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相続したけれど売れない! 「処分に困る不動産」の対処方法を解説

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相続時に、特に問題になりやすいのが「不動産」です。

資産価値がある不動産であれば、すぐに相続人がスムーズに決まったり、売却益を分配したりできる一方、価値がない不動産の場合はあらゆる悩みが生じてしまいます。

そこで今回は、相続したけれど「住まない」、または「売却が難しい」不動産の処分方法や活用方法、さらに相続前にできる不動産相続回避方法などについてご紹介いたします。

■相続したけれど「いらない」不動産の処分方法

相続したけれど「住まないし、必要ない」と考える場合、どのようにしたら手放すことができるのでしょうか?

売却する

手放す手段として、最初に考える方法が「売る」ことです。

不動産業者に相談し、スムーズに売却できればいいのですが、現実的には「売れない」不動産というものも存在します。(※ 売れない不動産の特徴は後ほど説明します。)

不動産会社での売却方法は、大きく分けて2つ「仲介・買取り」があります。

 

1.仲介

不動産会社に買主を探してもらう方法です。

よほど好条件の物件でない限り、時間がかかる可能性が高いほか、不動産会社への仲介手数料などがかかりますが、比較的高く売れる可能性があります。

 

2.買取

不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。

大体の場合、買取業者が現地調査をし買取価格を提示してくれます。早ければ依頼から1カ月ほどで振り込まれることもあるため、相続税納税期限である「知った日の翌日~10カ月以内」に間に合わせることができます。

不動産会社はリフォームなどをして売りに出すことが多いため、買取価格は仲介時に比べて低くなるケースが多いです。

 

寄付をする

不動産の寄付は実際には難しいことが多々ありますが、方法の一例として3つの寄付先をご紹介します。

 

1.自治体に寄付

自治体ごとに設けられた条件を満たせば無償で引き取ってくれることがありますが、あまり多くありません。なぜなら、自治体が土地を引き取ることで、今まで徴収できていた固定資産税が取れなくなる他、管理費用なども自治体が負担することになってしまうからです。自治体側にメリットがある土地以外では、難しいでしょう。

 

2.隣人などに寄付

個人に寄付をする方法もあります。しかし、売却ができないほどの土地を欲しいと考える人は少ないでしょう。唯一可能性があるとすれば、隣人が自分の土地を広げるために欲しい、というケースが考えられます。隣地の所有者に対して交渉してみるといいでしょう。

しかし、この場合相手に贈与税がかかることがあるので気をつけましょう。

 

3.法人に寄付

事業拡大や社員の保養目的として欲しいと考える企業があるかもしれません。しかし、管理や維持費用がかかるため、企業側によほどメリットがないと難しいでしょう。

法人に寄付を行う場合は、一般企業よりも公益法人の方が可能性は高いかもしれません。

 

土地の所有権放棄はできない

「いらないから放棄したい」と考えることがあるかもしれませんが、現在の法律では土地の所有権を放棄することは認められていません。

民法第239条第2項で、「所有者のない不動産は国庫に帰属する」とされていますが、これは「放棄すれば国のものになる」ということではありません。

 

■売れない不動産の特徴

いらない不動産を「どうにかして売りたい」と考えても、なかなか売れないケースがあります。そこで、売却が難しい不動産とはどのような特徴があるのでしょうか?

 

・立地や周辺環境が悪い

田舎にある土地や駅から遠い土地など、多くの人が住みたがらない立地は、売ることが難しくなります。また、周辺環境が悪いことで売れない場合もあります。

例えば、近隣にゴミ処理場や工場、保育園などがある場合、匂いや騒音によって避けられることがあります。他にも、墓地や火葬場なども心理的な抵抗から買い手がつきづらい傾向があります。

 

