相続物件

「相続放棄してほしい」と親族から言われたらどう対応すべき?

「相続放棄してほしい」と親族から言われたらどう対応すべき?のサムネイル画像

こんにちは。ワケガイ編集部です。

相続財産に借金や老朽化した不動産が含まれている場合、相続を引き継ぐことで返済義務や維持管理の負担を背負うといった問題が発生します。その際に検討すべきなのが「相続放棄」です。

相続放棄とは、被相続人の財産を一切受け継がないことを家庭裁判所に申し出て、相続人としての地位を失う制度です。誤った手続きや理解不足により思わぬトラブルが生じることも少なくありません。

そこで本記事では、相続放棄の基本的な仕組みやメリット・デメリット、不動産を含む場合の注意点などをわかりやすく解説します。

【訳あり物件・不動産の処分・買取】
について今すぐご相談できます。
お電話での無料査定
9:00~18:00 / 定休日 日・祝・水
お電話での無料査定
0120-536-408
9:00~18:00 / 定休日 日・祝・水
タップで
お電話する

目次

そもそも「相続放棄」とは?基本を理解しよう!

まずは、「相続放棄とは何か」「どんな場合に行うのか」といった基本をおさえましょう。

制度の仕組みを正しく理解しておくことで、後の手続きや判断をスムーズに進められます。ここからは、相続放棄の位置づけや他の制度との違い、手続きの流れを順に確認していきます。

相続放棄・単純承認・限定承認の違い

相続には「相続放棄」「単純承認」「限定承認」という3つの選択肢があります。一見すると似ていますが、引き継ぐ財産の範囲や法的な効果が異なるため、混同しないよう注意が必要です。

区分内容主な特徴
単純承認財産も借金もすべて受け継ぐ方法一般的な相続で、借金がある場合も返済義務を負います。
限定承認財産の範囲内でのみ借金を返済する方法プラスの財産も残せる制度ですが、相続人全員の同意が必要です。
相続放棄財産も借金も一切引き継がない方法最初から相続人でなかったことになります。家庭裁判所での手続きが必要です。

そのため、被相続人に多額の借金がある場合は「相続放棄」を選ぶことで返済義務を免れることができます。一方で、財産も同時に放棄することになるため、どの制度を選ぶかは慎重に判断することが大切です。

相続放棄を申述できる条件と期限(3か月ルール)

相続放棄を行うには、いくつかの条件と期限が定められています。特に重要なのが「相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述する」という期限です。

この3か月間は「熟慮期間」と呼ばれ、相続財産の内容を確認し、放棄するかどうかを判断するための期間とされています。ただし、次のような事情がある場合には、家庭裁判所へ申立てを行うことで延長が認められるケースもあります。

  • 財産や借金の全容がすぐに把握できない場合
  • 相続人同士の話し合いが長引いている場合
  • 不動産や遺品の整理に時間を要する場合

この期間を過ぎてしまうと「単純承認」とみなされ、借金も含めて相続したことになります。期限を意識しながら、早めに判断と準備を進めることが大切です。

申述手続きの流れと必要書類

次に、実際に相続放棄を行う際の手続きの流れを見ていきましょう。相続放棄は家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出して行います。手続き自体は複雑ではありませんが、書類の不備や期限の超過には注意が必要です。

<相続放棄の一般的な流れ>

  • 被相続人の死亡を確認し、財産状況を調べる
  • 管轄する家庭裁判所(被相続人の最後の住所地)を確認する
  • 「相続放棄申述書」を作成する
  • 必要書類を添付して提出する
  • 家庭裁判所から届く「照会書」に回答する
  • 受理通知を受け取れば手続き完了

提出が必要な書類は、以下のとおりです。

<相続放棄で提出が必要な書類>

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本
  • 申述人(放棄する人)の戸籍謄本
  • 収入印紙(800円分)および郵便切手(裁判所指定額)

家庭裁判所から送付される照会書では、「放棄の理由」「遺産を処分していないか」などが確認されます。

内容に問題がなければ受理され、相続放棄が正式に成立します。書類の準備や照会書の回答に不安がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することで、手続きを確実に進めることができます。

 

