共有持分になっている土地を贈与する場合に知っておくべき税金関係の基礎知識

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土地の相続対策や資産管理を考える際、共有持分の贈与が選択肢として挙がることがあります。

しかし、共有者間での意見の相違や将来の土地活用に制限がかかるなどの問題が発生する可能性が懸念されます。

その際に注目すべきなのが土地の共有持分贈与です。土地の共有持分贈与とは、土地の一部の所有権を他人に無償で譲渡する行為です。適切に行えば相続税対策になる一方で、複雑な税務処理や共有者間のトラブルリスクもあります。

そこで本稿では、土地の共有持分贈与について、その仕組みや手順、税金の扱い、メリット・デメリット、注意点などを詳しく解説します。

土地の贈与とは

土地の贈与とは、土地の所有権を無償で相手に移し、贈与契約や登記、贈与税の手続きが関係することを示す図

土地の贈与では、土地の所有権を無償で受贈者へ移し、贈与契約書の作成や登記、贈与税の申告などの手続きを行います。

土地の贈与は、所有者が無償で土地の所有権を他人に譲渡する行為を指します。

贈与にはさまざまな形態がありますが、最も一般的なのは親から子への贈与です。

贈与を行う際は、贈与契約書の作成や登記手続きなど、法的な手続きが必要となります。また、贈与税の申告も忘れてはいけません。贈与税は、贈与を受けた人が支払う税金で、贈与された財産の価値に応じて課税されます。

また、贈与にはさまざまなメリットがあります。

例えば、生前に財産を分散させることで相続税の負担の軽減が可能です。また、子供の住宅取得資金として活用することも可能です。

一方で、贈与後は贈与者の財産が減少するため、老後の生活設計には十分な注意が必要です。

土地が共有持分の場合、贈与は可能?

土地が共有持分の場合でも、自分の持分だけを相手に贈与できることを示した図

共有名義の土地でも、自分が所有する共有持分だけを他の人へ贈与できます。

土地が共有持分の場合でも、贈与は可能です。

共有持分とは、複数の人が1つの土地を共同で所有している状態を指します。この場合、各所有者は土地の一部分ではなく、全体に対する権利の一部(持分)を所有しています。

共有持分の贈与を行う場合、自分の持分の全部または一部を贈与することができます。例えば、父親が所有する土地の2分の1の持分を子供に贈与するといったケースが考えられます。この場合、贈与後は父親と子供が共有者となります。

ただし、共有持分の贈与には、いくつかの注意点があります。まず、他の共有者の同意は法律上必要ありませんが、円滑な贈与のためには事前に相談しておくことが大切です。また、贈与後は土地の管理や処分について共有者間で協議する必要が生じるため、将来的な土地の利用計画についても考慮しておくべきでしょう

なお、贈与税の計算は、贈与する持分の割合に応じて行われます。例えば、固定資産税評価額が1,000万円の土地の2分の1の持分を贈与する場合、500万円分が課税対象となります。ただし、具体的な税額は贈与を受ける人の状況や適用される特例によって変わってきますので、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

共有持分になっている土地を贈与するメリット・デメリット

共有持分になっている土地の贈与には、相続対策や資産管理に活用できるメリットがある一方、土地の管理や処分が複雑になるなどのデメリットもあります。

持分を生前に移転できる反面、贈与後は共有者の構成が変わり、土地の利用や売却について共有者間で調整が必要になるためです。

例えば、将来の相続に備えて持分を家族へ移転できる一方、共有者が増えることで土地の活用について意見がまとまりにくくなる場合があります。

そのため、共有持分を贈与する際は、メリットとデメリットの両方を確認したうえで検討することが大切です。

共有持分贈与のメリット

共有持分贈与の最大のメリットは、相続税対策として効果がある点です。

土地の一部を生前に贈与することで、将来の相続財産を減らし、相続税の負担を軽減できる可能性があります特に、贈与税の基礎控除(年間110万円)を活用した計画的な贈与を行うことで、長期的な税負担の最適化を図れます。

