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再建築不可物件を建て替え可能にする「敷地設定」とは? メリットとデメリットや注意点を解説

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再建築不可物件とは、一度解体したら再度建てることができない物件のことです。しかし、建て替え可能にする方法はいくつかあります。その方法のひとつが「敷地設定」です。

 

そこで今回は、「敷地設定」について詳しく解説いたします。敷地設定にはメリットもある反面デメリットもあるため、気をつけましょう。敷地設定をする際の注意点や敷地設定できない場合の対処法もあわせてお伝えいたします。

 

■敷地設定とは?

「敷地設定」という言葉を聞いたことがある方は少ないかもしれません。まずは敷地設定について説明します。

 

・敷地設定とは?

敷地設定とは、他人の土地を自分の敷地として建築確認申請をすることです。

 

・建築確認申請をする理由

建築確認申請とは、建物を建築したり改築したりする際に、自治体などに必要書類を提出する手続きのことです。家を建てるためには、様々な法律や条例に適合しなければいけません。それらを審査してもらうための申請が「建築確認申請」となります。

 

・建築確認の仕方

建ぺい率や容積率・北面車線規制など、建築基準法に合致しているかどうかを、図面や書類で確認します。工事完了後、担当者が現地で図面通りの建築かチェックし、問題がなければ入居できるようになります。

 

・敷地設定が必要になるケース

そもそも、なぜ建築確認申請をするために敷地設定が必要なのでしょうか?すべての建築物に敷地設定が必要なわけではありません。

敷地設定をするケースは、「建築基準法上の道路に2m以上接していない」不動産であり、これを「再建築不可物件」と言います。

 

・道路に2m以上接していない不動産は再建築できない

建築基準法第43条で「建築物の敷地は、道路に2m以上接しなければならない。」と定められています。しかし、建築基準法制定以前に建てられた家の中には、この条件に当てはまらない不動産が存在します。今建っている住宅にはそのまま住むことができますが、一度解体してしまうと接道義務を果たさないため、再度建てることができなくなってしまいます。道路に2m以上接する必要がある理由は、火災などの災害時や急病時などに消防車や救急車が入ってきたり非難する経路を確保したりするためです。

 

・道路を2m以上にするための方法のひとつが「敷地設定」

隣地の土地を「自分の敷地の一部である」とすることで(敷地設定)、「道路と敷地部分が2m以上接している」という建築基準法第43条の条件を満たすことができます。

しかし、敷地設定にはメリットがある反面、デメリットもあります。安易な判断で行ってしまうと、あとからトラブルや損害を生んでしまうかもしれません。メリットとデメリットについてはのちほど詳しくお伝えします。

また敷地設定以外にも、再建築不可物件を再建築する方法はいくつかあるため、次にご紹介します。

 

■敷地設定以外で、再建築不可物件を建て替え可能にする方法

「幅員4m以上の道路に2m以上接していなければいけない」という接道義務を果たさないと、再建築不可物件となります。敷地設定以外で再建築する方法をご紹介します。

 

・隣地の一部を購入する

道路と接している敷地が1.5mだった場合、隣地を0.5m以上購入することで間口を2m以上にすることができます。隣地の所有者に、土地の一部を購入できないか交渉してみるといいでしょう。

 

・建築基準法第43条ただし書き道路の申請

建築基準法第43条「建築物の敷地は、道路に2m以上接しなければならない。」のあとにはただし書きが記されています(下記)。

「ただし、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては、この限りでない。」

 

つまり、十分な広さの公園や広場などに面している場合は接道義務を果たしていなくても、再建築が認められるケースがある、ということです。

上述したように、接道義務は火事などの災害時や急病時に消防車や救急車が入ったり避難したりするための経路や広さを確保することが目的なため、そういったスペースがあれば、特別に認められることがあります。不動産がある地域の役所窓口で相談し、必要書類を提出し申請しましょう。ただし、認められない場合もあります。

 

■敷地設定のメリット

他人の土地を自分の敷地として申請をする敷地設定には、どのようなメリットがあるのでしょうか?

 

・費用負担が少ない

隣の土地を購入することと比べると、敷地設定には大きな費用がかかりません。再建築するにあたって工事代や材料代など多額の資金が必要になるため、出費が少なくなることはメリットと言えるでしょう。

 

・セットバック時のように建築物が小さくならない

再建築不可物件の再建築方法のひとつに「セットバック」があります。セットバックとは、幅員4mに満たない道路に接しているために再建築不可物件となっており、特定行政庁が指定した道路の場合、道路の中心から2m下がったところから建てれば再建築ができる方法です。しかし、道路の中心から2m下がる分、建物が小さくなってしまうというデメリットがあります。

一方、敷地設定を行って再建築する場合は、建ぺい率などの条件はあってもセットバックのような「道路から2m下がらなければいけない」という条件はないため、通常通りの建築ができます。

 

■敷地設定のデメリット

敷地設定をする前に、デメリットも把握しておきましょう。

 

・隣家の所有者とトラブルが起きる可能性がある

隣家の所有者に無断で敷地設定をすると、トラブルになってしまう可能性があります。図面の提出をすることで建築確認申請はできるため、隣家の所有者の同意がなくても建築確認がおりて工事着手はできます。しかし、工事に気づいた隣家の所有者から訴えられ、工事途中で建築がとまってしまった、という事例もあります。

隣家の所有者の許可なしに決行すると、時間や費用など大きな損害が生まれてしまうでしょう。

 

・土地の所有者が変わったときにトラブルが起きる可能性がある

敷地設定の許可を得られて、無事に建築確認申請ができたとしても、隣家が相続や売却などによって所有者が変わってしまった場合、新しい所有者の意に沿わず反故にされてしまうことがあるかもしれません。このようなリスクを回避する方法を、下記の「注意点」で解説します。

