共有している不動産の「保存行為」は単独で行える? 具体例と注意点を紹介

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こんにちは。ワケガイ編集部です。

共有持分とは、1つの不動産を複数人で共有している際に、それぞれが「割合的に所有している権利」のことを指し、共有者単独ではできること・できないことがあるのが特徴です。そのうちの1つが「保存行為」と呼ばれる行為です。

不動産の保存行為とは、現状を維持・保全する目的で行う行為で、共有者の合意なく単独で実行できるという特徴があります。

共有持分として不動産を所有している方のなかには、「老朽化した家を勝手に修理してもいいのか」「無断で使っている共有者に何か対応できないか」といった悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実際問題として、保存行為と見なされず「変更行為」などと判断されると、他の共有者とのトラブルになるおそれがあります。

そこで本稿では、共有持分の保存行為の概要や注意点について詳しく解説します。

共有持分でできること・できないこと

共有持分は所有権と比べて、権利の行使に制限がかかることを示した図解

共有持分の権利を実行する場合、実行する行為によっては共有者の許可が必要となります。

そもそも共有持分権とは「財産(不動産)を複数の人で共有している際、その共有持分やそれに伴って発生するさまざまな権利」のことです。

不動産の共有持分権者は、共有持分に応じた権利を有しますが、「共有持分が1/2だから、建物の半分が自分のもの」というわけではありません。「不動産全体に対して1/2の割合の権利を持っている」という考え方となります。

夫婦や兄弟、または他人同士であっても共有することは可能。単有の不動産であれば、売却や抵当権設定など名義人の判断で何でも行うことができますが、共有状態の不動産はそうではありません。

共有持分権者は何ができる?

共有不動産に対する行為は、保存行為・管理行為・変更行為で必要な同意が異なります。

民法252条5項により、各共有者は保存行為を単独で行えます。

保存行為とは、共有物の現状を維持するための行為です。一方、共有物の利用や改良にあたる管理行為は、持分価格の過半数で決めるのが原則です。共有物の形状や効用を著しく変えない軽微な変更も、持分価格の過半数で決められます。形状や効用を著しく変更する行為には、原則として共有者全員の同意が必要です。

共有持分権者が共有不動産に手を加えるときは、保存行為にあたるかを最初に確認し、必要な同意の範囲を判断することが大切です。

関連記事:共有持分の管理行為とは?できること・できないことと対処法をわかりやすく解説

「保存行為」の具体例

共有不動産における保存行為の具体例を示した図解

屋根や外壁の補修、雨漏りの修繕、建物の清掃、庭木の手入れ、設備の点検・修理など、共有不動産の現状の価値を維持するための保存行為の具体例。

「保存行為」の具体例は、以下のとおりです。

  • 例①:不動産の修理や修繕
  • 例②:不法占拠している人への明け渡し請求
  • 例③:法定相続登記
  • 例④:地役権設定登記請求

それぞれ個別に解説します。

例①:不動産の修理や修繕

壊れた箇所を元の状態に戻すための修理や修繕は、共有物の価値を維持する保存行為にあたります。

雨漏りの応急修理や故障した設備の修繕など、現状維持に必要な範囲であれば共有者が単独で実施できます。

ただし、工事の規模だけで保存行為かどうかを判断するのは適切ではなく、工事内容の確認が必要です。建物の外壁や屋上防水などの大規模修繕は、基本的に形状または効用の著しい変更を伴わない「軽微変更」と考えられています。

軽微変更は保存行為とは異なり、持分価格の過半数で決める必要があります。そのため「大規模修繕だから共有者全員の同意が必要」と一律に判断せず、工事によって形状や効用がどの程度変わるかを確認することが重要です。保存行為として単独で修繕できるかは、工事の目的と内容を確認して判断しましょう。

例②:不法占拠している人への明け渡し請求

第三者が共有不動産を権限なく占拠している場合、各共有者は保存行為として単独で明渡しや妨害排除を求められます。

不法占拠を放置すると共有物を使用できない状態が続き、共有者全体の権利が害されるためです。

共有地の不法占拠者に対する妨害排除や明渡しの請求は、各共有者が単独で行える行為として認められています。ただし、占有しているのが他の共有者である場合は同じ扱いにはなりません。共有者は共有物全体を持分に応じて使用する権利を持つため、第三者による不法占拠とは分けて考える必要があります。

相手が共有物を占有する権限を持たない第三者であれば、共有状態を守るための明渡し請求は保存行為として単独で行えます。保存行為として対応できるかは、占有者の権限を確認したうえで判断することが重要です。

関連記事:共有不動産を単独使用された場合「明け渡し請求」は可能?

