法律・税金

共有物分割請求は拒否できる?請求を受けた場合の適切な対応方法を紹介

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こんにちは。ワケガイ編集部です。

相続で共有不動産を引き継いだものの、共有者同士で意見が合わないケースでは、売却や維持管理が進まず、生活に支障が出るといった問題が発生します。その際に検討されるのが共有物分割請求です。

共有物分割請求とは、共有状態を解消するために、共有者の一人が家庭裁判所に対して分割を求める制度です。共有名義が続くほど管理負担やトラブルのリスクが大きくなるため、制度の仕組みを理解しておく必要があります。

そこで本記事では、そんな共有物分割請求を受けた際に「拒否」できるのかどうか、できない場合はどう対応すればいいのかを解説します

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目次

共有物分割請求とは

複数人でひとつの不動産を所有していると、売却やリフォーム、賃貸などの場面で意思決定が難航しやすくなります。こうした共有状態を終わらせるために、民法では「共有物分割請求」という手続きが認められています。

相続をきっかけに共有になったものの利用する人が偏っていたり、共有者同士の関係が悪化して交渉が進まない場合、誰かがこの制度を利用して共有状態を解消しようとすることがよくあります。

共有のまま放置すると、時間が経つほど権利関係が複雑になり、手続きが進みにくい状況も生まれます。

関連記事:共有物分割訴訟とは?内容や手続き方法を詳しく解説

分割の方法は3つある

まず、共有物分割の方法には次の三つがあります。

  • 現物分割:土地や建物を物理的に分ける方法
  • 代償分割:一方の共有者が他方の持分を買い取る方法
  • 換価分割(競売分割):不動産を売却し、代金を分ける方法

現物分割は最もイメージしやすいものの、分筆が可能な土地は限られており、既に住宅が建っている狭小地では現実的に利用できないことが多いのが実情です。一方、代償分割は一人が持分を買い取る形で共有状態を解消するやり方で、生活環境を維持しながら整理できる点から家庭裁判所でも選択されやすい方法です。

換価分割は、裁判所の手続を通して不動産を売却し、得られた代金を持分割合に応じて配分する方法ですが、市場価格より低くなる例が多く、共有者にとって不利益が大きくなりがちです。そのため、当事者間で話し合いが可能な状況であれば、競売に踏み切る前に代償分割や任意売却など、より柔軟な手段を検討するのが一般的です。

共有物分割禁止特約とは?

共有者全員が合意して「一定期間は共有物を分割しない」と取り決めることがあり、これを共有物分割禁止特約と呼びます

「相続した自宅に家族の誰かが住んでいる」「事業用物件を安定的に利用したい」場合など、すぐに共有を解消すると支障が出る場面では、この特約が利用されます。期間を定めて共有関係を維持し、その間は分割請求を行わないという約束を共有者全員で交わすのが特徴です。

もっとも、永久に分割を禁じるような合意は無効とされており、必ず合理的な期間が求められます。通常は数年から十年程度の範囲で設定されることが多く、裁判所が有効性を判断する際も、目的や必要性、共有者間の事情を踏まえて妥当性が検討されます。

特約が有効であれば、その期間中は分割請求をすることができず、拒否する根拠として機能します。しかし、期間満了後は請求できるようになるため、将来的に共有関係をどう整理するかについても、早い段階から見通しておく必要があります。

 

共有物分割請求は基本的に拒否できない!

共有物分割請求は、共有状態にある不動産から抜け出したい共有者がいつでも行える手続きです。「相続した実家を兄弟で共有している」「離婚の際に元夫婦が持分を分け合ったままになっている」といったケースでは、共有が続くほど管理が難しくなり、売却や建て替えの場面で支障が出やすくなります。

こうした背景から、民法は「共有関係をやめたい」と思えば、特別な事情がなくても請求できる仕組みを設けています。この仕組みがあるため、共有者の一方が分割を求めた場合、他の共有者がそれを理由だけで止めることは認められていません。

(参考:e-Gov 法令検索「民法」)

共有物分割請求が拒めない根拠は民法256条にあります。「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できる」と明記されており、共有関係を無期限に続けさせないという考え方が法律の前提に置かれています。

ただ、拒否がまったく不可能というわけではありません。共有者全員の合意に基づいて一定期間分割しないと決めていれば、その期間中は請求を制限できます。また、嫌がらせや不当な目的で請求されていると裁判所が判断した場合には、信義則に反するとして制限される可能性もあります。

