こんにちは。ワケガイ編集部です。
「相続でマンションを兄弟と共有した」「夫婦で連名購入したにもかかわらず離婚に至った」といったケースでは、管理や修繕の判断がまとまらない。あるいは、売却が進まないといった問題が発生します。
そういった物件は、そもそも「共有持分」と呼ばれます。
共有持分は、1つの不動産を複数人で所有する際に、それぞれがどの割合で権利を持っているかを示す考え方で、意思決定の範囲や負担の大きさに関わる基本となる要素です。この仕組みを把握しているかどうかで、相続・離婚・売却などの場面で取れる選択肢が大きく変わります。
本記事では、マンションにおける共有持分の基礎から、発生の経緯、調べ方、共有特有のリスク、売却までの実務的な流れを整理して解説します。
目次
マンションの共有持分とは
マンションの登記簿には「共有持分」「敷地権」といった用語が記載されています。どちらも所有権に関わる用語ですが、指している対象や意味合いが異なります。ここからは、まず「共有持分」という考え方を整理し、そこから「区分所有」「敷地権」との違いを順に解説します。
共有持分とは
共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有しているとき、それぞれがどれだけの割合を持っているのかを示す概念です。マンションの場合、専有部分は個々の所有者が単独で所有しますが、建物全体の構造や設備、敷地のように住人全員が利用する部分は共同で所有する仕組みになっています。
(参考:e-Gov 法令検索「民法」)
そのため、住戸を購入すると、部屋だけでなく共用部分や敷地についても一定の割合を所有する形になり、これが共有持分として登記されます。持分割合は「持分◯分の◯」のように表示され、議決権の重みや修繕負担の割合と連動することもあります。

普段意識することは多くありませんが、売却・相続・建替えなどの場面で大きな影響を与える要素です。
関連記事:マンションにおける専有部分と共有部分の違いとは?注意点をわかりやすく紹介
区分所有との違い
区分所有は、マンションのように1つの建物を複数の独立した住戸に分け、それぞれを個別に所有できる権利を指します。例えば「101号室」や「502号室」といった専有部分がこれにあたり、内部の利用やリフォームなどは所有者が自由に判断できます。
一方、共有持分は建物全体や敷地のうち、複数人で共同所有する部分に対する権利割合を表すものです。区分所有が「自分の部屋を所有する権利」であるのに対し、共有持分は「全員が使う部分をどれくらいの割合で所有しているか」という位置づけになります。
敷地権との違い
敷地権とは、マンションの敷地(建物が建っている土地)を利用するための権利を意味します。1983年の区分所有法改正により導入された制度で、建物の所有権と土地利用権を切り離さずに扱うために整備されました。
敷地権は土地の所有権または借地権で構成され、各住戸の所有者がその一部を持つ形になります。
共有持分と混同されることがありますが、敷地権は「土地を使うための法的な資格」、共有持分は「建物や土地をどれくらいの割合で所有しているか」という違いがあります。敷地権はマンションの権利関係の取り決めであり、共有持分はその具体的な割合を示すものと理解すると整理しやすくなります。
共有持分のマンションの意思決定のルール
共有名義のマンションでは、ちょっとした修繕から建替えまで、あらゆる場面で「誰がどこまで決められるのか」という問題がつきまといます。単独所有のマンションであれば自分一人で判断できることでも、共有になると複数人の意見をそろえる必要が生じます。
そこで基準になるのが、民法で定められた「保存・管理・変更」という三つの分類です。どの行為にどれだけの同意が必要なのかを整理しておくと、トラブルを避けたり、話し合いの進め方を考えやすくなります。
共有名義で行う行為は「保存・管理・変更」に分類される
共有不動産に関する意思決定は、民法で定められる三分類「保存行為」「管理行為」「変更行為」に基づいて判断されます。
