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空き家バンクとは?登録のメリットや注意点を解説

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地方に空き家を所有しているケースや、相続で取得した古い実家を抱えているケースでは、売却先が見つからない、維持管理費用が重荷になるなど、さまざまな問題が発生します。

その際に活用を検討したいのが空き家バンクです。空き家バンクとは、自治体が運営する空き家の情報提供システムで、売り手と買い手のマッチングを無料で行います。しかし、物件情報が不十分だったり、交渉や手続きが煩雑になったりするなどの課題もあります。

本記事では、空き家バンクの仕組みからメリット・デメリット、具体的な利用方法まで、空き家問題の解決に向けた選択肢を詳しく解説します。

空き家バンクとは

空き家バンクは、地方自治体が運営する空き家の情報提供システムです。所有する空き家を売りたい・貸したい方と、地方での暮らしを希望する方をつなぐプラットフォームとして機能します。

2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されたことを契機に、全国の自治体で導入が進み、現在では約7割の自治体が運営しています。

近年では、国土交通省の選定により株式会社LIFULLとアットホーム株式会社が「全国版空き家バンク」の運営を開始。複数の自治体の物件情報を一括で検索できるようになり、利便性が大きく向上しています。

民間の不動産取引と異なり、地域への定住を主な目的としているため、移住希望者の生活支援や地域コミュニティとの交流促進にも力を入れているのが特徴です。

空き家バンクが必要とされる理由

空き家バンクは、深刻化する空き家問題の解決と、高まる地方移住ニーズへの対応という、2つの社会的課題に応える制度として注目を集めています。

以下では、それぞれの背景について詳しくみていきましょう。

空き家問題の深刻化

全国の空き家数は年々増加の一途をたどっています。総務省の最新調査によると、以下のような状況となっています。

  • 2024年の全国空き家数:約900万戸
  • 空き家率:13.8%(過去最高)
  • 2033年の予測空き家率:30.2%(野村総合研究所による試算)

空き家の放置は、建物の倒壊リスクや防犯上の問題、地域の景観悪化など、さまざまな社会問題を引き起こします。

また、2015年に施行された空き家対策特別措置法により、適切に管理されていない「特定空き家」は、固定資産税の軽減措置が受けられなくなるなど、所有者の経済的負担も増大しています。

地方移住ニーズの高まり

コロナ禍を契機に、働き方や暮らし方を見直す動きが加速しています。特に以下の要因により、地方移住への関心が高まっています。

<テレワークの普及と定着>

  • 場所を問わない働き方が可能に
  • 都市部に住む必要性の低下

<価値観の変化>

  • 自然豊かな環境への憧れ
  • ゆとりある居住空間の希求
  • 二拠点居住という新しい選択肢

国土交通省の調査では、特に20〜40代の若い世代で地方移住への関心が高まっており、実際に移住を実現する人も増加傾向にあるといわれています。

こうした社会変化を背景に、空き家バンクは移住希望者と空き家所有者をマッチングする重要なプラットフォームとしての役割を担っています。

空き家バンク登録のメリット

空き家バンクには、所有者と移住希望者の双方にとって以下のようなメリットが存在します。

  • 費用を抑えて物件情報を公開できる
  • 地域に密着した支援が受けられる

次項より、詳しく解説します。

費用を抑えて物件情報を公開できる

空き家バンクの最大の特徴は、費用面での負担が少ないことです。民間の不動産会社とは異なり、物件情報の掲載は無料で行えます。

また、自治体が運営する制度であるため、信頼性が高く、幅広い層への情報発信が可能となっています。

多くの自治体では、空き家の活用を促進するための支援制度も用意しています。例えば、以下のような補助金制度が活用できます。

  • 空き家のリフォーム費用の一部補助
  • 家財道具の処分費用の助成
  • 不動産取引に関する諸費用の支援
  • 耐震診断・耐震改修費用の補助

地域に密着した支援が受けられる

空き家バンクを通じた取引では、自治体の職員や地域の専門家による手厚いサポートを受けられます。移住相談窓口では、地域の生活環境や子育て支援、就職情報など、暮らしに関するさまざまな情報提供を行っています。

特筆すべきは、移住後のフォロー体制です。先輩移住者との交流会や、地域コミュニティへの橋渡しなど、新生活のスタートを細やかにサポートしてくれます。

こうした継続的な支援により、移住後の不安や課題を最小限に抑えることができるのです。これは民間の不動産取引では得られない、空き家バンクならではの大きな強みとなっています。

空き家バンク利用の課題

空き家バンクは自治体が運営する制度とはいえ、次のような課題も存在します。

  • 物件情報が不十分になる
  • 交渉や手続きが煩雑になる

以下より、詳しく解説します。

物件情報が不十分になる

空き家バンクに掲載される物件情報は、一般的な不動産情報サイトと比べて詳細さに欠ける傾向にあります。写真の枚数が少なかったり、間取り図が簡素だったりと、物件の全容を把握しづらいケースが少なくありません。