ただし、これらはあくまで例外的な扱いで、実務で採用されるのはごく限られた事情にとどまります。基本線としては、請求そのものを止めるのではなく、どのような方法で分割するかを話し合っていく流れが一般的です。

 

例外的に共有物分割請求を拒否できるケース

共有物分割請求は原則として拒めませんが、特定の条件がそろうと例外的に「一定期間は認められない」と評価されることがあります。これは、請求を完全に無効にするという意味ではなく、事情に応じて「請求権の行使が制限される」という考え方に近いものです。

裁判所が慎重に判断する領域であり、一般的な感覚での「納得できないから拒否する」といった理由ではとおりません。

ここからは、特に実務で取り上げられる5つのパターンを紹介します。

  • ケース①:共有者全員で「分割禁止の合意」を結んでいる場合
  • ケース②:請求が信義則に反し「権利の濫用」にあたる場合
  • ケース③:分割によって他の共有者に著しい不利益が生じる場合
  • ケース④:分割の目的物が事業や生活の基盤となっている場合
  • ケース⑤:分割の時期や方法が社会通念上不相当と判断される場合

次項より、個別にみていきましょう。

ケース①:共有者全員で「分割禁止の合意」を結んでいる場合

共有者全員が話し合い、一定期間だけ分割しないと取り決めている場合には、その期間内であれば分割請求を制限できます。

この合意は、相続した実家に誰かが住み続けていたり、事業用に利用されている物件を安定して維持したい場合など、共有者全員が“今は共有を続けるほうが合理的だ”と判断した時に用いられます。法律上も、合理的な期間に限ってこの合意を有効と認めており、民法256条2項にその根拠があります。

(参考:e-Gov 法令検索「民法」)

ただし、永久に分割を禁じるような合意は認められません。合理的な期間かどうかは、共有者の関係性、物件の用途、将来の予定などを踏まえて個別に判断されます。

ケース②:請求が信義則に反し「権利の濫用」にあたる場合

もう一つの例外は、共有物分割請求の目的が著しく不当である場合です。法律上の権利を行使しているようにみえても、相手を困らせることそのものが目的である。あるいは買い叩きを狙うなど不誠実な動機が明らかな場合には「権利の濫用」とみなされる可能性があります。

これは民法1条3項に基づく判断で、裁判所は請求の背景事情や共有者同士の関係性を詳しく見ています。

もっとも、この判断はとても慎重に行われ、単に関係悪化があった、個人的に納得できないといった理由だけでは権利濫用とは見なされません。典型的な場面としては、共有者の一人が極めて短期間だけ持分を取得し、その直後に分割を求めるケースや、相場とかけ離れた清算金を要求して圧力をかけるケースなどが挙げられます。

ケース③:分割によって他の共有者に著しい不利益が生じる場合

共有物分割が認められたとしても、その実行によって特定の共有者に重大な損害が及ぶと判断される場合、裁判所は請求をそのまま進めるべきか慎重に検討します

典型的なのは「長年その不動産で生活している共有者が分割により立退きを迫られる」ような場面です。年齢や健康状態、地域とのつながり、介護が必要な家族がいるかどうかなど、生活基盤の強さが判断材料になります。

また、建物の構造上、分割によって安全性が損なわれる場合や、敷地が極端に狭くなることで日照や通風に深刻な影響が出る場合など、分割による物理的な不利益も考慮されます。

このような場合、裁判所は単純に分割の可否を決めるのではなく、代償金を支払って現状の利用を続けられる方法がないか、分割の実行時期を調整できないかといった代替案を探ることがあります。

ケース④:分割の目的物が事業や生活の基盤となっている場合

不動産が事業や生活の中心となっており、分割によってその基盤が崩れてしまう場合も、請求が制限される余地があります。例えば、自営業者が自宅兼店舗として利用している建物を分割すると商売が成り立たなくなるケースや、農地を細かく分けることで耕作が困難になるケースが挙げられます。

共有状態の解消は重要ではあるものの、それによって生計の維持が危うくなるようであれば、裁判所は慎重に判断を進めます。

生活基盤としての利用も同様で、単身高齢者が長年住んでいる住宅を競売で売却すると深刻な影響が生じる場合などは、代償分割や時期の調整を通じて、極端な不利益を避ける工夫がとられます。

