こんにちは。ワケガイ編集部です。
老朽化した実家を放置していたり、相続後に誰も住まない空き家を抱えていたりするケースでは、維持費や固定資産税の負担が増え続け、管理不十分による近隣トラブルが発生するおそれがあります。
そのようなときに検討すべきなのが空き家買取です。空き家買取とは、不動産会社や専門業者が空き家を直接買い取る仕組みで、修繕や片付けを行わずに早期現金化できる点が特徴です。
そこで本記事では、空き家買取の基本的な仕組みや査定の基準、メリット・デメリット、業者選びのポイントまで、売却を検討する際に役立つ情報を詳しく解説します。
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目次
空き家買取とは?
空き家買取とは、不動産会社や専門の買取業者が空き家を直接買い取る仕組みのことです。
一般的な売却のように買主を探す必要がなく、業者との条件が合えばすぐに売却が成立します。
老朽化した建物や残置物のある物件、再建築ができない土地など、通常の仲介では買い手が見つかりにくいケースでも、専門業者であれば買い取ってもらえることがあります。
最近では、相続や転居をきっかけに空き家を手放す人が増え、手続きの早さや管理負担の軽さから「買取」を選ぶ人が多くなっています。「修繕して高く売る」よりも、「今のまま早く手放す」ことを重視する方にとって、合理的な方法といえるでしょう。
仲介での売却との違い
空き家を手放す手段には、大きく分けて「仲介」と「買取」の2つがあります。仲介は、不動産会社が広告やポータルサイトを通じて一般の買主を探す方法です。一方の買取は、不動産会社自体が買主となり、直接取引を行う仕組みです。この構造の違いによって、売却までのスピード・手続きの手間・価格の安定性が大きく変わります。
| 比較項目 | 仲介売却 | 空き家買取 |
| 売却先 | 一般の購入希望者 | 不動産買取業者 |
| 売却までの期間 | 数か月〜1年以上かかることもある | 数日〜数週間で成立することが多い |
| 手数料 | 仲介手数料がかかる | 仲介手数料は不要 |
| 建物の状態 | 修繕・リフォームが必要な場合がある | 現状のまま売却可能 |
| 売却価格 | 市場価格に近い | 相場より1〜3割ほど低い傾向 |
仲介は「時間をかけてでも高く売りたい人」に向く方法です。反対に、買取は「すぐに現金化したい」「古い家をそのまま手放したい」といったニーズに適しています。
特に空き家の場合、放置期間が長いほど劣化や税負担が進むため、売却のスピードを優先する方が結果的に有利になるケースも少なくありません。「価格」だけでなく、「時間と手間も含めた総合的な利益」で比較することが大切です。
空き家買取のメリット
では、空き家買取にはどのようなメリットがあるのでしょうか。仲介との比較として整理すると、以下の4つが代表的です。
- メリット①:スピーディに売却でき、早期の資金化が可能
- メリット②:修繕やリフォームを行わずに現状のまま売却できる
- メリット③:仲介よりも手続きがシンプルでスムーズに進む
- メリット④:管理や維持の手間から解放される
それぞれ個別にみていきましょう。
メリット①:スピーディに売却でき、早期の資金化が可能
空き家買取の大きな魅力は、取引成立までの速さにあります。仲介での売却は、買主探しから契約までに3〜6か月、長ければ1年近くかかることもあります。買主が住宅ローンを利用する場合、審査や調整にさらに時間がかかる点も見逃せません。
一方、買取は不動産会社が直接買主となる仕組みです。そのため、買主を探す工程も資金手配の待ち時間もなく、早ければ査定から1〜2週間で契約・決済まで完了します。これは一般の売却と比べても短いスパンです。
スピードがもたらす利点は、単に早く現金化できるということだけではありません。空き家を長期間所有すれば、固定資産税や修繕費などの維持コストが毎年かかります。「売れるまで待つ」ことは、それ自体が損失になる可能性があるのです。
メリット②:修繕やリフォームを行わずに現状のまま売却できる