保存行為とは
保存行為とは、共有している不動産を「今ある状態から悪化させない」ための行為を指します。建物や土地の価値を守るための行動であり、法律上は共有者のうち一人が単独で行っても構わないとされています。
代表的な例として、建物の雨漏りを防ぐための応急修繕や、法務局での登記申請、固定資産税の納付などが挙げられます。
<保存行為の例(マンションで一般的なもの)>
- 雨漏り・漏水への応急処置
- 破損箇所の緊急対応(ガラス破損・配管トラブルなど)
- 法務局での登記申請
- 固定資産税・都市計画税の納付
- 共用部分の安全確保に関する応急措置(落下物・危険箇所の一時対応)
管理行為とは
管理行為とは、不動産をより適切に使ったり維持したりするための行為です。保存行為ほど緊急性は高くないものの、共有者の利益に大きく関係するため、持分の過半数の同意が必要とされています。例えば、共用部分の定期清掃やエントランスの照明交換のような小規模な改修、または建物の賃貸運用のような管理上の判断が該当します。
<管理行為の例(マンションで一般的なもの)>
- 共用部分の清掃・照明交換などの軽微な維持作業
- エントランス・廊下・駐輪場などの小規模な修繕
- 管理会社との委託契約の締結・更新
- 防犯カメラ・オートロックなど小規模設備の導入
- 共用スペース(駐輪場・倉庫等)の利用・貸出に関する判断
変更行為とは
変更行為は、共有不動産の性質そのものを変える、いわば「最も重い決定」にあたります。敷地の用途を変えたり、建物の大規模な増改築を進めたり、共有物を売却したりする場合がこれにあたります。これらは不動産の価値や利用方法を根本から変えるため、共有者全員の同意が必要です。
<変更行為の例(マンションで一般的なもの)>
- 建替え・外壁補修を含む大規模修繕
- 共用部分の用途変更(集会室・倉庫の用途転用など)
- 敷地や建物の一部または全部の売却
- 構造に影響する増改築(エレベーター増設など)
- 敷地の分筆・合筆など権利関係を変える手続き
専有部分と共用部分では意思決定の権限が異なる
マンションでは「どこを誰が決められるのか」が明確に区分されており、この仕組みを理解しておくと、どこまで自分の判断で動けるのかが把握しやすくなります。専有部分は各所有者が単独で使える空間であり、室内の修繕や設備交換は基本的に本人の裁量で進められます。
一方、外壁やエントランス、廊下などの共用部分は全員が利用する財産であるため、個人の判断では手を加えられません。安全性や維持管理のレベルが所有者全体に影響するため、管理組合による合意が前提になるのです。
共用部分に関する判断では、持分割合が議決権に反映されることがあります。持分の小さい共有者は総会での影響力が限定されやすく、大規模修繕や設備更新のような費用を伴う議案では意見がとおりにくい場面もあります。
合意形成が難しいときは法律・裁判所の手続きを利用する
共有者同士で意見が完全に割れてしまうと、話し合いだけでは前に進めなくなることがあります。「相続による共有」「普段の交流が少ないまま共有関係が続いている」場合ほど、判断の基準がそろわず、合意までの距離が開きやすくなります。
どうしても意見がまとまらない状況では、法律の手続きを使って調整を図る方法が現実的です。
例えば、共有関係そのものを解消したいときには「共有物分割請求」、管理に関する権限を一部の共有者に委ねたいときには「管理権限付与の申立て」という制度があります。いずれも裁判所を介して手続きを進める仕組みで、全員の合意が得られないまま強引に進めた判断が無効になるリスクを避けられます。
マンションの共有持分が発生する背景
マンションが共有名義になる状況は、特別なケースに限られると思われがちですが、実際にはごく日常的な出来事がきっかけになることが多いものです。
一般の方が共有持分マンションの当事者になるきっかけとしては、次のようなものが挙げられます。
- 相続でマンションを兄弟や親族と共有することになった
