差し押さえ

不動産の共有者が差押えられたらどうなる? 自分への影響と対処法を解説

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誰かと共有している不動産があると、たとえ自分の方に非はなくても、共有者が借金返済を滞納して差押えにあった場合、共有する不動産に影響が出ることがあります。

 

そこで今回は、共有者の持分が差押えられたときの影響と、どのように対処したらいいのかについて解説します。

ある日突然、共有者の持分が差押えられたときに慌てないように、共有持分権者の方はぜひご覧ください。

■共有持分の差押えとは?

そもそも「差押え」とは何か、またどのようなものが「差押え対象」となるのか、共有持分が差押え対象になるのかについて解説します。

 

・差押えとは?

差押えとは、ローンやクレジットカード、税金や保険などを滞納した際、債務者が債権を回収するために債務者の財産の処分を制限する手続きのことです。決定・命令は裁判所によって行われます。差押えによって債務者の財産を拘束し、その財産を換価する競売などの手続きを行うことで、債務者は債権を回収します。

 

・差押えの対象となるものとならないもの

差押えの対象となるものは、「不動産」「動産」「債権」の3種類です。
具体的には下記の通りです。差押えの対象にならないものもあわせて紹介します。

 

【差押えの対象となるもの】

・給料

・車

・土地

・建物

・貴金属

・預貯金

・有価証券

など

 

上記以外にも、金銭的価値があるものは「差押え対象」となります。給料は全額差し押さえられるわけではありませんが、差押えによって借金を滞納している事実が会社に知られてしまうため、信用を失ってしまうリスクがあると言えるでしょう。

 

【差押えの対象にならないもの】

・66万円以下の現金

・家電や家具・衣服など生活に欠かせないもの

・賃貸の家(自分の所有財産ではないため)

・家族や同居人の所有物

など

 

家族名義の銀行口座などが無断で差押えられることはありませんが、生計を共にしているのであれば金銭的にも精神的にも負担をかけてしまうかもしれません。

また、家族に秘密にしていたとしても、給料や自宅などが差押えられることで露呈してしまうでしょう。

 

・共有持分は差押えの対象

土地や建物などの不動産は差押え対象になると上述しましたが、不動産の共有持分はどうなるのでしょうか?

結論から言うと、「共有持分も差押えの対象」になります。

不動産の共有持分とは、共有者それぞれが持っている所有権の割合のことで、それだけでも売買が可能です。独立した権利で金銭的な価値があるため、差押えの対象になることを免れられません。

 

 

■差押えまでの流れ

「ローンを支払えなかったらすぐに差押えられる」というわけではありません。

そこで、滞納から差押えまでの一般的な流れをご紹介します。流れや期間は金融機関などによっても異なるため、ここでは参考程度にご確認ください。

 

1.督促の連絡が来る

期日を過ぎても支払いがない場合、金融機関などから督促の連絡が来ます。

電話で連絡がつかなかった場合、督促状が届きます。ここで支払い予定について話し、予定通りに入金をすれば差押えにはなりません。

 

2.債務残額一括請求書が届く

未払いのまま2~3ヶ月経つと、金融機関などから一括で返済するよう請求されます。

 

3.差押え予告通知が届く

さらに滞納が続くと、金融機関などから差押え予告通知が届きます。

「このまま滞納するのであれば、差押えになりますよ」という通知のため、この時点で支払いをすれば、差押えを回避できます。

 

4.裁判所から「支払督促」が届く

金融機関などが裁判所に申立てを行い、裁判所から「支払督促」が届きます。

支払督促を受け取って2週間以内に「督促異議申立書」を提出すれば、法定で金融機関などと話し合いをします。

 

5.裁判所から「仮執行宣言付支払督促」が届く

「督促異議申立書」を提出しないで放置していると、裁判所から「仮執行宣言付支払督促」が届きます。これにも異議申し立てをしなかった場合、強制執行により差押えが行われます。

 

