こんにちは。ワケガイ編集部です。
親や配偶者など、家族と不動産を共有している中で、その共有名義人が亡くなった場合、残された人は相続手続きに向き合うことになります。
特に共有名義の不動産では、「亡くなった人の持分がどうなるのか」「誰がどのように相続するのか」がすぐには明確にならず、判断や対応に迷う方も多いのではないでしょうか。
共有持分は自動的に他の共有者へ移るわけではなく、原則として法定相続人が相続し、登記を通じて正式に承継する必要があります。
本記事では、不動産の共有名義人が死亡した場合の相続の流れや注意点、生前からできる対策について、丁寧に解説していきます。
目次
不動産の共有名義人の片方が死亡した場合、持分はどうなるのか?
家族や親しい人と共有していた不動産。もしその相手が亡くなったとき、残された自分には何が起きるのか、不安に感じる方も多いはずです。
まず押さえておきたいのは、共有名義人の一人が亡くなっても、その持分が自動的に他の共有者に移るわけではないという点です。亡くなった方の持分は、他の財産と同様に「相続財産」として扱われ、法定相続人に引き継がれます(民法896条)。
たとえば、父と息子で2分の1ずつ所有していた家であれば、父の持分は配偶者や他の子どもと分け合う形で相続されます。息子が自動的に父の分まで取得することはありません。
相続人が複数いれば「誰がどのように持分を引き継ぐか」を話し合う必要があり、合意に基づいて登記を変更することで、ようやく新たな権利関係が成立します。
戸惑いや迷いがあるのは当然のことです。焦らず、一つずつ整理していきましょう。
関連記事:共有持分は相続するべき?分割方法やトラブルの回避方法を解説
相続人がいない場合はどうなる?
では、亡くなった共有名義人に法定相続人が一人も存在しない場合、あるいは相続人が全員相続放棄した場合、その持分は誰のものになるのでしょうか。
この点について、民法第255条は次のように定めています。
“共有者の一人がその持分を放棄したとき、又はその者が死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する”
つまり、相続人がいない場合には、亡くなった人の持分は他の共有者が引き継ぐことになります。この仕組みは、不動産の所有権が分散・漂流するのを防ぎ、できる限り集約しておくことが望ましいという考えに基づいています。
ただし、実務上はこの帰属が自動的に成立するわけではありません。相続人がいないことを正式に確定させるためには、家庭裁判所によって「相続財産管理人」が選任され、相続人の捜索や債務の清算などの手続きが必要となります。
さらに、被相続人に内縁の配偶者や介護に尽くした親族がいた場合、「特別縁故者」として家庭裁判所に申し立てを行えば、共有持分を含む財産の一部を受け取ることが認められる可能性もあります(民法958条の3)。
最終的に、相続人も特別縁故者もおらず、清算後に財産が残った場合にのみ、他の共有者へ持分が帰属するという順序が法的には定められています。
共有名義人の片方が死亡した場合の相続登記の流れ
身近な人を失った後、日常を取り戻す間もなく、さまざまな手続きが待っています。不動産の共有名義人が亡くなった場合、その持分について「相続登記」を行わなければなりません。
相続登記とは、亡くなった方の名義となっている不動産の権利関係を、相続人へと正しく引き継ぐための手続きです。共有不動産であっても、この登記を行わなければ、不動産を売却したり、金融機関の担保にしたりといった行為ができなくなります。
2024年4月の法改正により、相続登記は原則として3年以内に行うことが義務となりました。故人の持分が宙に浮いたまま放置されると、後になって権利関係が複雑になり、解決が困難になるケースもあります。
ここでは、共有名義不動産の片方の所有者が亡くなった場合に必要となる相続登記の流れを、ひとつずつ見ていきましょう。
手順①:亡くなった方の名義の状況を確認する