さらに、共有持分の贈与は、家族間での資産の分散にも役立ちます。子供たちに均等に持分を贈与することで、将来の相続時のトラブルを未然に防げるでしょう。

また、贈与を受けた側にとっては、若いうちから資産を保有することで、経済的な自立や将来設計がしやすくなるという利点もあります。

共有持分贈与のデメリット

共有持分贈与の最も大きな問題は、土地の管理や処分に関する意思決定が複雑になることです。

共有者が増えれば増えるほど、土地の利用や売却に関する合意形成が困難になる可能性があります。特に、共有者間で意見が対立した場合、土地の有効活用ができないケースもあるでしょう。

また、贈与者側のリスクも考慮する必要もあります。持分を贈与することで、自身の財産が減少し、老後の生活設計に影響を与える可能性が懸念されます。

特に、将来的に介護が必要になった場合など、予期せぬ出費に対応できなくなるリスクがあるでしょう。

土地の共有持分贈与の具体的な手順

土地の共有持分贈与の具体的な手順は、以下のとおりです。

  • 手順①:贈与契約書の作成
  • 手順②:登記手続き
  • 手順③:贈与税の申告と納付

それぞれ個別にみていきましょう。

手順①:贈与契約書の作成

土地の共有持分を贈与する場合、まず贈与契約書を作成します。

贈与契約書は、贈与の意思と内容を明確に示す重要な文書です。書類には、贈与者と受贈者の氏名・住所、贈与する土地の所在地や面積、贈与する持分の割合などを明記します。また、贈与の時期や条件がある場合はそれらも記載します。

契約書の作成にあたっては、法的な効力を持たせるために、できるだけ具体的かつ明確な表現を用いることが大切です。例えば、「父親が所有する〇〇県〇〇市〇〇町123番地の土地(総面積500㎡)のうち、2分の1の持分を長男に贈与する」といった具体的な内容を記載します。

なお、贈与契約書には印紙税が課される場合があります。不動産の贈与契約書の場合、贈与する不動産の固定資産税評価額に応じて印紙税額が決まりますので、注意が必要です。

手順②:登記手続き

贈与契約が成立したら、次は登記手続を法務局で行います。

必要書類としては、贈与契約書、登記申請書、贈与者の印鑑証明書、土地の全部事項証明書などが必要です。また、登録免許税も納付しなければなりません。

共有持分の贈与で登記をする場合、いくつかの注意点があります。例えば、「贈与する持分の割合を正確に記載する」「他の共有者の持分に変更がないことを確認する」などです。これらの手続きは複雑で、専門的な知識が必要となるため、司法書士に依頼することをおすすめします。

登記が完了すると、新しい権利関係を反映した登記簿が作成されます。この時点で、法的に贈与が完了したことになります。

手順③:贈与税の申告と納付

贈与税の申告条件を満たしてる場合は税務署に申告し、納税が必要なら納付しましょう。

土地の贈与で「確定申告」と呼ばれることがありますが、正確には贈与税の申告です。原則として、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに受贈者が申告します。土地を贈与された場合は、贈与税の申告書に加えて「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」を作成して提出します。書面で申告するときは、マイナンバーに関する本人確認書類も必要です。

配偶者控除や相続時精算課税などを利用する場合は、戸籍謄本など制度ごとの添付書類が追加されます。相続時精算課税を選択する場合には、申告内容に応じて申告書第2表や相続時精算課税選択届出書も使用します。申告書は国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成でき、e-Taxによる提出にも対応しています。

土地の贈与税申告で必要な書類は適用する制度によって異なるため、自分が利用する課税方式や特例を先に確認することが大切です。

土地の贈与にかかる税金の種類

土地の贈与にかかる贈与税・不動産取得税・登録免許税の3種類を解説した図

土地を贈与すると、贈与税・不動産取得税・登録免許税の3つの税金が関係します。

土地の贈与には、以下の税金が関係します。

  • 贈与税
  • 不動産取得税
  • 登録免許税

これらの税金を正しく理解し、適切に対応することは、円滑な贈与手続きを行う上で非常に重要です。ここでは、土地の贈与に関連する主な税金について、その概要と計算方法を詳しく解説します。