■差押え前に共有持分を譲渡できない

「差押えられたくないから、共有持分を人に渡しておこう」ということはできません。

差押えを防ぐ目的で、差押え対象になる自分の財産を他人に譲渡することは禁じられているからです。つまり、共有持分も差押え前に譲渡できないので気をつけましょう。

 

【差押え前にしてはいけないこと】

・対象財産を他人に譲渡する

・対象財産の隠匿・破壊

 

■共有者が差押えられたときの影響

共有者が滞納をして差押えられた場合、共有者の持分は差押え対象となります。

それでは自分の持分はどうなるのでしょうか?
また、共有者の持分が差押えられた時の影響についてもお伝えします。

 

1.自分の共有持分は差押え対象外

差押え対象となるものは「滞納者に帰属したもの」とされているため、共有者の持分が差押えられても自分の共有持分は差押え対象外となります。不動産全体が競売にかけられることもありません。

 

2.差押えられた共有持分は競売にかけられる

共有者が持分を差押えられた場合、その持分は競売にかけられます。

この場合、一般の人が共有持分を買い取ることはほぼありません。落札するのは、共有持分を専門に扱う業者がほとんどです。競売になると市場価格よりも安く売りに出され、さらに共有持分ということで大幅に価格が下がるため、一般的な不動産価格よりもかなり低い金額で買い取ることができるからです。

 

3.知らない人(業者)との共有状態になる

共有者の持分は落札した人が所有することになるため、知らない人との共有状態になってしまいます。上述したように、落札する可能性があるのは業者です。業者と1つの不動産を共有することは、あらゆるデメリットがあるのでご紹介します。

 

・不動産を自由に活用できない

共有している不動産の「変更(処分)」行為は、共有者全員の合意が必要になります。

つまり、落札した業者と意見が一致しなければ、不動産売却などができません。相手の合意が必要になる「変更(処分)」行為は、売却以外にも下記のようなことがあります。

 

【変更(処分)行為】

・売却

・贈与

・長期賃貸借

・増築、改築

・大規模な修繕

・抵当権の設定

・解体

・建て替え

・分筆・合筆

 

・落札者(業者)が持分買い取りを求めてくる

共有持分を落札した業者は、他の共有者に連絡をしてくることがほとんどです。

その連絡の内容の1つが「落札した持分を買い取らないか?」ということです。業者との共有状態は他の共有者にとって都合がいいものではないため、その心理を揺さぶり「持分を買い取って単有にする方がいいのではないか?」と買い取りを求めてきます。

足元を見て高値で売られることも稀ではないのが実情です。

 

・落札者(業者)が持分売却を求めてくる

共有持分を落札した業者から、「あなたの持分を売ってほしい」と連絡をしてくるケースもあります。共有持分をすべて取得することで、業者は不動産全体の所有権を手に入れることができるからです。

これも持分買い取り同様、足元を見られて低い金額での売却を求められることがあります。

 

・持分を強制的に失うことはないが、不利益を受ける可能性がある

他の共有者が差押えられたとしても、自分の持分が差押えられるなど強制的に失うことはありません。しかし、共有持分を落札した業者に自分の持分を売買しなくてはいけなくなり、結果として不利益を受ける可能性があります。

また業者とのやり取りに疲弊し、精神的ダメージを負う可能性もあるので、注意したいところです。

 

 

■共有者の持分が差押えられたときの対処法(所有し続ける場合)

自分が「不動産に住み続けたい」「所有権を手放したくない」などの意思があり、持分を所有し続けたい場合はどのように対処したらいいでしょうか?その方法をお伝えします。

 

1.差押えられる前に共有者から持分を買い取る

滞納からすぐに差押えられるわけではないため、差押え前に相手の持分を買い取ってしまう方法があります。しかし注意点が2つあるのでご紹介します。

 