実際の裁判例でも、事業や生活の維持が難しくなる状況では、分割を急がず、共有者間での協議や代替案提示を促す判断がみられます。

ケース⑤:分割の時期や方法が社会通念上不相当と判断される場合

共有物分割請求そのものが権利として認められても、その時期や方法が著しく不適切とみなされる場合には、裁判所が分割の実行を制限することがあります

例えば、建物の全面改修がちょうど始まった直後に分割を求めるケースや、相続手続きが未了で利害関係が整理できていない段階で急いで競売を求めるケースなど、タイミングに無理がある場面です。

分割請求は共有者の自由とはいえ、状況を考慮せず突然進めることで、他の共有者に予測不能な負担が生じる場合には「社会通念上相当な方法とはいえない」と判断される可能性があります。

分割方法についても同様で、現物分割が物理的に不可能な土地なのに無理に分筆を強行しようとする場合や、代償金の支払い能力がないのに買い取りを主張する場合など、実行可能性の低い請求は慎重に扱われます。

 

共有物分割請求を受けた場合の基本的な流れ

共有物分割請求は、共有状態を続けることが難しくなった共有者が、法的に共有関係の解消を求める制度です。突然「共有をやめたい」と伝えられると驚きますが、実際の手続きは段階を踏みながら進みます。

いきなり訴訟に発展するわけではなく、まずは話し合いを通じて落としどころを探ることが重視されます。請求を受けてから実際の解決に至るまでの大まかな流れとしては、以下の6段階に分けられます。

  • 第1段階:共有者から分割請求の意思表示を受ける
  • 第2段階:話し合い・任意の協議による解決を試みる
  • 第3段階:合意に至らない場合は家庭裁判所へ調停を申立てる
  • 第4段階:調停が不成立の場合、共有物分割訴訟へ移行する
  • 第5段階:裁判所が分割方法(現物・代償・競売)を決定する
  • 第6段階:判決確定後、登記・清算・明渡し等の手続きを実行する 

それぞれ個別にみていきましょう。

第1段階:共有者から分割請求の意思表示を受ける

共有物分割請求は、他の共有者から「共有状態を解消したい」という意思が示されたところから始まります。多くは口頭やメールで伝えられますが、書面で通知されることもあります。どのような方法であっても、意思表示を受けた時点で手続きはスタートします。

突然の話に戸惑う人も多いのですが、まずは状況を整理することが大切です。相手がどのような分割方法を考えているのか、分割の背景にどんな事情があるのかを確認すると、後の対応に迷いがなくなります。

第2段階:話し合い・任意の協議による解決を試みる

意思表示を受けたら、まずは共有者同士の話し合いで解決を試みます。この段階で合意できれば、裁判所の手続きを利用する必要がなく、費用も手間も最小限ですむため、最も望ましい方法といえます。

話し合いでは、現物分割や代償分割、売却など、どのような形で共有状態を整理するのかを検討します。物件の評価額や現在の利用状況、今後の予定など、双方の事情を踏まえながら落としどころを探る姿勢が求められます。

第3段階:合意に至らない場合は家庭裁判所へ調停を申立てる

話し合いでまとまらなければ、家庭裁判所に共有物分割調停を申し立てることになります。調停は裁判所で行われますが、裁判官ではなく調停委員が双方の意見を調整し、中間的な案を提案しながら合意形成を目指す手続きです。

裁判ほど形式的ではなく、個別事情を丁寧に取り上げてもらえるため、共有者同士で折り合いがつかないときに利用されることが多い方法です。調停では、物件の資料や評価書、共有者の生活実態などの情報を基に、現実的な分割方法を検討します。

第4段階:調停が不成立の場合、共有物分割訴訟へ移行する

家庭裁判所での調停がまとまらなかった場合、手続きは訴訟へ移ります。調停では双方の事情を聞きながら柔軟に案を出せますが、意見が大きく対立していると調停委員の働きかけだけでは限界があります。

訴訟では、裁判官が法に基づいて分割方法を決めるため、当事者の主張と提出資料が重要になります。証拠として扱われるのは、公図や測量図、物件の評価書、過去のやり取りなど、多岐にわたります。

第5段階:裁判所が分割方法(現物・代償・競売)を決定する

訴訟に進むと、裁判所は不動産の性質や共有者の事情、これまでの利用状況を踏まえて、どの分割方法が最も適切かを判断します。基本的には、まず現物分割が可能かを検討しますが、土地の形状や建物の構造によっては分筆が現実的でない場合もあります。

