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共有名義での相続登記はしても大丈夫?メリット・デメリットを詳しく解説

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こんにちは。ワケガイ編集部です。

不動産を複数の相続人で共有することになったケースでは、「売却に同意が得られない」「管理の話し合いがまとまらない」といった問題が発生します。その際に対応が必要なのが、共有名義での相続登記です。

共有名義の相続登記とは、相続によって取得した不動産の持分を、各相続人の名義として登記簿に反映させる手続きです。

2024年4月からは相続登記の義務化も始まり、放置していると過料が科されるおそれも出てきました。そこで本記事では、共有名義で相続登記を行うべきか否か、メリットでメリットや手順について詳しく解説します。

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目次

共有名義の相続登記とは?

不動産を相続した際、相続人が複数いれば、その不動産は「共有名義」として扱われることになります。たとえば、共有名義人である父親が亡くなり、残された実家を兄弟3人で相続するという場合、それぞれの相続人は不動産の持分を法定相続分や遺産分割協議に基づいて分け合うことになります。

このような場合には、その持分を登記簿に反映させる手続きが必要です。これが「共有名義の相続登記」です。

相続登記は、名義変更を通じて不動産の所有者を公的に明確にする重要な作業です。もし登記がなされないまま長期間放置されると、誰がその不動産の権利者なのかが外部からわからず、後に売却や担保設定、活用などをしようとする際に支障が出ます。

また、相続人のうちの誰かが亡くなったり、認知症になったりすれば、さらに登記手続きが複雑化することにもなりかねません。特に、共有名義の場合は持分の登記を正確に行っておかないと、将来的に他の相続人との間でトラブルに発展するおそれがあるのです。

2024年4月から相続登記が義務化された影響とは

これまで相続登記は「やっておいたほうがいい」という任意の手続きとされてきました。しかし、2024年4月から施行された法改正により、相続登記は一定の期限内に行わなければならない義務となりました。具体的には、不動産を相続した人は、その取得を知った日から3年以内に登記申請をする必要があります。

(出典:東京法務局「相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~なくそう 所有者不明土地 !~」)

この義務化は、空き家問題や不動産の名義が複雑化することによって取引や管理が困難になるといった社会的課題に対応するために導入されたものです。

今回の改正では、期限内に正当な理由なく登記を怠った場合、10万円以下の過料(行政罰)が科される可能性があります。つまり、これまで曖昧にしてきた「名義変更はとりあえず後で」という考え方が通用しなくなるということです。

 

共有名義の相続登記は誰が行えるのか?

原則として、相続登記はその不動産の持分を取得した本人、つまり相続人自身が行う必要があります。一例を挙げると、親の自宅を兄弟姉妹3人で相続した場合「それぞれが共有者として持分を取得し、共同して登記申請を行う」ことが基本的なかたちです。

この「共同申請」が原則であるとはいえ、実務ではやむを得ない事情から一部の相続人だけで登記を済ませるケースも見られます(例:「他の相続人が海外に居住しており連絡が取れない」「高齢や病気により意思表示が困難」など)。

そのようなときは、委任状を用いた代理申請や、やむを得ず一部の相続人のみでの申請が認められる場合もあります。

しかし、こうした特例的な方法には注意点も多く、他の共有者との関係性が悪化する。あるいは将来的にトラブルが生じる可能性も否めません。共有名義である以上、「誰が申請するか」だけでなく「どのように合意を形成するか」という点も非常に重要となるのです。

共有名義人の片方が死亡した場合の登記手続きはどうなる?

共有名義人の一人が亡くなった場合、その人の持分は法定相続人に承継されるため、新たにその持分部分について相続登記が必要になります。

たとえば、夫婦で共有していた不動産で夫が亡くなった場合、夫の持分は妻や子に相続されます。このとき、妻は自身の持分はそのままでも、亡くなった夫の持分について相続登記を行う必要があるのです。

この登記を行わずに放置していると、将来の売却や名義変更ができなくなるだけでなく、次の相続(数次相続)で権利関係が複雑化するおそれもあるため、できるだけ早く対応しておくべき手続きです。

関連記事:不動産で共有名義人が死亡したら持分はどうなる?

