「実家の相続でやってはいけないこと」があるのをご存じですか?
相続後に実家をどう扱うか判断を誤ると、「登記を放置して売却できない」「兄弟間でもめる」「維持費・税金だけがかさむ」「空き家化する」といった問題が発生します。
実家の相続でやってはいけないこととは、法的手続きを怠ったり、方針を決めずに放置するなど、後々のトラブルにつながる行動を指します。
こうした失敗を避けるためには、早い段階で相続登記・管理・処分の方向性を整理する必要があります。
本記事では、実家の相続でやってはいけない典型的なケースを8つ挙げ、それぞれのリスクと正しい対処法を解説します。
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目次
実家の相続でやってはいけないこと8選

実家の相続では、判断を誤ると相続人同士のトラブルや税負担の増加、売却困難な不動産の所有につながることがあります。
| やってはいけないこと | 発生するリスク | 回避策 |
| 活用・処分方針を決めずに相続する | 相続人同士の意見が対立しやすい | 住む・貸す・売るの方向性を早めに整理する |
| 兄弟姉妹で安易に共有名義にする | 売却や活用に全員の同意が必要になる | 単独名義や換価分割を検討する |
| 相続登記をせずに放置する | 売却できず、10万円以下の過料対象になる | 相続を知った日から3年以内に登記する |
| 空き家のまま放置する | 老朽化や近隣トラブルにつながる | 管理・活用・売却を早めに検討する |
| 無計画に解体・更地化する | 固定資産税増加や再建築不可のリスクがある | 税負担や土地条件を確認してから判断する |
| 相続直後に慌てて売却する | 安値売却や税負担増加につながる | 相続登記や権利関係を整理してから売却する |
| 債務や連帯保証を確認せずに相続する | 借金や保証債務を引き継ぐ可能性がある | 財産調査後に相続放棄・限定承認を検討する |
| 告知義務・事故物件リスクを無視する | 契約解除や損害賠償請求の原因になる | 事故・事件の履歴を確認し適切に告知する |
実際には、このほかにも「解体のタイミングを誤る」「相続直後に安値で売却する」「被相続人の債務を確認しない」といった失敗も見られます。
ここからは、実家の相続で特に注意したい8つの失敗例について詳しく解説します。
①:活用・処分方針を決めずに相続する
実家を相続する際は、「住む」「貸す」「売る」の方向性を決めないまま相続しないようにしましょう。活用方針が曖昧なままだと、相続人同士の意見がまとまらず、話し合いが長期化する原因になります。
特に複数の相続人がいる場合は、次のような対立が起こりがちです。
| 相続人の考え | 起こりやすい問題 |
| 実家に住みたい | 売却したい相続人と対立する |
| 売却して現金化したい | 保有したい相続人と対立する |
| 思い出があるので残したい | 活用方針が決まらなくなる |
相続発生直後に結論を出す必要はありません。しかし、「誰が管理するのか」「将来的にどう活用するのか」といった方向性だけでも早めに整理しておくことで、その後の相続手続きを進めやすくなります。
②:兄弟姉妹で共有名義にしてしまう

実家の相続で特に避けたいのが、安易な共有名義です。公平に分けられるように見えますが、将来的な売却や活用が難しくなります。
共有名義と単独名義の違いをまとめると、以下のとおりです。
| 項目 | 共有名義 | 単独名義 |
| 売却 | 共有者全員の同意が必要 | 所有者のみで決定可能 |
| 賃貸活用 | 共有者間の調整が必要 | 所有者が判断できる |
| 相続発生時 | 権利関係が複雑化しやすい | 比較的整理しやすい |
| 管理負担 | 責任範囲が曖昧になりやすい | 管理者が明確 |
共有者の関係が良好なうちは問題なくても、結婚や転居によって状況が変わると意見がまとまらなくなることがあります。
さらに、共有者の一人が亡くなると、その持分は配偶者や子どもへ相続されます。世代が変わるたびに権利者が増え、最終的には誰も意思決定できない状態になるケースもあります。
③:相続登記をせずに放置する

相続登記を放置すると、次のような問題が発生します。
| 発生する問題 | 内容 |
| 所有者不明化 | 相続人が増え、権利関係の整理が難しくなる |
| 売却・活用が困難 | 相続人全員の同意が必要になり手続きが進まない |
| 管理責任の複雑化 | 固定資産税の負担や管理方法を巡ってトラブルになりやすい |
2024年4月からは相続登記が義務化されており、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請を行う必要があります。正当な理由なく放置した場合は、10万円以下の過料の対象となります。
(参考:東京法務局「相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)」)
相続が発生したら、まず登記事項証明書で名義を確認し、司法書士への相談も含めて早めに相続登記を進めましょう。
関連記事:相続登記の費用はいくらかかる?司法書士への依頼費用や必要経費を金額例で徹底解説!