- 夫婦やカップルでマイホームを連名購入した
- 投資目的で複数人が共同出資してマンションを購入した
- 複数世帯で同じ敷地に住むため、土地を共有して建物を建てた
- 隣接する土地所有者と共用部分(通路・私道)を共有している
- 名義上の便宜で一時的に共有にしたまま整理していない
それぞれ個別に解説します。
相続でマンションを兄弟や親族と共有することになった
相続でマンションを複数人が受け継ぐことになった場合、持ち分を物理的に分けることができないため、共有名義にせざるを得ないことがあります。
本来であれば、誰が引き継ぐか、売却して現金で分けるかといった協議を行うべきですが、時間的な余裕がないまま登記期限が迫ると、「ひとまず共有にしておく」という選択が取られやすいのが実情です。
共有のまま相続を終えると、その後の管理や売却で意見がそろわず、話し合いが難航しやすくなります。
特に兄弟間で距離があったり、価値観が異なる場合は、修繕費の負担や賃貸に出すかどうかなど、細かな判断で衝突しやすく、結果として共有状態が長期化する要因になります。相続は誰にでも起こり得るため、「気づいたら共有者になっていた」という相談は非常に多い形です。
夫婦やカップルでマイホームを連名購入した
共働き世帯では、住宅ローンの返済能力を高めるためにペアローンや連帯債務を選ぶ人が増えています。この方法では、出資割合に応じてそれぞれの持分が設定されるため、購入時点で自動的に共有名義になります。
住宅取得の合理的な方法として広く利用されていますが、将来的に状況が変わった場合の扱いが難しくなることがあります。
離婚、別居、転勤、収入の変化など、人生の転機が訪れたとき、誰が住み続けるのか、ローンをどう分担するのか、持分を移転するのかといった問題が浮かび上がります。事前に取り決めをせず連名購入したケースでは、出資額まで含めて整理する必要が生じ、話し合いが複雑化しやすくなります。
投資目的で複数人が共同出資してマンションを購入した
不動産投資や民泊運営など、収益目的で複数人が共同出資し、一つのマンションや区分を取得するケースも存在します。持分割合は出資額によって決まるものの、運営方針や利益分配の考え方が一致していなければ、意見の食い違いが表面化しやすい性質があります。
本来であれば、管理方法、費用の扱い、退出時の精算などを事前に契約書で明確にしておくべきですが、友人同士の投資や小規模な事業では、口頭の合意だけで始めてしまうことがあります。
すると、後に誰が意思決定権を持つのか曖昧になり、修繕の判断や売却のタイミングで大きな対立が生まれることがあります。
複数世帯で同じ敷地に住むため、土地を共有して建物を建てた
親子や親族が同じ敷地で暮らすために二世帯住宅を建てたり、同じ土地に別棟を建築したりすると、土地そのものを共有名義にするケースは珍しくありません。建物はそれぞれ独立していても、土台となる土地は1つであるため、所有権を分けることができず共有の状態が続きます。
家族間での合意が前提となるため、当初は問題がなくても、時間が経つにつれて状況が変わりやすい点が特徴です。
隣接する土地所有者と共用部分(通路・私道)を共有している
マンションの敷地に接する通路や私道の一部が、複数の所有者によって共有されているケースも珍しくありません。このような私道は、マンションの出入りや駐車スペースと直結していることが多く、利用者全員が円滑に使えるよう維持管理が必要になります。
ところが、共有者同士で「誰がどこまで使えるのか」「修繕費はどの程度負担するのか」といった取り決めが曖昧なままだと、実際の利用や修繕の段階で意見がぶつかりやすくなります。
特に、私道が生活動線の中心に位置していたり、車両の出入りに関わる場合は、ちょっとした利用制限でも暮らしに大きな影響が出ることがあります。共有範囲が広いほど、権利関係が複雑になり、将来の売却や名義整理の際に確認すべき事項も増えます。
名義上の便宜で一時的に共有にしたまま整理していない
