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不動産売却の税金はいくら?譲渡所得税の計算方法と節税できる特例を解説

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不動産を売却して利益が出た場合、その利益に対して課税される譲渡所得税の存在を知らないまま取引を進めてしまい、予想以上の税負担に直面するケースが少なくありません。

取得時の書類を紛失していたり、確定申告の期限を過ぎてしまったりすると、本来受けられるはずの特例が使えなくなるなどの問題も発生します。そのため、不動産売却時の税金について正しい知識を持っておくことが重要です。

そこで本記事では、譲渡所得税の計算方法や特例制度の活用法、申告時の注意点などについて、具体例を交えながら詳しく解説します。

不動産の譲渡所得税とは?

土地や建物などの不動産を売却して利益が出た際に課される税金を譲渡所得税と呼びます。この税金は、土地の価格上昇による利益に対する課税という性質を持っています。

不動産の売却益は一時的な収入として扱われ、給与所得などの通常の収入とは分けて計算されます。

不動産売却時にかかる税金の種類

不動産を売却する際には複数の税金が関係してきます。売買契約書に貼付する印紙代としての「印紙税」、住宅ローンの抵当権を抹消する際にかかる「登録免許税」、そして売却益に対する「譲渡所得税」です。

このうち、最も金額が大きくなる可能性が高いのが譲渡所得税です。例えば3,000万円の不動産を売却する場合、印紙税は1万円程度ですが、譲渡所得税は売却益の20%以上になることもあります。

税率と適用条件の違い

譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間によって大きく異なります。売却時点で5年超の所有期間がある場合は「長期譲渡所得」として20.315%の税率が適用されます。

一方、5年以下の場合は「短期譲渡所得」として39.63%と、ほぼ2倍の税率となります。この違いは不動産投機を抑制する目的で設けられた制度です。

なお、この所有期間は売却した年の1月1日時点で判定されるため、例えば2018年4月に購入した不動産は、2024年4月の売却では5年を経過していても短期譲渡所得として扱われる点に注意が必要です。譲渡所得税の実質的な負担を考えると、可能な限り長期保有してから売却することが賢明な選択といえるでしょう。

譲渡所得税の具体的な計算方法

不動産の譲渡所得税は、売却価格から取得費用と諸経費を差し引いて計算します。一見複雑に思える計算も、基本的な仕組みを理解すれば十分対応できます。

譲渡所得税の計算は、まず売却による利益(譲渡所得)を算出することから始まります。基本となる計算式は以下のとおりです。

  • 譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)
  • 課税される税額 = 譲渡所得 × 税率(長期:20.315% 短期:39.63%)

取得費と譲渡費用の範囲

取得費には、不動産の購入価格に加えて、購入時に支払ったさまざまな費用も含まれます。具体的には、不動産取得税、登録免許税、仲介手数料などが該当します。建物の場合は、購入価格から減価償却費を差し引いた金額が取得費となります。

この取得費が明確でない場合は、売却価格の5%をみなし取得費として計算することも認められています。

一方、譲渡費用は売却時に発生する経費のことで、仲介手数料や測量費用、建物の取り壊し費用などが含まれます。これらの費用は適切に計上することで、課税対象となる譲渡所得を減らすことにつながります。

計算例で理解する譲渡所得税額

具体的な計算例を見てみましょう。5年前に3,000万円(諸経費150万円含む)で購入した土地を、4,000万円で売却するケースを想定します。売却時の仲介手数料は120万円でした。

<計算式>

  • 譲渡所得の計算:4,000万円 -(3,000万円 + 120万円)= 880万円
  • 税額の計算(長期譲渡所得の場合):880万円 × 20.315% = 178万7,720円

このように、具体的な数字を当てはめることで、譲渡所得税額をシミュレーションすることができます。実際の税額は、3,000万円特別控除などの特例を適用することでさらに抑えられる可能性もあります。このため、売却前に十分な試算をしておくと、税負担の見通しを立てやすくなります。

譲渡所得税の節税に繋がるケース

不動産の譲渡所得税には、適切な対応によって税負担を軽減できる仕組みが複数用意されています。具体的には、以下のようなもの。

  • 長期所有で税率を下げられる
  • 特別控除を適用して税負担を減らせる
  • 概算取得費の活用で税金を抑えられる

それぞれ個別にみていきましょう。

長期所有で税率を下げられる

不動産を5年超保有してから売却すると、税率が大幅に下がります。短期譲渡の39.63%から長期譲渡の20.315%へと、実に半分近い税率の軽減が発生します。

例えば、1,000万円の譲渡所得が発生した場合、短期譲渡では396万3,000円の税金が発生するのに対し、長期譲渡なら203万1,500円で済みます。この差額は193万1,500円にも上ります。

特別控除を適用して税負担を減らせる

譲渡所得からの特別控除は、条件を満たせば大きな節税効果をもたらします。なかでも利用できる可能性が大きいのが、居住用財産の3,000万円特別控除制度です。この制度は、自宅として使用していた不動産を売却する際に利用でき、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。