④:とりあえず所有して放置する(空き家化)


利用予定のない実家を放置すると、管理負担だけが増え、将来的な選択肢も狭まっていきます。
空き家の放置によって起こりやすい問題は以下のとおりです。
| 放置による問題 | 具体例 |
| 建物の老朽化 | 雨漏りや設備故障が進み、売却しにくくなる |
| 近隣トラブル | 雑草の繁茂、害虫・害獣の発生、景観悪化 |
| 防犯上の問題 | 不法侵入や不法投棄のリスクが高まる |
| 行政対応 | 助言・指導の対象となることがある |
特に注意したいのは、空き家は人が住まなくなった途端に劣化が進むことです。定期的な換気や清掃を行わないと、数年で建物の状態が大きく悪化することもあります。
また、相続人が複数いる場合は、「誰が管理するのか」が曖昧になりやすく、放置期間が長引く原因になります。
⑤:無計画な家屋解体・更地化を行う
家を解体しても、住宅があることで適用されていた固定資産税の軽減措置が外れ、翌年から税額が約6倍に増える場合があります。
| 状況 | 固定資産税の目安 |
| 住宅が建っている | 評価額 × 約1/6(住宅用地特例あり) |
| 解体して更地にした | 評価額 × 約1(特例なし) |
また、再建築不可の土地や、接道義務を満たさない土地では、一度更地にすると二度と建物を建てられないケースもあります。
解体費用は100万円〜300万円前後が相場で、見積もりを誤ると売却価格より費用が上回りかねません。
解体を検討する際は、次の3点を必ず確認しましょう。
- 再建築が可能か(接道・用途地域の確認)
- 固定資産税の増減見込み
- 解体後の活用・売却計画
関連記事:実家の解体にかかる費用はどのくらい?手順や相場を徹底解説
⑥:相続直後に慌てて売りに出す

相続した不動産の価値は、土地や建物の状態だけでなく、登記や税金、権利関係によっても大きく左右されるためです。
売却前に確認したいポイントは以下のとおりです。
| 確認事項 | 確認しない場合のリスク |
| 相続登記が完了しているか | 売却手続きを進められない |
| 相続人全員の同意を得ているか | 契約トラブルや手続きの中断につながる |
| 取得費や譲渡所得を把握しているか | 想定以上の税負担が発生する |
| 権利関係に問題がないか | 査定額の低下や売却難航につながる |
準備不足のまま売却すると、本来より安い価格で売却したり、税負担が増えたりする可能性があります。
まずは相続登記や必要書類の整理を行い、不動産会社や税理士に相談したうえで売却時期を判断しましょう。
⑦:被相続人の債務や連帯保証を確認しない
実家を相続する際は、不動産だけでなく借金や連帯保証債務も引き継ぐ可能性があります。財産だけを確認して相続を進めると、後から多額の債務が見つかることもあるため注意が必要です。
特に、次のような債務は見落とされやすい傾向があります。
| 確認事項 | 主な内容 |
| 住宅ローン | 返済が残っていないか |
| 事業性融資 | 個人事業や会社経営に関する借入金 |
| 連帯保証債務 | 親族や会社の借入の保証人になっていないか |
| 未払い金 | 税金、医療費、公共料金など |
相続財産より債務の方が多い場合は、相続放棄や限定承認も選択肢になります。ただし、相続放棄の申述期限は相続開始を知った日から3か月以内です。
(参考:裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」)
⑧:告知義務・事故物件リスクを無視する

相続した実家を売却する際は、過去の死亡事故や事件などを隠してはいけません。事故物件に該当する可能性があるにもかかわらず告知を怠ると、売却後に契約解除や損害賠償を請求されるおそれがあります。
国土交通省のガイドラインでは、人の死に関する主な告知の考え方が示されています。主な内容は以下のとおりです。
| 内容 | 告知義務の有無 |
| 老衰・病死などの自然死 | 原則不要(特殊清掃が必要な場合などを除く) |
| 自殺・殺人・火災による死亡 | 原則として告知が必要 |
| 長期間発見されなかった孤独死 | 状況によって告知が必要 |
| 隣地や共用部分での死亡 | 心理的影響の程度によって判断 |
とはいえ、事故や事件があった実家でも売却できないわけではありません。訳あり不動産を専門に扱う不動産会社や買取業者であれば対応できますので、積極的に相談しましょう。
「実家の持ち家はやばい」と言われる3つの理由

実家の持ち家は、住む予定や活用方法が決まっていない場合、資産ではなく負担になりやすい不動産です。実家の持ち家がやばいといわれる理由としては、以下のものが挙げられます。
