
建て替えができない再建築不可物件は、売却することが難しかったり、相場よりも安い売り値で取引することになったりしてしまいます。
今回は再建築不可物件とはどのような不動産のことを指すのか、そして再建築不可物件を有効活用する方法についてご紹介いたします。
相続や譲渡などで思わぬ再建築不可物件を取得した方や、これから取得しようと考えている方はぜひ参考にしてください。
目次
■再建築不可物件とは?
まずは、再建築不可物件とはどのような物件のことを指すのか、何を基準として再建築不可物件となるのかをご紹介します。
・再建築不可物件とは?
再建築不可物件とは、今は家が建っていても解体して更地にしてしまった場合、再度建築物を建てることができない不動産のことを指します。
建築基準法の「接道義務」が設けられている都市計画区域と準都市計画域内にあります。
–都市計画区域とは?
都市計画区域とは、都市計画法にもとづいて都道府県知事または国土交通大臣が指定するエリアのことです。都市計画区域は、「市街化区域」「市街化調整区域」「非線引き区域」に分けられます。
–準都市計画区域内とは?
準都市計画区域内とは、都市計画区域外のエリアであっても、市街化が進行すると見込まれるエリアに対して都道府県が指定する区域のことです。
無秩序な開発や建築を放置することで、将来的に問題が生じると想定されるエリアに対して土地利用の規制を行うことが目的となっています。
・なぜ、再建築不可物件が存在するのか?
そもそも、なぜ建て替えることができない「再建築不可物件」が存在するのでしょうか?それは法律制定が関係しています。
1950年、建築基準法が制定されました。建築基準法とは、国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途に最低基準を定めた法律のことです。建築基準法があることによって、制限がある中で安心・安全に暮らすことができています。
しかし、建築基準法が制定された1950年より前につくられた不動産はこの基準を満たしていない場合があります。それが今「再建築不可物件」として存在しているのです。
・再建築不可物件となる基準
再建築不可物件かどうかは、主に建築基準法第43条で決められている通りです。
–建築基準法第43条
「建築物の敷地は、道路に2m以上接しなければならない。ただし、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては、この限りでない。」
一体どういうことなのか、以下より詳しく説明します。
–幅員4m以上の道路に2m以上接していない場合「再建築不可」
建物を建てる敷地には接道義務があり、原則として幅員4m以上の建築基準法道路に2m以上接していなければいけません。なぜなら、火災などの災害時や急病時などに消防車や救急車が入ってきたり非難する経路を確保したりするために必要となるからです。
建築基準法道路とは建築基準法第42条で定められており、下記の通りとなっています。
【建築基準法で定められている「道路」の定義】
- 法42条1項1号道路
道路法による道路。(国道・都道・区道などの公道)
- 法42条1項2号道路
都市計画法や土地区画整理法・旧住宅地造成事業に関する法律などにもとづき認可を受けてつくられたもの。(開発道路)
- 法42条1項3号道路
建築基準法の施行時(1950年以前)または、当該市町村が都市計画区域に指定された時点のどちらか遅い方より前に、すでに幅員4m以上の道として存在するもの。(既存道路)
- 法42条1項4号道路
道路法や都市計画法などの法律による新設または変更の事業計画のある道路で、2年以内に道路をつくる予定がされており、かつ特定行政庁が指定したもの。(計画道路)
- 法42条1項5号道路
土地の所有所が築造する幅員4m以上の道で、申請を受けて特定行政庁がその位置を指定したもの。(位置指定道路)
- 法42条2項道路
建築基準法の施行時(1950年以前)または、当該市町村が都市計画区域に指定された時点のどちらか遅い方より前に、すでに存在する幅員4m未満の道で、すでに建築物が建っており、その他一定の条件をもとに特定行政庁が指定したもの。(みなし道路)
- 法43条1項ただし書きの適用を受けたことがある道
法42条に定める道路に該当しないものの、法43条第1項ただし書の適用を受けたことがある建築物の敷地が接する道のこと。
–土地が道路に接していない場合「再建築不可」
袋地など他人の土地を通路にして入る必要がある不動産は、道路と敷地が2m以上接していないため、再建築不可物件となります。
–地域が市街化調整区域の場合「再建築不可」
接道義務をクリアしていても、不動産が位置する地域が市街化調整区域の場合、再建築不可となるケースがあります。
市街化調整区域とは、都市計画法にもとづいて無秩序な市街化を防止するために指定されたエリアのことです。都市計画法では「市街化を抑制すべき地域」と定義づけられています。そのため、再建築ができなかったり、再建築できたとしても細かな条件がついていたりします。
■再建築不可物件かどうか調べる方法
再建築不可物件の基準をお伝えしましたが、所有している不動産が再建築不可物件なのかどうか判断に迷う場合もあると思います。そこで調べる方法をご紹介します。
・購入した不動産業者に問い合わせる
購入した不動産業者の連絡先がわかるのであれば、問い合わせてみましょう。「相続した不動産だから、どこの不動産業者で購入したのかはわからない」などという場合は、次の方法で調べることができます。
・役所の建築課に確認する
不動産がある地域の役所の建築課や建築指導課などで調べてもらうことができます。必要書類を持っていき、再建築不可物件かどうか確認してもらいましょう。また、どのような理由で建て替えができないか、理由の説明もしてくれるでしょう。
–再建築不可物件か調査してもらうための必要書類