直接買取は、建物の状態を問わず売却(あるいは処分)できる点も特徴的です。仲介では「買主が住む」前提のため、老朽化や雨漏り、壁のシミなどがあるとリフォームを求められることが少なくありません。
これに対し、買取では業者が購入後に自社で改修・再販を行うため、売主が費用を負担する必要はないのが基本です。
残置物がある場合や、屋内の清掃が行き届いていない物件でも、現況のまま引き渡せることが多く、売主側の準備は最小限で済みます。修繕費や清掃費を自己負担するリスクを避けながら、早期に契約を進められる点が、買取を選ぶ実務的な理由のひとつです。
メリット③:仲介よりも手続きがシンプルでスムーズに進む
空き家買取は、取引の手続きが非常に簡潔です。仲介での売却では、買主探しや内見対応、価格交渉、ローン審査など、複数の段階を経る必要があります。
そのため、関係者の調整に時間がかかり、契約成立までに想定以上の労力を要するケースも少なくありません。
一方、買取では不動産会社が自ら買主となるため、取引の相手が明確で、価格の提示から契約、決済までが一連の流れで進むため、スケジュールが立てやすく、書類作成の手間も軽減されます。
メリット④:管理や維持の手間から解放される
空き家を所有している限り、建物の劣化や防犯・防災への対応など、継続的な管理が求められます。定期的な換気や清掃、郵便物の処理といった細かな作業も放置できず、遠方に住んでいる場合は特に負担が大きくなります。
買取で手放すことで、こうした維持管理の負担から完全に解放されます。契約が成立した時点で固定資産税や火災保険の負担もなくなり、空き家に関する出費や時間的拘束が一切発生しません。
空き家買取のデメリット
空き家買取は、スピードや手軽さの面で大きな利点がありますが、すべてのケースに万能というわけではありません。仲介による売却と比べた際には、価格面や業者選び、物件条件などで注意すべき点も存在します。
ここからは、実際に取引を進める前に知っておきたい主なデメリットを整理します。
- デメリット①:仲介売却に比べて売却価格が低くなりやすい
- デメリット②:信頼できる業者を選ばないと損をするリスクがある
- デメリット③:立地や物件の条件によっては買取できない場合もある
次項より、詳しく解説します。
デメリット①:仲介売却に比べて売却価格が低くなりやすい
買取では、不動産会社が買い取った後に再販やリノベーションを行うことを前提としています。そのため、将来的な販売コストやリスクを織り込んだうえで価格が設定され、結果として、仲介売却と比較すると1〜3割ほど安くなる傾向があります。
特に立地条件が良い物件や、リフォームを施せば市場価値が高まる可能性のある物件では、仲介のほうが有利な場合もあります。「価格よりスピードを優先するのか」「時間をかけても高く売りたいのか」など、優先順位を明確にしておくことが、後悔を防ぐポイントになります。
関連記事:空き家の買取価格を上げるコツとは?相場や業者選びのポイントを解説
デメリット②:信頼できる業者を選ばないと損をするリスクがある
買取の取引は、スピードが早いぶんだけ業者との信頼関係が重要になります。「価格の根拠を明示しないまま契約を急がせる」「解体費や残置物撤去費を不当に差し引く」といったトラブルの事例も報告されています。
信頼できる業者を見極めるには、「査定の根拠を具体的に説明しているか」「契約内容(免責・手数料・支払い時期)が明確か」「取引実績や口コミが確認できるか」といった点を客観的に確認することが大切です。
デメリット③:立地や物件の条件によっては買取できない場合もある
空き家であっても、すべての物件が買取の対象になるわけではありません。極端に交通の便が悪い、再建築ができない、法的な制約が多いといった物件は、再販リスクが高いため買取を断られることがあります。
また、老朽化が著しく倒壊の危険がある場合は、安全面の理由から取り扱いが難しいこともあります。このようなケースでは、解体して更地として売却する、または自治体の空き家バンク制度を活用するなど、別の処分方法を検討することが現実的です。
空き家買取の相場はどのくらい?