まず最初に、不動産の登記簿を取り寄せて、亡くなった方がどの物件の「どのくらいの持分」を保有していたのかを確認します。登記事項証明書の「権利部(甲区)」を見れば、共有状態かどうか、持分割合がいくらかが明記されています。
共有者の死後は、こうした基本情報が今後の方針を決める出発点になります。確認が不安な場合は、司法書士など専門家のサポートを受けるのも一つの方法です。
手順②:相続人を確定する
次に行うのは、故人の法定相続人を確認する作業です。配偶者や子がいればその人たちが該当しますが、場合によっては親や兄弟姉妹になることもあります。
正確に確認するには、戸籍を出生から死亡までたどらならければなりません4。相続人が複数いれば、後の登記や協議にも関わってくるため、この段階で丁寧に確認しておきましょう。
手順③:遺産分割協議(または法定相続分で登記方針を決める)
相続人が複数いる場合、誰が不動産の持分を相続するかを話し合う必要があります。これが遺産分割協議です。
協議が整えば「協議書」を作成し、それに基づいて登記を行います。一方、協議が難航する場合や先に登記を済ませたい場合は、法定相続分に沿った暫定的な登記も可能です。いずれにしても、登記前に相続人間の合意が必要となります。
手順④:相続登記を行う
持分を誰が引き継ぐかが決まったら、法務局で相続登記の申請を行います。登記簿の名義を正式に更新することで、不動産の所有者としての権利が確定します。
登記に必要な主な書類は以下のとおりです。
<相続登記に必要な書類>
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの一式)
- 相続人全員の戸籍謄本および住民票
- 該当不動産の登記事項証明書
- 固定資産評価証明書
- 遺産分割協議書(協議を行った場合)
- 相続登記申請書
なお、不動産の共有持分のみを相続する場合は、相続税の課税ライン(基礎控除)を超えないと考えられますが、預貯金など他の財産と合わせると課税対象となることもあります。遺産全体の評価額を把握し、税務署や専門家に確認しておくと安心です。
書類の不備による補正通知も少なくないため、不安があれば司法書士に相談して進めるのも良い選択肢です。
共有名義人の片方が死亡した後の相続における注意点
ここまでみてきたように、共有者の一人が亡くなったあとの相続そのものは避けられない出来事です。しかし、事前の知識がないまま手続きを進めると、知らぬ間に不動産が“動かせない資産”になってしまうこともあります。
そのため、ここでは、共有名義人が死亡したあとに起こりがちな問題と、その背景にある注意点を解説します。
相続人全員の同意がなければ不動産を動かせない
たとえ共有者だったとしても、他の人の持分を含めて勝手に不動産を売ったり貸したりすることはできません。相続が発生してその持分を誰かが承継した場合、その新しい相続人を含めて“全員の同意”がなければ、不動産を処分することはできないのです。
つまり、従来は家族間で意思疎通が取れていたとしても、新たに相続人が加われば、それまでの合意形成のやり方が通用しなくなることもあるのです。
たとえば、「売却して分けたい」と考えていても、1人だけが同意しなければ、その話は前に進みません。相続は人間関係の延長線上にあるという現実を見据えた対応が必要です。
関連記事:第三者への共有持分売却で、他の共有者の同意は不要!よくあるトラブルやルールを紹介
知らなかった相続人が現れるケースもある
共有者が亡くなったとき、相続人は配偶者や子だけとは限りません。被相続人に前婚の子どもがいたり、認知していた子どもがいたといった事実が、相続開始後に初めて判明することも珍しくありません。
あるいは、本人が絶縁状態にあった兄弟姉妹が法定相続人として登場することもあります。こうした事態は、遺産分割協議の進行を難しくし、不動産の処分や管理の足かせになります。
相続人を確定させるためには、出生から死亡までの戸籍をさかのぼって確認する作業が欠かせません。見落としや想定外の相続人がトラブルの火種にならぬよう、丁寧な確認が必要です。
遺産分割が長引くと登記や管理に支障が出る
