空き家の放置を続けるとどうなる? 行政代執行までの流れを解説

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「使っていない空き家を、このまま放置しても大丈夫?」
「行政から通知が来たら、最終的には強制的に解体される?」

空き家を所有しているものの、こうした不安を抱えながら対応を後回しにしている方もいるでしょう。

総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年10月1日時点の全国の空き家数は900万2千戸、空き家率は13.8%で、いずれも過去最高となりました。
(参考:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」)

また、野村総合研究所は、2043年には空き家率が約25%まで上昇すると予測しています。
(参考:野村総合研究所「2040年度の新設住宅着工戸数は58万戸に減少、2043年の空き家率は約25%まで上昇する見通し」)

空き家は所有しているだけで直ちに問題になるわけではありません。ただし、適切に管理されず、倒壊の危険や衛生上の問題などが生じると、自治体から改善を求められ、最終的には行政代執行によって解体・撤去される可能性があります。

そこで本記事では、訳あり不動産の買取を手がけるワケガイ編集部が、空き家が行政代執行の対象となる条件や実施までの流れ、実際の事例について解説します。

空き家特別措置法の施行とは

空き家特別措置法による市区町村の対応と行政代執行までの仕組みを示した図解

空き家特別措置法では、管理状態に問題がある空き家に対して行政が段階的に改善を求め、最終的に代執行を行う場合があります。

行政による空き家の取り壊しは、「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)」に基づいて行われる場合があります。

空家法では、周辺の生活環境に深刻な影響を及ぼす「特定空家等」に対し、市区町村が助言・指導や勧告、命令などの措置を取れる仕組みを定めています。

空家法は2015年に全面施行され、2023年12月13日には改正法が施行されました。改正後は、放置すれば特定空家等になるおそれがある「管理不全空家等」への指導・勧告や、緊急時に一部の事前手続きを経ずに措置を行う「緊急代執行」などが追加されています。

(参考:e-Gov 法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」)

空き家に対して行われる行政代執行の流れ

特定空家等の指定から助言・指導、勧告・命令・戒告、代執行令書、行政代執行までの流れを示した図解

行政代執行は、特定空家等への指定後に助言・指導や勧告、命令などの段階を経て実施され、解体費用は所有者に請求されます。

空き家の行政代執行は、建物が危険な状態だからといって直ちに解体されるわけではありません。

原則として、市区町村による調査などを経たうえで、特定空家等への助言・指導、勧告、命令、戒告、代執行令書による通知、行政代執行へと段階的に進みます。

また、所有者が命令に従わないだけで行政代執行を実施できるわけではありません。行政代執行法では、ほかの手段による履行の確保が困難であり、不履行を放置することが著しく公益に反すると認められることなどに該当しなければ実行できないのです。

そのため、行政から通知を受けた場合は、行政代執行に至る前に空き家の状態を改善する対応が求められます。

1.特定空き家に指定

「特定空き家」として指定されるための条件は以下の通りです。

  • 倒壊の危険性があるなど放置による安全上の問題
  • 衛生上の問題や有害な影響の可能性
  • 周辺住民の生活環境を損なうこと
  • 地域の景観を乱す、地域ルールに違反する

空き家がこれらの条件に当てはまる場合、特定空き家として指定される可能性があります。ただし、指定された空き家でも、問題点を改善すれば指定解除が可能です。

例えば、敷地内の立木や雑草が近隣に迷惑をかけている場合、これを伐採・整理することで特定空き家の指定を解除できる可能性があります。

なお、2023年の空家法改正により、特定空家等になる前の段階でも対策が取られるようになりました。放置すれば特定空家等になるおそれがある空き家は「管理不全空家等」とされ、市区町村から指導や勧告を受ける場合があります。

管理不全空家等について勧告を受けると、その敷地は固定資産税などの住宅用地特例の対象外となります。特定空家等に指定されるまで放置するのではなく、管理不全空家等の段階から修繕や管理方法を検討することが大切です。