贈与税

贈与税は、贈与を受けた人(受贈者)が納付する税金です。

この税金は、贈与された財産の価値に応じて課税されます。土地の贈与の場合、その評価額が課税対象となります。

贈与税の税額は、贈与者と受贈者の関係などによって一般税率と特例税率のどちらを使用するかが変わります。例えば、1年間に評価額2,000万円の土地だけを贈与されて暦年課税を適用する場合、基礎控除110万円を差し引いた課税価格は1,890万円です。一般税率を適用する場合は「1,890万円×50%-250万円」となり、贈与税額は695万円となります。

一方、18歳以上の人が父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受けて特例税率を適用できる場合は、「1,890万円×45%-265万円」で585万5,000円です。同じ2,000万円の土地でも適用する税率によって税額は異なります。贈与税を計算するときは土地の評価額だけで判断せず、贈与者との関係や受贈者の年齢も確認することが必要です。

ただし、配偶者控除相続時精算課税制度など、状況に応じて適用できる特例もあります。これらの特例を利用することで、贈与税の負担を軽減できる場合があるため、専門家に相談しながら最適な方法を選択しましょう。

不動産取得税

不動産取得税は、不動産を取得した際に課される地方税です。

通常、売買や交換で不動産を取得した場合だけでなく、贈与による取得の場合も課税対象となります。

税率は、原則として固定資産税評価額の3%(住宅用土地の場合は1.5%)です。ただし、都道府県によって税率が異なる場合も存在します。
(参考:総務省「不動産取得税」)

また、一定の条件を満たす場合、課税標準の特例措置が適用され、税額が軽減されることがあります。

例えば、固定資産税評価額が1,500万円の土地を贈与で取得した場合、不動産取得税は45万円(1,500万円 × 3%)となります。ただし、これは住宅用地でない場合の計算例です。住宅用地の場合は、さらに軽減される可能性があります。

登録免許税

登録免許税は、不動産の権利に関する登記を行う際に課される国税です。

土地を贈与して所有権移転登記を行う場合は、原則として不動産の価額に2%の税率が適用されます。相続による所有権移転登記に適用される0.4%とは税率が異なるため注意が必要です。

共有持分の一部を贈与するときは、移転する持分に対応する不動産の価額を基に登録免許税を計算します。例えば、固定資産課税台帳の価格が2,000万円の土地について2分の1の持分を贈与する場合、課税標準を1,000万円とすると登録免許税は20万円です。土地の贈与では贈与税だけでなく、所有権移転登記に伴う登録免許税も費用として見込んでおく必要があります。

(参考:国税庁「登録免許税の税額表」)

土地の共有持分贈与で利用できる節税のための制度

土地の共有持分贈与で利用できる配偶者控除・暦年贈与・相続時精算課税を解説した図

共有持分の贈与では、配偶者控除・暦年贈与・相続時精算課税などを利用できる場合があります。

土地の共有持分贈与で利用できる節税のための主な制度は、以下の3つです。

  • 配偶者控除
  • 暦年贈与
  • 相続時精算課税制度

それでは、各制度の内容をみていきましょう。

配偶者控除

配偶者控除は、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産等を贈与する場合に適用できる特例です。

この制度を利用すると、最大2,000万円まで贈与税が非課税となります。

例えば、夫が妻に対して評価額1,500万円の土地の共有持分を贈与する場合、通常であれば約197万円の贈与税が課されますが、この制度を利用すれば税金がかかりません。

ただし、この制度には いくつかの条件があります。贈与を受けた配偶者がその不動産に住み続けることや、過去にこの制度を利用していないことなどが要件となります。また、2,000万円を超える部分については通常の贈与税が課税されるため、贈与額の設定には注意が必要です。
(参考:国税庁「配偶者控除」)

