事故瑕疵物件

事故物件の告知義務はいつまで続くのか?告知しなかった場合どうなる?

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事故や自殺などの痛ましい出来事が発生した事故物件は、そのままでは売却や利活用が難しいだけでなく、物件に起きた出来事の告知義務が発生します。

今回の記事では、事故物件を取り扱う際には必須となる告知義務について解説しますので、ぜひ参考にしてください。

そもそも瑕疵(かし)の告知義務とは?

瑕疵(かし)とは、「一般的に備わっていて当然の機能が備わっていないこと」を意味する言葉であり、事件や事故などが起きた不動産もこの瑕疵を抱えることになります。

瑕疵が発生した物件オーナーは、売買・賃貸活用時に瑕疵の内容について売り手や入居希望者に告知する義務があり、これは宅地建物取引業法第47条において定められています(1)。

 心理的瑕疵物件とは?

事故や自殺などによって発生した瑕疵は「心理的瑕疵」として扱われ、当該物件は事故物件とされるようになります。心理的瑕疵とは、物件の土地・家屋に物理的な損傷はないものの、利用者に対し心理的なマイナスイメージを与えるものです。

一方で、心理的瑕疵は受け取り手次第によって影響度合いが異なり、「物件内で事故が発生したから心理的瑕疵物件として扱う」といったような、明確な判断基準が存在しません。

そのため、心理的瑕疵になり得ると思われる出来事が起きた物件と事故物件とするのかどうかについては、専門家の意見も仰ぎつつ決めていく必要があります。

 告知義務はいつまで発生するのか?

一度、事件・事故が起きてしまうと、物理的な損傷と違いその事実を消すことはできないため、必然的に心理的瑕疵の告知義務は消失せず、残り続けると認識しておきましょう。

「もう事故が起こってから何年も経っているから」といった理由で、自己判断により不動産売買や賃貸利用時などに告知を行わなければ、後から瑕疵について知った相手方とトラブルになる可能性があります。

 「入退去があれば告知義務はない」は間違い

「事故物件は心理的瑕疵が発生した後に入居者が入った事実があれば、心理的瑕疵が払拭される」という言説が一部で聞かれるケースもありますが、これは正確な捉え方ではありません。

心理的瑕疵について考える上で重要なのは「利用者がどう感じるか」です。そのため、「入居者が入った物件なら、そこまで瑕疵の内容については気にならない」と感じる人もいるでしょうが、もちろんその逆も考えられます。

前述の通り、心理的瑕疵についての線引きは不明瞭ですので、物件オーナーとしては心理的瑕疵は緩和されることはないと踏まえておく方が、その後に不利益を被るリスクを低減できます。

 今後は心理的瑕疵の判断基準が明確化される

心理的瑕疵の判断基準が不明確な点については、行政府も問題視しており、国土交通省の「不動産業ビジョン2030~令和時代の『不動産最適活用』に向けて~(概要)」(2)では、今後の問題解決を目指すべき要素のひとつに挙げられています。

現在はすでに「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」(3)が開かれ、心理的瑕疵を判断するためのガイドラインについて内容検討が行われていますので、今後数年以内に事故物件を取り巻く事情は変わっていくでしょう。

瑕疵の内容はどのタイミングで告知するべき?

事故物件の心理的瑕疵を告知するタイミングについては、基本的には物件の売却・賃貸活用に係る契約前と認識しておきましょう。

例えば、事故物件を売却する場合、心理的瑕疵の存在は売買契約書に明記し、契約締結前に告知しておかなければなりません。賃貸活用のケースでは、入居前に説明する必要があります。

 売買において告知義務を怠った場合

不動産売買において事故物件の心理的瑕疵に関する告知を行わずに売買契約を進めた場合、契約成立後に瑕疵について発覚すると宅地建物取引業法違反となりトラブルに発展するリスクがあります。そのようなケースでは、買い手側から損害賠償請求や契約解除を求められかねません。

さらに、前述のように心理的瑕疵の許容範囲は人によって異なるため、例えば「焼身自殺があった住宅を更地にして、土地のみを活用していた」場合などでも、告知義務に関して買い手側から責任を追求される可能性があります。

不動産取引における心理的瑕疵は、取引価格に影響を与えやすいため瑕疵が認められやすい傾向がありますので、売買契約時の告知内容については慎重に判断しましょう。

 賃貸利用で告知義務を怠った場合

事故物件を賃貸活用する場合も、入居時の説明で瑕疵の内容を借主に対して告知しておかなければなりません。もし、入居後に事故物件であることが発覚した場合、借主から貸主に対して損害賠償請求を起こされるリスクがあります。

例えば、平成26年の大阪地裁での判例では、入居直後に1年5ヶ月前に当該貸室で自殺事故があったことを知った借主が、貸主に対して退去費用などを請求しています(4)。

この事例では、最終的に貸主の告知義務違反として計104万円の支払いが命じられています。

まとめ

事故物件が抱える心理的な瑕疵については、告知義務が切れることはなく、その後も残り続けます。物件に発生した他の損傷と違い、心理的瑕疵については解消することは難しいと言えます。

物件が抱える瑕疵については、売却や賃貸活用を行う際に告知する義務がある一方で、心理的瑕疵の判断基準については判断基準が不明瞭である点がネックです。そのため、どの内容について告知を行うのかについては、外部専門家の判断も仰ぐようにしましょう。

参考:

※1 e-Gov 法令検索,「宅地建物取引業法」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC1000000176,(2022/02/24)

※2 国土交通省,「不動産業ビジョン2030~令和時代の『不動産最適活用』に向けて~(概要)」,https://www.mlit.go.jp/common/001287085.pdf,(2022/02/24)

※3 国土交通省,「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」,https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk3_000001_00015.html,(2022/02/24)

※4 一般財団法人不動産適正取引推進機構調査研究部,「心理的瑕疵の有無・告知義務に関する裁判例について」,https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001405336.pdf,(2022/02/24)

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