購入時や相続時に、ひとまず複数人名義にして登記を済ませるという対応は意外と多いものです。「時間がない」「話し合いが決まっていない」「資金や手続きの関係で名義を一時的に分散する必要がある」などの理由から便宜的に共有名義にしたまま、後で整理するつもりが先送りにされるのが典型的です。
しかし、不動産は「登記に記載された状態」が法的効力を持つため、共有が“仮”であるという認識は通用しません。放置すると、処分の際に共有者全員の同意が必要になったり、贈与税や譲渡所得の計算が複雑になったりするなど、負担が一気に現実化します。
共有者の一部が高齢化したり、相続が発生したりすると、名義整理の難易度は跳ね上がり、さらに共有者が増えて対処しにくくなります。
マンションの共有持分割合の調べ方
共有持分は「自分がどれだけの割合を所有しているか」を示す指標であり、売却や相続の場面で必ず確認が必要になります。
ただし、普段は意識する機会が少ないため、どこを見れば分かるのか戸惑う人も多いのではないでしょうか。そこで、一般の方でも確認しやすい順に、主要な確認方法を詳しく解説します。
- 登記事項証明書を取得して持分割合を確認する
- 購入時の売買契約書・重要事項説明書を見直して確認する
- 出資額と登記内容の差を確認してリスクを把握する
- 法務局で登記事項証明書を取得する
それぞれ個別に解説します。
登記事項証明書を取得して持分割合を確認する
最も確実で正式な確認方法は、法務局が発行する「登記事項証明書(登記簿謄本)」を確認することです。マンションの登記情報には、所有者の氏名とともに「持分○分の○」という記載があり、これが共有持分割合を表しています。
例えば「2分の1」であれば半分ずつ、「10分の3」であれば全体の3割を所有していることになります。
登記事項証明書は不動産の“公式な情報源”であり、法律的な判断を下す際の出発点になります。売却する場合はもちろん、相続や贈与、名義整理の場面でも必ず参照されるため、一度取得して手元に保管しておくと安心です。オンラインでの取得も可能で、住所さえ分かれば誰でも閲覧できます。
購入時の売買契約書・重要事項説明書を見直して確認する
購入時に交付された売買契約書や重要事項説明書にも、持分割合が記載されています。特に区分所有マンションでは、「専有部分の面積に応じた土地・共用部分の持分」が契約書に明確に書かれていることが多く、登記簿を取得する前段階の確認として役立ちます。
夫婦で連名購入した場合やペアローンを組んだ場合は、出資割合に基づいて持分が設定されているケースがあります。購入から年月が経っていると、当時の合意内容を忘れていることもあるため、契約書を見直すことで「なぜこの割合なのか」まで把握しやすくなります。
出資額と登記内容の差を確認してリスクを把握する
共有名義で購入した場合、登記された持分割合と、実際の出資額が一致していないことがあります。夫婦で均等持分にしたものの、実際の負担はどちらかが多かったというケースが典型的です。
このズレが大きいと、贈与とみなされ課税対象になる可能性があり、後に名義整理を行う際にもトラブルの原因となります。
登記内容と実際の出資実態を照らし合わせておくと、将来の相続や財産分与を考える際に判断がしやすくなります。見逃されがちなポイントですが、共有状態の見直しを検討するなら、早い段階でこの差を確認しておくことが大切です。
法務局で登記事項証明書を取得する
手元に登記簿がない場合は、あらためて法務局で登記事項証明書を取得する方法が確実です。最寄りの法務局窓口で住所を伝えるだけでも取得できますし、オンラインの登記情報提供サービスを使えば、自宅からでも取得できます。
数百円の費用で済むため、情報を正確に把握したい場合は再取得をためらう必要はありません。
登記簿は最新情報に更新されるため、以前の内容から変わっている可能性もあります。特に相続が発生したり、共有者が持分を譲渡したりした場合は、登記内容が変更されていることがあるため、正式な情報を確認する意味でも再取得が安心です。