現物分割が難しいと判断されれば、次に代償分割が検討されます。これは一方の共有者が相手の持分を買い取り、不動産を単独で取得する方法で、居住者がいる場合には選ばれやすい方法です。買い取る側に資金力がない場合や双方が単独取得を望まない場合は、最終手段として競売が選択されます。

第6段階:判決確定後、登記・清算・明渡し等の手続きを実行する

裁判所が分割方法を決定し、判決が確定すると、いよいよ実際の手続きに移行します。現物分割であれば、土地を新たに分筆し、それぞれの所有権を登記し直します。代償分割の場合は、買い取る共有者が相手に代償金を支払い、所有権移転登記を行います。

換価分割、つまり競売になった場合は、裁判所の売却手続きに従い、不動産を売却して得られた代金を持分割合に応じて分配します。いずれの方法でも、登記手続きには司法書士が関わることが多く、必要に応じて測量士や不動産会社が加わります。

 

共有物分割請求を受けた場合、誰に相談すればいい?

共有物分割請求は、民法上の権利が絡む典型的な法律問題です。共有者同士の関係がこじれている場合や、分割方法に意見の隔たりが生じている場合には、感情面だけで話が進むことはまずありません。

どの分割方法が妥当なのか、拒否にあたる事情があるのか、代償金をどう設定するかなど、判断すべき点がいくつもあります。

こうした場面では、最初の一歩を誤らないことが後の展開を大きく左右します。そこで頼りになるのが、専門的な知識と実務経験を持つ第三者です。特に最初の相談先として適任なのは弁護士であり、その後の状況に応じて他の専門家が関わる形が一般的です。

まず相談すべきは弁護士

共有物分割請求を受けたときに最初に相談すべき相手は弁護士です。分割請求は法律が根拠となる制度であり、請求の有効性や分割方法の選択、拒否が認められる余地など、法的な視点での整理しておきましょう。

調停や訴訟に発展する可能性も高く、早い段階で弁護士に状況を伝えておくと、見通しが立てやすくなります。分割方法ごとに必要な資料や主張の組み立て方も異なるため、事実関係の整理から交渉の進め方まで体系的に助言してもらえます。

相手方とのやり取りが感情的な対立に変わりつつある場合でも、弁護士が窓口になることで衝突を避けやすくなります。

補助的に関わってくる専門家

弁護士が手続き全体の舵取りを担いますが、必要に応じて他の専門家が加わることがあります。不動産の評価額が争点になる場合には不動産鑑定士が評価書を作成し、現物分割の可能性を検討する際には測量士が境界調査を行うことがあります。

所有権移転や分筆の登記には司法書士の協力が必須ですし、売却による解決を視野に入れる場合は不動産会社の査定が参考になります。ただ、これらの専門家はあくまで補助的な存在で、どの時点で誰に依頼するかは弁護士が判断することが多いです。

 

共有物分割請求を受けた際に用意することになる書類・資料

共有物分割請求は、共有者間の事情や物件の状態を客観的に整理しなければ進められません。特に調停や訴訟の場では、主張の内容を裏付ける資料が必要となり、提出する書類の質が結果を左右します。

事前に手元の資料を揃えておくと、弁護士との打ち合わせもスムーズで、分割方法や代償金の検討にも役立ちます。以下では、実務で求められる主要な書類について、それぞれの意味や使われ方を説明します。

登記事項証明書・固定資産税評価証明書

共有物分割の入り口として必要になるのが、不動産の権利関係と公的評価額を示す書類です。登記事項証明書には、所有者の氏名や持分割合、抵当権などの担保関係が記載されており、共有状態の確認には必須です。

相続や売買を経て複雑な名義になっているケースでは、登記情報を正確に把握することで、分割の可能性や方法を判断しやすくなります。

固定資産税評価証明書は、地方自治体が算定した土地・建物の評価額を示すもので、代償金の目安を検討する際に用いられます。

共有者全員の戸籍・住民票・印鑑証明書

共有者が誰で、どこに居住しているのかを確認するための基本資料も求められます。戸籍や住民票は、相続によって共有状態が生じた場合に、誰が相続人として権利を持っているのかを確認するうえでは必要です。