「相続放棄をしてほしい」と言われた場合の初動対応の手順

突然「相続放棄をしてほしい」と言われると、戸惑いや不安を感じる方が多いでしょう。しかし、焦って返答してしまうと、後から取り返しのつかない状況になることもあります。

ここからは、相続放棄を求められた際に「まず取るべき初動対応」の流れを解説します。

  • 手順① その場で即答せず、落ち着いて時間をもらう
  • 手順② 相続放棄を求められている理由を確認する
  • 手順③ 遺産の内容と負債の有無を自分で調べる
  • 手順④ 専門家に相談し、法的な影響を整理する
  • 手順⑤ 状況を踏まえて最適な方法を選択する

それぞれ個別にみていきましょう。

手順①:その場で即答せず、落ち着いて時間をもらう

まず大切なのは、相手の言葉にすぐ反応せず、冷静に状況を整理することです。「放棄してほしい」と言われると、感情的になったり、親族関係に配慮してつい承諾してしまったりするケースが少なくありません。

筆者自身の体験談になるのですが、この際電話でやりとりをした際に、相手方がその内容を勝手に録音していたこともありましたので、即座に対応しないことが大切です。

しかし、相続放棄は一度手続きが完了すると取り消すことができない手続きです。したがって、その場で即答せず、「内容を確認してから返事をしたい」「一度整理する時間をください」と伝え、慎重に判断する時間を確保しましょう。

また、相手が弁護士や遺産分割の代表者などの場合でも、書面や資料をすぐに提出しないことが必要です。まずは「何を放棄してほしいのか」「どのような財産が関係しているのか」を理解することから始めるのが基本です。

手順②:相続放棄を求められている理由を確認する

次に行うべきは、相手がなぜ相続放棄を求めているのか、その理由を冷静に確認することです。理由によっては、法的根拠のない単なる感情的な要望であるケースもあります。

主な理由としては、次のようなものが考えられます。

  • 特定の相続人に多くの財産を渡したい意図がある
  • 不動産の管理や処分をスムーズに進めたい
  • 借金や老朽化した物件など「負の財産」を押し付けたい
  • 相続手続きに関わってほしくない

このように、放棄を求める側の思惑はさまざまです。なかには「実際には財産がプラスだった」というケースも見られるため、安易に応じるのは危険です。

もし理由があいまいな場合は、具体的に「どんな財産があるのか」「負債や不動産の状態はどうか」と質問し、情報を文書で残しておくことが望ましいでしょう。

手順③:遺産の内容と負債の有無を自分で調べる

相続放棄を検討する前に、まずは遺産の全体像を自分で確認することが大切です。「親が借金をしていたらしい」「不動産があると聞いた」といった断片的な情報だけで判断すると、後にトラブルになることがあります。

確認すべき主な項目は次のとおりです。

  • 預貯金や有価証券などの金融資産
  • 自宅や土地などの不動産資産
  • 住宅ローンや借入金などの負債
  • 名義のままになっている共有財産や保証債務

これらは、通帳や登記簿、固定資産税の納税通知書などをもとに客観的に把握するのが基本です。財産の内容が複雑な場合や、他の相続人が資料を開示しない場合は、弁護士を通じて照会してもらう方法もあります。

正確な情報をもとに、「本当に放棄が必要か」を判断しましょう。

手順④:専門家に相談し、法的な影響を整理する

遺産の内容を把握したら、次に専門家へ相談して法的な影響を整理しましょう。相続放棄を行うと、最初から相続人でなかったことになるため、財産の権利だけでなく、管理や登記の扱いにも影響が及びます。

弁護士や司法書士に相談することで、次のような点を具体的に確認できます。

  • 放棄後に残る管理義務の範囲
  • 期限や申述の手続き上の注意点
  • 他の相続人への影響(次順位の相続人が生じるなど)
  • 相続放棄以外の選択肢(限定承認・売却・国庫帰属制度など)

専門家に早めに相談しておくことで、誤った判断を防ぎ、不要なトラブルを回避できます。また、相談時に財産の資料を持参すると、具体的なアドバイスが受けやすくなります。

手順⑤ 状況を踏まえて最適な方法を選択する

ここまでの情報を整理したうえで、最終的に「どの方法が自分にとって最も適切か」を判断します。 放棄だけが唯一の選択肢とは限らず、次のような手段を比較検討することが求められます。