暦年贈与

暦年贈与は、毎年の贈与税の基礎控除額110万円を活用する方法です。

この制度を利用すれば、毎年110万円までの贈与であれば贈与税が課税されません。

土地の共有持分贈与の場合、例えば5年間で550万円分の持分を贈与するといった形で活用できます。この方法は、長期的な視点で計画的に資産を移転したい場合に適しています。

暦年贈与のメリットは、贈与税の累進税率を避けられる点です。一度に大きな額を贈与するよりも、複数年に分けて贈与することで、全体的な税負担を軽減できる可能性があります。ただし、この方法は時間がかかるため、急いで資産を移転したい場合には不向きです。
(参考:国税庁「贈与税がかかる場合」)

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、一定の要件を満たす親や祖父母から子や孫などへの贈与で選択できる制度です。

原則として、贈与者は贈与年の1月1日時点で60歳以上、受贈者は18歳以上の推定相続人または孫などであれば選択できます。2024年1月以降の贈与では、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が設けられました。さらに2,500万円の特別控除を利用できますが、特別控除は複数年を通じた限度額である点に注意が必要です。

基礎控除と特別控除を差し引いて残った金額には、一律20%の贈与税が課されます。一度この制度を選択すると、同じ贈与者から受けるその後の贈与について暦年課税へ戻すことはできません。また、贈与者が亡くなった際には一定の贈与財産を相続財産に加えて相続税が計算されます。土地の共有持分を贈与するときは、贈与時だけでなく将来の相続まで含めて利用を検討しましょう。

土地の贈与の確定申告に必要な書類についてよくある質問

土地の贈与の確定申告に必要な書類についてよくある質問は、以下のとおりです。

  • 土地の贈与に必要な書類は?
  • 贈与税の確定申告はe-Taxでもできる?
  • 贈与税の申告書はどこでもらえる?

それでは、それぞれの質問とその回答を紹介します。

土地の贈与に必要な書類は?

土地の贈与では、贈与契約書のほか、贈与税の申告書(第1表)、土地の評価額を確認するための登記事項証明書または固定資産税評価証明書、マイナンバー確認書類が基本的な必要書類となります。申告書に不動産番号を記載すれば登記事項証明書の添付を省略できる場合があります。相続時精算課税制度や配偶者控除など特例を使う場合は、戸籍謄本など贈与者との関係を証明する書類も別途必要になるのが一般的です。

贈与税の確定申告はe-Taxでもできる?

贈与税の申告は書面での提出のほか、国税庁の「贈与税の申告書作成コーナー」を利用してe-Taxによるオンライン申告も可能です。マイナンバーカードとICカードリーダライタまたは対応スマートフォンがあれば、自宅からでも申告書の作成から送信までを完結できます。ただし登記事項証明書など一部の添付書類は別途郵送や持参、あるいはイメージデータでの送信が必要になる場合があります。事前にマイナポータルとの連携設定を済ませておくとスムーズに手続きが進みます。

贈与税の申告書はどこでもらえる?

贈与税の申告書は、最寄りの税務署の窓口で受け取れるほか、国税庁のホームページからダウンロードして印刷できます。国税庁サイトの「贈与税の申告書作成コーナー」を使えば、画面の案内に沿って金額などを入力するだけで申告書を自動作成でき、そのまま印刷して郵送するか、e-Taxを利用してオンラインで送信できます。用紙の様式は年分によって変わることがあるため、申告する対象年分に対応した最新版を使用するよう注意しましょう。

まとめ

土地の共有持分贈与は、相続対策や資産管理の有効な手段となり得ますが、同時にさまざまな課題も内包しています。

税務面では贈与税や譲渡所得税の複雑な計算が必要となり、法律面では共有者間の意見調整や将来の土地活用に関する制限が生じる可能性があります。

また、一度行った贈与の取り消しは困難であるため、慎重な検討が不可欠です。これらの点を踏まえ、共有持分贈与を検討する際は、自身の状況や将来の計画を十分に考慮し、適切な割合や時期を選択することが重要です。

税理士や弁護士などの専門家に相談し、総合的な判断のもとで決定しましょう。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸(宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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