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未登記建物を相続したらどうする? 登記していない物件の売却方法やリスクを解説

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ある日、未登記の建物を相続することになったり、または所有している物件が未登記であることが発覚したりした場合、「登記したほうがいいの?」と戸惑うのは当然です。

また、「早く手放したい」と考えることもあるかもしれません。

未登記のまま売却することは可能なのでしょうか?また、未登記建物をそのままにしておくとどのようなリスクがあるのでしょうか?

今回は未登記建物について紹介します。未登記建物を相続した場合の流れについても解説しますので該当する方は参考にしてください。

目次

■未登記建物とは?

まず、未登記とはどのような状態なのか説明します。

 

・未登記建物とは?

未登記建物とは、本来義務付けられている不動産(土地や建物)の登記登録をしていない建物のことです。登記とは、物や事柄の権利を社会に公示させる制度のことで、登記と一概に言っても、「法人登記」や「商業登記」「船舶登記」など様々な種類があります。

今回は土地や建物の持ち主が誰かを明確にすることができる「不動産登記」について説明します。

 

・登記は取得後1ヶ月以内が義務

不動産を取得してから1ヵ月以内に登記をすることが義務付けられているため、未登記建物は義務違反です。1ヵ月以内に登記をしない場合にはペナルティがあります。

 

・未登記かどうか確認する方法

「建物が登記されているかどうかわからない」という場合もあります。その場合は、固定資産税納税通知書を確認しましょう。

未登記建物でも所有している事実があれば納税義務が発生するため、固定資産税納税通知書が一年に一度送られてくると思います。その固定資産税納税通知書に「未登記」と書かれていれば、登記をしていないことになります。また家屋番号の欄が空白の場合も未登記である可能性があります。

固定資産税納税通知書がない場合は、市町村役場などで「公課証明書」または「不動産課税台帳」を取得すると確認できるでしょう。

 

■未登記建物が存在する理由

「取得後1ヶ月以内に登記しなければいけないのなら、なぜ未登記建物が存在するのか?」と疑問に思う方もいることでしょう。その理由について解説します。

 

・未登記建物となる理由①昔からある建物

昭和25年に土地台帳法が改正され、不動産登記簿として管理されることになりました。このときに更新手続きを行わなかった建物が現在でも残っている場合、未登記建物となっている可能性があります。

 

・未登記建物となる理由②現金で不動産を購入した場合

不動産を購入する際、多くの方は住宅ローンを組むことになります。住宅ローンを組む際に抵当権の設定が必要になるため、登記をしなくてはいけません。しかし住宅ローンを組まない場合、登記の必要性に差し迫られないことから不動産登記を怠ってしまうケースがあります。

 

・未登記建物となる理由③相続登記をしていない場合

不動産を相続する際には相続登記をしなくてはいけません。相続登記とは、被相続人が所有していた建物や土地などを相続人に名義変更をする手続きのことです。相続登記は法律上、「いつまでに相続登記をしなければいけない」という期限や相続登記をしなかったことに対する罰則が今のところないため、先延ばしにしたまま放置されるケースがあります。

 

・未登記建物となる理由④増築・改築後に登記をしていない場合

登記している建物であっても、その後に増築や申請が必要な改築を行った場合、登記し直す必要があります。特に増築の場合は建物の面積が変わるため、登記事項と建物の現況にズレが生じてしまうため、必ず登記しなければいけません。

この場合も増築工事完了から1ヶ月以内に「建物表題変更登記」を行う必要があるのですが、これを怠った場合、未登記建物となります。

 

■未登記建物のリスク

登記をしないと、どのようなことが起こるのでしょうか?ここでは未登記のリスクを説明します。

 

・未登記建物のリスク①所有権を主張できない

土地や建物などの不動産は、登記をすることではじめて所有権を主張できるようになります。モノのように、代金を支払って受け取ったら自分のものになる、というわけではないのです。たとえ、売買契約をし、代金の支払いが完了している状態であっても、登記しなければ所有権を主張することはできません。

 

・未登記建物のリスク②売却しづらい

登記をしていないと自分のものであるという主張ができないため、売却も難しくなります。売却できないというわけではありませんが、通常物件と比べると困難となると認識しておくといいでしょう。

 

・未登記建物のリスク③担保にしてお金を借りられない

不動産を所有していると、不動産を担保にして金融機関から融資を受けられることがあります。しかし、ローンを組む際には登記簿謄本が必要となりますが、万が一登記をしていないと、登記簿謄本を取得することはできません。

 

・未登記建物のリスク④法律違反となり10万円以下の科料

上でも少しお伝えしたように、登記をしないことは法律に反します。不動産登記法第47条で、「新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない」と定められている通りです。

また、「申請すべき義務がある者がその申請の怠ったときは、十万円以下の科料に処する」と定められているように、登記をしないと10万円以下の科料を課せられます。

しかし、実際に未登記で10万円を支払ったケースは知られておらず、未登記建物は現在も多くあることが事実です。もし課せられた場合でも「過料」は「罰金」と違って刑罰ではないため、前科がつくことはありません。

だからと言って登記をしなくてもいいというわけではなく、法律違反になることには間違いないことを念頭に置いておきましょう。

 

・未登記建物のリスク⑤固定資産税が高くなる可能性がある

土地に住宅が建っている場合、軽減措置を受けられることがあるのですが、登記をしていないことによって「建物が建っていない土地」と認識されてしまう場合があります。

登記をすれば受けられる軽減措置を受けることができず、高い固定資産税を支払わなければいけなくなります。

 

・未登記建物のリスク⑥第三者に所有権を奪われるリスクがある

売買契約をし、支払いが完了したタイミングであっても、第三者が未登記建物の登記を行ってしまった場合、その第三者に所有権が移行してしまうというリスクがあります。

不動産は登記によって所有権を主張できるため、代金を支払ったとしても居住する権利などがない状態となります。

 

■未登記建物を売却する方法

未登記建物を「売却したい」と考えたときはどうしたらいいでしょうか?