  • 相続放棄→借金や管理負担を避けたい場合
  • 限定承認→プラスの財産と負債が混在している場合
  • 単純承認+売却→価値のある不動産を現金化したい場合
  • 相続土地国庫帰属制度→不要な土地だけを国に引き取ってもらう場合

それぞれにメリット・デメリットがあるため、「誰が何を相続し、どんな負担が残るのか」を明確にすることがポイントです。最終判断は、感情ではなく事実と制度に基づいて行うことが、後悔しない相続対応につながります。

 

「相続放棄をしてほしい」と言われた場合の方針

相続放棄を求められたとき、どのように対応すべきかは状況によって大きく異なります。感情的に反応してしまうと、知らないうちに不利な立場に立たされることもあります。

ここからは、相続放棄を求められた際に冷静に判断するための基本方針を整理します。

方針①:要求をそのまま受け入れず、まずは冷静に状況を確認する

相続放棄を求められたとしても、すぐに応じる必要はありません。まずは、他の相続人がなぜそのような要請をしているのか、背景や意図を確認することが大切です。

そのため、借金のある遺産を押し付けたいケースもあれば、遺産分割を自分の有利に進めたいという意図が隠れていることもあります。感情的に反応してしまうと、相手の思惑どおりに進んでしまうことがあるため、まずは事実関係を整理する姿勢が求められます。

また、話し合いの記録や発言内容はメモに残しておくと、後のトラブル防止にも役立ちます。冷静に全体像を把握したうえで、自分の立場を守る行動を取りましょう。

方針②:自分の法定相続分と相続財産の内容を把握する

相続放棄を検討する前に、自分がどの程度の相続権を持っているのかを正確に理解する必要があります。相続財産には現金や不動産だけでなく、借入金や保証債務などマイナスの財産も含まれていることがあります。

まずは、以下のような情報を整理しましょう。

  • 遺産の全体像(預貯金・不動産・借金など)
  • 法定相続分(配偶者・子・兄弟姉妹などとの関係)
  • 各財産の評価額や名義状況

登記簿謄本や固定資産税の納税通知書、預金残高証明書などをもとに、資産と負債を一覧化しておくと判断しやすくなります。

「相続放棄」はすべてを手放す行為であるため、実際にプラスの財産があるにもかかわらず放棄してしまうと、経済的な損失につながることもあります。自分の権利とリスクをしっかり把握し、事実に基づいた判断を下すようにしましょう。

方針③:遺産分割で「相続分を放棄」する選択を検討する

「相続放棄」とは別に、遺産分割協議の中で自分の取り分を辞退する「相続分の放棄」という方法もあります。

これは、家庭裁判所への申述を必要とせず、相続人同士の話し合いによって成立する点が特徴です。協議書の中で「自分の取り分を受け取らない」と明記することで、財産を他の相続人に譲ることができます。

この方法は、遺産の内容がプラスで明らかな場合や、相続人同士で円満に分割を進めたい場合に有効です(例:実家を長男が引き継ぐ代わりに他の兄弟が取り分を辞退するケースなど)。

ただし、「相続分の放棄」は法律上の“相続放棄”とは異なり、借金などの負債については免責されません。そのため、負債が含まれる場合は、家庭裁判所での正式な相続放棄を検討する必要があります。

方針④:家庭裁判所で正式に「相続放棄」の手続きを行う

借金や管理が難しい不動産が含まれている場合は、家庭裁判所で正式に「相続放棄」の申述を行うのが確実です。

相続放棄が受理されると、最初から相続人でなかったことになり、借金の返済義務や不動産の維持管理義務などから解放されます。

手続きは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出して行います。必要書類としては、戸籍謄本や収入印紙、郵便切手などが挙げられます。

注意すべきは「期限」です。相続開始を知った日から3か月以内に申述を行う必要があり、この期間を過ぎると自動的に単純承認とみなされる可能性があります。

方針⑤:他の相続人とトラブルを避けるために話し合いを設ける

相続放棄を検討する際は、自分だけの判断で進めず、他の相続人と十分に話し合うことが求められます。

特に不動産などの共有資産がある場合、放棄後に「誰が管理するのか」「固定資産税を誰が負担するのか」といった問題が残ることがあります

こうしたトラブルを防ぐには、相続放棄の意向や手続きの進行状況を相続人全員で共有しておくことが効果的。話し合いの内容は、後の誤解を防ぐために書面やメールで残しておくと安心です。