共有者の人数が多い場合や、兄弟姉妹の代に権利が移っている場合など、関係者が複雑になるほど、これらの書類の役割は大きくなります。

印鑑証明書は、合意書を結ぶ際や代償分割の手続きで本人確認を行う際に必要。調停や訴訟でも、書面に署名した本人が確かに当事者であることを示すため、正式な印鑑証明が求められることがあります。

不動産の公図・測量図・間取り図などの現況資料

物件の形状や利用状況を正確に把握するための図面類も、共有物分割での検討材料として求められます。公図は土地の位置関係を示すもので、隣地との境界の把握や道路付けの確認に利用されます。

より詳細な情報が必要な場合には測量図が役立ち、土地を分筆して現物分割する可能性を探る際には必要な要素です。

建物がある場合は、間取り図や建物の概要がわかる資料も用意すると、現在どのように利用されているかを評価しやすくなります。

不動産の評価書・査定書・見積書

共有物分割の話し合いや調停に進む際は、物件の価値を客観的に示す資料を準備することが必須です。その中心となるのが、不動産の評価書や査定書、修繕が必要な場合の見積書です。これらは、代償金を算定したり、現物分割の可否を判断したりするときの基礎データになります。

裁判所での議論も、このような客観資料を前提に進むため、主張を説得力のある形で整理するうえでも役立ちます。特に、複数の査定を比較したり、評価方法の違いを把握しておくと、相手との条件調整がしやすくなります。

共有者間のやり取りを示す資料(合意書・メール・LINE等)

共有者同士の話し合いが長期化する場合、過去のやり取りが記録として残っているかどうかで、交渉の方向性が大きく変わります。合意書や覚書のほか、メールやLINEのメッセージなど、いつ誰がどのような意思表示をしたかが分かる資料は、調停や訴訟で重要な根拠になります。

特に、「以前に○年間は売却しないと合意した」「使用方法について一定の取り決めがあった」などの情報が残っていると、信義則や分割禁止合意の有無を判断する手がかりになります。。

建物の使用実態や費用負担を示す資料(領収書・光熱費明細など)

誰が建物を利用し、どの程度の費用を負担してきたかは、共有物分割の議論で避けて通れないポイントです。居住者が光熱費や固定資産税を負担していた場合、その状況を示す領収書や明細があると、使用実態の説明に具体性が生まれます。

また、老朽化した建物の修繕費を一方が負担していた場合も、支払い記録が残っていれば、公平な清算を求める理由として説得力を持ちます。こうした資料は、生活基盤の維持や建物の管理実態を裏付ける材料として扱われ、裁判所が分割方法を検討する際の判断材料にもなります。

 

共有物分割請求を受けた場合にかかる費用

共有物分割の手続きは、話し合いで合意できる場合と、調停・訴訟へ進む場合で負担が大きく変わります。費用が見えないまま進めてしまうと、途中で想定外の出費に戸惑うこともあります。

「どの段階で何が必要になるのか」を理解しておくと、見通しを立てやすくなり、早い段階での準備にも役立ちます。

具体的に、共有物分割請求では、以下のような費用が発生します。

  • 弁護士費用(着手金・報酬金)
  • 裁判所関連費用(調停・訴訟の実費)
  • 鑑定・測量・登記などの実務費用
  • その他の間接的コスト

次項より、詳しく解説します。

弁護士費用(着手金・報酬金)

共有物分割に関する相談の中心となるのが弁護士であり、その費用は状況によって幅があります。一般的には、手続きの最初に支払う着手金が20〜50万円ほどで、事件の難易度や物件の評価額によって変わります。

さらに、手続きが終わった段階で成果に応じて報酬金が必要となり、得られた利益の10〜15%前後が目安とされています。調停でまとまれば費用負担は比較的軽くすみますが、訴訟へ進むと書面作成や期日対応が増えるため、追加の費用が発生することも珍しくありません。

裁判所関連費用(調停・訴訟の実費)

裁判所を使う場合、申立手数料や郵便費用など、手続きに必要な実費が発生します。調停の申立てに必要な印紙代は数千円から数万円ほどの範囲で、物件の評価額によって変わります。郵便切手代は、裁判所から関係者へ通知を送る際に使用されるもので、こちらも数千円規模が一般的です。

訴訟に進むと、鑑定費用や証人尋問のための費用など、より大きな出費が必要になることがあります。これらの費用は裁判所の判断や必要性に応じて追加されるため、事前に明確な金額を知ることは難しい面があります。