 

■敷地設定をする際の注意点

敷地設定をする際の注意点をご紹介します。

 

・所有者の同意を得る

必ず隣地の所有者の同意を得るようにしましょう。無断で敷地設定を行うと、刑法第235条の2「不動産侵奪罪」として懲役を科せられる可能性があります。再建築する際にスムーズに同意が得られるように、日頃から良好な関係を築いておくといいでしょう。

 

・同意書や契約書を作成する

隣家の所有者から敷地設定の同意を得られたら、同意書または契約書を交わしましょう。同意書や契約書があることで、トラブルが起きた際の証拠書類となります。所有者の気分が変わったり、土地所有者が変わったりした場合などのリスク回避になります。

 

【同意書に記載すること】

・タイトル

・日付

・同意内容

・同意する旨

・署名

・捺印

 

・自治体の条例にも注意する

法律だけでなく、自治体の条例にも気を配りましょう。例えば、とある市では「建築物の敷地境界には縁石等を置くこと」と、定められています。法律上や他の自治体では問題ないことでも、自治体によっては建築確認が下りないことがあるのです。

自治体が定めた条例も法律と同じような効力があるため、条例を守らない場合は工事着手や入居ができなくなってしまう可能性があるので注意しましょう。

 

■敷地設定をして建築確認申請をする方法

敷地設定をして建築確認申請をする流れをご紹介します。

 

①隣地の所有者の許可を得る

上述したように、無断で敷地設定をすることはトラブルや損害を生むだけです。必ず隣地の所有者に許可を得て、契約書や同意書を作成しましょう。

 

②敷地設定をし、図面を書き換える

道路と接する部分が2m以上になるように敷地設定をし、元の図面を敷地設定した状態に書き換えましょう。元の間口が1mであれば、隣地を1m以上に敷地設定する必要があります。

 

③建築確認申請書・図面など必要書類を提出

自治体の窓口(または自治体が指定している機関など)に、建築確認申請書と図面、その他必要書類を提出します。

 

④建築確認

建築確認申請を受けて、自治体(または自治体が指定している機関など)が建築確認を行います。建築基準法に適合しているか、自治体の条例に反していないか、などの確認や、建ぺい率・容積率・北面斜線規制・採光などが確保されているかなどもチェックします。

 

⑤建築確認済証交付

建築確認をして問題がなければ「建築確認済証」が交付されます。「建築確認済証」は、工事着手時に必要なことをはじめ、住宅ローンの審査時や売却時などにも必要となるため、大切に保管しておきましょう。

 

⑥工事着手

「建築確認済証」が交付されたら、工事を始めることができます。工事途中にやむを得ず計画変更となる場合は、再度建築確認申請をする必要があります。

 

⑦完了検査

工事完了後、実際に建築された建物が建築確認時の書類通りに施工されたかチェックをします。ここで書類通りではなかった場合、入居できなくなるかもしれません。問題がなければ「検査済証」が交付されます。検査済証は大切に保管しておきましょう。

 

■敷地設定ができない場合、再建築不可物件を活用・売却する方法

隣地の所有者から許可が下りないなど敷地設定ができなければ、再建築ができません。その場合はどうしたらいいのでしょうか?ここでは再建築不可物件を活用・売却する方法をいくつかご紹介します。

 

・空き家バンクに登録する

自分で住むわけでもなく売却も難しい場合、「空き家バンクに登録する」という活用方法があります。空き家バンクとは、空き家の賃貸・売却情報を登録し、空き家を利用したいと考えている人に紹介する制度のことです。全国各地の自治体が、空き家の有効活用を通して地域の活性化や定住を目的として取り組んでいます。

古民家が好きな方も少なくないため、利用希望者が見つかるかもしれません。

 

・リフォームをして住む又は売却する

再建築不可物件は、一度解体すると再建築できませんが、リフォームであれば行うことができます。「水回りの設備だけを新しいものに交換する」や「外壁だけを修繕する」というリフォームはもちろん、柱と梁だけを残して総取り替えをする、いわゆるスケルトンリフォーム(フルリフォーム)まで可能です。

住居の内装や設備を解体したり外壁を取り壊したりすることは大掛かりであり、費用や時間はかかってしまいますが、新築に近い状態にすることができるでしょう。売却するとしても、古い状態で売りに出すより綺麗な状態で売った方が買い手がつきやすくなるかもしれません。

 

・隣地の所有者に売却する

再建築不可物件は再建築できなかったり家が古い状態だったりすることから、一般の人に売りづらい不動産ですが、隣家の人が「自分の敷地を広くしたい」「子ども家族のために敷地内にもう一軒建てたい」などと考えていれば、買い取ってくれるかもしれません。

一度打診してみることもいいでしょう。

 

・業者に売却する

再建築不可物件が一般の人に売却できない場合、買い取り専門業者に売却することもひとつの方法です。売却額は低くなってしまうかもしれませんが、ビジネスライクに進めるので、トラブルなどの精神的負担が少なく不動産を手放すことができます。

双方が合意すればすぐに売ることができるため、現金化までがスピーディーに進むのもメリットです。

 

■再建築不可物件でお困りの方はプロにご相談を

今回は、再建築不可物件を再建築する方法のひとつ「敷地設定」についてご紹介しました。

隣地の所有者が敷地設定に合意してくれるのであれば、合意書・契約書を作成し申請をしましょう。ただし、知識がない状態で書類を作成すると効力がないものになってしまう可能性があるため、プロに頼るといいでしょう。

また、敷地設定に合意を得られず再建築できなくてお悩みの場合も、まずはプロに相談しましょう。所有しているだけの状態でも固定資産税などの管理費がかかる一方です。早めの対処がいいでしょう

 

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