2.助言・指導

特定空き家に指定された後、所有者が何らかの対策を講じない場合、市町村長は以下の条件を満たす空き家に対して助言・指導を行えます。

  • 保安上の問題(例:倒壊の危険性)がある場合
  • 衛生上の問題や有害な影響が懸念される場合

市町村からの助言・指導に従い、所有者は空き家の除去、修繕、立木林の伐採などの対策を行う必要があります。

3.勧告・命令・戒告

市町村からの助言・指導にも関わらず、所有者が適切な対応を取らない場合、次の段階として勧告が行われます。この勧告は法的な拘束力はないものの、助言・指導よりも強い行政の指示となります。

勧告を受けると、特定空き家の所有者は固定資産税の住宅用地特例を受けられなくなるため、税負担が増加します。

勧告に応じない場合、市町村はさらに強い法的効力を持つ命令へと移行します。この段階での命令違反は、最大50万円の過料に処される可能性があるため注意が必要です。

さらに、行政代執行が実施される前には文書による戒告が行われ、履行期限が設定されます。期限内に適切な対応が取られない場合、行政代執行の通知が来ます。

なお、空家法では通常の行政代執行とは異なる手続きも設けられています。所有者等を確知できない場合には、必要な措置を行政が行う「略式代執行」が実施されることがあります。

4.代執行令書での通知

戒告の期限内に所有者が対応しない場合、行政代執行の通知、すなわち代執行令書が発行されます。

この令書には、代執行の実施時期、責任者の氏名、および費用の見積もりが記載されています。また、災害その他非常の場合で命令などの手続きを行う時間的余裕がないときは、「緊急代執行」によって一部の事前手続きを経ずに必要な措置が取られる場合があるため注意が必要です。通常代執行・略式代執行・緊急代執行では、行政による取り壊しに至るまでの手続きが異なります。

5.行政代執行

代執行令書に指定された時期になると、市町村が指定した解体業者により行政代執行が実施されます。

所有者が自ら業者を選ぶよりも費用が高くなる可能性があるため、行政代執行を避けるためには、早期に市町村の指示に従いましょう。

行政代執行によって空き家の解体や撤去が行われた場合、その費用は原則として措置を命じられた所有者等が負担します。行政が代わりに解体したからといって、公費で行われるわけではありません。

行政から費用の納付を求められても支払わない場合は、国税滞納処分の例によって財産を差し押さえられることがあります。行政代執行に至る前であれば、自ら修繕や解体、売却などを検討できるため、助言・指導や勧告を受けた段階で対応を進めることが重要です。

費用の支払いを怠ると、財産の差し押さえという厳しい結果に直面する可能性があります。支払いが困難な場合は、自治体に相談し、分納などの対応を依頼することも1つの手段です。

空き家に対して行われた行政代執行の事例

実際に空き家に対して行われた行政執行の事例を紹介します。

事例1:東京都品川区

  • 構造(築年数):木造2階建て(築58年)
  • 損壊状況等:壁の破損、ベランダの腐食。
  • 周辺環境:小学校の通学路に面しているため、空き家の改善要望書(署名1600人余り)が提出された。
  • 動産:建物内部に大量の廃棄物が残されている
  • 所有者等の状況:建物所有者と土地所有者が別。登記上の建物所有者が死亡。相続人の2人のうち1人は相続放棄し、別の1人は居所不明。
  • 費用:423万円
  • 費用回収状況:預金差し押さえにより回収済

<経過>

  • 平成27年8月:特定空き家等判定
  • 平成27年9月:助言・指導
  • 平成27年10月:勧告
  • 平成28年2月:命令
  • 平成28年3月:戒告
  • 平成28年5月:行政代執行の実施(廃棄物の処理、外壁、柱の補修)

相続人を特定後、協議を行えていたが、のちに連絡が取れなくなり、行政代執行が行われた事例です。かかった費用は相続人の預金差し押さえによって支払われました。

事例2:千葉県柏市

  • 構造:鉄骨造3階建て(築45年)
  • 損壊状況等:建物全体が老朽化により劣化している。
  • 周辺環境:JRの線路及び都市計画道路に近接
  • 動産:有り
  • 所有者の状況:元事業所であり、建物は法人名義だが当該法人は実態がない(解散等はしておらず登記上存続しているものの営業は行なっていない)
  • 費用:1,000万円
  • 費用回収状況:土地差し押さえ後、公売により一部回収