空き家の買取価格は、一般的に仲介による市場価格の6〜8割程度が目安とされています。仮に、市場で1,000万円の価値がある物件なら、買取価格はおおよそ600万〜800万円前後になる計算です。
この差額には、業者が買い取った後に行うリフォーム費用や販売経費、売れ残りリスクなどが含まれています。つまり、単に「安く買われている」のではなく、再販を前提とした価格構造になっているということです。
実際の査定では、以下のような要素が総合的に判断されます。
| 主な査定項目 | 内容の概要 |
| 立地条件 | 駅や商業施設への距離、生活利便性など。利便性が高いほど評価は上がる。 |
| 土地の形状・面積 | 整形地や標準的な広さは高評価。変形地や狭小地は減額されることが多い。 |
| 建物の状態 | 築年数や劣化状況、修繕の必要性など。老朽化が進むほど査定額に影響する。 |
| 再建築の可否 | 接道要件を満たさない土地は再建築が難しく、大幅に評価が下がる傾向。 |
| 周辺相場 | 近隣の取引事例や公示地価、路線価をもとに調整される。 |
都市部では再販需要が高く、比較的高値での買取が期待できる一方、郊外や地方では流通性の低さから査定が抑えられるケースも見られます。
そのため、1社のみの査定で判断せず、複数の業者に見積もりを依頼して相場を把握することが大切です。価格だけでなく、査定根拠の説明が明確かどうかも、信頼できる業者を見極めるポイントとなります。
空き家買取の際の査定基準
空き家の買取価格は、単に築年数や外観の印象だけで決まるものではありません。土地の条件や建物の状態、周辺の取引状況など、複数の要素が組み合わさって算定されます。
具体的には、以下のものが基準として挙げられます。
- 基準①:立地条件(駅距離・周辺環境・生活利便性)
- 基準②:土地の形状や接道状況(再建築の可否を含む)
- 基準③:建物の状態(築年数・劣化・修繕の必要性)
- 基準④:残置物や清掃・解体コストの有無
- 基準⑤:心理的・法的な瑕疵の有無(事故・権利関係など)
次項より、詳しく解説します。
基準①:立地条件(駅距離・周辺環境・生活利便性)
立地は、空き家買取において最も基本的かつ重要な要素です。駅やバス停までの距離、主要道路へのアクセス、スーパーや病院などの生活施設の近さなどが総合的に評価されます。
一般に、駅から徒歩10分以内や日常の買い物が徒歩圏で完結するエリアは評価が高く、反対に交通や買い物の便が悪い地域では査定が抑えられる傾向にあります。
また、近年では利便性だけでなく、地域の人口動態や再開発計画の有無も重視されます。そのため、今後人口減少が見込まれる地域では、再販リスクが高まるため価格がやや低めに設定される場合があります。
基準②:土地の形状や接道状況(再建築の可否を含む)
土地の形状と接道状況も、査定額に大きな影響を与える項目です。四角い整形地や、間口の広い土地は建築・再販の自由度が高く、一般的に評価が上がります。
一方、三角形や旗竿地(細長い通路の奥にある土地)などの変形地は、建物を建てにくいため評価が下がる傾向があります。
特に注意すべきなのが、接道義務を満たしていない土地です。建築基準法では、幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していないと原則として再建築ができません。
この「再建築不可」に該当する場合、建物の建て替えや再利用が難しく、買取価格は大幅に下がる可能性があります。
基準③:建物の状態(築年数・劣化・修繕の必要性)
建物の状態は、空き家の査定で欠かせない判断材料です。築年数が古いほど劣化の進行が想定され、雨漏りや構造の損傷が見られる場合は修繕費用が査定額から差し引かれます。
特に、木造住宅で築30年以上経過している物件は、建物の価値がほぼゼロに近い評価となるケースもあります。
ただし、すべての古い建物が低評価になるわけではありません。耐震改修やリフォーム履歴がある場合、建物の保存状態によっては再利用を前提に一定の価値が認められることもあります。
また、構造材がしっかりしており、解体後に資材を再利用できる可能性がある場合も、業者によっては査定に加味されます。査定を依頼する際は、過去の修繕記録や点検結果を資料として提示しておくと評価が安定しやすくなります。