また、築年数の古い物件が多いため、建物の状態や補修の必要性について、掲載情報だけでは判断が困難です。水回りの状態や建物の傾き、雨漏りの有無など、実際に物件を見なければ分からない重要な情報も多く存在します。

そのため、購入や賃借を検討する際には、必ず現地での物件確認を行うことが欠かせません。

交渉や手続きが煩雑になる

空き家バンクでは、物件所有者との直接交渉が基本となります。不動産取引の経験が少ない当事者同士のやり取りは、スムーズに進まないことも多々あります

特に、リフォームの範囲や費用負担、家財道具の処分方法など、細かい条件面での話し合いには時間がかかります。

さらに、契約書の作成や登記手続きなどの法的な部分も、専門家のサポートなしでは適切な対応が難しい場合があります。

自治体によっては提携している不動産業者を紹介してくれますが、その場合は別途仲介手数料が発生します。

空き家バンクの利用手順

空き家バンクの利用方法は、売り手と買い手で大きく異なります。それぞれの立場に応じた具体的な手続きの流れを解説します。

売り手(所有者)の場合

空き家バンクに物件を登録する所有者は、以下の4つのステップで手続きを進めます。自治体によって細かな要件は異なりますが、基本的な流れは共通しています。

Step1.事前準備と登録申請

まずは必要書類の準備から始めます。一般的に求められる書類は以下のとおりです。

  • 空き家バンク登録申請書
  • 住民票
  • 固定資産税の納税証明書
  • 物件の権利関係を証明する書類
  • 物件の写真や図面

Step2.現地調査の実施

自治体の担当者が物件の現地調査を行います。このとき確認される主なポイントは以下のとおりです。

  • 建物の状態や老朽化の程度
  • 設備の稼働状況
  • 敷地の状況
  • 周辺環境

なお、提携している不動産会社の担当者が同行することもあります。

Step3.物件情報の登録

現地調査の結果をもとに、具体的な物件情報が空き家バンクに登録されます。この際、以下の情報が公開されます。

  • 物件の概要(築年数、面積など)
  • 設備の状況
  • 周辺環境
  • 希望価格
  • 取引条件

Step4.契約手続きと引き渡し

購入希望者が現れたら、具体的な条件交渉を行います。主な検討項目は以下のとおりです。

  • 売買価格または賃料
  • 引き渡し時期
  • リフォームの実施有無
  • 残置物の処理方法

買い手(利用者)の場合

空き家バンクを通じて物件の購入や賃借を希望する方は、会員登録から契約締結まで、4段階のステップを踏んで手続きを進めていきます。

それぞれの段階で必要な確認事項や注意点を見ていきましょう。

Step1.会員登録と物件探し

希望する地域の空き家バンクに会員登録を行います。全国版空き家バンクを利用すると、複数の自治体の物件情報を効率的に検索できます。この段階で確認すべき項目は以下のとおりです。

  • 物件の立地条件
  • 価格帯
  • 建物の状態
  • 利用可能な支援制度

Step2.物件見学と情報収集

気になる物件が見つかったら、自治体を通じて内覧を申し込みます。見学時には以下の点を重点的にチェックします。

  • 建物の劣化状況
  • 設備の使用可否
  • 補修の必要性
  • 周辺環境

併せて、地域の生活環境や支援制度についても詳しく相談しましょう。

Step3.条件交渉

物件が気に入ったら、具体的な条件交渉に入ります。主な協議事項は以下のとおりです。

  • 購入価格または賃料
  • 補修費用の負担
  • 契約時期
  • 引き渡し条件

Step4.契約締結と補助金申請

条件面で合意に至れば、契約手続きを進めます。この段階での主な作業は以下のとおりです。

  • 契約書の作成と締結
  • 売買代金の支払い
  • 物件の引き渡し
  • 各種補助金の申請手続き

なお、自治体の提携業者を介して契約を行う場合は、より安心して取引を進めることができます。また、リフォーム補助金など、各種支援制度の申請も忘れずに行いましょう。

空き家バンクで空き家を売却した際に発生する税金

空き家バンクでの売却でも、通常の不動産取引と同様に以下の税金が発生します。

  • 所得税・住民税(譲渡所得税)
  • 固定資産税・都市計画税
  • 印紙税

それぞれ個別にみていきましょう。

所得税・住民税(譲渡所得税)

不動産の売却によって生じた利益に対して課税される税金が、譲渡所得税です。具体的な税額は以下の計算式で算出されます。

  • (売却価格)−(取得費+譲渡費用)= 課税対象となる譲渡所得

この譲渡所得に対して、所有期間に応じた税率が適用されます。所有期間が5年を超える場合は20%(所得税15%+住民税5%)、5年以下の場合は39%(所得税30%+住民税9%)となります。これに加えて、所得税額の2.1%が復興特別所得税として課税されます。

 所得税住民税復興特別所得税合計
短期譲渡所得(5年以内)30%9%0.63%39.63%
長期譲渡所得(5年超)15%5%0.32%20.32%

固定資産税・都市計画税

固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に対して課税される税金です。そのため、年度の途中で売却した場合、売却後の期間分については買主との間で精算する必要があります。

