者が複数いる場合、売却・賃貸・大規模修繕といった重要な決定は原則として全員の合意が必要になるため、相続後に話し合いが停滞するリスクが高まります。
また、不動産の管理を誰が担うのかという問題も避けられません。実家の近くに住む相続人だけが草刈りや修繕を続けるなど、負担に偏りが生まれる状況は実務でもよくみられます。さらに、共有状態が長期化すると、相続人が増える「数次相続」が起こり、関係者が増えて意思決定がいっそう難しくなることもあります。
こうした理由から、共有分割は一時的な選択にとどめ、本来は早い段階で共有状態を解消する方針を検討することが望ましい方法です。
不動産を相続放棄する場合の注意点
不動産を相続することが負担になると考えた相続人が、相続放棄という選択肢をとるケースもあります。固定資産税や修繕費が重荷になることや、遠方で管理が難しいといった事情が理由になりかねません。
ただし、相続放棄には特有のルールや制約があり、仕組みを理解せずに手続きを進めると、予期せぬ負担が残ることがあります。ここからは、相続放棄を検討する際に押さえておくべきポイントを説明します。
- 相続放棄は家庭裁判所での申述が必要となる
- 放棄後も管理責任が残る場合がある
- 他の相続人に権利と負担が移る
- 相続放棄は原則として撤回できない
それぞれ個別にみていきましょう。
相続放棄は家庭裁判所での申述が必要となる
相続放棄は、単に「いらない」と宣言すれば成立するものではありません。家庭裁判所に対して正式な申述を行い、受理されることで初めて効力が生じます。申述には期限があり、原則として相続の開始を知った日から3か月以内に手続きを行う必要があります。
この期間内に判断しなければならないため、迷ったまま時間だけが過ぎてしまうと、放棄が認められなくなってしまいます。
家庭裁判所での手続きは書面中心で行われますが、不備があると受理されず、再提出が必要になることもあります。不動産に関わる相続放棄は判断材料も多いため、期限内に適切な判断を下すためには、早めに必要書類を確認しておきましょう。
放棄後も管理責任が残る場合がある
相続放棄をしたからといって、直ちに不動産の管理から完全に解放されるわけではありません。相続放棄は「最初から相続人ではなかった」という扱いになりますが、次の相続人が決まるまでの間、最低限の管理責任が残ることがあります。
例えば、倒壊の危険がある建物を放置して周囲に損害を与えた場合、管理を怠ったとして責任を問われる可能性があるため注意が必要です。
特に、所有者不明土地の問題が社会的に注目されるようになってからは、管理のあり方に対する責任も意識する必要があります。相続放棄は不動産の維持負担を避ける方法として有効ですが、「放棄すればすべての責任から離れられる」という認識は正確ではありません。
他の相続人に権利と負担が移る
相続放棄をすると、その相続人は法律上「はじめから相続人ではなかった」扱いになるため、ほかの相続人が順番に繰り上がって遺産を引き継ぐことになります。結果として、不動産の権利だけでなく管理負担も他の相続人にそのまま移る形です。
この仕組みは、家族間の関係に影響を与えることがあります。放棄した相続人の判断によって、兄弟姉妹に過大な負担がかかると、不満や誤解が生じかねません。
また、放棄した人が「管理や固定資産税から離れたい」と考えていたとしても、その分の負担が家族内で誰か一人に集中する場合があるため、相続人同士で事前に理解を共有しておくことが大切です。
相続放棄は原則として撤回できない
相続放棄は一度成立すると、原則として撤回できません。申し立て後に状況が変わったとしても、「やはり相続したい」と考え直すことは認められていません。放棄を選ぶ前には、不動産の価値や管理責任、家族内での影響などを十分に検討しておく必要があります。
不動産の場合、将来売却して高値がつく可能性があったり、利用方法によって収益が生まれる余地があったりすることもあります。短期的な負担だけを見て判断すると、後で後悔してしまいかねません。
放棄という選択が取り返しのつかない決定であることを理解し、生前の対話や専門家の助言を取り入れながら慎重に進めることが合理的です。
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協議が長期化すると管理責任や固定資産税だけが残り、さらに状況が複雑になりかねません。当社では、共有持分の単独買取や、再建築不可物件・空き家の現状買取など、通常の市場で扱いづらい不動産にも対応しています。
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FAQ:不動産相続のトラブルに関するよくある質問
不動産相続に関するトラブルは、家庭ごとの状況や背景によって表れ方が異なります。ただ、実際の相談内容を見ていくと、共通して悩まれやすいポイントや、誤解されやすい点があるのも事実です。
ここからは、不動産相続でもめる場面で多く寄せられる質問を取り上げ、考え方の整理に役立つ視点を紹介します
相続で揉める家族にはどのような特徴がありますか?
相続が対立に発展しやすい家庭は、情報共有が乏しいまま話し合いに入ってしまう傾向があります。不動産の評価額や維持費を誰も正確に把握しておらず、それぞれが独自の前提で主張し合うと交渉はすれ違いがちです。
不動産が3,000万円の場合、相続税はどの程度になりますか?
不動産3,000万円がそのまま相続税額になるわけではありません。課税対象となるのは「相続税評価額」であり、一般的に市場価格より低めに算定されます。
加えて、基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)が適用され、実際に税額が発生するかは相続人の人数やほかの財産の有無によって変わります。
遺産相続で揉めた際にはどのような手続きが必要になりますか?
協議がまとまらない状態が続く場合、家庭裁判所での調停を利用する方法があります。調停では専門家が間に入り、相続人同士が冷静に話し合える環境を整えます。調停でも合意に至らなければ、裁判所が分割方法を決める審判へ移行します。
相続でもめる原因の上位にはどのような要素がありますか?
不動産の評価に関する認識のズレ、維持費や管理負担の偏り、生前贈与をめぐる不公平感などが、相続トラブルの典型的な要因として挙げられます。とくに不動産は数値化が難しく、相続人ごとに価値の捉え方が異なるため、話し合いが行き詰まりやすくなります。
また、家への思い入れや親との関わり方の違いが感情面の対立を生むこともあります。こうした複合的な要素が絡むため、相続の話題は早めに共有し、議論の前提をそろえておくことが大切です。
まとめ
不動産相続でもめる背景には、分割の難しさや評価額の違い、将来の負担に対する認識のズレがあります。実家の扱いや共有状態の継続を巡って意見が割れると、話し合いは長期化し、管理や税負担だけが残ることになりがちです。
こうした状況を避けるには、相続発生後に慌てて判断するのではなく、前提となる情報を整理し、選択肢を冷静に比較する姿勢が求められます。
すでにもめている場合でも、評価額や権利関係を整理し、共有の解消や売却といった現実的な対応を検討することで、状況を動かすことは可能です。また、遺言書の作成や資産内容の共有など、生前から準備しておくことで、相続時の対立を抑えやすくなります。
不動産相続は感情と実務が交錯する場面です。問題を先送りにせず、早い段階で話し合いと整理を進め、無理のない形で解決策を選択しましょう。


