「債権者代位権」により債権者が相続登記することも可能

相続登記は原則として相続人が自ら行うものですが、場合によっては「債権者」がその代わりに登記申請を行える例もあります

それを可能にするのが「債権者代位権」と呼ばれる民法上の制度です。これは、債務者が権利を行使しないことで債権の回収に支障が出るとき、債権者がその権利を代わって行使できるという制度です。

“債権者は、被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない”

引用:民法第423条(債権者代位権)

たとえば、被相続人が多額の借金を残して亡くなり、相続人が不動産の相続登記をせずに放置していたとします。

このままでは不動産が債権の回収に使えません。そこで債権者が「債務者(相続人)は登記を怠っているが、その不動産は本来回収の対象となるべき財産である」として、債務者に代わって相続登記を行うのです。

債権者代位権はあくまで例外的な措置です。すべてのケースで機能するわけではありませんが、相続人が非協力的な場合や登記を怠っている場合に、一定の救済手段となり得るため、認識して行きましょう。

 

共有名義で相続登記する手順

ここからは、共有名義の相続登記を行うための基本的な流れを6つのステップに分けて解説していきます。

  • 手順①:相続人と相続財産を確定する
  • 手順②:遺産分割協議を行う(または法定相続分で登記方針を決める)
  • 手順③:登記に必要な書類を準備する
  • 手順④:登記申請書を作成する
  • 手順⑤:法務局に登記申請を行う
  • 手順⑥:登記完了後に共有者間での管理方針を確認する

それぞれ個別にみていきましょう。

手順①:相続人と相続財産を確定する

まず行うべきは、誰が相続人に該当するのか、そして被相続人がどのような財産を残していたのかを明らかにする作業です。不動産の登記を行うためには、法的に正確な情報に基づいた相続人の確定が不可欠となります。

具体的には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集し、法定相続人を特定します(配偶者・子ども・兄弟姉妹など、誰がどの順位で相続するのかは、民法の定めに従って判断)。

その上で、不動産をはじめとした財産の一覧を作成し、登記簿謄本や固定資産税評価証明書を用いて内容を確認していきます。

手順②:遺産分割協議を行う(または法定相続分で登記方針を決める)

相続人と相続財産が確定したら、不動産の具体的な分け方について話し合います。これを「遺産分割協議」と呼びます。全員の合意が得られれば、その内容に沿って共有持分の割合を決定し、登記へと進められます。

たとえば、被相続人の自宅を子ども3人で相続する場合でも、均等に3分の1ずつとするか、特定の相続人に多めに配分するかは協議次第です。

話し合いの結果は「遺産分割協議書」として文書に残し、全員が署名押印する形で合意形成を行います。

手順③:登記に必要な書類を準備する

登記申請には多くの書類が必要となるため、事前に抜け漏れのないよう確認することが大切です。共有名義の相続登記では、以下のような書類をそろえます。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍一式
  • 相続人全員の戸籍謄本および住民票
  • 遺産分割協議書(協議を行った場合)
  • 不動産の登記簿謄本および固定資産評価証明書
  • 登記申請書

また、登録免許税の納付も必要です。不動産評価額の0.4%を算出し、収入印紙などの形で納付します。これらの準備は不備があると法務局で受理されないため、司法書士などの専門家に相談しながら慎重に進めるのが現実的です。

手順④:登記申請書を作成する

書類が整ったら、登記申請書を作成します。この書類は、法務局に提出する正式な申請文書であり、不動産ごとの情報や相続人の氏名、住所、持分割合などを正確に記載する必要があります。

申請書の記載にあたっては、不動産番号や地番の誤記、持分割合の記載漏れなどに注意が必要です。特に共有名義の場合は、各相続人の持分が登記簿に正確に反映されなければ、後に処分や賃貸、担保設定などで問題が生じることもあります。

法務局の窓口では、申請書の様式見本が提供されているほか、オンラインでのテンプレートも利用できますが、複数人の共有登記は形式も煩雑なため、迷う点がある場合は必ず司法書士に相談しましょう。