| 主な理由 | 発生するリスク |
| 維持費・固定資産税が継続的に発生する | 毎年の負担が続く |
| 特定空き家指定で税負担が最大6倍になりかねない | 固定資産税の優遇が外れる |
| 再建築不可・旧耐震など資産価値が低下しやすい | 売却や活用が難しくなる |
実家を相続したからといって、必ずしも資産価値があるとは限りません。立地や建物の状態によっては、所有し続けることで負担の方が大きくなるケースもあります。
ここからは、各理由について詳しく解説します。
維持費・固定資産税が継続的に発生する
相続した実家を空き家のまま所有している場合でも管理責任があり、以下の維持費や税金が発生します。
| 費用項目 | 概要 | 費用目安・計算例 |
| 固定資産税 | 土地・建物の所有者に課される税金 | 固定資産税評価額500万円の場合、年約7万円(500万円×1.4%) |
| 都市計画税 | 市街化区域内の土地・建物に課される税金 | 固定資産税評価額500万円の場合、年約1万5,000円(500万円×0.3%) |
| 火災保険料 | 火災や自然災害に備える保険 | 年1万円〜5万円程度 |
| 草刈り・庭木剪定 | 雑草や樹木の管理費用 | 年1万円〜10万円程度 |
| 修繕費 | 屋根・外壁・設備の補修費用 | 年5万円〜20万円程度(積立換算) |
さらに、雨漏りや外壁補修が必要になれば、一度に数十万円から百万円単位の支出が発生することもあります。
「親が住んでいた家だから残しておこう」と考えていても、住む予定がなければ負担だけが増えていくため、早めに活用方法や売却方針を検討した方がよいでしょう。
特定空き家指定で税負担が最大6倍になりかねない
実家を空き家のまま放置すると、「特定空家等」や「管理不全空家等」に指定され、住宅用地特例が解除となり、固定資産税の負担が大きく増えます。
(出典:政府広報オンライン「空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を!」)
特定空き家に指定されやすい状態は以下のとおりです。
| 主な状態 | 具体例 |
| 保安上危険な状態 | 屋根や外壁の崩落、建物の傾き |
| 衛生上有害な状態 | ゴミの放置、害虫・害獣の発生 |
| 景観を著しく損なう状態 | 雑草や樹木の繁茂、建物の老朽化 |
| 管理が不十分な状態 | 長期間放置されている |
固定資産税の扱いは次のように変わります。
| 土地の状態 | 固定資産税の課税標準額 |
| 住宅用地特例あり | 評価額の最大6分の1 |
| 住宅用地特例なし | 評価額そのまま |
仮に課税標準額が600万円の土地であれば、住宅用地特例が適用されている場合は100万円相当を基準に課税されます。
しかし特例が解除されると600万円を基準に課税されるため、税負担が大幅に増える可能性があるのです。
再建築不可・旧耐震など資産価値が低下しやすい
相続した実家の売却で、マイナス要因となりやすい条件は以下のとおりです。
| 条件 | 売却への影響 |
| 再建築不可 | 建て替えできず買主が限定される |
| 旧耐震基準(1981年5月以前) | 耐震性への不安から需要が下がる |
| 接道義務を満たしていない | 住宅ローン審査で不利になりやすい |
| 老朽化が進んでいる | 解体費用を考慮される |
地方では、「土地価格より解体費用の方が高い」というケースもあります。その場合、相続人が売却費用を負担して手放さなければなりません。
実家を相続したら、まず再建築の可否や建築時期、接道状況などを確認しましょう。
実家を相続した方がいいケース

実家を相続した方がよいケースは以下のとおりです。
| ケース | 相続を検討した方がよい理由 |
| 親と同居・二世帯化の予定がある | 新たな住宅取得費を抑えられる |
| 立地が良く資産価値が高い | 将来的な売却や活用がしやすい |
| 再建築可能で利用価値が高い土地である | 建て替えや賃貸活用の選択肢がある |
| 家族が将来的に使う予定がある | 住居や実家として活用できる |
| 賃貸や事業用として収益が見込める | 家賃収入や事業収入を得られる |
| 被相続人の遺志を尊重する必要がある | 親族間のトラブル防止につながる |
| 相続税の特例が適用できる | 税負担を軽減できる |
特に、立地条件が良い不動産や将来的な活用方法が明確な不動産は、売却するよりも相続した方が有利になることがあります。
ここからは、実家を相続した方がよいケースについて詳しく解説します。
親と同居・二世帯化の予定がある場合