相続放棄は自分の権利を放棄する行為である一方、他の相続人に負担をかける結果になる場合もあります。お互いの立場を尊重しながら、できるだけ円滑に合意形成を進めることが、後のトラブルを避ける最善の方法です。

関連記事:相続放棄の手続きは自分でできる?流れや専門家に相談すべきケースを紹介

 

相続放棄のメリット

相続放棄には、経済的・精神的な負担を軽減できるという大きな利点があります。特に、借金や不要な不動産を引き継ぐリスクを回避できる点は、多くの方にとって重要な判断材料となります。ここからは、代表的なメリットをみていきましょう。

  • 借金や負債の返済義務を免れることができる
  • 価値のない不動産や管理負担から解放される
  • トラブルの多い遺産分割協議に関わらずに済む
  • 限定承認よりも手続きが簡単でスピーディーに完了する 

次項より、詳しく解説します。

借金や負債の返済義務を免れることができる

相続放棄の最も大きなメリットは、被相続人が抱えていた借金やローンの返済義務を免れることができる点です。相続は「プラスの財産」と「マイナスの財産」を合わせて引き継ぐ仕組みであるため、単純承認をすると、借金もそのまま相続することになります。

しかし、相続放棄を行えば、法律上は「最初から相続人でなかった」とみなされます。その結果、金融機関や保証人からの請求があっても、支払いの義務は一切生じません。

この制度は、被相続人に多額の負債があったり、事業失敗による債務が残っていたりする場合に特に有効です。相続放棄を行うことで、自分や家族の生活を守る手段として機能します。

価値のない不動産や管理負担から解放される

もう一つの大きなメリットは、価値のない不動産や老朽化した建物などの管理義務から解放されることです。相続によって取得した不動産は、固定資産税や維持費が継続的に発生し、放置すると倒壊リスクや近隣トラブルの原因にもなります。

特に「売れない土地」や「再建築不可物件」などは、所有しているだけで負担が増すケースが多く、放棄によってその管理義務を回避することができます

相続放棄をすれば、固定資産税の納付義務や修繕費の支出も不要となり、精神的な負担も軽減されます。使う予定のない不動産を抱え込むよりも、相続放棄を選ぶことで、長期的に安定した生活を維持できる場合があります。

トラブルの多い遺産分割協議に関わらずに済む

相続放棄を行うと、最初から相続人でなかったことになるため、遺産分割協議に参加する必要がなくなります。

相続人が複数いる場合、財産の分け方をめぐって意見が対立し、話し合いが長期化することも少なくありません。特に、不動産や現金の割合が不均等な場合は、親族間で関係が悪化するきっかけになることもあります。

相続放棄をすれば、こうした協議に巻き込まれることを避けることができます。また、他の相続人同士での交渉や調整にも関与しなくてよいため、精神的な負担を大きく減らせます。

「相続争いには関わりたくない」「親族関係をこれ以上悪化させたくない」と感じている場合には、相続放棄が有効な選択肢となるでしょう。

限定承認よりも手続きが簡単でスピーディーに完了する

相続放棄は、他の相続手続きと比べてシンプルに完了できる点も大きな魅力です。「限定承認」を選ぶ場合、相続人全員の同意が必要であり、財産目録の作成や公告など複数の手続きを経る必要があります。

一方、相続放棄は、家庭裁判所に申述書を提出し、受理されるだけで完了します。必要書類も限られており、個人単位で手続きできるため、他の相続人との調整を待たずに進められます。

また、受理までの期間も比較的短く、通常であれば1〜2か月程度で結果が通知されます。迅速に手続きを済ませたい、複雑な書類作成や調整を避けたいという場合には、相続放棄の方が現実的な選択といえます。

 

相続放棄のデメリット

相続放棄には多くの利点がある一方で、注意しておくべきリスクや制約もあります。「借金を避けられるなら放棄すればいい」と安易に判断すると、後から思わぬ不利益を被りかねません。