再建築不可物件かどうか調べてもらうために必要な書類は下記の通りです。自治体によって必要書類が異なる場合があるため、事前に電話などで確認し、用意しましょう。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
土地の所有者名・住所・建物面積や構造・建築年月日などが記載されている書類です。
- 地積測量図
土地の測量結果を示した書類です。土地の面積や座標・境界を測定した図面が載っています。昭和35年以前の建築物の場合は、地積測量図がないケースがあります。
- 公図
国の地積調査事業によって測量をした地図のことで、不動産登記の際に使用されます。
- 建物図面
敷地のどこに建物が建っているのか、どのような形の建物なのかがわかる図面のことです。2階建て以上の場合は、各階の建物の形状がわかる平面図も記載されています。
–必要書類の入手方法
登記事項証明書(登記簿謄本)・地積測量図・公図・建物図面は、法務局で発行することができます。法務局へ行かなくても、法務局のホームページ上で手続きをし、後日郵送してもらうことも可能です。役所での相談は予約不必要のため、書類の用意ができたら訪問するといいでしょう。
–役所窓口で確認すること
必要書類を持って役所窓口へ行ったら、所有している不動産が接道要件を満たしているのか、敷地と接している道路が建築基準法道路なのか確認してもらいましょう。
また、これらの条件をクリアしていても、そもそも不動産が位置する地域が市街化調整区域や災害危険区域に指定されている場合、建て替えることができないかもしれません。その地域が建築物を建てることができるかどうかも役所窓口でわかるため、あわせて確認しておきましょう。
■再建築不可物件を再建築する方法
現在の条件では再建築ができない不動産であっても、工夫をしたり制度を利用したりすれば建て替えることができるケースがあります。再建築する方法をご紹介します。
・隣の土地を購入する
道路と接している敷地部分が2m未満であるために再建築ができないのであれば、隣の土地を購入して2m以上にするという方法があります。隣地の売主に、土地の一部を購入できないか交渉してみるといいでしょう。
・敷地設定をする
敷地設定とは、他人の土地を自分の敷地として申請することです。隣地の土地を「敷地」として設定させてもらうことで、「道路と敷地部分が2m以上接している」という条件を満たすことができる場合があります。
隣地を購入するほどの費用がかからないため、コストをおさえられることがメリットですが、許可を得られないこともあります。また、許可を得たとしても土地の所有者が変わったときにトラブルになる可能性があるため、所有者によく確認し、契約書や同意書などを交わしてから敷地設定をするといいでしょう。
・セットバックする
土地が接道している道路が幅員4m未満であっても、特定行政庁が指定した道路の場合、セットバックをすれば建て替えられるケースがあります。
セットバックとは、道路の中心から2m下がったところに建物を建てることを言います。中心線がわかりづらいこともあるため、役所の建築指導課などに確認するといいでしょう。
建物の面積が小さくなることがデメリットですが、自治体によってはセットバックの費用を補助してもらえる場合があります。
・建築基準法第43条ただし書き道路の申請
建築基準法第43条のただし書きにあるように、幅員4m未満の道路でも十分な広さの公園や広場などに面している場合は建て替えが認められるケースがあります。
接道義務の目的は、火事などの災害時や急病時に消防車や救急車が入ったり避難したりするための経路や広さを確保するためです。つまり幅員4m未満であっても、そういったスペースがあれば特別に認められることがあります。
不動産がある地域の役所窓口で相談し、必要書類を提出して申請しましょう。しかし、申請したからといって必ずしも許可がおりるわけではないので注意しましょう。
・50戸連たん制度を利用する
「50戸連たん制度」とは、本来建物の建築を認めない市街化調整区域において、都市計画が決定される前から集落が形成されており50以上の住居が存在する地域では建築を許可する、という制度です。
50戸連たん制度は、地域によって条件が異なったり、以前は制度があったもののすでに廃止になっている地域もあったりするため、必ず確認しましょう。
■再建築不可物件を利用・売却する方法
上でお伝えした「再建築をする方法」が適用しない場合、再建築不可物件は持て余すしかないのでしょうか?再建築不可物件を利用や売却する方法をご紹介します。
・自分の住居にする
住むことに問題ない建築物が建っているのであれば、自分で住むことで再建築不可物件を活用できます。建て替えはできませんが、修理や模様替えであれば可能なため、手を加えて住みやすくするといいでしょう。
・賃貸物件にする
自分が住むことができない場合、人に貸すという方法があります。家賃収入を得られるため、固定資産税などの税金をまかなうことができます。
・空き家バンクに登録する
空き家バンクとは、空き家の賃貸・売却情報を登録し、空き家を利用したいと考えている人に紹介する制度のことです。全国各地の自治体が、空き家の有効活用を通して地域の活性化や定住を目的として取り組んでいます。なかには不動産会社が空き家バンクを運営していることもあります。
・フルリフォームをして売却する
再建築不可物件は、解体してしまったら建てることができませんが、フルリフォームであれば可能です。フルリフォームをして、見た目がきれいになり住みやすい住居をつくることができれば売却も可能になるでしょう。
再建築不可物件で、どの程度のリフォームまでが可能なのかは、別記事にて詳しくご紹介いたします。
■再建築不可物件をお持ちでお困りの場合はプロにご相談を
自分では「建て替えができない再建築不可物件だ」と思っていても、条件を満たせば建て替えることができるかもしれません。また、「再建築できないから売れないだろう」と思っていても、少しの工夫や手を加えることで予想以上の価格で売却できるかもしれません。
相続や譲渡によって再建築不可物件を所有することになり困っている場合は、お早めにプロに相談してください。