実家を相続した後に、親と同居、二世帯で住む予定がある場合は、新たに住宅を購入する必要がなく、住宅関連の税制特例も利用できます。
| 主なメリット | 内容 |
| 住居費を抑えられる | 住宅購入費や家賃負担を削減できる |
| 税制特例を利用できる | 小規模宅地等の特例などの適用を受けられる場合がある |
| 親族の見守りがしやすい | 介護や生活支援に対応しやすい |
建物が古い場合でも、リフォームで対応できれば、費用を抑え住み続けることも可能です。
自宅として利用する予定があるなら、売却せず活用の可能性を検討しましょう。
立地が良く資産価値が高い場合
駅近は都市部など需要と資産価値が高いエリアは、相続がおすすめです。売却・賃貸、店舗・事務所など資産を増やせる可能性が高いです。
| 立地条件 | 期待できる活用方法 |
| 駅徒歩圏内 | 売却・賃貸 |
| 商業地域周辺 | 店舗・事務所活用 |
| 人口流入エリア | 資産価値の維持・上昇 |
すぐに使う予定がなくても資産としての価値を維持しやすく、資産価値の上昇もあり得ます。
賃貸需要がある地域では、家賃収入を得ながら保有するという選択肢も存在します。
再建築可能で利用価値の高い土地である場合
再建築可能な土地は活用の自由度が高いため、相続するメリットがあります。建て替えや賃貸住宅の建築、売却など幅広い選択肢を持てるためです。
| 活用方法 | 主な内容 |
| 建て替え | 新築住宅として利用できる |
| 賃貸経営 | アパートや戸建賃貸として活用できる |
| 売却 | 一般的な住宅用地として売却しやすい |
| 分筆 | 土地を分けて活用・売却できる場合がある |
一方で、再建築不可物件は利用方法が大きく制限されます。実家を相続するか判断する際は、接道義務を満たしているか、建て替えが可能かを確認しておきましょう。
(参考:e-Gov 法令検索「建築基準法」)
再建築可能な土地であれば、将来的な資産価値や流動性を期待できます。
家族が将来的に使う予定がある場合
相続を前向きに検討しやすいケースは、次のものが挙げられます。
| 利用予定 | 具体例 |
| 住宅として利用する | 子どもが数年以内に居住予定 |
| 二世帯住宅にする | 建て替えやリフォームを計画している |
| セカンドハウスとして使う | 定期的に利用する予定がある |
| 親族の住居として活用する | 高齢の親族が居住する予定がある |
実家を活用する予定があれば、売却後に改めて住宅を取得する必要がなくなります。一方で、利用開始まで数年かかる場合は、固定資産税や維持管理費も発生します。
利用予定を家族間で共有し「いつから」「誰が」「どのように使うのか」を具体的に決めておくことが大切です。
賃貸や事業用としての収益が見込める場合
相続した実家で、賃貸や事業用として収益が見込めるなら、売却せずに保有する選択肢もあります。収益化を検討しやすい条件は以下のとおりです。
| 確認ポイント | 判断の目安 |
| 立地条件 | 駅や商業施設が近い |
| 建物の状態 | 大規模修繕なしで利用できる |
| 土地の広さ | 駐車場や事業利用が可能 |
| 周辺需要 | 賃貸物件の入居需要がある |
具体的な計算例をご提示します。
月額7万円で賃貸できる場合、年間家賃収入は84万円になります。固定資産税や管理費などで年間20万円かかったとしても、差額分を収益として確保できます。
| 項目 | 金額例 |
| 年間家賃収入 | 84万円(月7万円×12ヶ月) |
| 固定資産税・維持費 | 20万円 |
| 年間収支 | 64万円 |
もちろん、実際には周辺相場や建物の状態を調査する必要があります。それでも、収益が見込める不動産であれば、収入源として活用できる可能性があります。
被相続人の遺志を尊重する必要がある場合
被相続人が実家について以下のような意向があった場合は、売却以外の選択肢も検討する価値があります。
| 被相続人の意向 | 検討したい活用方法 |
| 実家を残してほしい | 居住・管理を継続する |
| 先祖代々の土地を守ってほしい | 長期保有や親族への承継を検討する |
| 墓守を続けてほしい | 定期的に利用・管理する |
| 親族の集まる場所として残したい | セカンドハウスや共有利用を検討する |
感情面と経済面の両方を整理して判断することで、無理のない形で実家を引き継げるでしょう。
相続税の特例が適用できる場合
相続税の特例を利用できる場合は、実家を相続するメリットが大きくなります。主な特例の内容は以下のとおりです。
| 区分 | 減額割合 | 限度面積 |
| 特定居住用宅地等(自宅) | 80%減額 | 330㎡まで |