手順⑤:法務局に登記申請を行う

登記申請書と関連書類を揃えたら、法務局に提出します。郵送でも可能ですが、不備がある場合も多いので、できる限り、窓口での直接申請を行うと安心です。

提出後、法務局の担当官が内容を審査し、問題がなければ数日から2週間程度で登記が完了します。万が一、添付書類に不足や記載ミスがあれば、補正の通知が届くことがあります。

この場合、指定期間内に修正対応しなければ登記が却下されるおそれがあるため、早めの確認と再提出が必要です。

なお、登記完了後には「登記識別情報通知書(権利証)」が発行され、共有者それぞれに交付されることになります。

手順⑥:登記完了後に共有者間での管理方針を確認する

登記が完了した後も、共有名義の不動産を適切に管理するためには、今後の運用方針を相続人同士で確認しておくことが大切です。

登記を終えただけでは、使用方法や維持管理費の負担割合などが曖昧なままとなり、将来的なトラブルの火種になりかねません。

たとえば「誰が住み続けるのか」「固定資産税は誰が支払うのか」「将来的に売却する予定はあるのか」などをあらかじめ話し合い、可能であれば書面に残しておくと安心です。

共有名義は法的には対等な権利関係ですが、実際の使用や負担には差が生じることが多いため、登記完了後の合意形成も、実務上は極めて重要なプロセスといえるでしょう。

 

共有名義で相続登記するメリット

共有名義での登記にはいくつかのメリットがあり、特に相続人の人数が多いケースや、感情的な対立がある場面では実務的な手段となることも少なくありません。 代表的なものとしては、以下のとおりです。

  • 費用や手間を抑えて不動産を相続できる
  • 遺産分割がまとまらなくても登記だけ先に進められる

次項より、個別にみていきましょう。

費用や手間を抑えて不動産を相続できる

共有名義での相続登記は、法定相続分に従って各相続人の持分をそのまま登記する方法であり、相続人全員の同意が必要となる遺産分割協議を行わずとも進められます。そのため、話し合いのための調整時間や弁護士・司法書士への依頼費用などを抑えられる点が一つの利点です。

また、相続登記の登録免許税は前述のとおり「不動産評価額 × 0.4%」と定められていますが、これは共有名義であっても不動産単位で課税されるため、単独相続と大きな差はありません。

一方で、相続人ごとに持分を記載するため、それぞれの状況に応じて書類の収集や確認ができるという柔軟さもあります。

登記手続き全体としては複雑になりやすいものの、形式的に分割を終えた状態にしなくても登記が進められるという点で、早期に相続を一段落させたい家庭にとって有効な選択肢となります。

関連記事:共有持分の移転登記にかかる費用っていくら?

遺産分割がまとまらなくても登記だけ先に進められる

相続において大きな障壁となりがちなのが、遺産分割協議の合意形成です。相続人が多数いる。あるいは関係が疎遠な場合などでは、協議が長期化したり、意見が対立して平行線をたどることも珍しくありません

そのような状況でも、共有名義での登記ならば、法定相続分に基づいて登記手続きを先に済ませておくことが可能です。

これにより、「誰が相続人か」という事実を登記簿上に反映できるため、不動産の名義が亡くなった方のままになっている状態を解消できます。

もちろん、前述のとおり義務化されているという背景もあります。一方で、共有名義での登記は、分割協議の結果が出る前に最低限の手続きを進めることができ、過料のリスクを回避するという意味でも現実的な方法だといえるでしょう。

 

共有名義で相続登記するデメリット

共有名義による相続登記は、相続人同士で迅速に手続きを進めやすい一方で、後々の管理や処分において複雑な問題を抱える可能性もあります。とりわけ、次のようなリスクが発生します。

  • 不動産の売却や活用に他の共有者の同意が必要になる
  • 将来的にトラブルや対立が生じやすくなる
  • 管理責任や固定資産税の分担が不明確になりやすい

上記デメリットについても、個別に解説します。

不動産の売却や活用に他の共有者の同意が必要になる

共有名義となった不動産を売却したり、賃貸に出すといった運用を行うには、原則としてすべての共有者の同意が必要になります。たとえば、自宅を売却したいと思っても、他の共有者の誰かが反対すれば、それだけで話が前に進まなくなってしまいます。

