共有名義を解消する7つの方法とは?解消にかかる費用についても解説!
相続をきっかけに1つの不動産を兄弟や親族で共有することは珍しくありません。しかし、相続後に時間が経つにつれて「売りたいのに話がまとまらない」「管理や費用の負担に偏りがある」といった不満が出てくることもあります。
不動産を複数人で所有していると、誰か1人の判断だけで行動することができません。結果として、共有人同士の関係が悪化する原因にもなります。
本記事では、そんな不動産の共有状態を解消するための方法について詳しく解説します。
目次
不動産の共有名義とは
不動産の共有名義とは、1つの不動産を複数人で共同所有している状態を指します。それぞれの所有者は「持分割合」に応じて権利を有しており、不動産の登記簿にもその内容が記載されます。
共有名義は売却や建て替えなどを行う際に、原則として共有者全員の同意を得なければいけません。そのため、不動産を活用する際の意思決定に時間がかかりやすいという問題があります。
共有名義の不動産を所有する場合は、各共有者の権利をしっかりと把握し、トラブルを避けるためにも事前にルールを取り決めておくことが必要です。
共有持分権とは?法的に許されている行為や制限、解消方法を解説
共有名義状態を解消しないまま放置するとどうなる?
不動産を共有名義のまま放置してしまうと、不動産の売却や活用に支障をきたすことがあります。不動産を共有名義のまま放置するリスクについて解説しますので、共有名義の不動産を保有している方は、ぜひお役立てください。
不動産の処分に全員の同意が必要になる
共有不動産を売却する際には、原則として共有者全員の同意が必要です。1人でも反対すれば、手続きを進められず、買主も安心して契約できない状況になります。共有者が増えるほど意見の集約が難しくなり、売却のタイミングを逃す可能性もあります。
管理や利用に共有者同士の協議が必要になる
不動産を賃貸に出したり、建物を改修したりといった場合も、共有者全員の合意が求められます。管理方法についての意見が分かれると、スムーズに話が進まないことも多く、結果として放置状態になりかねません。
共有持分の管理行為とは?できること・できないことと対処法をわかりやすく解説
相続によって権利関係が複雑化する
共有者の1人が亡くなった場合は、その持分が法定相続人へ引き継がれます。そのため、共有者の数が増えると、関係がより複雑になる可能性があります。不動産に関して誰が権利を保有しているかを正しく把握できないケースも多々あります。
維持費や税金の負担が大きくなる
固定資産税や修繕費などは、持分に応じて各共有者が負担するのが一般的です。しかし、支払いを怠る人が出てくると、他の共有者が肩代わりするケースもあり、不公平感からトラブルが発生しやすくなります。
共有関係者が増える可能性がある
不動産の共有関係者は、相続によって増えていくケースが多々あります。人数が増えると、意見調整や書類の取りまとめがより困難になり、不動産の有効活用が難しくなります。最初はうまく不動産を活用できていたとしても、次第に難しくなる可能性があるのは問題の1つといえるでしょう。
土地の共有名義を解消する7つの方法
共有名義の土地は、自由に管理したり売却したりすることが難しいのが実情です。そのため、早めに共有名義の状態を解消するのが望ましいといえます。
以下より、共有名義を解消する主な7つの方法について詳しく解説します。以下の表でもわかりやすくまとめていますのでチェックしてください。
方法 | 内容 | メリット |
共有持分の売却 | 持分全体または一部を他の共有者や第三者へ売却する方法 | 持分の現金化が可能 |
無償で持分を渡す | 他の共有者に無償で持分を渡す方法 | 共有名義をスムーズに解消できる |
共有者間で譲渡する | 持分を他の共有者に売却・購入して名義統一する方法 | 持分の現金化が可能で手続きもスムーズに進めやすい |
共有持分を放棄する | 自分の持分を無償で放棄する方法 | 相手に土地を明示的に渡さなくても共有状態を解消できる |
共有者間で持分交換を行う | 複数の土地を所有している場合に持分を交換する方法 | 実質的な単独所有化が可能 |
土地を物理的に分ける(分筆) | 土地を実際に分割して単独所有とする方法 | 贈与税・所得税がかからない場合が多い |
共有持分分割請求訴訟 | 裁判所に共有解消を求める訴訟を起こす方法 | 強制力がある |
共有持分の売却
共有状態を解消する手段として、最も一般的なのが売却です。売却には「共有者全員で不動産を売却する方法」「自分の持分だけを第三者に売却する方法」の2つがあります。
前者は市場価格での売却が見込める一方で、全員の合意が前提となるため、1人でも反対すれば実現できません。後者では自分の共有持分だけを手放すことができ、共有者との調整が困難な場合でも売却可能です。