<経過>

  • 平成28年4月:特定空き家等判定
  • 平成28年4月:助言・指導
  • 平成28年5月:立ち入り調査
  • 平成28年10月:勧告
  • 平成29年2月:命令
  • 平成29年2月:戒告
  • 平成29年4月:行政代執行の実施(解体)

このケースでは、所有者である法人代表者との協議の結果、所有者による除却は経済的理由により対応困難とのことから、解体後に土地差し押さえ、公売にて一部費用を回収されました。

事例3:新潟県十日町市

  • 構造:木造2階建て(築48年)
  • 損壊状況等:建物の一部が降雪により倒壊
  • 周辺環境:郊外の田園集落
  • 動産:なし
  • 所有者等の状況:土地所有者と建物所有者が別。所有者は県外に居住しており、平成25年より空き家への対応を依頼してきたが、27年2月に一部が倒壊。同年10月に所有者死亡。相続人へ対応依頼したが、相続人全員が相続放棄のため所有者等不確知と判断。その後、所有者の生前所有の土地の債権回収のため、相続財産管理人が選任されていたことから、当該相続財産管理人を相手方都市、行政代執行を実施。
  • 費用:270万円
  • 費用回収状況:所有者の他所有土地の差し押さえ後、それらの公売により一部回収

<経過>

  • 平成27年12月:立ち入り調査
  • 平成27年12月:特定空き家等判定
  • 平成28年11月:助言・指導
  • 平成28年12月:勧告
  • 平成28年12月:命令
  • 平成28年12月:戒告
  • 平成29年1月:行政代執行の実施

特定空き家判定後に、所有者が死亡。相続人が相続放棄した一例です。別の土地で相続財産管理人が選定されていたため、それらの土地を差し押さえ後、公売によって費用を一部回収されました。

空き家に対して行政代執行された事例を見ていくと、所有者が特定できても経済的に対応ができない状況。あるいは、相続人が複数いて特定困難であるため、相続放棄されており、協議対象者が不在であったりする事例が多く散見されました。

空き家への行政代執行を避けるための対応策 

空き家への行政代執行を避けるための対応策は、以下のとおりです。

  • 状態の改善
  • 解体
  • 修繕・撤去についての届出

それぞれ、解説します。

状態の改善

定空き家に指定された際、軽微な修繕が必要な場合は、所有者自身で問題箇所を修正することで、特定空き家の指定を解除してもらえます。

しかし、空き家の管理と修繕は一度きりではなく、継続的な取り組みが必要です。一度改善しても、その後放置すると再び特定空き家に指定されるリスクがあります。

空き家の維持管理を専門業者に任せる選択肢もありますが、これには月額約1万円程度のコストがかかります。そのため、空き家を活用しない場合は売却することが経済的にも合理的な選択といえるでしょう。

解体

建物を解体すれば、特定空き家は解消され、行政代執行による強制解体は行われません。

もし、「空き家を解体したいが費用が高くて躊躇している」という状況の所有者は、自治体の助成金制度の活用を検討することをお勧めします。地域名と「空き家 解体 助成金」で検索すると、地域ごとの制度がみつかります。

しかし、空き家を解体して更地にすると、固定資産税が最大6倍に増加するリスクがあります。そのため、助成金やローンを利用することが可能であっても、解体は慎重に検討すべきです。

リスク回避として、専門の買取業者に売却する選択もあります。本ブログで情報発信を行っている「ワケガイ」は、訳あり物件を積極的に買い取っている専門業者です。

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修繕・撤去についての届出

特定空き家に指定された後、修繕や撤去がすぐに行えない場合は、自治体に対して改善の意志と計画を伝えることが大切です。これにより行政代執行を延期してもらえる可能性があります。

例えば、兵庫県姫路市で、空き家の所有者が除去作業の意向を示し、具体的な工程表を提出した結果、行政代執行が延期された事例があります。

最終的には所有者の作業が不十分だったため、行政代執行が実施されましたが、適切な対応をすることで延期が可能であることが分かります。

ただし、前述の通り、空き家の管理と修繕は継続的な取り組みが必要。自治体に計画を届け出る際は、一時的な解決ではなく、長期的な管理責任を持って行うことが重要です。

関連記事:空き家の放置を続けるとどうなる? 行政代執行までの流れを解説!