基準④:残置物や清掃・解体コストの有無
空き家に家具や家電、生活用品がそのまま残っている場合、それらの撤去費用が発生します。この残置物処分費は、一般的に数十万円規模になることもあり、買取価格から控除されるのが通常です。
とくに、屋外に不用品が多い場合や、老朽化した倉庫・物置が付属している場合は、撤去費用が増える傾向にあります。
また、建物の劣化が激しく、解体を前提にした買取となる場合には、解体費用が査定に影響し、木造住宅の解体費は坪あたり4〜6万円、鉄骨造やRC造ではそれ以上が相場とされます。
基準⑤:心理的・法的な瑕疵の有無(事故・権利関係など)
心理的瑕疵や法的瑕疵の有無も、査定に大きく影響します。過去に事件・事故・自殺などが発生した物件は、いわゆる「事故物件」として扱われ、需要が低下する傾向があります。
そのため、再販を前提とする買取業者では、一定の減額を行うのが一般的です。ただし、発生から長期間が経過しており、リフォームなどで印象が大きく変わっている場合には、価格への影響が軽減されることもあります。
一方、法的瑕疵とは、権利関係や法令上の制限によって取引に支障をきたす要素を指します。「他人の抵当権が設定されている」「共有持分者が複数いて同意が取れない」「都市計画や建築制限がかかっている」などのケースです。
これらは所有権移転の妨げとなるため、買取価格が大きく下がる、もしくは買取自体が難しくなることもあるため留意しましょう。
空き家の買取業者を選ぶポイント
空き家買取は、スピードや手軽さが魅力である一方、業者選びを誤ると想定外の損失につながることもあります。
査定の仕組みや契約条件は業者ごとに異なり、提示された金額だけで判断するのは危険です。ここからは、信頼できる業者を見極めるために押さえておきたい基本的なポイントを紹介します。
- ポイント①:査定額の算出理由を具体的に確認する
- ポイント②:複数の業者に見積もりを取り相場を把握する
- ポイント③:買取実績や利用者の評判をチェックする
- ポイント④:契約内容や費用の明確さを重視する
それぞれ個別にみていきましょう。
ポイント①:査定額の算出理由を具体的に確認する
査定額は、業者の経験や再販戦略によって大きく変わります。そのため、単に「いくらで買い取ります」と提示された金額だけで判断するのではなく、どのような根拠で算出されたかを確認することが大切です。
信頼できる業者であれば、査定の内訳を明示し、土地評価・建物の状態・再建築の可否など、評価の根拠を丁寧に説明します。逆に、説明を避けたり「相場だから」といった曖昧な回答しか得られない場合は注意が必要です。
査定理由を明確に確認しておくことで、価格の妥当性を判断できるだけでなく、交渉の材料にもなります。
また、複数の査定結果を比較した際に根拠の差を読み取ることで、業者の専門性や再販方針の違いを見極めることも可能です。金額よりも「納得できる説明があるか」を重視する姿勢が、結果的に安心できる取引につながります。
ポイント②:複数の業者に見積もりを取り相場を把握する
空き家の買取相場は、同じ物件でも業者によって差が出ます。これは、業者ごとの得意分野や再販の方針が異なるためです。
実際、リノベーションを前提に再販する業者と、更地化して土地として販売する業者とでは、評価の基準がまったく違います。そのため、最低でも3社以上に査定を依頼し、提示額と査定内容を比較することが推奨されます。
複数社に見積もりを取ることで、おおよその相場感を把握できるだけでなく、業者による条件の違いも明確になります。
比較の際は、単に「金額の高い業者」を選ぶのではなく、以下のポイントに着目しましょう。
- 査定の根拠が具体的か
- 契約条件(支払い時期・諸費用・免責条項)が明確か
- 対応や説明が誠実か
時間をかけて複数の意見を聞くことで、自分の物件がどのように評価されているかを客観的に把握でき、結果的に納得度の高い売却につながります。
ポイント③:買取実績や利用者の評判をチェックする
空き家買取を安心して任せるためには、業者の実績を確認する必要があります。買取専門を掲げていても、実際には仲介を中心に行っている会社も多く、経験の差が取引の質に直結します。
公式サイトなどで「どのような物件を、どの地域で、どの規模感で取り扱っているか」を具体的に確認しましょう。
