共有持分【法律・税金】

固定資産税を支払わない共有者がいる場合、どのように対処したらいい?

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共有名義の不動産を所有している場合、固定資産税の支払いをめぐって共有者間でトラブルが発生することがあります。特に、共有者が支払いを拒否したり、死亡、行方不明、認知症などの状況に陥ったりすると、問題は複雑化します。

このような事態に対処するためには、共有持分における固定資産税の取り扱いについて正しく理解することが重要です。共有持分とは、複数人で1つの不動産を所有する際の各人の所有権の割合を指します。

本記事では、共有持分における固定資産税の支払い義務や、トラブル発生時の対処法、予防策について論考します。

そもそも共有持分とは

共有持分は、複数の人が1つの不動産を共同で所有する際の、各人の所有権の割合を指します。例えば、兄弟で親の家を相続した場合や、夫婦で住宅を購入した際に発生することが多多々あります。

この制度により、1つの不動産を複数人で所有することが可能となりますが、同時にさまざまな問題も生じる可能性が懸念されます。

共有持分は、登記簿に記載される持分割合によって明確に定められます。例えば、AさんとBさんが50%ずつの割合で所有している場合、登記簿には「A:2分の1」「B:2分の1」と記載されます。この割合に基づいて、不動産の管理や処分に関する権利や責任が決定されるのです。

しかし、共有持分があることで、不動産の売却や改築などの際に全員の同意が必要となり、意思決定が難しくなることがあります。また、固定資産税の支払いや修繕費の負担など、金銭的な問題も発生しやすくなります。

そのため、共有持分を持つ際は、他の共有者との良好な関係維持と、明確なルール作りが重要となるでしょう。

共有持分における固定資産税の連帯納付義務とは

共有持分を持つ不動産の固定資産税には、連帯納付義務が課せられています。これは、地方税法第10条の2第1項に基づいて定められた制度です。連帯納付義務とは、共有者全員が固定資産税の全額について納税の責任を負うことを意味します。

この制度の下では、たとえ自分の持分が小さくても、他の共有者が支払わない場合、残りの全額を支払う義務が生じます。

例えば、AさんとBさんが50%ずつ所有する不動産で、固定資産税が100万円かかる場合、本来はそれぞれ50万円ずつ支払うべきです。

しかし、Bさんが支払わない場合、Aさんは100万円全額を支払わなければならない可能性があるのです。

このような仕組みは、税金の確実な徴収を目的としています。しかし、共有者間でトラブルが発生するリスクも高くなります。そのため、共有者間で事前に固定資産税の支払いについて取り決めを行い、誰かが支払わない場合の対処方法も決めておくことが望ましいでしょう。

固定資産税の納付代表者制度

固定資産税の納付に関しては、納付代表者制度が設けられています。この制度では、共有者の中から一人が代表者として選ばれ、その代表者宛てに納税通知書が送付されます。代表者は、全共有者分の固定資産税を取りまとめて納付する役割を担います。

納付代表者の選定方法は自治体によって異なりますが、一般的には以下のような基準で決められます。

  • 共有者の中で最も持分割合が大きい人
  • その自治体に住民登録している人
  • 不動産を実際に使用している人

ただし、この制度は納税の便宜を図るためのものであり、納付代表者のみが納税義務を負うわけではありません。あくまでも、全共有者が連帯して納税義務を負っていることに変わりはありません。

納付代表者制度を円滑に運用するためには、共有者間での信頼関係と明確なルール作りが不可欠です。代表者が支払いを怠った場合の対応や、各共有者からの徴収方法なども事前に決めておくことで、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。

共有者が固定資産税を払わない場合の対処法

もし、共有者のなかに固定資産税を支払わない人がいた場合、以下のような対応をとりましょう。

  • 求償権の行使で立替金を回収する
  • 内容証明郵便での請求を行う
  • 共有持分買取権を行使する

それぞれ個別に解説します。

求償権の行使で立替金を回収する

共有者の一人が他の共有者の分も含めて固定資産税を立て替えて支払った場合、その立替分を回収する権利を「求償権」と呼びます。この権利を行使することで、支払いを拒否した共有者から立替金を取り戻すことが可能です。