これは、登記上の持分がたとえ10分の1であっても、原則として共有者全員が等しく権利を有しているためです。活用方法に意見の違いがある場合はもちろん、連絡が取りにくい相続人がいるだけでも手続きが頓挫してしまうことがあります。

特に空き家や古家の管理・処分など、迅速な判断が求められる場面では、共有名義のままでは意思決定の遅延が致命的な問題となりかねません。

関連記事:共有持分も売却できる!4つの方法とトラブル例を解説

将来的にトラブルや対立が生じやすくなる

共有不動産は、相続当初は円満に思えても、年月が経つうちにトラブルへと発展するケースが少なくありません。

よくあるケースとしては「“売却したい派”と“維持したい派”に分かれる」「生活環境や経済状況の違いから、管理や費用分担で揉める」などでしょう。

さらに深刻なのは、相続人の死亡に伴って権利関係が次世代へと引き継がれていくと、所有者の数が増え、話し合いがさらに難しくなる点です。いわゆる“数次相続”が起きると、誰が意思決定に加わるべきかすら曖昧になることがあり、手続きの煩雑さは格段に増します。

このような事態を避けるためには、登記後も共有者間で今後の方針を確認し合い、早期の持分整理や売却を視野に入れることが求められます。

関連記事:土地共有はトラブルの原因!適切な対応方法とは?
関連記事:「ゴミ捨て場の共有持分」でトラブルにならないための対策とは?

管理責任や固定資産税の分担が不明確になりやすい

共有名義の不動産には、当然ながら維持・管理に関する責任が発生します。「建物の修繕」「草木の手入れ」「災害リスクへの対応」なども共有者全員で行う必要がありますが、実際には「誰がどの程度負担するのか」が曖昧になりがちです。

特に問題となるのが、固定資産税の支払いです。税法上は共有者全員が連帯して納税義務を負いますが、納付書は代表者一名にしか届きません。そのため、「自分は使っていないから払わない」といった無責任な態度をとる共有者が現れると、他の相続人が負担を強いられることになります。

こうした問題は、あらかじめ管理契約を結ぶか、口約束ではなく文書で分担を定めておくことで軽減できますが、それでも実務的な煩雑さは避けにくいのが実情です。

関連記事:共有名義の「固定資産税」は誰が払うべき? 滞納した場合や支払いたくない場合はどうなる?

 

共有名義の相続登記をした方がいいケース/問題になるケース

共有名義で相続登記を行うことには、状況に応じた向き・不向きがあります。手続きを早めに済ませておいた方が良い局面もあれば、慎重な判断が求められる場面もあるため、自身の立場や相続人全体の関係性を冷静に見極めることが大切です。

ここでは、「登記を進めておくべき場合」と「かえって問題を生じやすい場合」に分けて、それぞれの背景を解説します。

相続登記した方がいいケース

共有名義であっても、他の相続人との信頼関係があり、協議がスムーズに進んでいる場合は、速やかに相続登記を済ませておいた方がよいでしょう。

とりわけ、今後の売却や賃貸活用を検討している場合には、登記を行っておくことが前提となります。登記がなされていないと、契約行為自体が進められないためです。

また、相続人の中に高齢者が含まれている場合や、相続登記のタイミングで法定相続分に基づく割合(例えば2分の1や3分の1)を明確にしておきたいと考えるときも、早期の対応が望まれます。時間が経つほど、認知症などの健康問題や死亡による再相続(二次相続)が生じやすくなり、権利関係が複雑化する恐れがあるためです。

このようなケースでは、相続人全員で協議のうえ登記を行い、必要に応じて将来的な売却・管理方法についてもあらかじめ確認しておくと、後のトラブルを回避しやすくなります。

<相続登記した方がいいケース例>

  • 相続人同士の関係が良好で協議が進めやすい
  • 不動産の売却・活用を検討している
  • 相続人に高齢者がいて、将来的な再相続が懸念される
  • 持分割合を早めに確定しておきたい

 