| 特定事業用宅地等 | 80%減額 | 400㎡まで |
| 貸付事業用宅地等 | 50%減額 | 200㎡まで |
(参考:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」)
一例として、評価額5,000万円の土地に特定居住用宅地等の特例が適用される場合、課税評価額は1,000万円まで圧縮されます。
| 項目 | 金額例 |
| 土地の相続税評価額 | 5,000万円 |
| 80%減額後の評価額 | 1,000万円 |
| 減額される評価額 | 4,000万円 |
この特例が適用できるかどうかで、相続税額は大きく変わります。
適用には同居要件や保有要件などの条件があります。相続後の利用方法によっては特例が受けられないこともあるため、相続税申告前に税理士へ確認しておくと安心です。
実家相続後の活用の選択肢とは
実家を相続したあとの活用方法は以下のように複数存在します。
| 活用方法 | 向いているケース | メリット | 注意点 |
| そのまま居住する | 自分や家族が住む予定がある | 住居費を抑えられる | リフォーム費用がかかる場合がある |
| 空き家として貸し出す | 賃貸需要がある地域 | 家賃収入を得られる | 空室や修繕のリスクがある |
| 建物を解体して土地活用する | 建物の老朽化が進んでいる | 土地を有効活用しやすい | 解体費や税負担が発生する |
| 売却して現金化する | 利用予定がない | 維持費や管理負担がなくなる | 売却まで時間がかかる場合がある |
| 親族や知人に譲渡・贈与する | 引き継ぎ先が決まっている | 管理負担を移転できる | 贈与税などの確認が必要 |
| 自治体やNPOへ寄付する | 社会貢献も兼ねて手放したい | 維持管理から解放される | 受け入れ先が限られる |
| 相続土地国庫帰属制度を利用する | 売却先や譲渡先が見つからない | 国に土地を引き取ってもらえる | 建物がある土地は利用できず、審査や負担金が必要 |
実家を放置すると維持費や固定資産税の負担が続くため、「いつか考える」ではなく、早い段階で方向性を決めることが大切です。
次項より、それぞれ詳しく解説します。
選択肢①:そのまま居住する(リフォーム・建て替えを含む)
もっともシンプルなのが、相続した家に自分や家族がそのまま住むという選択です。居住する場合、固定資産税の住宅用地特例(最大6分の1軽減)を継続して受けられ、空き家リスクも防げます。
築年数が古い場合でも、リフォームや建て替えを行えば快適な住環境に生まれ変わります。
費用の目安は次のとおりです。
| 内容 | 費用の目安 |
| 部分リフォーム(内装・水回りなど) | 100〜300万円前後 |
| フルリフォーム(耐震・断熱含む) | 500〜1,000万円前後 |
| 建て替え | 2,000万円〜3,000万円程度 |
一方で、古い配管や構造体の深刻な劣化があると、リフォームしても再利用が難しいケースもあります。
居住を前提にするなら建物診断(ホームインスペクション)を実施し、安全性と費用対効果を見極めるようにしましょう。
選択肢②:空き家として貸し出す(賃貸活用)
自分では住まない場合でも、賃貸として活用する方法があります。活用例は、以下のとおりです。
| 活用例 | 向いている立地 | 注意点 |
| 戸建て賃貸 | 駅・学校・商業施設へのアクセスが良い住宅地 | 水回りや設備の修繕が必要になりやすい |
| 社宅・寮 | 工場や事業所が近いエリア | 法人需要があるか確認する |
| シェアハウス | 部屋数が多い住宅 | 管理ルールや改修費用が必要 |
| 店舗兼住居 | 道路沿いや商店街周辺 | 用途地域や改装の可否を確認する |
| 民泊 | 観光地や駅近エリア | 条例・許可・近隣対応が必要 |
賃貸活用のメリットは「家賃収入がストック収入になる」「人が使うことで空き家の劣化を抑えやすい」です。ただし、賃貸経営には修繕費や管理費が必要で、空室リスクも伴います。
専門業者による「空き家賃貸サポート」や「リノベ賃貸化」などのサービスも登場しており、プロに運営を委託すれば安定的に収益を得られます。
選択肢③:建物を解体して土地活用する
老朽化が進んでいる場合や、建物としての価値が低い場合は、家を解体して土地として活用する方法も検討に値します。代表的な土地活用の例は次のとおりです。
| 土地活用の方法 | 特徴 | 利回りの目安 |
| 月極駐車場 | 初期費用が比較的少なく、狭い土地でも始めやすい | 2〜5%程度 |
| アパート経営 | 家賃収入による安定運用を目指せる | 5〜8%程度 |