鑑定・測量・登記などの実務費用

分割方法によっては、専門家による追加作業が必要となる場合があります。現物分割を検討するなら土地の境界を明確にするための測量が求められ、これは十万円前後の費用がかかります。不動産鑑定士による評価書を作成する場合も、人件費や調査費用として10〜30万円程度が一般的です。

また、分割後の所有権移転や分筆には登記手続きが必要となり、登録免許税を含めて数万〜十数万円規模の負担が生じます。登記を担当する司法書士への報酬も加わるため、分割の方法によって費用の種類が増える点は押さえておきたいところです。

その他の間接的コスト

手続きが長引くほど、直接的な費用以外の負担も積み重なっていきます。固定資産税や火災保険料などの維持費は、共有状態が続く限り支払いが必要です。さらに、物件の管理費用や弁護士との打ち合わせにかかる交通費、仕事を抜けて手続きに対応するための時間的損失も無視できません。

競売に進んだ場合は、市場価格より2〜3割ほど低く売却されることが多く、経済的な損失はさらに大きくなります。そのため、共有者間で協議が可能な段階で早めに方向性を決めることが、最終的な費用を抑えるうえでも役立つ判断となります。

 

共有物分割請求は拒否ではなく「分割方法」で調整する

共有物分割請求は実質拒否できないものですので、請求そのものを止めるよりも、「どのように共有状態を終わらせるか」を話し合うほうが現実的です。分割方法はひとつではなく、共有者の事情や物件の特徴によって最適な選択肢が変わります。

「生活基盤として使われているのか」「土地に余裕があるのか」「売却が前提となるのか」といった条件を踏まえながら、各共有者に過度な負担がかからない落としどころを探ることになります。

以下では、特に選ばれやすい2つの具体的な方法を取り上げます。

【居住している場合】代償分割で住み続ける

共有不動産に誰かが実際に住んでいる場合、強制的な売却や分筆は生活に大きな混乱を招きます。

そこでまず検討されるのが「代償分割」で、自宅を失わずに共有関係を解消できるため、家庭裁判所でも採用されやすい選択肢となるでしょう

代償分割では、買い取る側に資金力があるかどうかが大きなポイントになります。住宅ローンを組んで取得するケースも多く、金融機関での事前審査が必要になる場合があります。

買い取り金額については、不動産の評価額をどこまで参考にするかが議論になるため、固定資産税評価だけで判断するのではなく、不動産鑑定書や複数の不動産会社の査定を組み合わせて客観性を確保します。

【物理的に分けられる場合】現物分割を検討する

土地に十分な広さがあり、形状も分筆に向いている場合は、現物分割が選択肢に入ります。

敷地を実際に区切って複数の区画に分け、それぞれを別の共有者が単独で所有することになりますので、家が建っていない土地であれば比較的検討しやすく、利用目的が異なる共有者同士でも一定の折り合いをつけやすくなります

例えば、敷地を南北や東西に分けて新たに登記を行えば、共有関係そのものを解消できます。

とはいえ、現物分割は見た目以上に作業が多く、境界確定のための測量や筆を分ける登記手続きに費用がかかります。土地の形状によっては、分筆後に利用が不便になる場合もあり、慎重な検討が必要です

【全員が利用していない場合】一括売却・任意売却で清算する

共有者の誰も住んでおらず、物件が空き家状態になっている場合は、一括売却によって共有関係を整理するのがもっとも現実的です。

老朽化が進んでいたり、維持管理の負担が共有者全員に及んでいる場合は、特にこの方法が選ばれやすくなります。

売却代金を持分割合に応じて分ければ、金銭面の清算が明確で、後のトラブルも比較的少なく済みます。競売と違い、一般市場での取引になるため、売却価格が高くなる見込みがある点も大きなメリットです。

実際の売却活動は、不動産会社への媒介依頼から始まります。共有者が複数いる場合、全員が売却に同意する必要があり、媒介契約も共有者全員の署名押印が必要になります。空き家の状況や建物の補修の有無、敷地の境界が曖昧な場合など、事前に確認すべき点は多々あります。

【関係修復が難しい場合】第三者買取で早期解決を図る

共有者同士の対立が深まり、話し合いの余地がほとんど残っていない場合には、第三者による買取を利用して早期に関係を整理する方法が有効です。特に「共有持分買取」を専門とする業者であれば、自分の持分だけを売ることが可能