固定資産税の精算額は、以下の計算式で算出します。

  • 年間税額×(売却日から年度末までの月数)÷ 12

通常、この精算金は売買契約時に決済金額と一緒に精算されます。都市計画税がかかる地域では、同様の計算方法で精算を行います。

印紙税

売買契約書を作成する際には、契約書に収入印紙を貼付する必要があります。印紙税額は売買代金の金額によって異なり、以下のような区分となっています。

契約金額印紙代
1万円未満非課税
1〜10万円200円
10〜50万円400円
50〜100万円1,000円
100〜500万円2,000円
500〜1,000万円1万円
1,000〜5,000万円2万円
5,000万〜1億円6万円
1億〜5億円10万円
5億〜10億円20万円
10億〜50億円40万円
50億〜60万円
契約金額の記載のないもの200円

なお、自治体によっては空き家バンクでの取引に対して印紙代を補助している場合もあります。事前に制度の有無を確認しておくとよいでしょう。

空き家バンクで空き家を売却したら確定申告は必要?

空き家バンクを通じて不動産を売却した場合も、確定申告は必要です。一般的な不動産取引と同様に、売却による所得を正しく申告する義務があります。

確定申告の期限は、売却した年の翌年の2月16日から3月15日までとなっています。期限を過ぎると加算税が課される可能性があるため、余裕を持って準備を進めることが大切です。

確定申告の際には、売買契約書や領収書など、取引に関する書類を用意する必要があります。

また、空き家の譲渡所得を軽減できる特例制度もいくつか用意されています。例えば、居住用財産の3,000万円特別控除や、相続した空き家の譲渡所得特別控除などがあります。これらの特例を利用する場合は、それぞれの要件を確認し、必要な証明書類を準備しましょう。

空き家バンク以外の空き家問題の解決方法

空き家の状態や立地、所有者の意向によって、最適な解決方法は異なります。ここでは空き家バンク以外の選択肢を紹介します。

  • 不動産会社に売却を依頼する
  • 買取専門会社に売却する
  • 解体して土地活用する
  • リノベーションして活用する

それぞれ個別にみていきましょう。

不動産会社に売却を依頼する

一般的な不動産会社への売却(直接買取)依頼は、空き家を手放す際の最もオーソドックスな選択肢です。

特に立地条件の良い物件は、適切な広告宣伝により市場価値を最大限に引き出した売却を図れます。

売却を検討する際は、複数社からの査定を受けることが賢明です。各社の評価額や販売戦略を比較検討することで、より有利な条件での取引が可能になります。

ただし、仲介手数料として売却価格の3%+6万円(消費税別)が必要となる点には注意が必要です。

買取専門会社に売却する

訳あり物件の買取専門会社への依頼は、最短数日での現金化が可能なため、相続税の支払いや急な資金需要がある場合に適しています。建物の老朽化が進んでいたり、賃借人が残っていたりするケースでも、現状のまま買い取ってもらえます。

買取価格は市場価格の50~80%程度となりますが、仲介手数料が不要な点はメリットです。ただし、業者選びは慎重に行う必要があります。

実績や評判を確認し、複数社から見積もりを取ることで、適正価格での取引を心がけましょう。

解体して土地活用する

建物の老朽化が著しい場合や、補修費用が高額になる場合は、解体して土地の有効活用を検討しましょう。更地にすることで不動産としての価値が上がり、売却や活用の選択肢が広がる可能性があります

標準的な木造住宅の解体費用は、100~150万円程度が目安です。ただし、建物の規模や構造、アスベストの有無などによって費用は変動します。

土地活用の方向性としては、以下のような選択肢が考えられます。

  • 賃貸駐車場としての運営
  • アパートやマンションの建設
  • 商業施設用地としての売却
  • 分譲用地としての販売

リノベーションして活用する

空き家をリノベーションして、新たな価値を創造する方法も注目を集めています。古民家の魅力を活かしたカフェやゲストハウス、コワーキングスペースなど、地域のニーズに合わせた施設への転換が可能です。

リノベーションの実施には、建物の構造や法的規制を確認することが重要です。用途変更に伴う建築確認申請や、消防法の基準クリアなど、専門的な知識が必要となります。

費用面では、改修工事に加えて、設計費用や各種申請費用なども考慮に入れる必要があります。

多くの自治体では、空き家の利活用を促進するため、リノベーション費用の補助制度を設けています。補助金の活用により、改修費用の負担を軽減できる可能性もあるため、事前に制度の確認をすることをおすすめします。

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まとめ

空き家問題の解決には、物件の状態や立地、所有者の意向に応じて最適な方法を選択することが重要です。空き家バンクは、費用を抑えて物件情報を公開でき、自治体による手厚いサポートも受けられる点が魅力といえます。

一方で、早期売却や高値での取引を目指す場合は、不動産会社への売却依頼や買取専門会社の利用も一向の余地があります。売却方法で迷われている方は、ぜひワケガイにご相談ください。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸 (宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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