共有持分のマンションだからこそ起こりやすいリスク
共有名義のマンションは、複数の人がひとつの不動産を所有している以上、単独所有のマンションとは異なるリスクがあります。
代表的なものとしては、以下のとおり。
- 意思決定に時間がかかり、建替えや修繕が進まない
- 連絡が取れない共有者がいると手続きが止まる
- 共有者同士で費用負担や使用方法をめぐって対立する
- 共有者の一人が第三者に持分を売却してしまう
- 資産価値が下がり、売却・融資が難しくなる
次項より、詳しく解説します。
意思決定に時間がかかり、建替えや修繕が進まない
区分所有マンションの1室を複数人で共有している場合、その部屋の管理・処分については共有者全員の考えが一致していなければ前に進みにくくなります。
仮に、相続で3人の兄弟が1室を共有している場合、「住み続けたい人」「売って現金化したい人」「判断を先送りしたい人」が混在し、方向性が決まらないことで管理や売却の話が停滞しがちです。
日常的な管理であれば比較的調整しやすいものの、賃貸に出すかどうか、売却するかどうかといった判断には全員の合意が必要です。決定を先送りにしているうちに部屋の劣化が進むこともあるため、共有者間で早めに方向性を確認することが現実的な対応になります。
連絡が取れない共有者がいると手続きが止まる
共有者のうち一人でも連絡がつかなくなると、売却や名義変更を進められなくなる点も大きな負担に繋がります。
相続で共有になったケースでは「遠方に住んでいる共有者が話し合いに参加しない」「住所がわからない」「そもそも不動産に関心がない」といった状況が起こりやすく、こうした状態が続くと共有者全員の同意が必要な手続きが前に進みません。
手続きが長期化すれば、管理費の滞納や固定資産税の負担が偏る問題も生まれます。残っている共有者だけが費用を補填する形が常態化すると、精神的な疲弊につながり、関係性が悪化することもあります。
共有者同士で費用負担や使用方法をめぐって対立する
共有名義のマンションでは、修繕費や管理費の負担、さらに共用部分の使い方など、日常的な判断でも意見が分かれやすくなります。例えば、エントランスの改修や共用設備の更新は、全員が恩恵を受ける一方で費用負担も伴うため、「今は必要ない」「負担が重い」といった声が出ることがあります。
所有者それぞれの生活状況や価値観が違うため、話し合いが平行線になる場面も珍しくありません。
共有者の一人が第三者に持分を売却してしまう
共有名義の不動産では、原則として共有者は自分の持分だけを自由に売却できます。そのため、他の共有者に知らせず、全く無関係の第三者へ持分を売却してしまうケースがあります。
すると、突然見知らぬ人物が新たな共有者として登場し、今後の修繕計画や管理方針の話し合いに参加することになります。
第三者が共有関係を利用して売却や分割を迫る場合もあり、交渉の場が一気に複雑化するおそれがあります。共有者同士の関係性が崩れ、管理や決議の場で合意が得られなくなると、建物の維持にも影響が出ます。
資産価値が下がり、売却・融資が難しくなる
共有名義のマンションは、単独所有の不動産と比べて市場で敬遠される傾向があります。共有状態のままでは買主がリスクを感じやすく、売却に時間がかかり、価格も下がりやすくなります。
特に持分だけを売却する場合は、買い手が限られ、業者の買取価格も低めに設定されるのが一般的です。
また、金融機関は共有不動産への融資に慎重な姿勢をとるケースが多いため、共有者の一部がローンを組んでリフォームをしたいと考えても、審査が通らないことがあります。修繕や改善をしたくても資金調達のハードルが高くなるため、建物価値の維持が難しくなり、それがさらに資産価値の低下につながります。
共有持分のマンションを売却する場合に必要な手順
共有名義のマンションを売却する場合、単独所有の不動産よりも確認すべきことが多く存在し、特に共有者同士で考え方が揃っていないと、売却活動そのものが進まなくなりかねません。
