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不動産に関する取引や管理は、日常生活での意思決定の中でも特に重要な位置を占めるものです。なかでも「地役権」という概念は、土地や建物の利用に大きな影響を与える要素であり、所有者だけでなく、第三者との関係性にも影響を及ぼす場合があります。
この記事では、地役権の基本的な概念から、登記方法、関連する税金について解説します。地役権を理解し、適切な手続きを行うことで、土地や建物をより有効に活用する道を開くことができますので、詳細についてしっかりと把握しましょう。
目次
地役権とは
地役権は、自分の土地(例:土地A)を住宅や農業の用途などで効率的に利用するため、隣接する他の土地(例:土地B)の一部を使用することが認められる法的な権利です。この権利は、受益者と供益者の間の合意、すなわち契約に基づき設定されます。
具体的な例として、土地Aの所有者が公道にアクセスするために隣接する土地Bを通過する必要がある場合、土地Aの所有者は土地Bを通行することで自身の土地をより有効に使用することができます。このような権利は、民法第280条に基づき設定されるものです。
土地Bの所有者の合意が必要であるため、双方の納得の上で地役権を設定することが重要となります。
地役権の行使には契約・登記が必須
地役権を正式に行使するためには、双方の合意を示す「地役権設定契約書」の締結と、それに続く地役権の公的な登記が不可欠です。この手続きを怠ると、土地の不当な利用やそれに伴う法的トラブルが生じるリスクが高まります。
「地役権設定契約書」のなかには、「設定された地役権の使用料は無償とする」という条項が存在する場合もありますが、双方の合意により有償とすることも可能。ただし、使用料を受け取る場合は税務上の取り扱いに注意が必要です。
登記手続きにおいては、以下のような書類の準備が求められます。
- 登記原因証明情報(地役権設定契約書)
- 登記識別情報または登記済証
- 印鑑証明書
- 地役権図面
- 委任状
通常、登記に関する手続きは専門家である司法書士に依頼するのが一般的です。自ら手続きを進めることも可能ではありますが、専門的な知識や経験が必要となるため、適切な手続きの実施やトラブルの回避のためにも、専門家に相談することをおすすめします。
承役地・要役地とは
地役権の概念を深く理解する上で、重要な言葉が「承役地」と「要役地」です。具体的には、承役地は「利用される土地」、つまり通行やその他の目的で利用される土地を指し、要役地は「利用する土地」、すなわちその利用を行う土地を指します。
地役権には時効がある
地役権には時効が関わってきます。時効には、権利が特定の期間内に行使されないことで失われる「消滅時効」と、一定期間継続して特定の行為を行うことで新たに権利が発生する「取得時効」があります。
例として、地役権が設定された通路に建物が建てられて通行が不可能となった場合、この状態が20年間継続すれば、地役権は消滅します。
これを「地役権の消滅時効」と称します。逆に、20年間一貫して特定の通路として使用していた場合、取得時効により地役権が発生することが考えられます。この期間は、その状態の開始時点で地役権の存在について善意無過失の場合は、10年間となります。
地役権と「地上権」「囲繞地通行権」との違い
ここからは、地役権と混同されやすい「地上権」「囲繞地通行権」との違いについてみていきましょう。
地上権との違い
地上権は、他人の土地上に建築物や竹林などを設置・利用する権利です。地役権は土地そのものの利用に関わるのに対して、地上権は土地上の構築物の利用に特化しています。
地上権では利用目的に特定の制約が存在せず、売買も可能であるため、地役権とは異質な権利と考えられます。
囲繞地通行権との違い
囲繞地通行権は、公道に面していない袋地の所有者が、隣接する他の土地を通って出入りするための権利です。
通行地役権は、既に公道にアクセス可能な土地が利便性を向上させるために他人の土地を利用する場合に設定されることが多いのに対し、囲繞地通行権は基本的に他人の土地を通らざるを得ない状況で設定されます