求償権の行使は、まず非公式な形で始めるのが一般的。電話や対面での説明、支払い要請などから始めましょう。

この際、固定資産税の納付書や領収書のコピーなど、立替払いの証拠を示すことが重要です。また、共有持分の割合に応じた正確な金額を請求することも忘れずに。

もし非公式な要請で支払いがなされない場合は、より公式な手段に移行する必要があります。

例えば、内容証明郵便での請求や、弁護士を通じての交渉などが考えられます。最終的には訴訟も選択肢の1つとなりますが、その前にさまざまな手段を尽くすことが望ましいでしょう。

内容証明郵便での請求を行う

内容証明郵便は、郵便局が文書の内容を証明する制度で、法的な手続きの前段階として有効です。

支払いを拒否する共有者に対して、固定資産税の立替分の支払いを求める内容証明郵便を送ることで、請求の事実を公的に残すことができます。

内容証明郵便には、以下の内容を明確に記載する必要があります。

  • 立替払いの事実と金額
  • 支払期限
  • 支払わない場合の法的措置の可能性

この方法は、相手に対して請求の真剣さを示すとともに、後の法的手続きの際の証拠としても活用できます。ただし、内容証明郵便の作成には正確な表現と法的知識が必要なため、弁護士に相談するのも一案です。

共有持分買取権を行使する

共有持分買取権は、民法第253条第2項に規定されている権利です。これにより、共有者の一人が1年以上にわたって共有物の負担を果たさない場合、他の共有者がその持分を強制的に買い取りを行えます

この権利を行使するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 共有者が1年以上負担を果たしていないこと
  • 相当の対価(適正な市場価格)を支払うこと

共有持分買取権の行使は、問題のある共有者を排除し、不動産の管理を円滑にする有効な手段です。

ただし、この権利の行使には法的な手続きが必要で、裁判所の介入が必要になる場合もあります。また、買取りのための資金も必要となるため、慎重に検討する必要があるでしょう。

共有者の状況別対応策

共有不動産の固定資産税において、共有者の一部が支払いを拒否するケースは珍しくありません。例えば、以下のような状況です。

  • ケース①:共有者が死亡した場合の対応
  • ケース②:共有者が行方不明の場合の対応
  • ケース③:共有者が認知症の場合の対応

各ケースにおける対処法を、個別にみていきましょう。

ケース①:共有者が死亡した場合の対応

共有者が死亡した場合、その持分は相続人に引き継がれます。この場合の対応として、まず相続人を特定することが重要です。戸籍謄本を取得し、法定相続人を確認しましょう。

相続人が確定したら、以下の手順で対応します。

  • 相続人に対して、共有不動産の存在と固定資産税の支払い義務について通知。
  • 相続人との間で、今後の不動産管理や固定資産税の支払い方法について協議する。
  • 必要に応じて、相続人の名義に登記を変更する。

相続人が相続放棄をする可能性もあるため、その場合の対応も考慮に入れておく必要があります。相続放棄がなされた場合、次順位の相続人に権利が移ります。

場合によっては、相続人全員で遺産分割協議を行い、共有不動産の帰属を決定することも考えられます。この過程で、共有関係を解消し、単独所有にする可能性も検討できるでしょう。

ケース②:共有者が行方不明の場合の対応

共有者が行方不明になった場合、不在者財産管理人制度を利用することが有効です。この制度は、行方不明者の財産を管理するために、家庭裁判所が選任した管理人が財産管理を行うもの。

不在者財産管理人制度を利用する手順は以下のとおりです。

  • 手順①:利害関係人(他の共有者など)が家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てを行う。
  • 手順②:裁判所が審査を行い、適切な人物を財産管理人として選任する。
  • 手順③:選任された管理人が、不在者に代わって財産管理(固定資産税の支払いを含む)を行う。

この制度を利用することで、行方不明の共有者の持分に関する問題を適切に処理することができます。ただし、手続きには一定の費用と時間がかかるため、事前に弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

ケース③:共有者が認知症の場合の対応

共有者が認知症になった場合、成年後見制度の利用を検討します。成年後見制度は、判断能力が不十分な人の権利を守り、生活を支援する制度です。

成年後見制度の利用手順は以下のとおり。

  • 手順①:家庭裁判所に成年後見開始の審判を申し立てる。
  • 手順②:裁判所が本人の判断能力を審査し、適切な後見人を選任する。
  • 手順③:選任された後見人が、本人に代わって財産管理(固定資産税の支払いを含む)や身上監護を行う。