ここからは、相続放棄を選ぶ際に理解しておきたい主なデメリットを解説します。

  • プラスの財産も一切受け取れなくなる
  • 放棄後でも一時的な管理責任が残る場合がある
  • 他の相続人との関係が悪化するおそれがある
  • 期限を過ぎると放棄できず、負債を引き継ぐリスクがある 

それぞれ個別にみていきましょう。

プラスの財産も一切受け取れなくなる

相続放棄を行うと、被相続人の財産をすべて放棄することになります。そのため、借金や負債を引き継がない代わりに、現金・不動産・貴金属などのプラスの財産も一切受け取ることができません。

例えば、負債があると思い込んで放棄したものの、後から貯蓄や保険金、不動産売却益があったと判明するケースもあります。

一度放棄が受理されると撤回することはできないため、手続き前に必ず財産の全容を確認しておきましょう。

また、相続放棄をした場合は「最初から相続人でなかった」扱いになるため、後に発見された財産に対しても一切の権利を持てません。プラスの財産が少しでもある可能性がある場合は、限定承認など他の手段を検討することも選択肢の一つです。

放棄後でも一時的な管理責任が残る場合がある

相続放棄をしたとしても、すぐにすべての責任から解放されるわけではありません。放棄が受理されるまでの間や、他の相続人・相続財産管理人が選任されるまでの間は、一定の範囲で遺産を管理する義務が残る場合があります。

この「保存行為」と呼ばれる管理責任には、次のようなものが含まれます。

  • 雨漏りなど、建物の損壊を防ぐための応急処置
  • 放置すると損害が拡大する恐れのある修繕や保全
  • 借家人がいる場合の賃貸契約の継続管理

これらは、財産の価値を保つために必要とされる最低限の義務です。つまり、相続放棄をしても「何もしなくてよい」というわけではなく、一定の期間は責任を伴うことを理解しておく必要があります。

関連記事:相続放棄した家の解体費用を払うのは誰?負担せずに済む方法はある?

他の相続人との関係が悪化するおそれがある

相続放棄を選ぶことで、他の相続人との関係が悪化してしまうケースもあります。特に、親族間で財産の配分や不動産の管理方針について意見が分かれている場合、「責任を押し付けられた」「協力してもらえなかった」といった感情的な対立が起きやすくなります

相続放棄をすると、残りの相続人の負担が増えることもあり、固定資産税や管理費用の支払いをめぐってトラブルになることもあります。また、放棄した人が遺産分割の話し合いに関与できないため、誤解や不信感が生まれやすいのも実情です。

こうした関係悪化を避けるためには、放棄を決めた理由や背景をできるだけ丁寧に説明し、相続人同士で情報を共有しておくことが大切です。

放棄はあくまで個人の自由な選択ですが、感情面にも配慮しながら進めることが、後々の関係を円満に保つポイントです。

期限を過ぎると放棄できず、負債を引き継ぐリスクがある

相続放棄には「相続開始を知った日から3か月以内」という厳格な期限があります。この期間を過ぎると、法律上は自動的に「単純承認(すべての財産と負債を引き継ぐ)」とみなされ、借金や未払い金などの返済義務を負うことになります。

(参考:東京法務局「相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始」)

仮に、亡くなった親の財産に借金があった場合でも、3か月を過ぎてから放棄を申し立てることは原則としてできません。一度単純承認と判断されると、後から「やはり放棄したい」と申し立てても受理されないのが通常です。

ただし、相続財産の全容を確認できなかったなどの「やむを得ない事情」がある場合には、家庭裁判所に申し立てることで期間を延長できることもあります。

とはいえ、期限管理を誤ると重大な経済的リスクを負うため、相続の連絡を受けたら早めに専門家へ相談し、スケジュールを立てて手続きを進めましょう。

 

遺産に不動産がある場合の相続放棄で注意すべきポイント

遺産の中に不動産が含まれている場合、現金や預金の相続とは異なる点に注意する必要があります。具体的には、以下のとおりです。

  • 相続放棄後でも一時的に管理義務が残る場合がある
  • 放棄前に不動産を処分すると「単純承認」とみなされるおそれがある
  • 固定資産税や公共料金の請求が届く場合の対処法
  • 相続放棄しても名義変更が自動で行われるわけではない
  • 相続人全員が放棄した場合は「相続財産管理人」の選任が必要になる