無理なく売却に進むための手順としては、以下の6ステップになります。
- 手順①:共有者全員で売却方針を確認する
- 手順②:登記情報と持分割合を整理する
- 手順③:不動産会社または専門業者に査定を依頼する
- 手順④:共有者全員の同意を得て媒介契約を結ぶ
- 手順⑤:買主との交渉・契約を進める
- 手順⑥:売買代金を分配し、登記を変更する
それぞれ個別にみていきましょう。
手順①:共有者全員で売却方針を確認する
共有名義のマンションを売却する際は、最初に共有者全員が「売却する」という点で足並みを揃えておきましょう。共有不動産の売却は“変更行為”に該当し、全員の同意が法的に必要となるためです。
たとえ一人でも反対すれば売却が止まり、話が進まなくなってしまいます。
まずは、売却をどのタイミングで行うのか、共有者それぞれの事情を把握するところから始めるとよいでしょう。相続したマンションであれば、誰が管理費を負担してきたのか、今後の維持管理をどう考えているのかといった点を整理すると、話し合いの方向性が見えやすくなります。
手順②:登記情報と持分割合を整理する
全員の意思を確認したら、次に行うべきは登記内容の確認です。共有名義であっても、実際の持分割合がどうなっているかを把握していないというケースは珍しくありません。
登記事項証明書には、各共有者がどれだけの割合を所有しているかが明確に記載されているため、ここで「誰が何割を持っているのか」を整理することが売却準備の第一歩になります。
また、出資割合と登記上の持分が一致していない場合は、贈与とみなされる可能性もあるため、税務面の確認も必要です。負担してきた費用の履歴や管理費・修繕積立金の滞納の有無も併せて整理しておくと、査定時や買主との交渉で話がスムーズに進みます。
手順③:不動産会社または専門業者に査定を依頼する
準備が整ったら、実際に査定を依頼して市場での価格を把握します。共有名義のマンションは、通常のマンションとは評価のされ方が異なるため、共有不動産の取り扱いに慣れた会社に依頼する方が現実的な数字が出やすくなります。
持分全体での売却を検討する場合と、持分だけを売却する場合とでは査定額が大きく変わるため、査定依頼時に「どの売却方法を想定しているか」をきちんと伝えておくことが大切です。
持分のみを売却する場合は、買主が限られるため、一般的な仲介会社よりも共有持分専門の買取業者が適している場面もあります。専門業者であれば、共有状態の複雑さを踏まえた上で査定を行うため、通常の仲介よりも早い段取りで話を進められることがあります。
手順④:共有者全員の同意を得て媒介契約を結ぶ
査定結果を踏まえ、どの会社に依頼するかの目処が立ったら、次は媒介契約の締結に進みます。
共有名義のマンションを売却する場合、媒介契約そのものが“共有者全員の合意を前提とする行為”になるため、誰か一人が反対すると契約自体を結べません。売却は変更行為にあたり、法的にも全員の合意が必要とされているためです。
媒介契約は、不動産会社と売主側が「売却活動を任せる」という約束を交わす手続きで、契約形態(専属専任・専任・一般)や販売価格の設定など、売却活動の基本方針を決める場になります。
<媒介契約の種類>
- 専属専任媒介契約:1社のみ、自己発見取引不可
- 専任媒介契約:1社のみ、自己発見取引は可能
- 一般媒介契約:複数の不動産会社へ依頼可能
この時点で共有者同士の意見が一致していないと、売却後の交渉や値下げ判断で再び足並みが乱れます。
手順⑤:買主との交渉・契約を進める
媒介契約を結んだら、不動産会社が広告掲載や案内を開始し、購入希望者とのやり取りが始まります。内覧の調整や価格交渉の段階になると、共有者全員で判断すべき項目が再び出てくるため、連絡体制を整えておくとスムーズです。
提示された購入条件に対して「どこまで譲歩できるか」「価格以外の条件(引き渡し時期など)をどう考えるか」といった点は、事前に方針を固めておくと混乱を防げます。