例③:法定相続登記

法定相続分に従って相続人全員を共有名義とする相続登記は、共同相続人の1人から申請できます。

法定相続分での相続登記では、共同相続人ごとの持分を明らかにしたうえで全員について登記するためです。

この手続は、相続した不動産の権利関係を登記に反映させる保存行為として扱われます。単独で申請できるといっても、申請した相続人だけを所有者として登記できるわけではありません。遺産分割が成立していない段階で行う場合は、各共同相続人を法定相続分どおりの共有者として登記します。

特定の相続人が不動産を取得する内容の遺産分割に基づく登記とは、手続の前提が異なる点に注意が必要です。法定相続登記を保存行為として単独申請する場合は、誰をどの持分で登記する手続なのかを正確に理解することが大切です。

関連記事:共有名義での相続登記はしても大丈夫?メリット・デメリットを詳しく解説

例④:地役権設定登記請求

共有する要役地のために既に成立している地役権について、その設定登記手続を求めることは保存行為として共有者の1人が単独で行える場合があります。

地役権とは、自己の土地の便益のために他人の土地を一定の目的で利用する権利です。

最高裁判所は、要役地が数人の共有に属するとき、各共有者が共有者全員のために地役権設定登記手続を求める訴えを単独で提起できると判断しています。ここで単独で行えるのは、既に存在する地役権を登記によって保全するための請求です。新たな地役権そのものを共有者1人の判断だけで設定できるという意味ではありません。

地役権設定登記請求が保存行為にあたるかは、既存の権利を保全する行為かどうかを確認して判断することが重要です。

共有持分の保存行為に関する注意点

共有持分の保存行為に関する注意点を4項目で示した図解

共有持分の保存行為では、大きな工事や費用負担、共有者への事前相談、工事内容や費用の記録などに注意が必要です。

自己判断で「保存行為だろう」と思って行ったことがそうではなく、他の共有持分権者の利益を侵害してしまったという状況もあり得えます。

もし「これは保存行為なのか、それとも変更行為なのか」と迷ったら、決行する前に専門家に相談するようにしましょう。

万が一、保存行為ではなかった場合、他の共有者に損害賠償請求をされる。あるいは元の状態に戻すよう原状回復請求をされたりしてしまうリスクもあります。

共有状態の解消方法

共有状態の解消方法は、以下のとおりです。

  • 不動産を売却する
  • 持分放棄をする
  • 共有物分割請求をする

それでは、それぞれみていきましょう。

不動産を売却する

不動産を手放すことで、共有関係を解消することができます。

ただし、売却は「変更(処分)行為」に当たるため、共有者全員の合意が必要。共有者の中に1人でも非協力的な人がいれば売却は難しくなる点については留意しましょう。

さらには、自分の共有持分を他の共有者に買い取ってもらうという選択肢も有効です。自分の所有権はなくなりますが、共有関係を解消できます。

共有持分の買い取り金額は「不動産の時価 × 持分割合」で算出できますが、交渉で決めるため、この限りではありません。 それでも売却が難しい場合、自分の共有持分のみを専門の買取業者に売却することもひとつの方法です。

市場価格の売却額よりは低くなりますが、訴訟となって弁護士費用がかさんだり競売で売却益が低くなる可能性が憂慮されるなら、有用な選択肢といえるでしょう。

関連記事:共有持分はどのタイミングで売却するべき?高く売るための勘所も紹介

自分が相手の共有持分を買い取る

売却するのとは逆に、相手の共有持分を買い取るという方法もあります。

単有にすることで、売却や抵当権設定・増改築など、不動産を大幅に変更する行為も自分1人の判断で行うことができるようになります。

この方法を採るなら「持分を買い取る費用」「固定資産税」「管理費などの維持費用」が必要となるため、資力があることが前提となります。

持分放棄をする

共有者が話し合いに応じない場合などで所有権を手放したいときには「持分放棄」を検討しましょう。

この権利は、民法第255条において「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」と定められています。
(参考:e-Gov 法令検索「民法」)

例えば、AとBが共有名義で持っている不動産をAが持分放棄した場合、自動的にBにその権利が移行します。ただし、Bの同意なしに持分放棄をすることはできますが、登記手続きの際にはBの協力が必要になります。

関連記事:共有持分は放棄できる?具体的な手順や発生する費用をチェック!