・土地の形が悪い

土地は正方形に近いほど価値が高いと言われています。

つまり、いびつな形であれば価値が低くなってしまう傾向があります。また、公道に接する間口が極端に狭く、周りを他人の土地に囲まれている「旗竿地」、狭くて小さな土地である「狭小地」などは価値が低く、売却しづらいことがあります。

その他、傾斜や段差が激しい土地なども買い手がつきづらい傾向があります。

 

・依頼した不動産業者と合わない

不動産業者にとっても、扱う不動産の得意・不得意があります。

大手不動産業者であっても不得意な土地であれば、買い手を見つけてもらえないことがあります。また高値で売れる不動産であっても、価格設定ミスにより安く売られてしまうこともあり得ないわけではありません。今までの売却歴などを確認しましょう。

 

■売れない不動産を所有し続けるデメリット

使うこともなく、売れもしない不動産を所有し続けるとどのようなことが起こるのでしょうか?ここでは、主な3つのデメリットをお伝えします。

 

・固定資産税などの費用がかかる

土地を持っていると、1月1日現在の所有者に「固定資産税」がかかります。

また地域によっては都市計画税、さらには税金以外にも修繕費や損害賠償費用などがかかる可能性もあります。

例えば、ブロック塀が倒壊し通行人の妨げになるなどのようなことが起きた場合、所有者は修繕しなくてはいけません。その倒れたブロック塀で人が怪我をしたとなれば、損害賠償責任などを負うことになります。

 

・メンテナンスの手間がかかる

草取りや木の剪定などのメンテナンスを定期的に行う必要があります。

放置しておくと近隣の住人に迷惑をかけたり、人目につきにくいことから、ゴミを不法投棄されてしまったりする可能性があるからです。人を雇って依頼することで手間は省けますが、費用はかかるでしょう。

 

・自分の子供や孫に迷惑をかける

所有し続けていると、自分の死後、自分の子供が相続することになるかもしれません。

土地の価値は年月と共に変化するため、過疎が進めば今よりもさらに価値が下がるでしょう。そうなると、ますます売ることが難しくなってしまいます。

次の世代やまたその次の世代に迷惑をかけてしまう可能性があることを、頭に置いておく必要があります。

■処分前に活用できないか?検討しよう

売却などの処分をする前に、相続した不動産を活用できる方法がないか検討してみましょう。活用方法の一例を紹介します。

 

・収益物件化する

もしも相続した不動産が、人が住めるようなものであれば貸し出すこともいいでしょう。

賃料収入を得られるため、固定資産税などをまかなうことができます。

しかし、自分の資金を費やしたりローンを組んだりして新しくマンションなどを建てる場合は注意が必要です。不動産投資は知識とセンスが求められるため、安易な気持ちで始めるとリスクを負うことになってしまいますので慎重に行いましょう。

 

・駐車場にする

更地の土地を相続した場合、駐車場として活用することができます。

コインパーキング経営をする方法もありますが、収益物件と同じく知識を得てから慎重に行いましょう。

 

・空き家バンクに登録する

空き家バンクとは、空き家物件情報を地方公共団体のホームページ上などで提供し、利用希望者とのマッチングを図ることができるものです。

民間の不動産業者とは違い、過疎化が進んでいる地域への定住を目的としています。補助金が出る自治体もあるため、「定年後は田舎でのんびり暮らしたい」と考える利用者にとってはいいかもしれません。

 

■物納として不動産を納める

相続税を現金納付ではなく、物納できるケースがあります。

しかし「金銭を支払いたくないから」という理由ではできません。そこで物納について詳しくご紹介します。

 

・物納とは?