買主側のローン審査が進み、合意に達した段階で売買契約へ移ります。共有者全員が契約書に署名・押印する必要があり、誰かが出席できない場合は委任状を用意するなどの対応が求められます。共有名義ならではの煩雑さはありますが、契約内容を共有者全員が正しく理解しているか確認しながら進めることが大切です。
手順⑥:売買代金を分配し、登記を変更する
契約後、買主から代金が支払われたら、持分割合に応じて売却代金を分配します。共有名義の場合、分配方法が事前に決まっていないとトラブルになりやすいため、売却前の段階で「各共有者がいくら受け取るのか」を明確にしておくと安心です。
負担してきた管理費や修繕積立金の扱いも、精算の際に論点になることがあります。
代金の受領が完了したら、所有権移転登記を行います。共有者全員が売主となるため、それぞれの本人確認書類や印鑑証明書が必要で、書類の不備があると登記が止まってしまいます。登記手続きが完了すると、共有者全員の名義が買主へ移転し、正式に売却が完了します。
関連記事:共有名義のマンションは売却できる?放置するリスクや売却方法を紹介
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FAQ:共有持分マンションに関するよくある質問
ここからは利用者から寄せられる代表的な質問を取り上げ、日常的な管理や将来の売却を考える際に押さえておきたいポイントを整理していきます。共有持分のあるマンションは、区分所有の仕組みや共用部分の扱いについてお悩みの方はお役立てください。
マンションを共同名義にした場合、持分はどのように決まるのか?
マンションを共同名義で購入する場合、持分は「各自の出資額」に基づいて設定されるのが一般的です。例えば、購入価格のうち6割をAさん、4割をBさんが負担した場合は「10分の6」「10分の4」といった形で登記されます。
夫婦の連名購入では、便宜的に2分の1ずつにすることもありますが、実際の出資額と登記が大きく異なると、将来的に贈与とみなされるリスクが生じるため注意が必要です。
マンションの共用部分の修繕費は誰がどのように負担するのか?
共用部分の修繕費は、マンションの区分所有者全員が負担する仕組みです。通常は「専有部分の面積に応じた割合」で修繕積立金が算出され、それを毎月支払う形で将来の大規模修繕に備えます。
共有持分があるからといって特別な金額を追加で求められるわけではなく、基本的には区分所有者として平等に負担が求められます。
共有持分のメリットとデメリットは何か?
共有持分のメリットは、購入や相続の場面で柔軟に権利を分けられる点にあります。複数人で費用を出し合うことで購入がしやすくなるほか、相続で争いを避けるための“暫定的な整理方法”として共有が選択される場合もあります。
一方でデメリットは明確で、売却や大規模修繕といった重要な決定には共有者全員の合意が必要になる点です。
マンションの共有持分を自分で調べるにはどうすればよいか?
共有持分の正式な確認方法は、法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得することです。マンションの所在地がわかれば、誰でも取得できます。登記簿には共有者の氏名と「○分の○」という形で持分割合が明記されています。
まとめ
マンションの共有持分は、所有割合を示すだけでなく、管理や修繕、売却といった重要な判断に直結します。共有者の意見がまとまらない、連絡が取れない共有者がいる、第三者に持分が渡ってしまうなど、単独所有では起こらない問題が発生しやすく、長期化すると資産価値の低下につながることもあります。
こうしたトラブルを防ぐためには、まず自分の持分割合と登記内容を正確に把握し、共有者間で役割や負担の整理を行うことが大切です。売却や名義整理が必要な場面では、早めに情報を揃え、共有者全員で現実的な選択肢を検討しましょう。
共有状態を放置しないことが、不動産の価値を守るうえで最も実践的な対応になります。


