・詐害行為取消の対象となる可能性があるので注意

差押え前に共有者から持分を買い取る行為は「詐害行為取消」の対象になる可能性があります。

「詐害行為」とは、債務者が不当に財産を処分したり譲渡したりして、債権者に渡らないようにする行為を言います。そして「詐害行為取消」とは、債権者がその取引を無効にできる制度のことです。


・買い取り価格は交渉次第

基本的に、持分売買価格は不動産時価に持分割合を掛けて算出しますが、相手との交渉次第のため、この限りではありません。

しかし、あまり低い金額で買い取ると「みなし贈与」として贈与税がかかることがあるので気をつけましょう。

 

2.共有者の代わりに負債を支払う

差押え前に買い取りをすると詐害行為とみなされてしまうリスクがあるため、共有者の代わりに負債を支払い、その代わりに共有持分を譲ってもらう、という方法があります。

資力があることが前提ですが、これまでと変わらず不動産を所有することができるでしょう。

 

3.差押え後であれば、自分で落札する

差押え後に競売にかけられてしまったら、自分で落札する、という方法があります。

業者が入札したとしても、それよりも高い価格をつければ落札することができます。プロの業者との交渉は一般の方には不利になることが多いので、業者の手に渡る前に回避した方が損は少ないかもしれません。

 

■共有者の持分が差押えられたときの対処法(手放す場合)

「不動産の所有権を手放してもいい」と考えた時の対処法をお伝えします。


1.
差押え前であれば協力して不動産自体を売却

共有者全員の合意があれば、不動産を売却することができます。

借金を滞納している状態であれば、共有者はお金に困っていると思われるので、不動産売却に賛成するかもしれません。市場で不動産を売却すれば、競売になるよりも高値で売れるでしょう。しかし、差押え直前であれば上述した「詐害行為」となってしまう可能性もあるため、気をつけましょう。

 

2.差押え前に自分の共有持分のみを売却

差押えられて落札されてからだと、自分の共有持分の価値が低くなってしまう可能性があります。その前に、自分の意思で納得できる価格で売却をするといいでしょう。持分のみであれば相手の合意なしに売ることができます。

一般の人に共有持分を売ることは難しいですが、専門の業者なら買い取ってくれることがあります。差押え前に所有権を手放すことで、いざこざに巻き込まれずに済みます。

 

 

■自分が差押えにあったときの対処法

もし自分が借金を滞納して共有持分を差押えられそうになった場合、どうしたらいいでしょうか?

その対処法をお伝えします。

 

・滞納前に任意売却

共有者全員の合意が必要となりますが、住宅ローンが残っている場合「任意売却」という方法で清算することができます。

任意売却とは、住宅ローン債務者と共同で不動産を売る方法です。不動産市場で売ることができ、競売よりも高額で売れるため、滞納を回避することができるかもしれません。

また任意売却であれば、通常の不動産売買と同様、自分たちの意向で売却することができます。周囲の人にも、「差押えられて競売になった」などと知られることなく売ることができるのはメリットです。

 

・共有者に事前に報告

差押えられる前に共有者に報告しておきましょう。

共有者の持分は差押えられないにしても、自分の持分が他の人の手に渡ることで迷惑をかけてしまうかもしれません。差押えの可能性が生じる前に、共有持分を買い取ってもらえないか打診することもいいでしょう。

 

・自分の持分を業者に買い取ってもらう

他の共有者が任意売却や持分の買い取りに積極的ではない場合、専門の業者に持分のみの売却を検討することもいいでしょう。

持分を失うことでその不動産の所有権はなくなりますが、買い取ってくれた金額によっては、滞納を回避し差押えを防ぐことができるかもしれません。

■共有している不動産で困ったらプロに相談を

共有者が差押えにあってしまうと、自分の持分は直接的に失わないにしても、なんらかの影響が出る可能性があります。相手が差押えにあう前に対処できればベストですが、そうはいかないこともあるでしょう。

間違った対処をしてしまうと詐害行為とみなされてしまう可能性があるため、注意も必要です。自分で対処して問題を複雑化させる前に、プロに相談することをおすすめします。

 

 

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