一般的な不動産と比べると買い手探しは難航しやすいのですが、共有持分の不動産に特化した専門業者であればスムーズに買い取ってくれます。専門業者に相談しつつ、売却を進めましょう。
無償で持分を渡す
持分を売却せず、贈与という形で他の共有者に無償で譲ることもできます。他の共有者が土地を求めており、自分が土地を手放すことに抵抗がない場合は、贈与も負担の少ない方法といえるでしょう。
しかし、贈与という行為は贈与税の対象となるため、毎年の基礎控除額を最大限活用して計画的に進めるのが効果的です。また、兄弟間での贈与の場合、親子間での贈与に適用される特例税率よりも高い一般税率が適用されるので、税額の計算に注意が必要です。
課税価格範囲(基礎控除後) | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
200万円超〜300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円超〜400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円超〜600万円以下 | 30% | 65万円 |
600万円超〜1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円超〜1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
1,500万円超〜3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
贈与税には親や祖父母などから、子や孫への贈与といった特定の条件を満たす場合に適用される「特例贈与財産用(特例税率)」があります。住宅取得資金や教育資金などの支援を想定した制度で、税率が一般贈与よりも低く設定されています。
兄弟間の贈与は特例の対象にはならず一般税率が適用される点には注意しましょう。贈与税について不安がある方は、税理士のような専門家に相談したり、訳あり不動産の取扱いが豊富な業者を利用したりするのがおすすめです。
共有持分を贈与する際の「贈与税の計算方法」をわかりやすく解説!
共有者間で譲渡する
持分を他の共有者に売却する、または共有者から持分を購入することで、共有名義を単独所有に変更できます。一方の共有者が土地を欲しがり、他方が資金を必要とする場合においては有効な方法です。
ただし、持分の購入に際しては、住宅ローンの利用が難しい点や、譲渡所得税の問題、不動産取得税などの税金に関連する課題が浮上する可能性もあります。税率や税額は所有期間や売却金額により異なるため、適切なアドバイスを受けながら手続きを進めましょう。
所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 | |
短期譲渡所得(5年以内) | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得(5年超) | 15% | 5% | 0.32% | 20.32% |
共有持分を放棄する
共有者が持つ持分を放棄する。あるいは他の共有者から放棄を依頼することで、共有名義の土地を単独所有にすることが可能です。この方法は贈与とは異なり、持分の受け取る相手を明示しない点が特徴です。
しかし、税務的な取り扱いは贈与と似ており、放棄を受けた共有者に贈与税や不動産取得税が課される可能性があります。持分を放棄する行為は、他の共有者の同意を必要としないものの、登記の際には共有者全員の協力が必要です。
協力が得られない場合には、裁判所を通じて登記を実行するという方法もあります。
共有持分の放棄は「早い者勝ち」って本当?損をしないために知っておくべき注意点とは
共有持分の放棄の同意を得られない場合の「訴訟」について詳しく紹介
共有者同士で持分交換を行う
複数の土地において、同じ共有者間での共有状態が継続している場合は、持分交換を行うのも効果的です。持分の交換には、所得税が発生する可能性があります。ただし、一定の要件を満たす場合、所得税法に基づき税の非課税措置が受けられます。
持分の交換は、資金の準備や取引の手間が少なく、税金の面でもメリットがあります。適用できるケースは多くありませんが、共有状態を解消する上で検討の余地がある方法です。
土地を物理的に分ける分筆を行う
分筆とは1つの土地をいくつかの部分に区分する手続きを指します。全員が該当の土地を保持したい場面において効果的な方法であり、土地が単独所有になったとしても贈与税はかかりません。
要件を満たせば所得税も課税されないため、税制面でのメリットも大きい方法です。一方で、境界確定測量や役所への分筆登記などの手間がかかる点には注意しましょう。