| 太陽光発電 | 管理の手間が少なく、長期運用に向いている | 4〜8%程度 |
| 貸地(事業用定期借地など) | 建物を建てずに地代収入を得られる | 2〜6%程度 |
土地活用を選ぶ際は、以下の要素を踏まえて、専門家と相談しながら最適な方法を選びましょう。
<土地活用を行う際のチェックポイント>
- 用途地域・接道条件
- 将来的な売却計画
- 初期費用と税負担のバランス
選択肢④:売却して現金化する(一般・訳あり買取含む)

実家を維持する予定がない場合、売却して現金化するのが最も分かりやすい選択肢です。売却には大きく分けて「一般仲介」と「買取」の2つの方法があります。
| 方法 | 特徴 | 向いているケース |
| 一般仲介 | 不動産会社を通じて買主を探す。市場価格で売れやすいが、成約まで時間がかかる。 | 立地や状態が良く、買い手が見つかりやすい物件 |
| 買取(訳あり含む) | 不動産会社が直接買い取る。早期現金化が可能で、訳あり物件でも対応可。 | 共有名義・再建築不可・空き家・事故物件など |
特に、老朽化・共有持分・心理的瑕疵といった「訳あり不動産」は、一般の買主が敬遠しやすく、訳あり物件買取専門の不動産業者による直接買取が有効です。
買取なら最短数日〜1週間で売却が完了し、相続税の納税期限(10か月以内)にも間に合うケースが多くあります。
訳あり物件の買取専門サービスであるワケガイでは、相続物件の買取実績も多数あります。「相続したまま放置している」とお悩みの方は、ぜひご相談ください。
選択肢⑤:親族や知人に譲渡・贈与する
実家を親族や知人に譲る場合は、譲渡(売買)と贈与の2つの方法があります。親しい相手に引き継げるため安心感がありますが、税務上の扱いには注意が必要です。
| 項目 | 譲渡(売買) | 贈与 |
| 対価 | 代金を受け取る | 無償または著しく低い価格で譲る |
| 税金 | 譲渡益が出た場合は譲渡所得税がかかる | 年間110万円を超える部分に贈与税がかかる |
| 向いているケース | 親族へ適正価格で引き継ぎたい場合 | 財産承継を優先したい場合 |
| 注意点 | 売買価格が低すぎると贈与とみなされることがある | 高額な不動産は贈与税負担が大きくなりやすい |
贈与税の負担を避けるためには、以下のような制度を活用する方法もあります。
| 制度 | 内容 |
| 相続時精算課税制度 | 生前に最大2,500万円まで非課税で贈与でき、相続時に清算される |
| 住宅取得資金贈与の非課税 | 子や孫の住宅購入資金として贈与した場合、一定額まで非課税(期間限定) |
(参考:国税庁「相続時精算課税の選択/直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」)
ただし、形式上の贈与で実際は無償譲渡だったと判断されると、贈与税の追徴を受けるおそれがあります。譲渡・贈与どちらの場合も、契約書の作成と登記変更を正式に行うことが大切です。
選択肢⑥:自治体やNPOへ寄付する

(出典:日経BP「寄付を受けた空き家を安く提供、東白川村の移住促進」)
「二束三文で手放すくらいなら、地域のために実家を活用してほしい」という思いがあるなら、自治体やNPO法人に寄付するという選択肢もあります。
寄付先としては、主に以下のような団体が存在します。
| 寄付先 | 活用例 |
| 自治体 | 地域の空き家対策・福祉施設・防災拠点などに転用 |
| NPO・公益法人 | 子育て支援、地域交流スペース、移住促進住宅などに活用 |
ただし、どの自治体も無条件で受け取ってくれるわけではありません。老朽化が著しい、再建築不可、立地が悪いなどの理由で受け入れを断られるケースも多く見られます。
選択肢⑦:相続土地国庫帰属制度を利用する
売却先や譲渡先が見つからない土地については、相続土地国庫帰属制度を利用する方法があります。
この制度は、一定の条件を満たした土地を国に引き取ってもらえる制度で、2023年から開始されました。主な利用条件は以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
| 建物 | 建物が存在しないこと |
| 権利関係 | 抵当権などが設定されていないこと |
| 土地の状態 | 管理や処分に過大な費用がかからないこと |
| 共有名義 | 共有者全員で申請すること |
(参考:法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)」)
また、申請時には審査手数料に加え、土地管理費相当額の負担金を納付する必要があります。
| 費用項目 | 金額の目安 |