成年後見人は、本人の利益を考慮しながら共有不動産の管理に関する判断を行います。ただし、不動産の売却などの重要な決定には、家庭裁判所の許可が必要となる場合があります。

認知症の程度によっては、任意後見制度の利用も考えられます。これは、判断能力があるうちに、将来の認知症に備えて後見人を指定しておく制度です。

固定資産税に関する共有者同士のトラブル防止策

共有不動産における固定資産税の支払いは、しばしば共有者間のトラブルの種となります。

こうしたトラブルを未然に防ぐためには、以下のような対応を行っておく必要があります。

  • 事前に共有者間で取り決めを行なっておく
  • 共有名義の解消を検討する

次項より、詳しく解説します。

事前に共有者間で取り決めを行なっておく

共有不動産の固定資産税に関するトラブルを防ぐ最も効果的な方法は、事前に共有者間で明確な取り決めを行うことです。この取り決めは、できるだけ書面で作成し、全ての共有者が合意したうえで署名することが望ましいでしょう。

取り決めに含めるべき主な項目は以下のとおりです。

  • 固定資産税の負担割合(通常は持分割合に応じる)
  • 支払いの方法(誰がどのように集金し、納付するか)
  • 支払い期限
  • 共有者が支払いを怠った場合の対応策
  • 固定資産税額の変更があった場合の対応

特に、共有者が支払いを怠った場合の対応策については、具体的に定めておくことが重要です。例えば、「支払いを怠った共有者の持分を他の共有者が買い取る権利を有する」といった条項を入れることで、将来的なトラブルを防ぐことができます。

また、定期的に共有者間で会合を持ち、不動産の管理状況や固定資産税の支払い状況を確認することも有効です。こうした機会を通じて、問題が大きくなる前に対処することが可能となります。

共有名義の解消を検討する

共有名義に起因するトラブルを根本的に解決するには、共有名義そのものを解消することを検討する価値があります。

共有名義の解消方法には、主に以下のようなものです。

  • ①:共有者の一人が他の共有者の持分を買い取る。
  • ②:共有不動産を第三者に売却し、売却代金を持分に応じて分配する。
  • ③:共有物分割請求を行い、裁判所の判断で共有関係を解消する。

これらの方法はそれぞれメリットとデメリットがありますが、共有者間で合意が得られれば、①や②の方法がスムーズに進むでしょう。

しかし、合意が得られない場合は、3の共有物分割請求を検討することになります。

共有名義の解消を検討する際は、税金や登記費用などの諸経費も考慮に入れる必要があります。また、共有不動産に抵当権が設定されている場合は、金融機関との調整も必要となるため、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

素早く手放したい場合は買取専門業者にも相談しよう

共有不動産に関するトラブルに疲れ、素早く手放したいと考える方もいるでしょう。そのような場合、買取専門業者への相談が有効な選択肢となります。

買取専門業者は、共有持分や問題を抱えた不動産の取り扱いに慣れています。彼らは複雑な権利関係や法的問題を理解し、迅速に対応することができます。

また、一般の不動産市場では売却が難しい物件でも、適切な評価を行い、買取を検討してくれる可能性があります。買取専門業者を利用するメリットは以下のとおりです。

  • 迅速な売却が可能
  • 複雑な権利関係や法的問題にも対応
  • 仲介手数料が不要
  • 売却後の面倒な手続きを業者が担当

ただし、買取価格が市場価格よりも低くなる可能性があることは念頭に置いておく必要があります。これは、業者が負うリスクや迅速な対応のコストを反映したものです。

買取専門業者を選ぶ際は、実績や評判を十分に調査し、複数の業者から見積もりを取ることをおすすめします。また、契約内容をしっかりと確認し、不明な点があれば遠慮なく質問することが大切です。

まとめ

共有持分における固定資産税の問題は、単なる金銭的なトラブルにとどまらず、共有者間の関係性にも大きな影響を与える可能性があります。そのため、事前の取り決めや定期的なコミュニケーションを通じて、問題の発生を未然に防ぐことが重要です。

また、すでにトラブルが発生している場合や、共有名義そのものを解消したい場合は、法的な知識や専門的なアプローチが必要となることがあります。

共有持分に関する問題は複雑で、一人で解決するのは困難な場合が多いため、状況に応じて弁護士や司法書士、不動産の専門家に相談することをおすすめします。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸(宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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