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共有持分分割請求訴訟をする
共有持分分割請求訴訟とは、他の方法で共有名義の解消が困難な場合に地方裁判所・簡易裁判所に訴訟を起こして持分の処理を求める方法です。裁判所は現物分割・換価分割(競売による売却)・価格賠償といった方法で分割方法を判断します。
共有持分分割請求訴訟には時間と費用がかかりますが判決には強制力があるため、協議や調停で解決できないときの最終手段となります。
共有持分の放棄の同意を得られない場合の「訴訟」について詳しく紹介
特殊な状況下での共有名義の解消方法
共有名義を解消する上で、特殊な状況下だと手続きがスムーズに進まない可能性があります。ここからは、そんな特殊な状況下における共有名義の解消方法について解説します。どのように共有名義を解消すれば良いかわからない方は、参考情報としてお役立てください。
共有者の誰かが認知症である
共有者の誰かが認知症などで判断能力を失ってしまった場合、合意による持分の売却や分筆といった手続きを進めることができなくなります。その場合は、家庭裁判所に「成年後見人」の選任を申し立てる方法があります。
成年後見人が就任すれば、共有者本人に代わって不動産処分や登記手続きなどを進めることが可能です。ただし、売却や贈与のような財産を手放す行為には、家庭裁判所の許可が必要です。
あくまでも本人の財産保護が目的の制度であるため、単なる家族間の都合では認められないこともある点には留意しましょう。
共有名義人が認知症になったら、不動産は売却可能?成年後見人制度とセットで解説
行方不明の共有者がいる
共有者の一人が長期間にわたって音信不通で所在もわからない場合は、共有関係の整理が進められなくなってしまいます。この場合は、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
不在者財産管理人は、行方不明の共有者に代わって持分を管理する権限を持つため、管理人が裁判所の許可を得れば、売却や分割の手続きも可能になります。管理人には基本的に弁護士が就任するため、どれだけのコストがかかるかも事前にチェックしておきましょう。
共有者の1人が死亡した
共有者のうち1人が亡くなった場合、持分は法定相続人に引き継がれます。相続人全員が新たな共有者となるため、さらに権利関係が複雑になる可能性があります。
共有者のうち1人が亡くなった場合は、相続登記を行って誰がその持分を相続したのかを明確にしましょう。その後に、他の共有者との間で「持分を買い取る」「放棄してもらう」「換価分割をする」など、解消に向けた手続きを進めていくことになります。
共有者の死亡によって関係者が増えると、調整に時間も労力もかかります。早期に共有名義を整理しておくことが、トラブル予防の観点からも重要です。
共有名義の解消にかかる費用
共有名義を解消する方法は数多くあり、発生する費用も異なります。以下より、代表的な4つの方法において発生する費用を紹介します。不動産の共有名義を解消する際は、どれくらいの費用がかかるのかも把握しておきましょう。
不動産売却にかかる費用
共有不動産を売却する場合は、一般的に以下のような費用がかかります。
仲介手数料 | 不動産会社に支払う報酬で売買価格の3%+6万円(+消費税)が上限とされている |
登記費用 | 所有権移転登記の際に発生する登録免許税や司法書士への報酬 |
印紙税 | 売買契約書に貼付する収入印紙の費用 |
譲渡所得税 | 売却益が出た場合に課される税金 |
売却による共有名義の解消には、現金化ができるというメリットがあります。一方で、税金面の負担も大きくなりやすい点には注意が必要です。
土地の分筆にかかる費用
土地を物理的に分けて単独所有にする分筆では、以下の費用が発生します。
測量費用 | 現況測量や境界の確定においてかかる費用 |
登記費用 | 分筆登記にかかる登録免許税や司法書士への手数料 |
また、土地の登記簿に記載されている免責が、実際に測量した土地の面積と異なる場合に地積更正登記が必要になります。別途費用がかかるため注意しましょう。
共有持分の放棄にかかる費用
共有者が自らの持分を放棄する場合は、費用はかからないように思われがちです。しかし、実際には以下のコストが発生する可能性があります。
登記費用 | 持分放棄に伴う名義変更登記が必要となる場合は、登録免許税や司法書士への報酬が発生する |
贈与税 | 放棄によって他の共有者が持分を取得したとみなされると、贈与税の課税対象となる場合がある |
放棄を行う場合でも税制面におけるリスクはゼロではありません。不安な方は、税理士のような専門家や共有持分を多く取り扱っている不動産会社に相談しましょう。