 

・未登記のまま売却はできるのか?

「そもそも、未登記のまま売却はできるのか?」というと、売買自体は完結することができます。しかし上述したリスクがあるため、買い手は見つかりにくくなります。それでは次より売却方法についてご紹介します。

 

・未登記建物を売却する方法①売主が登記をしてから売却をする

売却前に登記をすることが最もスムーズな方法です。自分の所有物であることを明確にしてから売却をすれば、市場価格での取引が可能になります。未登記建物の登記の仕方については、のちほどお伝えします。

 

・未登記建物を売却する方法②買主が取引後に登記をする

売主が登記を行わない場合には、買主が登記を行うこともひとつの方法です。しかし未登記建物の登記は労力や費用がかかるため、買主側はよく検討する必要があります。

売主との関係性や売却額などで双方合意のもとであれば、買主が登記をすることもできるため、のちほどお伝えする未登記建物の登記方法を参考に手順を踏むといいでしょう。

 

・未登記建物を売却する方法③業者に売却する

どうしても未登記のまま売却したいのであれば、買い取り専門の不動産業者などに売却することもひとつの方法です。問題を抱えている不動産は市場価格よりも低い価格での取引になってしまう可能性がありますが、登記をしたくない事情がある場合は、一度相談してみましょう。

 

■未登記建物の登記方法

未登記建物の登記をする方法をご紹介します。

 

・不動産登記は2つ行う必要がある

不動産登記には、「表題部登記」と「権利部登記」の2つがあります。登記は「所有してから1ヶ月以内に行わないと違法になる」と上述しましたが、これは表題部を指します。

権利部については今のところは、期限や罰則は設けられていません。登記の仕方はそれぞれ異なります。

 

【表題部】

・所在

・地番

・地目

・原因

・家屋番号

・構造

・床面積

・新築した日

など

 

【権利部】

・所有者の住所

・所有者の氏名

・抵当権

・賃貸借の権利

など

※権利部は、所有権に関する甲区とそれ以外の権利に関する乙区に分かれます。

 

未登記建物の登記方法①土地家屋調査士に表題登記を依頼

まずは、表題部の登記を行います。専門的な間取り図面の作成などが必要になるため、自分自身で行うことは現実的ではありません。そのため、土地家屋調査士に表題登記の依頼をすることが一般的です。

建物の場合は「建物表題登記」と言い、完成時にどのような建物であるか、いつ建築したかなどの情報を登録します。土地家屋調査士に依頼をすると、実際に建物に出向いて建物の構造などを調査します。依頼費用の相場は15万円~20万円ほどです。

 

未登記建物の登記方法②司法書士に所有権保存登記を依頼

次に、権利部の登記として建物の所有者に関する情報を登録します。「誰が所有者か」ということを明示することができます。書類を集めて法務局に提出することで登記ができますが、漏れなどがあった場合やり直すことになるため、労力を省くために司法書士に所有権保存登記を依頼するといいでしょう。

所有権保存登記をすることで、土地や建物に抵当権を設定することが可能となります。

司法書士への依頼費は、登記する物件の評価額によっても異なりますが、新築から30年以上経っている建物であれば登録免許税などを含め5万円~10万円ほどになります。

 

・登記簿謄本が取得できるようになる

登記を行うと登記簿謄本(登記事項証明書)が取得できるようになります。登記簿謄本(登記事項証明書)は、土地や建物の売却時やローン申請時・相続時など不動産取引を行う際に必要です。

 

■未登記建物を相続した場合の流れ

相続した建物が未登記である場合、どのような手順を踏めばいいのでしょうか。その流れをご紹介します。

 

未登記建物を相続した場合の流れ①遺産分割協議で相続人を明確にする

相続人が複数いる場合、まずは誰が相続するのかを明確にしましょう。遺言書があればその通りにし、なければ相続人全員で遺産分割協議を行います。

遺産分割協議書には、通常は登記された情報を記載するのですが、未登記の場合はそれができないため「未登記不動産」であることを明記しましょう。

 

未登記建物を相続した場合の流れ②登記をする

上で説明した表題登記と所有権保存登記を行います。未登記建物を相続すると、登記義務も引き継がれます。労力や費用はかかりますが、できる限り早く行うといいでしょう。

 

未登記建物を相続した場合の流れ③売却・抵当権などの活用を

登記をすることで建物に対して所有権を主張できるため、権利や財産を明確にすることができます。権利関係が明確になることで、売却の際にスムーズに進めることができるでしょう。売却をして現金化すれば、登記にかかった費用を回収することができるかもしれません。

また、登記をすれば不動産を担保として、金融機関から融資を受けられるようになります。公正な登記によって信用を得られるため、不動産価値にもよりますが、大きな金額を借りることも可能となります。

■未登記建物を所有してお困りの場合は、プロにご相談を

相続や譲渡などで未登記建物を所有することになりお困りの方は、上述した方法で登記を行いましょう。法律で決められた義務のため、できる限り早く取り掛かることをおすすめします。

しかし、実際には未登記建物をそのままにしている方も多いことが現状です。「登記をせずに売却をしたい」とお考えの場合、専門業者であれば買い取ってくれることがあります。一度相談してみてはいかがでしょうか。

 

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