次項より、詳しく解説します。

相続放棄後でも一時的に管理義務が残る場合がある

相続放棄を行っても、すぐに不動産に関するすべての責任から解放されるわけではありません。家庭裁判所での放棄手続きが完了するまでの間、または次の管理人が決まるまでの間は、相続人に「保存行為」と呼ばれる一時的な管理義務が生じます。

具体的には、以下のような対応は相続放棄後であっても求められることがあります。

  • 建物の損傷を防ぐための最低限の修繕
  • 雨漏りや倒壊などの危険を回避するための応急処置
  • 火災や漏水による近隣被害を防止するための管理

これらは不動産の価値を守るための必要最低限の行為であり、財産を「処分」する行為とは区別されます。ただし、相続財産管理人が選任されれば、その時点で管理義務は移るため、早めに家庭裁判所に選任を申し立てるのが安全です。

放棄前に不動産を処分すると「単純承認」とみなされるおそれがある

相続放棄の手続きを行う前に、不動産を売却したり修繕費を支払ったりすると、「単純承認」とみなされるおそれがあります。単純承認とは、相続財産を受け入れたとみなされる行為であり、放棄の効力を失う重大なリスクにつながります。

実際問題として、次のような行為は注意が必要です。

  • 不動産を売却・賃貸に出す
  • 修繕工事を発注して費用を支払う
  • 土地の一部を第三者に譲渡する

これらはすべて「財産を積極的に利用・処分した」と判断される可能性があります。放棄を検討している段階では、財産に手を加えず、現状維持にとどめておくことが必要です。

放棄の意思が固まったら、まずは家庭裁判所に申述を行い、受理されるまでは財産に関する行為を控えるようにしましょう。この慎重な対応が、後のトラブルを防ぐ最も確実な手段です。

固定資産税や公共料金の請求が届く場合の対処法

相続放棄をしたあとでも、固定資産税や公共料金の請求書が自宅に届くことがあります。これは、登記簿上の所有者が被相続人のままであり、名義変更がまだ行われていないためです。

放棄が受理されても、登記情報は自動的に更新されないため、行政上は「名義人が亡くなったまま」の状態になっています。

このような請求が届いた場合は、自治体や電気・ガス・水道の各事業者に対して「相続放棄を行った旨」と「家庭裁判所の受理通知書の写し」を提示し、支払い義務がないことを説明します。

相続放棄しても名義変更が自動で行われるわけではない

相続放棄をしても、不動産の名義が自動的に削除されたり、別の人へ移転したりすることはありません。相続放棄は「権利を受け取らない」という法的な意思表示であり、登記情報を直接変更する手続きではないためです。

被相続人名義のまま放置されると、売却や解体などの手続きが進められず、固定資産税の請求や近隣トラブルが続く場合もあります。このような場合は、次順位の相続人(例:子が放棄した場合は孫、兄弟など)が自動的に相続権を得るため、放棄が連鎖的に続くリスクが高まります。

相続人全員が放棄した場合は「相続財産管理人」の選任が必要になる

相続人全員が相続放棄をすると、法律上は相続を引き継ぐ人がいなくなります。そのまま放置すると、遺産(不動産・預金など)の管理者がいない状態になり、老朽化や固定資産税の未納などの問題が発生するおそれがあります。

このような場合は、家庭裁判所に申し立てを行い、「相続財産管理人」を選任してもらう必要があります。相続財産管理人は、相続人に代わって財産を管理・清算する立場にあり、以下のような役割を担います。

  • 不動産や預金などの財産を調査・管理する
  • 債権者に対して公告を行う
  • 財産を売却して借金を清算する
  • 残余財産を国庫に帰属させる

この手続きによって、遺産が法的に整理され、相続人が不当な請求を受けるリスクを防ぐことができます。なお、申し立てには費用(予納金)がかかるため、手続きを検討する際は弁護士や司法書士に相談して進めるのが現実的です。

 

「ワケガイ」なら訳あり物件も短期で買取可能!