共有物分割請求をする

共有物分割請求とは、共有持分権者に法的に認められた権利です。

共有状態を解消するために、共有者同士で話しがまとまらない場合は訴訟を起こすことが可能です。

調停によって解決しなければ、裁判所が客観的に分割の方法やその内容などを決めます。分割の方法には以下の3つがあります。

  • 現物分割:不動産を物理的に分ける方法で、建築物が建っていない土地のみの場合に適用される。
  • 価格賠償(代償分割):共有者の誰か1人がすべての持分を買い取り、他の共有者に代償金を支払う方法。
  • 換価分割:第三者に売却して、経費を差し引いて残ったお金を共有持分に応じて共有者全員に分配する方法。

上記のうち、現物分割も物理的に不可能で、代償分割は資力がなく難しいと判断された場合、換価分割が選択されるという流れが一般的です。

とくに共有者間での協議が決裂した場合は、裁判所の判断に委ねる必要が出てきます。いずれにせよ、分割の方法によっては希望どおりの結果にならない可能性もあるため、慎重に進めましょう。

関連記事:共有物分割訴訟とは?内容や手続き方法を詳しく解説

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共有状態の不動産は、他の共有者の同意が得られず売却や管理に困るケースが多く、トラブルの火種になりやすいのが実情です。

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保存行為についてよくある質問

保存行為についてよくある質問は、以下のとおりです。

  • 民法における保存行為とは?
  • 保存行為と管理行為の違いは?
  • 民法606条でいう保存行為とは?
  • マンションの管理における保存行為とは?

それでは、それぞれの質問とその回答を紹介します。

民法における保存行為とは?

民法252条5項では、保存行為は各共有者が単独で行えると定められています。保存行為とは共有物の現状を維持する行為を指し、他の共有者の利益を害するおそれがないことから、単独での実行が認められています。これに対して、共有物を利用・改良する管理行為は持分価格の過半数で決し、共有物の変更や処分には原則として全員の同意が必要とされ、三段階に区分されているのが特徴です。

保存行為と管理行為の違いは?

保存行為は共有物の現状を維持する行為で、各共有者が単独で行えます。管理行為は共有物を利用したり改良したりする行為で、持分価格の過半数の同意が必要です。たとえば、雨漏りの修理は保存行為ですが、共有物件を第三者に賃貸することは管理行為にあたります。両者の区別は、現状を保つにとどまるのか、それとも新たな利用関係を生じさせるのかという点で判断されます。

民法606条でいう保存行為とは?

民法606条は賃貸借に関する規定で、賃貸人が賃貸物の使用収益に必要な修繕義務を負うこと、そして賃貸人が保存に必要な行為をしようとするときは賃借人が拒めないことを定めています。ここでいう保存行為は、建物の修繕など目的物の現状を維持するための行為を指します。賃借人は、たとえ工事によって不便が生じるとしても、これを理由に修繕を拒むことはできないという趣旨の規定です。

マンションの管理における保存行為とは?

区分所有法でも、共用部分の保存行為は各区分所有者が単独で行えるとされています。共用廊下の照明の交換や、破損した設備の応急修理などが該当します。一方、共用部分の管理に関する事項は集会の決議で決め、共用部分の変更にあたる大規模な工事は特別多数決議が必要です。ただし、管理規約で保存行為についても管理者が行う旨を定めている場合は、その定めが優先されます。

まとめ

共有名義の不動産では、たとえ自分の持分であっても、すべてを自由に扱えるわけではありません。

修繕や登記などの「保存行為」は単独で可能ですが、リフォームや売却などの行為は他の共有者の同意が必要です。この線引きを誤ると、損害賠償請求や関係悪化を招くリスクもあります。

とくに、保存行為と変更行為の判断が難しいケースでは、事前に専門家へ相談することが重要です。また、共有状態を根本から解消する手段としては、持分売却や持分放棄、共有物分割請求などがあります。

煩雑な手続きを回避するためにも、共有不動産を保有している方は、日頃から「自分にできる行為」と「できない行為」を整理し、適切な対応を心がけましょう。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

坂本 孝文

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

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