| 審査手数料 | 土地1筆あたり14,000円 |
| 負担金 | 原則20万円(地目や面積により変動) |
相続土地国庫帰属制度は、「不要な土地を無条件で国に引き取ってもらえる制度」ではありません。
まずは売却や親族への譲渡、寄付などを検討し、それでも処分できない場合の選択肢として考えましょう。
ご両親が存命のうちからできる相続対策
実家の相続でトラブルを防ぐには、相続が発生する前から準備しておくことが効果的です。主な相続対策は以下のものが挙げられます。
| 相続対策 | 期待できる効果 |
| 遺言書を作成してもらう | 相続人同士の争いを防ぎやすい |
| 不動産の名義や権利関係を整理しておく | 相続手続きを円滑に進められる |
| 生前贈与を検討する | 相続財産を減らしやすい |
| 生命保険を活用する | 納税資金や代償金を準備できる |
| 専門家に相談する | 相続税や権利関係を総合的に整理できる |
家族間で認識を共有しておくことで、相続発生後のトラブルを防ぎやすくなるでしょう。ここからは、相続対策について詳しく解説します。
遺言書を作成してもらう

(出典:政府広報オンライン「知っておきたい遺言書のこと。無効にならないための書き方、残し方」)
実家の相続をめぐるトラブルの多くは、「誰が家を引き継ぐか」が明確でないことに起因します。そのため、まず行うべきは遺言書を作成してもらうことです。
遺言書があれば、相続人の意向が食い違っても、法的な根拠に基づいて円滑に遺産分割が進められます。遺言書には主に次の3種類があります。
| 種類 | 作成方法 | 特徴 |
| 自筆証書遺言 | 自筆で全文を書く | 手軽だが形式不備で無効になるリスクがある |
| 公正証書遺言 | 公証人と証人の立会いで作成 | 法的に最も確実で、紛失・改ざんの心配がない |
| 秘密証書遺言 | 内容を秘密にしたまま公証役場に預ける | 公開を避けたい場合に有効だが、利用例は少ない |
単に「家は長男に」と記すだけでなく、固定資産税や修繕費の負担、売却時の取り分なども明記しておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。
不動産の名義や権利関係を整理しておく
登記簿上の名義が親ではなく祖父母のままになっていたり、土地と建物の所有者が異なっていたりすると、相続手続きが複雑になります。
特に、以下の項目は事前に確認しておくことをおすすめします。
| 確認項目 | 確認する内容 |
| 登記名義人 | 現在の所有者が誰になっているか |
| 土地・建物の名義 | 所有者が一致しているか |
| 共有名義の有無 | 持分割合や共有者を把握しているか |
| 境界・測量状況 | 隣地との境界が確定しているか |
| 接道状況 | 建築基準法上の道路に接しているか |
法務局で登記事項証明書を取得すれば、多くの情報を確認できます。
実家を将来どう活用するかにかかわらず、権利関係を整理しておくことで、その後の相続手続きを円滑に進めやすくなります。
生前贈与を検討する
生前贈与には毎年使える非課税枠があり、長期的に行えば相続税対策として大きな効果を発揮します。主な制度は次のとおりです。
| 制度名 | 概要 | 非課税枠 |
| 暦年贈与 | 1年ごとに少額を贈与し、毎年非課税枠を活用 | 年間110万円まで非課税 |
| 相続時精算課税制度 | 最大2,500万円まで非課税で贈与でき、相続時に清算 | 生涯で2,500万円まで非課税 |
| 住宅取得等資金贈与 | 子や孫の住宅購入資金として贈与 | 最大1,000万円(条件あり) |
制度の選択や贈与額のバランスは、家族構成や資産内容によって最適解が異なります。近年は税制改正も行われているため、利用する際は税理士へ確認しましょう。
生命保険を活用して納税資金を確保する
実家などの不動産を相続する場合は、生命保険を活用して納税資金を準備しておく方法があります。
生命保険には、相続税の非課税枠が設けられています。
| 項目 | 内容 |
| 非課税限度額 | 500万円 × 法定相続人の数 |
| 法定相続人3人の場合 | 1,500万円まで非課税 |
| 法定相続人4人の場合 | 2,000万円まで非課税 |
一例として、法定相続人が3人の場合は1,500万円まで非課税で保険金を受け取れます。
また、生命保険金は原則として受取人固有の財産となるため、遺産分割協議を待たずに受け取れる点も特徴です。
家族信託で認知症リスクに備える

(出典:一般社団法人 家族信託普及協会)
親が認知症になると、本人名義の不動産は原則として自由に売却や活用ができなくなるといった事態に備える方法の一つが家族信託です。