相続登記が問題になるケース

一方で、共有者のうちの誰かが非協力的である場合や、相続人同士の間に不信感が根強く残っているような場合には、共有名義での相続登記が新たな火種となることもあります。

たとえば、法定相続分に従ってそれぞれが2分の1ずつ不動産を共有したとしても、その後の不動産の利用や管理、売却の判断には、すべての共有者の合意が必要となります。ところが、そもそも話し合いがうまくいかない関係性であれば、その合意形成自体が困難です。

さらに、不動産の維持費や固定資産税などの費用負担についても意見が割れやすく、支払いの責任があいまいになることで感情的な対立が深まることがあります。登記を済ませてしまったがゆえに、固定化された関係がかえって問題を深刻化させるというケースも少なくありません。

<相続登記が問題になるケース例>

  • 相続人の一部が非協力的で合意形成が難しい
  • 管理や処分に全員の同意が必要となるため手詰まりになりやすい
  • 維持費や税金の分担で対立が起こりやすい
  • 固定された共有関係がかえって関係悪化を招く可能性がある

関連記事:不動産の共有名義はトラブルのもと? 知らないと損する注意点と解消方法を紹介

 

共有者の一部が協力しない場合の対応策

不動産を相続した際、共有者の中に登記や協議に非協力的な相続人がいると、手続きは一気に複雑化します。本来であれば、相続人全員が合意し、登記やその後の管理方針を定めるのが理想ですが、現実には感情的な対立や意思疎通の断絶によって、話し合いが進まないことも少なくありません。

ここからは、共有者の一部が協力を拒んでいる場合でも、登記やその後の手続きを前に進めるための実務的な対応策をご紹介します。

遺産分割調停や審判による解決を目指す

相続人のあいだで遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることで、第三者を交えた解決の場を設けることができます。

この調停では、裁判所の調停委員が間に入り、中立的な立場で意見を調整していきます。協議が膠着状態にある場合でも、法的手続きによって関係を整理し直すきっかけとなることがあります。

仮に調停で合意に至らなかったとしても、最終的には「遺産分割審判」によって、裁判所が法的に分割の内容を決定します。これにより、非協力的な相続人がいても、その同意を得ることなく登記の前提となる権利関係を確定させることが可能になります。

関連記事:遺産分割協議書とは?共有持分を遺言書なしで相続する場合に必要な理由

「法定相続分」での暫定登記を行う

遺産分割協議がまとまらない場合でも、相続登記自体をまったく進められないわけではありません。

このようなときには、相続人が各自の「法定相続分」に基づいて、単独で登記を申請するという選択肢があります。これを暫定的な相続登記として位置づけ、後日、正式な遺産分割が決まった段階で修正を行うことも可能です。

兄弟2人が親の不動産を相続したとします。その際、協議が進まなかったとしても、各自が2分の1ずつの持分を登記することができます。この方法であれば、所有権の所在を明確にすることができ、不動産の維持管理や税金の負担に関しても、相続人間での整理がしやすくなります。

ただし、この段階では不動産の処分(売却など)には依然として共有者全員の同意が必要であるため、問題の根本的な解決とはいえません。それでも、法的な手続きを少しでも進めておきたいときには、有効な一手です。

 

共有名義の相続登記によるトラブルを避ける方法

ここまでみてきたとおり、不動産を相続する際、共有名義で登記すると将来的なトラブルの火種になり得ます。こうしたトラブルを避ける上では、以下のような対策が有効です。

  • 遺言書で遺産分割の内容を指定しておく
  • 相続放棄を行う
  • 生前贈与をしておく
  • 管理・費用負担のルールを明文化する

それぞれ個別に解説します。

遺言書で遺産分割の内容を指定しておく

生前に被相続人が遺言書を作成しておけば、相続発生後の混乱を大きく減らせます。特に、不動産の帰属先を明記した遺言があると、共有名義を避けて単独名義での相続登記が可能になるため、後のトラブルを未然に防ぎやすくなります。

遺言には自筆証書遺言と公正証書遺言がありますが、確実性の高い公正証書遺言の活用が推奨されます。相続人同士の関係が複雑な場合には、専門家の支援を受けて内容を練るのが望ましいでしょう。