税金を金銭以外の「物」で納入する方法です。

下記の要件を満たした場合、相続税の代わりに物で納付することが認められています。

 

【物納が認められる要件】

-延納によっても金銭で納付することが困難であり、かつその納付を困難とする金額を限度としていること

-期限までに物納申請書に関係書類を添付して税務署長に提出すること

-物納に充てることが可能な財産であること(日本国内にあること)

など

 

【物納に充てることが可能な財産】

第一順位:不動産・国債証券・船舶・上場株式など

第二順位:非上場株式

第三順位:動産

 

・物納ができない不動産の条件

上記の物納が認められる要件を満たしたとしても、不動産の条件が悪い場合、物納に充てることができないかもしれません。主に下記のような不動産は認められないことが多いため気をつけてください。

 

【物納ができない不動産の条件】

-抵当権がついている

-訴訟で争っている最中

-不動産に価値がなく売却が難しい

-他の人と共有名義(同時に物納する場合を除く)

など

 

■相続前にできる不動産相続回避方法

相続してから「どうしよう」と悩みそうな不動産の場合は、相続前に対処した方が良いでしょう。そこで不動産相続を回避できる方法をいくつかご紹介します。

 

遺産分割協議で「いらない」と主張する

遺産分割協議とは、法定相続人全員で話し合い、遺産の分け方について決めることを言います。その話し合いの中で、不動産を相続したくない旨を伝えるといいでしょう。

しかし、自分の主張が必ずしも通るとは限りません。遺産分割協議では全員の合意が必要になります。誰か1人でも連絡が取れなかったり賛成をしなかったりすれば成立しません。

 

遺産分割協議が成立するまでは全員の共有状態となる

相続人の中の誰もが不動産を相続したくない場合など、スムーズに協議が進まないことがあります。このような段階では、法定相続人全員が不動産を共有している「潜在的共有状態」とみなされます。

相続人が決まって1人の名義で登記をすれば共有状態は解消され、最初から単有だったものと認識されます。

 

相続放棄をする

相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産または負債などすべてを承継せず、相続人である地位を放棄することを言います。相続放棄すると最初から相続人ではなかったことになり、相続する予定であった財産などは他の相続人で分け合うことになります。

 

プラスの遺産も相続できない

相続放棄することは、他の相続も放棄することになります。

つまり、プラスの遺産があった場合でもそれらを相続することができない、ということです。遺産とは不動産や預貯金、車や保険など資産価値があるものが含まれます。プラスの遺産が多い場合は、相続放棄をすべきかよく考えた方がいいでしょう。

 

相続放棄ができる期間は「3カ月」

相続放棄には期間が限定されており、「相続を知ってから3カ月」となっています。

この期間を「熟慮期間」と言いますが、これを過ぎると家庭裁判所で受け付けてもらえなくなるため、相続するしか方法がありません。

 

次順位の人が相続するまでは管理責任がある

相続を放棄すると、次順位の人にその権利が移ります。

しかしその人が管理できるようになるまでは、管理責任を免れることができないため、気をつけましょう。民法940条1項では、「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもってその財産の管理を継続しなければならない」と定められている通りです。

 

法定相続人全員が相続放棄をした場合

自分が「いらない」と思う不動産であれば、他の相続人も相続したくないと思うかもしれません。法定相続人全員が相続放棄をした場合どうなるのでしょうか?

 

相続財産管理人を選任する

裁判所に対して「相続財産管理人」を選任してもらう申し立てを行います。

これにあたって「予納金」を納める必要があり、事案によって金額は異なりますが、数十万円から100万円ほどになることもあります。

 

相続して業者に売却する

予納金を支払う金額も高額であるため、いったん相続して業者に売却することも方法です。「立地が悪いから売却は難しいだろう」と諦めず、問題が多い不動産を積極的に買い取ってくれる業者も存在します。一度、相談してみることもいいでしょう。

■相続した不動産でお困りの方は、プロに相談を

「他の相続人が相続を拒否する」「相続したものの、使い道がなくて困っている」「なかなか買い手が見つからない」など、相続した不動産でお困りの方は、プロに相談することをおすすめします。

一度売却して売れなかった不動産も、業者を変更したら売れたというケースはよくあります。長期間にわたって所有していると、税金や費用・手間などがかかり続けて負担も増していくので、できる限り早めに対処しましょう。

 

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