訳あり物件の買取サービス「ワケガイ」

当社(株式会社ネクスウィル)は、訳あり不動産の買取に特化したサービス「ワケガイ」を提供しています。共有持分や再建築不可の土地、事故物件、空き家など、一般的な不動産会社では買い手がつきにくい物件でも、専門知識と豊富な実績に基づき、スムーズに現金化を進めることが可能です。

ワケガイでは、物件の現況を問わず最短1日で査定から契約まで完了できる体制を整えています。売却が難しいと諦めていた物件でも、法的・物理的な問題を解決しながら買取を実現します。

他社で断られたケースでも対応できる可能性がありますので、お気軽に無料査定をご活用ください。

 

相続放棄に関するQ&A

ここからは、実際に多く寄せられる質問をもとに、よくある悩みや誤解をわかりやすく整理しました。相続放棄をめぐる疑問は、法律的な側面だけでなく、親族間の関係や費用面などにお悩みの方は、ぜひお役立てください。

相続放棄を求められたときにお礼は必要なのか?

基本的に、相続放棄をした人が他の相続人から「お礼」を受け取る必要はありません。ただし、実質的に自分の取り分を辞退して他の人に財産を譲る場合、相手が感謝の意を示すために「謝礼」や「お礼金」を渡すケースも見られます。

この場合も法的義務はなく、あくまで当事者同士の任意の取り決めです。金銭を受け取る場合は「贈与」とみなされる可能性があるため、金額ややり取りの形を明確にしておくと安心です。

相続放棄の手続きを弁護士に依頼すると費用はいくらかかる?

弁護士に相続放棄を依頼する場合の費用は、一般的に 3万〜10万円程度 が相場です。費用の幅は、手続きの難易度や相続人の人数、調査が必要な財産の範囲によって異なります。

自分で家庭裁判所に申述することも可能ですが、書類の不備や期限管理に不安がある場合は、専門家に依頼する方が確実です。

遺産相続でもっとも揉めやすい金額の目安はどのくらい?

実は、相続トラブルは「高額な遺産」よりも「中途半端な金額」で起きることが多いといわれています。家庭裁判所の統計によると、相続紛争の約7割は 遺産総額5,000万円以下 のケースで発生しています。

理由は、財産額が中規模だと「それぞれが譲りたくない」と考えやすく、分割のバランスが崩れやすいためです。

相続放棄を強制されることはあるのか?

相続放棄は、法律上「本人の自由な意思」に基づくものであり、誰かに強制されるものではありません。たとえ親族から「放棄してほしい」と言われても、従う義務は一切ありません。強制や脅迫によって放棄の申述をした場合、その意思表示は無効となる可能性があります。

 

まとめ

相続放棄は、借金や管理が難しい不動産を引き継がずに済む有効な制度ですが、同時に「プラスの財産も受け取れない」「期限を過ぎると無効になる」といったリスクも伴います。また、他の相続人との関係や不動産の名義問題など、放棄後にも整理すべき課題が残るケースが少なくありません。

重要なのは、「相続放棄を求められたから応じる」ではなく、「自分にとって何が最も合理的か」を判断することです。財産と負債の全体像を把握し、放棄・限定承認・売却など複数の選択肢を比較することで、後悔のない決断ができます。

もし不動産の管理や処分に悩んでいる場合は、専門の買取業者や法律の専門家に早めに相談し、現状を整理しておきましょう。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

川村 有毅 (司法書士)

私が司法書士になる前は、接客サービス・営業等、お客様と直に接する仕事に長く携わってきました。
そこから、お客様とのコミュニケーションを事務的にせず、お話をしっかりと拝聴し、問題を共有することの大切さを学びました。
お客様と接する機会をもっと重要視し、人と人とのつながりを大切にします。
お客様に人の手のぬくもりが感じられる「あたたかな安心」を提供いたします。

【訳あり物件・不動産の処分・買取】
について今すぐご相談できます。
お電話での無料査定
9:00~18:00 / 定休日 日・祝・水
お電話での無料査定
0120-536-408
9:00~18:00 / 定休日 日・祝・水
タップで
お電話する

この記事をシェアする


【訳あり物件・不動産の処分・買取】について今すぐご相談できます。