例えば4,000万円の譲渡所得があった場合、この特例を使えば実質的な課税対象は1,000万円まで圧縮されます。マイホームの売却を考えている方にとって、非常に有効な節税手段となるでしょう。

概算取得費の活用で税金を抑えられる

不動産の取得時期が古く、購入価格を証明する書類が見つからない場合でも、売却価格の5%を取得費として認める「概算取得費」という制度を利用できます。

これは、古い物件ほど有利に働く可能性があります。例えば、昭和40年代に購入した土地で実際の取得費が売却価格の3%程度だった場合、概算取得費を選択することで、より多くの経費を計上できます。

取得時の資料が完全に揃っていない場合は、実額の取得費と概算取得費を比較検討し、有利な方を選択することが賢明です。概算取得費は確定申告時に選択できるため、事前に税理士などに相談しながら、最適な方法を見極めることをおすすめします。

マイホーム売却で使える特例制度と活用法

マイホームを売却する際には、複数の税制優遇制度が用意されています。これらの特例は要件を満たせば併用も可能で、税負担を大幅に軽減できる強力な制度です。

ただし、適用には適切な確定申告が必要なため、手続きには慎重な対応が求められます。

3,000万円特別控除で売却益をゼロにできる

居住用財産を売却する際に利用できる3,000万円特別控除は、最も一般的な特例制度です。自宅として使用していた不動産を売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を差し引くことができます。

この特例を使えば、多くの一般的なマイホーム売却では、実質的に譲渡所得税がゼロとなります。

<適用要件>

  • 売却時まで実際に居住していた家屋であること
  • 転居後3年以内に売却すること
  • 相続や贈与で取得した物件でないこと
  • 過去5年以内に同じ特例を使用していないこと

住み替え時は買換特例で納税を先送りできる

住み替えの際に活用できる「特定の居住用財産の買換え特例」は、売却時の譲渡所得税の支払いを、将来の売却時まで先送りできる制度です。

具体的には、古い自宅を売却して新しい自宅を購入する際、譲渡所得税の課税を新しい住宅を売却するまで繰り延べることができます。

これにより、住み替え時の一時的な税負担を抑え、資金繰りを楽にすることができます。ただし、これは免税ではなく課税の繰り延べであるため、将来の税負担を考慮した計画が必要です。

売却損が出た場合は他の所得から控除できる

不動産を売却した際に損失が発生した場合でも、一定の条件下で税制上の優遇措置を受けられます。

「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」制度を利用すれば、マイホームの売却損を給与所得などの他の所得から差し引くことができます

さらに、控除しきれなかった損失は翌年以降3年間にわたって繰り越すことも可能です。

このように、マイホームの売却に関する特例制度は、それぞれの状況に応じて使い分けることで、効果的な節税が可能になります。一方で、これらの特例は一度使用すると一定期間は再度の利用が制限されるため、将来の売却計画も考慮に入れた上で、最適な特例を選択することが重要となります。

譲渡所得税のリスクと課題

不動産の譲渡所得税には、適切な対応を怠ると思わぬ高額課税を招くリスクが潜んでいます。特に注意が必要なのは、以下の3つです。

  • 取得費の証明ができないと5%みなし課税になる
  • 特例適用の要件を満たさないと高額課税になる
  • 申告期限に遅れると加算税や特例適用不可になる

それぞれ個別にみていきましょう。

取得費の証明ができないと5%みなし課税になる

不動産取得時の契約書や領収書などの証明書類を紛失してしまうと、実際の取得費用が高額であっても、売却価格の5%しか取得費として認められません

例えば、2,000万円で購入した不動産を3,000万円で売却する場合、本来なら1,000万円の譲渡所得に対して課税されるところ、取得費が150万円(3,000万円の5%)しか認められず、2,850万円に対して課税されることになります。

その結果、本来の3倍近い税負担が生じかねません。このリスクを避けるため、不動産取得時の資料は必ず安全な場所に保管し、コピーも残しておくなどの対策が求められます。

特例適用の要件を満たさないと高額課税になる

マイホーム売却の3,000万円特別控除などの特例は、要件を満たさないと全く適用できなくなってしまいます。例えば、自宅として使用していた物件でも、引っ越してから3年以上経過すると居住用財産の特例が使えなくなります。

また、賃貸に出していた期間がある場合も、要件を満たさないケースがあります。このような場合、想定していた特例が使えず、予想以上の税負担を強いられかねません。

特に、一度使用した特例は一定期間再利用できないため、安易な特例の適用は将来の売却計画に影響を及ぼすこともあるでしょう。

申告期限に遅れると加算税や特例適用不可になる

譲渡所得の確定申告は、売却した翌年の2月16日から3月15日までの期間内に行う必要があります。この期限を過ぎると、本来の税額に加えて15%から20%の無申告加算税が課されます。

さらに深刻なのは、期限後申告では3,000万円特別控除などの税制優遇が一切受けられなくなる点です。

仮に1億円のマイホームを売却して3,000万円特別控除を予定していた場合、申告期限に遅れると大幅な追加税負担が生じかねません。不動産の売却を計画する際は、このような期限管理も含めた綿密な準備を行いましょう。