過去の買取事例が明示されている業者であれば、査定基準の傾向や得意とするエリアが把握できます。また、口コミサイトや不動産関連の掲示板で利用者の声を確認するのも有効です。
ただし、匿名の口コミは信頼性にばらつきがあるため、実名での体験談や公式なレビューを優先的に参考にすることが望ましいでしょう。
ポイント④:契約内容や費用の明確さを重視する
買取契約では、提示価格だけでなく契約内容と諸費用の内訳を正確に理解しておくことが大切です。
残置物の処分費や測量費、登記費用などが買取価格に含まれているか、あるいは別途請求となるかによって、実際の手取り額が変わってきます。「諸経費込み」と説明されていても、後から追加費用が発生するケースもあるため、契約書の明細は必ず確認しましょう。
また、支払い時期や名義変更のタイミングも業者によって異なります。契約締結後すぐに支払われる場合もあれば、登記完了後に振り込まれるケースもあります。
どの時点で所有権が移るのか、支払いまでの流れに不明点がないかを確認しておくことが、トラブル防止につながります。
【詳しく解説】空き家買取の流れ
空き家の買取は、仲介による売却よりも手続きが簡潔ですが、基本的な流れを理解しておくようにしましょう。
空き家買取は、大まかには以下の7ステップで完結します。
- STEP①:買取業者へ問い合わせ・相談
- STEP②:現地調査と簡易査定
- STEP③:正式査定の提示と価格交渉
- STEP④:売買契約の締結
- STEP⑤:代金の支払いと物件引き渡し
- STEP⑥:登記手続きと売却完了
- STEP⑦:譲渡所得の確定申告
各手順について、個別にみて行きましょう。
STEP①:買取業者へ問い合わせ・相談
まずは、買取を行っている不動産会社や専門業者に相談します。この段階では、物件の所在地・面積・築年数・現況(空き家期間や残置物の有無など)を伝え、買取が可能かどうかを確認します。
相談時に「再建築不可」「共有名義」など特殊な条件がある場合は、必ず事前に伝えておきましょう。条件によっては、通常の査定とは異なる手続きや評価方法が必要になることがあります。
STEP②:現地調査と簡易査定
問い合わせ後、業者は現地調査を行い、土地や建物の状態、周辺環境、接道状況などを確認します。この調査結果をもとに、おおよその買取価格(簡易査定額)が提示されます。
簡易査定の目的は、現地の実情を踏まえて「買取が可能かどうか」「どの程度の価格帯になるか」を見極めることにあります。建物内部の傷みが大きい場合や、解体が前提となる場合には、その費用を見込んで査定額が調整されます。
なお、現地確認は所有者の立ち会いが求められることもあります。鍵の管理や立ち入り日時を事前に調整しておくと、査定がスムーズに進みます。
STEP③:正式査定の提示と価格交渉
現地調査の結果を踏まえ、業者から正式な買取価格が提示されます。ここからは、査定額の根拠や費用の内訳を明確に確認することが大切です。「リフォーム費用」「解体費」「残置物撤去費」などがどのように反映されているかを理解しておくことで、後のトラブルを防げます。
価格に納得できない場合は、根拠をもとに交渉することも可能です。複数社の査定結果を比較しながら、条件面(支払い時期や引き渡し方法など)も含めて総合的に判断しましょう。
最終的に、提示額と条件に合意できれば契約手続きへと進みます。
この時点でほとんどの手続きが整うため、買取では「ここまでが実質的な山場」といえます。
STEP④:売買契約の締結
正式な査定額と条件に合意できたら、売買契約を締結します。この段階で交わされる契約書には、売買金額・引き渡し日・支払い方法・免責条項など、取引の根幹となる内容が明記されます。
契約に先立ち、不動産会社の担当者から「重要事項説明」が行われます。
ここで、物件の法的制限や再建築の可否、契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)の扱いなどが説明されます。内容を十分に理解したうえで署名・押印することが大切です。
買取契約では、売主が物件の欠陥に対して責任を負わない「免責条件」が設定されることが一般的です。特に空き家の場合、長期間使用されていない箇所の不具合を後から確認するのが難しいため、この免責が売主を保護する仕組みとして機能します。
STEP⑤:代金の支払いと物件引き渡し