不動産の名義変更、つまり相続登記は、相続人間で遺産分割の合意ができなければ実施不可能です。
この合意がまとまらないまま年月が過ぎてしまうと、不動産は「法的には誰のものでもあるけれど、実際には誰のものでもない」という扱いに陥ってしまいます。その結果として、修繕や賃貸、売却といった判断が下せなくなり、資産としての価値が徐々に損なわれていくおそれもあります。
また、名義変更をしないまま時間が経過すると、次の相続(いわゆる“数次相続”)が起きて、権利関係がさらに複雑になることも。大切なのは、「時間をかけないこと」です。早めに協議を始め、必要があれば専門家の助けを借りることが、結果的にご家族の負担を軽くします。
生前からできる共有名義の相続トラブルの回避策
共有名義人の死によって不動産の持分が相続されると、残された家族や親族が想定していなかった問題に直面することがあります。そこで重要になるのが、生前からの備えです。具体的な方法としては、以下のものがあげられます。
- 遺言書を作成し、持分の承継先を明確にしておく
- 生前贈与や持分整理をしておく
- 家族信託を利用する
それぞれ個別にみていきましょう。
遺言書を作成し、持分の承継先を明確にしておく
共有名義の不動産について、誰にどのように持分を引き継ぐかをはっきりと示しておくことは、相続後の混乱を防ぐ最も効果的な方法のひとつです。
遺言書があれば、遺産分割協議を省略できる場合もあり、相続人間の調整が必要なくなるケースもあります。たとえば「持分を長男にすべて相続させる」などと記しておけば、明確な指針となり、意図しない共有状態を回避できます。
ただし、遺言の内容によっては遺留分との調整が必要になる場合もあるため、作成時は専門家に確認をとると安心です。
関連記事:共有持分を遺言書で相続させることは可能?効力や手続きの流れを詳しく紹介
生前贈与や持分整理をしておく
不動産の共有状態は、管理や売却の自由度を下げ、将来の争いの火種にもなりがちです。そこで、本人が元気なうちに持分を整理しておくという選択肢があります。
たとえば、信頼する家族のひとりに生前贈与で持分をまとめたり、逆に自分の持分を手放すことで、相続の際に複雑な調整を避けることが可能になります。
なお、生前贈与には贈与税が課される場合もあるため、税制上の負担も含めて慎重に検討する必要があります。時間的な余裕があるうちに動き出すことが、後悔のない備えにつながります。
家族信託を利用する
高齢の共有者が自らの意思で不動産の管理や承継を委ねておきたい場合には、「家族信託」を活用する方法があります。
家族信託とは、あらかじめ信頼できる家族に対して、財産の管理や処分を任せておく制度です。たとえば、将来の判断能力の低下や死後の相続に備えて、持分を管理する人を指定しておくことで、柔軟な運用が可能になります。
遺言と異なり、生前から効力を発揮する点が特徴で、「もしものとき」にも資産の流れをコントロールしやすくなります。特に共有名義の物件においては、信託の活用により、持分ごとの管理負担や不透明性を減らすことができます。
関連記事:共有持分の家族信託にメリットはある?トラブル防止に繋がる必要知識を解説
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まとめ
不動産を共有していた家族が亡くなったとき、その共有持分の相続は法律に則って進める必要があります。法定相続人がいれば登記によって名義を変更し、いなければ特別縁故者の手続きや最終的な持分帰属の確認が必要です。
こうした相続手続きを放置すると、不動産の管理・処分ができなくなり、次の相続にまで影響が及ぶことがあります。登記の義務化も始まった今、早めの対応が大切です。
さらに、将来の相続トラブルを防ぐには、生前から持分整理や遺言書の作成、家族信託の活用といった対応をとっておくことも有効です。
いずれにせよ、大切なのは先送りせず、正確な手続きを一つずつ進めていくことです。必要に応じて専門家の力も借りながら、負担の少ない形で相続を乗り越えていきましょう。