親が元気なうちに財産管理を家族へ託しておくことで、判断能力が低下した後も柔軟な管理や処分が可能になります。よく比較される成年後見制度との違いは、以下のとおりです。
| 比較項目 | 家族信託 | 成年後見制度 |
| 不動産売却 | 比較的柔軟に対応可能 | 家庭裁判所の関与が必要 |
| 財産管理 | 信託契約の範囲内で可能 | 本人保護が優先される |
| 利用開始時期 | 元気なうちに契約が必要 | 判断能力低下後に利用可能 |
認知症対策は相続対策でもあります。実家の活用や売却を将来検討している場合は、家族信託も選択肢の一つとして考えておくとよいでしょう。
専門家に相談して総合的にプランを立てる
実家の相続は、税金・登記・評価・家族関係など複数の要素が絡み合うため、個人で全てを判断するのは難しいといえます。
早い段階で専門家に相談し、相続全体を見通したプランを立てておくことが大切です。相談先としては、以下のような専門家がそれぞれ異なる分野をカバーします。
| 専門家 | 主な相談内容 |
| 税理士 | 相続税・贈与税の試算、節税シミュレーション |
| 司法書士 | 相続登記、名義変更、遺言書の作成支援 |
| 弁護士 | 遺産分割協議、相続トラブルの予防・解決 |
| 不動産会社(買取・仲介) | 実家の売却・活用・査定相談 |
| ファイナンシャルプランナー | 保険・贈与・資産運用を含めた総合設計 |
こうした専門家の知見を組み合わせれば、「どのタイミングで何をすべきか」「どんな制度が使えるか」を一気通貫で整理できます。
実家の取扱でお困りなら「ワケガイ」にご相談ください!

当社(株式会社ネクスウィル)は、共有持分や再建築不可、空き家、事故物件など、一般の不動産会社では扱いが難しい物件を専門に買取するサービス「ワケガイ」を提供しています。
現地調査から契約・決済までを最短で行える体制を整えており、「売れない」と諦めていた物件も最短1日で買取が完了するケースもあります。
また、司法書士や税理士などの専門家と連携し、相続登記や権利調整といった複雑な手続きもワンストップで対応可能です。全国47都道府県どこでも相談を受け付けており、現状のままでも査定が可能です。
他社で断られた物件や、相続後の管理に困っている不動産があれば、お気軽に無料査定をご活用ください。
実家の相続に関するQ&A
最後に、実家の相続にまつわるよくある質問ををQ&A形式で整理しました。ぜひお役立てください。
実家の相続で「やってはいけない後始末」とはどんなこと?
先延ばしと無計画な対処はやってはいけません。です。登記をせず放置したり、長年空き家のまま維持費を払い続けたりすると、管理責任や売却可能性が著しく低下します。
亡くなった親の家の名義変更をしないとどうなる?
相続人が増えて権利関係が複雑になり、売却や活用が難しくなります。2024年4月からは相続登記が義務化されており、正当な理由なく3年以内に手続きを行わない場合は10万円以下の過料の対象となります。
嫁に行った娘は遺産相続できる?
相続できます。結婚して姓や戸籍が変わっても、子どもであることに変わりはありません。相続順位や法定相続分も、息子と同じ扱いになります。
5000万円の実家を相続したらいくら相続税がかかる?
必ずしも、相続税が発生するわけではありません。相続税は不動産だけでなく、預貯金などを含めた遺産総額で計算され、基礎控除や小規模宅地等の特例によって税額が大きく変わることもあります。
親の家を相続したら実家に住んでいる人はどうなる?
実家に住んでいる人がその家を相続した場合は、そのまま住み続けられます。一方、他の相続人が実家を取得する場合や共有名義になる場合は、居住を続けるための話し合いが必要になることがあります。
実家の相続税がかからないのはどんなケース?
遺産総額が基礎控除額以下のケースです。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算するため、遺産総額がこの範囲内であれば相続税はかかりません。
まとめ
実家の相続では、「登記を後回しにする」「方針を決めずに放置する」「感情で判断する」といった行動が、のちのトラブルを生みます。最も重要なのは、「早めに整理し、現実的な選択を取る」ことです。
相続登記を済ませ、維持費や税金の見通しを立て、共有状態を避けるよう意識しましょう。また、相続後の活用(住む・貸す・売るなど)は、法的手続きや税務を踏まえて冷静に判断することが大切です。
実家は思い出と同時に責任も伴う資産です。感情や先延ばしではなく、家族で情報を共有しながら、「将来のための選択」としての相続を進めていきましょう。