契約締結後、定められたスケジュールに従って代金が支払われます。支払いは「契約時」と「引き渡し時」のいずれかで行われ、買取では後者が一般的です。多くの場合、契約から1〜2週間程度で現金化が完了します。
引き渡し時には、建物の鍵や登記書類を業者へ渡し、引き渡し確認書を交わします。残置物の撤去や清掃を求められている場合は、この段階までに完了させておくとスムーズです。仲介売却と比べて工程が少ないため、資金化までのスピードが速い点が買取の大きな特徴です。
STEP⑥:登記手続きと売却完了
代金の支払い後、業者が所有権移転登記を行います。これは、法務局で名義を売主から買主へ正式に変更する手続きです。登記が完了した時点で、法的に所有権が移転し、売却が成立します。
この段階では、固定資産税や都市計画税の精算も行われます。一般的に、1月1日時点での所有者に課税されるため、売却時期に応じて日割り計算で調整されるのが通例です。
これにより、売却後の税負担を残さずに手続きが完了します。
STEP⑦:譲渡所得の確定申告
空き家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、翌年の確定申告が必要になります。譲渡所得は「売却額 −(取得費+譲渡費用)」で計算され、課税対象となります。
(参考:国税庁「土地や建物を売ったとき」)
ただし、要件を満たせば「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除(いわゆる空き家特例)」を利用でき、最大3,000万円までの控除が受けられます。
(参考:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)
この特例を適用するには、売却期限や建物の要件など複数の条件を満たす必要があります。不動産の売却益が出た際は、税理士や専門家に早めに相談し、控除の可否を確認しておくと安心です。
【空き家の状況別】買い取ってもらえるかどうかの判断基準
空き家と一口にいっても、その状態や履歴によって買取の可否は大きく変わります。建物の劣化だけでなく、事件・事故歴、残置物の有無、接道状況など、さまざまな条件が価格に影響します。
ここからは、特に相談の多いケースを取り上げ、どのような基準で「買い取ってもらえるか」が判断されるのかを整理します。
事故・事件歴あり物件
過去に自殺や事故死などが発生した物件は、心理的瑕疵物件として扱われます。一般の買主は敬遠する傾向が強く、仲介で売却する場合は成約まで時間がかかるのが実情です。
しかし、こうした物件でも、専門の買取業者であれば再販や再利用を前提に買取対応が可能です。
価格は、再販時のリスクを織り込んで算定されるため、市場相場より低くなる傾向があります。ただし、事故の内容や発生時期、場所(室内・敷地内など)によって影響度は異なります。査定時には、事故の概要をできるだけ正確に伝えなければなりません。
ゴミ屋敷・残置物多数
生活用品や家具などが大量に残されたままの空き家も、買取の対象になります。現状のまま買い取る業者が多く、売主が自ら片付けを行う必要はありません。
撤去や清掃にかかるコストは査定額に反映されますが、片付けにかかる時間や労力を考慮すると、結果的にメリットが大きいケースがほとんどです。
現場の状態を写真で伝えておくと、初期段階の見積もりが正確になります。中には、買取後に片付け・リフォームまで一括対応する業者もあるため、依頼前にサービス範囲を確認しておくとよいでしょう。
再建築不可・接道不良物件
再建築不可物件とは、建築基準法で定められた「接道義務」を満たしていない土地を指します。原則として、幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していないと、新たな建物を建て替えることができません。
(参考:e-Gov 法令検索「建築基準法」)
そのため、一般の買主は敬遠しやすく、市場での流通は非常に限定的です。しかし、こうした物件でも、土地活用や再建築不可再生を得意とする専門業者であれば買取対象になる場合があります。
隣地と合わせて一体的に再開発する「抱き合わせ買取」や、接道部分を買い増して再建築可能にする「セットバック調整」など、特殊な活用スキームを用いることで価値を再生する方法があります。