他の共有者の同意が不要であるため、協議が進まない状況でも出口を確保できます。持分のみの売却は通常の不動産売却に比べて価格が低くなる傾向がありますが、現金化によってトラブルから迅速に離れられる点は大きな利点です。

持分買取は、共有者の誰かが強い不満や不信感を抱いている場合に、状況をリセットする手段としても使われます。争いが続いた結果、調停や訴訟に発展すると時間も費用もかかりますが、買取であれば短期間で決着します。

【将来的に価値が変動する場合】一時的な使用調整で様子を見る

再開発計画や道路拡張、近隣の大規模施設整備など、将来的に土地の価値が変動する可能性がある場合には、今すぐ分割や売却を決めるのが得策とは限りません。そのようなときに検討されるのが、一時的な使用調整によって状況を“保留”する方法です。

例えば、共有者の1人が管理を続ける代わりに使用貸借契約を結ぶ、一定期間は現状のまま利用することを共有者全員で合意するなど、期限を区切って共有を維持するやり方が考えられます。

こうした合意は、将来の選択肢を残しつつ、共有者間の負担を明確にする点で有効です。ただし、口頭の約束だけでは後々のトラブルにつながりやすく、利用期間、費用負担、契約終了時の扱いなどを文書で取り決めを行いましょう。

 

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共有物分割請求が発生すると、共有者同士の意見がそろわず、調停や訴訟で長期化してしまうケースもあります。特に共有不動産は、一般の不動産市場では買い手が見つかりにくく、出口が見えずに困ってしまう方も多いのが実情です。

ワケガイでは、共有持分だけでも買取できる体制を整えており、他の共有者の同意が得られない状況でも現金化のルートが確保できます。共有物分割の手続きに疲れた方や、早期に整理したい方は、お気軽に無料査定をご活用ください。

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FAQ:共有物分割請求の拒否に関するよくある質問

ここからは、相談が多いテーマを取り上げ、誤解されやすいポイントを整理していきます。特に、相手との関係が悪化している場合や、突然書面が届いたケースでは、どのように判断すればよいのか迷いやすくなりますので、ぜひお役立てください。

共有物分割請求を無視してもいいですか?

共有物分割請求を無視してしまうと、相手側がそのまま家庭裁判所へ調停を申し立てる可能性があります。調停の呼出状が届いても応じない場合、裁判所は相手方の主張を中心に手続きを進めるため、自分にとって不利な条件で話がまとまるおそれもあります。

共有物分割訴訟の訴額はいくらになりますか?

共有物分割訴訟の訴額は、不動産の価格が基準になります。家庭裁判所の実務では、固定資産税評価額や不動産鑑定額などを参考に算定されることが多く、その金額に応じて収入印紙代(訴訟費用)が決まります。

共有物分割禁止特約とはどのような合意ですか?

共有者全員の合意で「一定期間は共有物を分割しない」と取り決める合意を、共有物分割禁止特約と呼びます。相続した住宅に誰かが住み続けている場合や、事業で利用している物件を維持したい場合など、すぐに分割してしまうと支障が出る場面で利用されます。

共有物分割訴訟にはどのくらいの期間がかかりますか?

共有物分割訴訟にかかる期間は、物件の内容や共有者間の対立の度合いによって大きく変わります。調停が不成立となり訴訟に移った場合、半年〜1年程度を見込むことが一般的です。

まとめ

共有物分割請求は、共有関係が続けられなくなったときの現実的な解決手段ですが、請求を拒否できる場面は限られており、多くの場合は「どの方法で分割するか」を軸に調整していく姿勢が求められます。

居住者がいる物件では代償分割、土地に余裕がある場合は現物分割、全員が利用していない場合は売却など、適切な選択肢は物件の性質や共有者の事情によって異なります。

また、調停や訴訟へ進むと時間も費用も大きくなるため、早い段階で資料を揃え、状況を客観的に整理しておくことが必須。実務では、冷静に選択肢を比較し、将来の負担まで見据えた判断がトラブル回避につながります。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

川村 有毅(司法書士)

私が司法書士になる前は、接客サービス・営業等、お客様と直に接する仕事に長く携わってきました。
そこから、お客様とのコミュニケーションを事務的にせず、お話をしっかりと拝聴し、問題を共有することの大切さを学びました。
お客様と接する機会をもっと重要視し、人と人とのつながりを大切にします。
お客様に人の手のぬくもりが感じられる「あたたかな安心」を提供いたします。

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