共有持分分割請求にかかる費用
裁判によって共有名義を解消する共有物分割請求においては、以下のような費用が発生する可能性があります。
裁判費用 | 印紙代や郵券代(切手代)などが必要となる |
弁護士費用 | 着手金・報酬金・日当などを負担する必要がある。数十万円〜100万円以上発生する可能性もある |
鑑定費用 | 不動産の評価を争う場合は、不動産鑑定士による鑑定が必要になることもある |
共有持分分割請求は話し合いによる解決が難しい場合に利用される方法です。強制力がある一方で、コストや時間的負担が大きい点には注意しましょう。
相続不動産を共有名義にしない方法
相続をきっかけに、不動産が共有名義になってしまうケースは少なくありません。共有名義の状態は、不動産の管理や売却でもめる原因となることも多々あります。そのため、そもそも共有名義にならないようにしなければなりません。
ここでは、相続不動産を共有名義にしないための対策を紹介します。
遺言書で相続人を1人に指定しておく
遺言書を残して特定の相続人に不動産を相続させる意思を明確にしておくと、共有名義になる可能性を大幅に削減できます。不動産を複数人で分けるのは難しく、曖昧なまま共有にすると不動産の活用や売却に支障が出るケースもあります。
遺言書は法定相続よりも優先されるため、トラブルの防止において効果的といえるでしょう。法定相続人の遺留分にも配慮が必要なため、弁護士や司法書士に相談しながら文面を作成するのが有効です。
共有持分を遺言書で相続させることは可能?効力や手続きの流れを詳しく紹介
死後事前契約を活用する
最近は「死後事前契約(死後事務委任契約+遺言執行契約)」を活用するケースも増えています。死後事前契約とは、生前に信頼できる第三者と契約を交わし、死後の財産処理を一任する仕組みです。
例えば、自宅を特定の子どもに相続させるよう手配してもらい、他の相続人には預貯金などで代償分割を行うといった対応が可能になります。死後の手続きがスムーズになり、不動産を共有にせずに済む可能性が高まります。
しかし、制度として発展途上の面もある点には注意が必要です。信頼できる専門家に相談しながら手続きを進めましょう。
生前に贈与・売買・持分整理をしておく
そもそも相続時に土地を共有名義にしないためには、生前に名義を一本化しておくという方法もあります。例えば、親が元気なうちに特定の子に持分を贈与したり、売買の形で整理したりすることで、相続後の手続き負担が大幅に削減されます。
贈与税や不動産取得税などの税金面には注意が必要ですが、専門家と相談しながら進めればスムーズな承継が可能となるでしょう。
共有持分の解消に関するよくある質問
共有持分の解消に関するよくある質問について回答します。共有持分について悩みを抱えている方は、ぜひお役立てください。
共有持分を放棄することはできる?
共有持分の放棄は可能です。しかし、放棄をしたからといって自動的に他の共有者に権利が移るわけではありません。放棄された持分は、民法の規定により国庫に帰属します。
遺産相続で共有持分になった場合はどうする?
遺産相続で共有持分になった場合は、早めに持分整理を進める必要があります。「他の共有者に売却する」「土地を分筆して単独所有にする」などの方法で、早めに共有持分を解消しましょう。
裁判で共有持分を解消するのにかかる時間は?
裁判が終わるまでには半年から1年以上かかることが一般的です。関係者の人数や主張の対立度合いによっては、さらに長期化するケースもあります。
「ワケガイ」なら共有持分も短期で買取可能!
当社(株式会社ネクスウィル)は、共有名義や持分不動産などの訳あり物件に特化した買取サービス「ワケガイ」を運営しています。共有者間で意見が合わずに売却が進まない、相続後に名義が分散して手続きが複雑になっている状況でも、ワケガイなら対応可能です。
豊富な実績と専門家ネットワークにより、法務・税務面も含めてサポート体制を整えています。共有不動産の扱いにお悩みの方は、ぜひお気軽に無料査定をご活用ください。
共有名義は早めに解消してトラブルを防止しよう!
不動産の共有名義は相続や贈与などで発生し、トラブルの原因になりやすい所有形態です。共有者全員の同意が必要なため、売却や建て替えが思うように進まなかったり、管理や維持の負担が不公平になったりする可能性があります。
トラブルを防止するためには、共有名義を早期に解消する必要があります。また、相続によって新たに共有名義が発生しないように、遺言書の活用や生前の対策も効果的です。
早い段階で専門家に相談し、方針を固めておくことが、安心して不動産を活用・処分する上で重要といえるでしょう。共有持分に関する問題でお悩みの方は、不動産に強い司法書士や、訳あり物件専門の買取業者に相談しましょう。