通行地役権は双方の合意に基づいて設定されるのに対して、囲繞地通行権は法律により自動的に袋地の所有者に与えられる権利です。
通行料についても、通行地役権は無料のことが多いのに対し、囲繞地通行権では使用料の請求が一般的となっています。
地役権が使用されるケース
地役権が使用されるケースとしては、以下のようなシチュエーションが挙げられます。
- 通行目的
- 配管を埋める
- 送電設備の建設
それぞれ個別にみていきましょう。
通行目的
土地の配置や状況から、他人の土地を通過することが不可欠となるケースがあります。このような場合、「通行地役権」の設定が行われるケースが多々あります。
例えば、主要な道路へのアクセスや駅への距離を短縮するためには他人の土地を利用する必要が生じることがあります。
口約束での利用も一般的ですが、土地の所有者が変わるリスクや利用拒否の可能性を考慮すると、正式な契約と登記を推奨します。
配管を埋める
都市部の密集したエリアなどで、自らの土地のみで水道や下水道との接続が困難な場合、地役権を利用して他人の土地の地下部分に配管を敷設することが考えられます。
工事の実施や将来的なリスクを明確にするため、正式な契約と登記を進めることが重要です。災害時のリスクや保守点検の必要性など、様々な事情を鑑みて、きちんと手続きを行うべきです。
送電設備の建設
送電施設、特に鉄塔の設置を行うために「送電線路施敷地役権」の設定が求められることがあります。
この権利は、電力会社が土地上に送電のための施設を設置する場合に特有のものです。施設の設置に伴い、土地の利用が大きく制限されることから、適切な対価が支払われることが一般的。さらに、土地価格の低下に伴う税制上のメリットも考慮すべき点です。
地役の登記で必要な登記事項と書類
地役権は不動産の所有権と並行して、公的な制度を通じてその存在を明確にするための登記が可能な権利です。
この登記制度は、権利関係を公的に明確化し、第三者への情報提供を目的としています。
地役権の登記を行う際には、指定された書類の準備が求められ、それらを法務局に提出する必要があります。地役権設定登記の際の登録免許税は、承役地の数ごとに1,500円となります。
登記する事項と必要書類については、以下のとおり。
<登記項目>
- 要役地
- 地役権設定の目的
- 地役権設定の範囲
<必要書類>
- 登記原因証明情報:登記原因について記載または記録された内容の署名もしくは押印した書面など。
- 登記識別情報または登記済証(無い場合は本人確認情報)
- 印鑑証明書
- 地役権図面:承役地のどこが地役権の目的となっているかを図示したもの。
- 代理権限証明情報(委任状):司法書士に依頼する場合に必要。
専門的な知識や緻密な書類作成が必要なため、自身での手続きが難しい場合は、経験豊富な司法書士に依頼することを推奨します。
地役権で発生する税金
地役権で発生する税金は次のとおりです。
- 固定資産税
- 分離課税
概要について、個別に解説します。
固定資産税
固定資産税は土地の所有者が納税義務を持つ税金です。例えば、高圧電線が土地上空を通るような建築制限が存在する地役権が設定されている場合、その制限に応じて税額の控除が適用されることがあります。
固定資産税は、不動産の「固定資産税評価額」に基づき、一般的に1.4%の税率で計算されますが、自治体によっては異なる税率が適用されることもあります。
分離課税
地役権の設定に際して受け取った権利金は、資産の譲渡とみなされ、分離課税の対象となる譲渡所得として計上されます。分離課税は、他の所得とは独立して税額が計算される課税方法です。
権利金が土地の時価の半分(あるいは条件次第で1/4)を超えると、譲渡所得としての課税が適用されます。
まとめ
地役権は、土地利用の多様性を保証するための重要な権利であり、その設定や変更には正確な手続きが求められます地役権の存在によって発生する税金や、それに関連する手続きには細心の注意が必要。
具体的なケースや状況に応じた適切な対応を行うには、専門的な知識と経験が不可欠です。地役権に関する取引や手続きを進める際は、確実に正確な対応を行うためにも専門家に相談しましょう。
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