譲渡所得税は確定申告が必要

不動産の譲渡所得税は、通常の給与所得と異なり、必ず確定申告をしなければなりません。固定資産税のように納付書が送られてくることはないため、売主自身が手続きを行う必要があります。期限や必要書類の準備を含め、計画的な対応が求められます。

申告期限と提出書類

確定申告は不動産を売却した年の翌年、2月16日から3月15日までに行います。この期間を過ぎると、特例が受けられなくなるだけでなく、加算税も課されてしまいます。

申告時に必要な主な書類は以下のとおりです。

  • 確定申告書B(分離課税用)
  • 不動産譲渡所得の内訳書
  • 売買契約書のコピー
  • 取得時の領収書や契約書
  • 諸経費の支払証明書
  • 登記事項証明書
  • 住民票の写し(居住用財産の特例適用時)

税理士への相談タイミング

税理士への相談は、売却を検討し始めた段階で行うのが望ましいでしょう。売却前の相談により、適用可能な特例の確認や必要書類の準備、さらには売却時期の調整まで、総合的なアドバイスを得ることができます。

特に、複数の物件を所有している場合や、相続した不動産の売却を考えている場合は、税務の専門家に早めに相談することで、最適な売却計画を立てることが可能になります。

よくある申告ミス

譲渡所得税の確定申告では、経験不足から思わぬミスを起こしやすいものです。典型的なミスとして、取得費の計上漏れがあります。

不動産取得時の諸経費や、その後の改修費用なども取得費に含められるにもかかわらず、購入価格のみを計上してしまうケースが見受けられます。

また、特例の適用要件を誤認することも少なくありません。例えば、居住用財産の3,000万円特別控除を受けるには、売却時まで実際に居住していることが条件ですが、この要件を見落として特例を申請してしまうケースがあります。

さらに、譲渡費用の範囲を誤って解釈するミスも多く見られます。住宅ローンの繰上げ返済手数料は譲渡費用に含まれませんが、これを経費として計上してしまうようなケースです。

このようなミスは、税務調査の対象となる可能性もあり、修正申告や追徴課税につながりかねません。

譲渡所得税以外に不動産売却で発生する税金や費用

不動産の売却では、譲渡所得税以外にも以下のような税金や費用が発生します。手元に残る金額を正確に把握するために、これらの費用についても理解しておきましょう。

  • 印紙税
  • 不動産会社への仲介手数料
  • 【住宅ローンが残っている場合】繰上返済にかかる諸費用
  • その他費用

次項より、詳しく解説します。

印紙税

不動産売買の契約書には収入印紙の貼付が必要です。2024年3月31日までは軽減税率が適用されており、通常の半額程度となっています。

契約金額印紙代
1万円未満非課税
1〜10万円200円
10〜50万円400円
50〜100万円1,000円
100〜500万円2,000円
500〜1,000万円1万円
1,000〜5,000万円2万円
5,000万〜1億円6万円
1億〜5億円10万円
5億〜10億円20万円
10億〜50億円40万円
50億〜60万円
契約金額の記載のないもの200円

なお、契約書を2通作成する場合は、正本となる1通のみに収入印紙を貼付します。

不動産会社への仲介手数料

不動産会社に支払う仲介手数料は、宅地建物取引業法で上限が定められています。売却価格が400万円を超える場合の計算方法は以下のとおりです。

仲介手数料の計算例】

  • 基本額:売却価格の3%+6万円
  • 最終額:基本額+消費税10%

<3,000万円で売却する場合の計算例>

  • 基本額:96万円(3,000万円×3%+6万円)
  • 消費税:9.6万円
  • 合計:105.6万円

【住宅ローンが残っている場合】繰上返済にかかる諸費用

住宅ローンの残債がある場合、売却代金から一括返済する必要があり、以下の費用が発生します。

  • 繰上返済手数料:3~5万円程度
  • 抵当権抹消の登録免許税:1,000円
  • 司法書士報酬:2~3万円程度

金融機関によって手数料は異なりますので、事前に確認することをおすすめします。

その他費用

物件の状況によって、以下のような追加費用が必要となる場合があります。

  • 境界確定のための測量費用:20~30万円程度
  • 建物取り壊しが必要な場合の解体費用
  • 賃貸中の物件の場合の立退料
  • 固定資産税の精算金

固定資産税については、1月1日時点の所有者が1年分を納めるため、売却時期によって精算金が発生します。早めに費用を確認し、資金計画を立てることが重要です。

まとめ

不動産の譲渡所得税は、適切な対応をすれば大幅な節税が可能である一方で、知識不足や準備不足によって予想以上の税負担を強いられるリスクもあります。特に重要なのは、取得時の書類の保管と、特例制度の適用要件の確認、そして申告期限の厳守です。

これらを疎かにすると、本来なら受けられるはずの税制優遇を受けられなくなる可能性があります。不動産の売却を検討する際は、税理士などの専門家に早めに相談し、最適な売却計画を立てることをおすすめします

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この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸 (宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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