関連記事:共有持分を遺言書で相続させることは可能?効力や手続きの流れを詳しく紹介

相続放棄を行う

相続人が相続放棄をすることで、その人は初めから相続人でなかったものとみなされます。発生し得るケースとして、遠方に住んでいて不動産管理に関われない相続人や、相続に伴う責任を負いたくない人がいる場合、この制度を利用することで共有関係の複雑化を防ぐことが可能です。

ただし、放棄には家庭裁判所への申述が必要であり、原則として相続開始から3か月以内に手続きを行う必要があります。

関連記事:共有持分の相続放棄って?具体的な手順を徹底解説!

生前贈与をしておく

相続が発生する前に、不動産を「生前贈与」を実施しておけば、そもそも相続による共有名義を避けることができます。贈与は単独名義での登記が前提になるため、相続後の利害関係者の増加を防ぎ、管理や処分をしやすい状況をつくることができます。

ただし、贈与税が発生する可能性があるため、制度の理解と計画的な運用が欠かせません。

関連記事:共有持分を生前贈与すると「贈与税」がかかる?

管理・費用負担のルールを明文化する

やむを得ず共有名義で登記する場合でも、将来のトラブルを防ぐために「管理に関するルール」や「費用負担の割合」などを文書化しておくことが有効です。共有者間での取り決めを合意書として残しておけば、万一意見が食い違ったときの指針になります。

このようなルールは、簡単な覚書レベルでも役立ちますが、内容に法的効力を持たせるには契約書として整えるのが理想的です。

 

相続登記後に相続登記を解消する方法

共有名義の不動産を相続したあと、時間が経過するにつれて共有状態を維持するデメリットが顕在化してくることもあります。具体例を挙げると、管理や維持費の負担が偏ったり、将来の相続で持分がさらに細分化されたりといった問題です。

このような事態を回避するためには、相続登記が済んだ後であっても、できるだけ早い段階で「共有名義を解消する」必要があります。

共有名義の解消方法としては、以下のような選択肢が挙げられます。

解消方法内容の概要
①:共有持分の「売却」他の共有者や第三者に持分を売って共有状態を解消する方法。比較的よく使われる。
②:無償で持分を渡す「贈与」金銭を受け取らずに持分を譲る方法。贈与税がかかる可能性がある。
③:共有者間での「譲渡」他の共有者に持分を移して、名義をまとめる方法。有償・無償どちらでも可能。
④:共有持分の「放棄」自分の持分を手放して、他の共有者に引き継ぐ方法。登記の手続きが必要。
⑤:共有者同士での「持分交換」共有者同士で持分を交換して整理する方法。不動産が複数ある場合などに使われる。
⑥:土地を物理的に分ける「分筆」土地を複数に分けて、それぞれを単独名義にする方法。測量と登記が必要。

これらの手段は、それぞれメリット・デメリットがあるため、現状や今後の見通しに応じて適切な方法を選ぶことが求められます。専門家のサポートを受けつつ、慎重に計画を立てましょう。

関連記事:共有名義を解消する6つの方法!共有者間でのトラブルを避けつつ実行する手順

 

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まとめ

共有名義で相続登記を行う場合は、関係者が多くなる分、早めの準備と合意形成が重要になります。手続きを後回しにしてしまうと、共有者の一部が亡くなったり協力を拒否したりすることで、問題が複雑化してしまいます。

まずは法定相続分を参照するか、遺産分割協議によって持分を明確にし、必要書類をそろえて登記を済ませておく必要があります。どうしても話し合いが難しい場合には、調停や審判による解決も検討できます。

また、将来的なトラブルを防ぐには、共有名義を解消することも有効です。持分の売却や分筆などの方法も視野に入れ、状況に応じて柔軟に対応しましょう。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

松本 大介(司法書士)

得意分野:相続全般、遺言書作成、不動産売却
お客様に「君にまかせてよかった」「君だから依頼したんだよ」そう言っていただけることを目標に、この仕事に誇りを持って取り組んでおり、お客様の立場に寄り添い考えるよう心がけています。

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