行政による空き家の取り壊しについてよくある質問

行政による空き家の取り壊しについてよくある質問は、以下のとおりです。

  • 空き家が倒壊したら誰が責任を負うの?
  • 空き家を壊して欲しいのですが?
  • 行政代執行の流れはどのようになっているの?
  • 行政代執行の対象となる要件は?

それでは、それぞれの質問とその回答を紹介します。

空き家が倒壊したら誰が責任を負うの?

空き家の所有者は、建物を適切に管理する責任を負っています。民法では、建物の管理を怠った原因で倒壊して他人にけがをさせたり、隣家などに損害を与えたりした場合、所有者が損害賠償責任を負うとしています。行政から特定空家等に指定され、指導や勧告を受けていたにもかかわらず放置していた場合は、責任がより重く問われる可能性もあるため注意が必要です。倒壊のおそれがあることを認識しながら対策を取らなかったと判断されないように、早めの管理や修繕、解体の検討が重要です。

空き家を壊して欲しいのですが?

所有者自身が空き家の取り壊しを希望する場合は、行政に代執行を依頼するのではなく、解体業者に直接依頼して解体工事を進めるのが一般的です。地域によっては空き家の解体費用に対する補助金制度を設けている自治体もあるため、市区町村の窓口へ事前に相談するとよいでしょう。一方、危険な空き家について近隣住民が行政に対応を求める場合は、市区町村の空き家対策窓口へ相談する形になります。行政代執行はあくまで所有者が改善に応じない場合の最終手段であり、所有者自身の希望だけで実施されるものではない点は理解しておくべきでしょう。

行政代執行の流れはどのようになっているの?

行政代執行に至るまでの流れは、まず市区町村が倒壊の危険や衛生上の問題がある空き家を「特定空家等」として認定するところから始まります。その後、所有者に対して助言・指導が行われ、改善が見られない場合は勧告、さらに従わない場合は法的な効力を持つ命令へと段階が進みます。命令が出されても所有者が改善に応じない、または連絡が取れないなどの状況が続くと、行政が通知などを行ったうえで解体・撤去を実行します。

行政代執行の対象となる要件は?

行政代執行の対象となるのは、空家法に基づき「特定空家等」に認定された空き家のうち、所有者が助言・指導、勧告、命令といった段階的な措置に応じなかったケースです。特定空家等の認定基準としては、倒壊など保安上危険なおそれがある状態、衛生上有害となるおそれがある状態、適切な管理が行われないことで景観を著しく損なっている状態、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態などが挙げられます。命令を受けても改善されず、かつ他に手段がないと判断された場合に、行政代執行という強制的な措置が取られます。

まとめ

老朽化した空き家は、そのまま放置し続けることで、建物の損壊等で隣家や通行人に危害を加えてしまう可能性もあります。

加えて、空き家特別措置法の施行により、ペナルティを受けたり、行政代執行にて費用負担の請求をされたりするリスクもあります。

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運営団体

株式会社ネクスウィル

2019年1月29日設立。訳あり不動産の買取を行う不動産会社。相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産を買い取り、法的知識や専門知識を以って、再度市場に流通させている。

訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を展開。

経済界(2022年)、日刊ゲンダイ(2022年)、TBSラジオ「BOOST!」(2023年)、夕刊フジ(2023年)などで訳あり不動産について解説している。2024年度ベストベンチャー100選出。

これまでの買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』(代表取締役 丸岡・著)を2024年5月2日に出版。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

坂本 孝文 (司法書士)

昭和55年7月6日静岡県浜松市生まれ。大学から上京し、法政大学の法学部へ進学。
平成18年に司法書士試験に合格。その後、司法書士事務所(法人)に入り債務整理業務を中心に取り扱う。
平成29年に司法書士法人さくら事務所を立ち上げ、相続手続や不動産登記、債務整理業務を手がける。

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