共有持分・権利トラブルあり物件
共有名義の空き家は、共有者全員の同意がなければ売却できないのが原則です。しかし、共有者の一部が行方不明であったり、意見が対立している場合、売却が進まないケースが少なくありません。
このような場合でも、共有持分の買取に特化した業者であれば、持分のみを買い取る対応が可能です。こうした業者は、買取後に他の共有者との交渉や、法的な分割請求(共有物分割請求訴訟)を通じて不動産の処理を進めます。
売主は自分の持分を手放すだけで済むため、トラブルの早期解消につながることもあります。
ただし、権利関係の整理や法的確認に時間を要するため、通常より査定から契約までの期間が長くなる傾向があるため、事前に登記簿謄本などの資料を用意し、権利関係を明確にしたうえで相談すると、査定がスムーズに進みます。
債務超過物件・ローン残債超過案件
住宅ローンが残っている空き家を売却する場合、まず金融機関の同意が必要です。売却金額が残債を下回る場合、債務超過(オーバーローン)の状態となり、通常の売却では所有権移転が認められません。
このようなケースでは、債権者(金融機関)と調整し、残債処理を前提に買取を進める形が取られます。手続きとしては、任意売却に近い流れになりますが、買取では業者が買主となるため、交渉から現金化までのスピードが早いのが特徴です。
また、金融機関側も「早期の債権回収」を目的として柔軟に応じるケースが増えています。注意すべきは、残債の扱いと精算方法です。
空き家買取以外の処分方法
空き家を手放す手段は、買取だけではありません。物件の立地や状態、地域の需要によっては、活用や公的制度の利用といった別の方向から整理する方法もあります。
ここからは、買取以外で検討できる代表的な選択肢を紹介します。
- 活用する(賃貸・民泊・駐車場などに転用する)
- 自治体や公的機関に相談する(空き家バンク・移住支援制度)
- 寄付・無償譲渡を検討する
- 解体して更地として活用・売却する
- 管理代行サービスを利用して保有を継続する
それぞれ個別にみていきましょう。
活用する(賃貸・民泊・駐車場などに転用する)
建物の老朽化が進んでいない場合は、賃貸化や短期利用への転用も有効です。空き家をリフォームして賃貸住宅として貸し出すほか、需要のある地域では民泊やシェアハウスとして運用する事例も増えています。
一戸建てでも、住宅以外に駐車場・倉庫・トランクルームとして活用できる場合があり、建物を解体して更地にしたうえで運用する選択肢もあります。
自治体や公的機関に相談する(空き家バンク・移住支援制度)
老朽化や立地条件の問題で市場での売却が難しい場合でも、自治体が運営する「空き家バンク」を通じて活用できる可能性があります。
空き家バンクとは、地域内の空き家を登録し、移住希望者や地元企業に紹介する仕組みで、多くの自治体が導入しています。登録や相談は無料で、改修補助金や家財撤去の支援制度が併設されている自治体もあります。
寄付・無償譲渡を検討する
売却が難しい空き家は、寄付や無償譲渡という形で手放す方法もあります。親族や知人、または自治体・NPO法人などに所有権を移転することで、固定資産税や管理負担から解放される点が大きなメリットです。
ただし、寄付は「受け取る側にメリットがあるかどうか」が前提となります。老朽化が進んでいる、再建築ができない、維持費が高いなど、引き受け後に負担が残る場合は受け取りを断られることがほとんどです。
解体して更地として活用・売却する
建物の老朽化が著しい場合は、解体して更地として売却する方法が有効です。建物付きのままでは買い手がつかないケースでも、更地にすれば再建築や新築利用が可能になり、需要が高まることがあります。
解体費用の目安は、木造で坪あたり4〜6万円、鉄骨造やRC造でそれ以上が一般的です。
一時的な出費は生じますが、再建築可能な土地であれば、解体後に相場価格が上昇することもあります。
管理代行サービスを利用して保有を継続する
すぐに売却や活用の予定がない場合は、空き家管理代行サービスを利用して保有を続ける方法もあります。b。
管理を怠ると、建物の劣化だけでなく、景観悪化や近隣トラブルの原因にもなります。
特に、将来的に売却や相続を予定している場合、管理状態が良いほど資産価値を保ちやすくなります。
「ワケガイ」なら空き家も短期で買取可能!

当社(株式会社ネクスウィル)は、共有持分・空き家・再建築不可物件などの“訳あり不動産”を専門に買い取るサービス「ワケガイ」を提供しています。
一般の市場では売却が難しい物件も、独自の査定ノウハウと専門家ネットワークにより、最短1日での現金化が可能です。全国対応のため、遠方や地方物件でも柔軟に対応でき、残置物や権利関係の整理も含めて一括でサポートいたします。
「売れない」「引き受け手が見つからない」と感じる不動産でも、再評価の余地はあります。まずは現状のままの状態で構いませんので、お気軽に無料査定をご活用ください。
空き家買取に関するQ&A
空き家の買取や売却を検討する人が抱きやすい疑問を中心に、実務の現場で頻繁に問われるポイントを整理しました。一つひとつ確認しながら、トラブルを防ぎ、より納得感のある取引につなげていきましょう。
家を売るときに絶対NGな行為は?
家を売却する際に最も避けるべきなのは、事実の隠蔽や虚偽の説明です。雨漏りやシロアリ被害、過去の事件・事故など、重要な事項を意図的に隠すと「契約不適合責任」に問われ、損害賠償の対象になることがあります。
売れない空き家はどうすればいいですか?
立地や築年数の影響で売却が難しい空き家は、買取専門業者への相談が現実的です。通常の仲介では買い手がつかないような老朽家屋や再建築不可の土地でも、買取業者であれば再利用を前提に買い取ってもらえる場合があります。
空き家を3年放置してもいいですか?
法律上「3年放置したら罰則がある」という規定はありませんが、長期放置は確実にリスクを高めます。劣化による倒壊や雨漏り、害虫・悪臭の発生、さらに近隣への損害が発生した場合は所有者責任を問われることもあります。
また、自治体から「特定空き家」に指定されると、固定資産税の軽減措置が外れ、税負担が最大6倍になる場合があります。使用予定がない空き家は、早めに売却や管理代行を検討することが望ましいでしょう。
家を売るときに絶対やってはいけないことは何ですか?
「早く売りたい」と焦るあまり、複数の業者に重複して依頼することは避けた方がよい行為です。複数契約は、価格競合による混乱や、二重契約などのトラブルを招く恐れがあります。
まとめ
空き家の売却は、時間をかければ高く売れるとは限りません。老朽化や管理負担が進むほど、売却の選択肢は狭まり、税負担や近隣トラブルのリスクも増していきます。そのため、「どの段階で手放すか」を早期に判断することが、結果的に損を防ぐ最大のポイントです。
買取を選ぶか、活用・譲渡・管理を続けるかは、物件の条件と所有者の目的によって異なります。大切なのは、「現状を正確に把握し、複数の選択肢を比較したうえで動く」ことです。
もし「売れない」「片付けが進まない」「権利関係が複雑」と感じている場合は、専門業者への早めの相談をおすすめします。現地調査や査定は無料で受けられるケースが多く、今の状態でどこまで価値を回収できるかを把握するだけでも、今後の判断が格段にしやすくなります。












