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土地を分割して登記する「分筆」は、相続対策や土地の有効活用に役立つ手続きとして知られています。分筆によって、土地の一部を売却したり、地目を変更したりすることができます。相続人間の紛争を防ぐためにも有効です。
しかし、分筆の具体的な手続きの流れや、費用、必要書類については、意外と知られていないのではないでしょうか。分筆にはメリットだけでなく、注意点も存在します。
そこで本記事では、分筆の基礎知識から、メリット・デメリット、手続きの流れ、費用、必要書類、注意点までを詳しく解説します。
分筆とは
分筆とは、1つの土地を複数の土地に分割し、それぞれを独立した土地として登記することです。
土地を分割する単位は「筆」と呼ばれ、分筆によって土地の筆数が増えることになります。分筆の反対に、複数の土地を1つにまとめることを「合筆」といいます。
分筆を行うと、それぞれの土地に新しい地番が付与され、面積や形状も変更されます。ただし、分筆後も土地の所有者は変わらず、もとの土地に設定されていた抵当権などの権利も、分筆後の土地に引き継がれます。
分筆は、土地の一部を売却したい場合や、相続によって土地を分割したい場合などに利用されます。土地の一部で地目を変更したり、建物を建てたりする際にも、分筆が必要になることがあります。
分筆の手続きには、測量や登記などの専門的な知識が必要なため、通常は土地家屋調査士や司法書士に依頼することになります。
分筆の目的
分筆には、主に以下のような目的があります。
- 土地の一部を売却するため
- 相続によって土地を分割するため
- 土地の一部の地目や用途を変更するため
- 土地の一部に建物を建てるため
- 土地の有効活用や権利関係の整理のため
- 固定資産税の節税のため
このように、分筆は土地の権利関係を細分化し、土地の有効活用や資産管理の自由度を高めるために行われます。
分筆にかかる所要期間
分筆の所要期間は、以下の要因によって変動します。
- 分筆前の準備期間
- 行政機関の審査期間
- 境界確定の難易度
以上の要因を踏まえると、分筆の所要期間は、最短でも2~3ヶ月程度、長引くと1年以上かかることもあります。スムーズに進めるには、事前の準備を綿密に行い、関係者との合意形成を丁寧に図ることが重要です。
分筆のメリット
分筆には、以下のようなメリットがあります。
- 土地の権利関係を個別に設定できる(売却、担保設定など)
- 土地の一部の地目や用途を変更できる
- 相続人間の紛争を防止できる
- 固定資産税などの節税につながる可能性がある
それぞれ個別にみていきましょう。
土地の権利関係を個別に設定できる(売却、担保設定など)
分筆によって土地を分割すると、それぞれの土地に個別の権利関係を設定できるようになります。例えば、土地の一部だけを売却したり、一部だけを担保に差し出したりすることが可能になります。
分筆前は1つの土地に複数の共有者がいる場合、全員の合意がないと土地の処分ができませんでしたが、分筆によって各共有者が個別に所有する土地ができれば、それぞれが自由に土地を活用できるようになります。
このように、分筆は土地の権利関係を細分化し、所有者の自由度を高めることができます。土地の有効活用や資産管理の選択肢が広がるというメリットがあるのです。
土地の一部の地目や用途を変更できる
分筆によって、土地の一部だけの地目や用途を変更することができます。例えば、農地の一部を宅地に変更したり、山林の一部を駐車場にしたりすることが可能になります。
土地全体の地目を変更するには、農地法などの規制をクリアする必要がありますが、一部だけなら比較的容易に変更できます。土地の有効活用や収益性の向上につながるでしょう。
ただし、地目変更には所定の手続きが必要で、宅地並み課税といった税制上の影響もあります。メリットとデメリットをよく検討してから決める必要があります。
相続人間の紛争を防止できる
土地を相続する際、複数の相続人がいる場合、現物分割が原則とされています。しかし、土地をそのまま分割すると、面積や形状、利便性などの違いから、相続人間の納得を得られないことがあります。
そこで、予め土地を分筆しておけば、公平な分割が可能になります。例えば、道路に面した部分と奥まった部分に分けたり、それぞれの面積を均等にしたりすることで、相続人間の満足度を高められます。
土地を分割して個別の所有権にしておけば、各相続人が自由に土地を活用・処分できるため、相続後の紛争を防ぐことにもつながります。
固定資産税などの節税につながる可能性がある
土地の固定資産税は、その土地の評価額に基づいて課税されます。土地の評価額は、面積や形状、接道状況などによって決まるため、分筆によってこれらの条件が変われば、評価額も変わる可能性があります。
例えば、不整形な土地を整形に分筆したり、接道条件の悪い部分を切り離したりすることで、評価額が下がるケースがあります。住宅用地の特例を受けられる面積は限られているため、土地を分筆してそれぞれに住宅を建てれば、トータルの税負担を抑えられる可能性もあります。
ただし、一概に分筆が節税につながるとは限りません。分筆の方法や土地の条件によっては、逆に税負担が増える場合もあるので、注意が必要です。節税を目的とする場合は、専門家に相談するなど、慎重に検討することが大切です。
分筆の流れ
分筆を行う際は、以下のような流れで進めていきます。
- Step1.土地家屋調査士への依頼
- Step2.法務局での情報収集
- Step3.現地調査、立会い
- Step4.分筆測量、分筆図面の作成
- Step5.境界標の設置
- Step6.分筆登記申請書類の作成
- Step7.法務局での登記申請
それぞれ個別にみていきましょう。
Step1.土地家屋調査士への依頼
まず、分筆の手続きを依頼する土地家屋調査士を選びます。土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記や測量を行う専門家です。分筆の目的や土地の状況を伝え、スケジュールや費用の見積もりを確認しましょう。
依頼が決まったら、土地家屋調査士と正式な業務委託契約を交わします。この際、業務の内容、報酬、スケジュールなどを明確にしておくことが大切です。
Step2.法務局での情報収集
土地家屋調査士は、分筆の手続きに必要な情報を収集するため、法務局で登記簿や地図などの公的資料を取得します。具体的には、以下のような資料を収集します。
- 登記記録(登記簿謄本など)
- 地積測量図
- 地番現況図
- 公図(地番図)
これらの資料は、土地の現状や権利関係を把握するために欠かせません。特に、分筆前の土地の登記簿謄本は、土地の表示や所有者、権利の制限状況などを確認するために重要です。
分筆手続きに必要な書類の種類や枚数、審査基準なども、法務局で確認しておきます。自治体によって、提出書類や手数料などが異なる場合があるため留意しましょう。
Step3.現地調査、立会い
土地家屋調査士は、分筆する土地の現況を把握するため、現地で調査を行います。具体的には、以下のような内容を調査します。
- 土地の形状、地積
- 土地の利用状況
- 境界の状況
- 周辺環境
特に、境界の確認は重要な作業です。分筆前の土地の境界が不明確だと、分筆手続きに支障をきたします。土地家屋調査士は、隣接する土地の所有者立ち会いのもと、境界標や塀、柵などを手がかりに、境界を特定していきます。
境界の確認には、隣地所有者の同意が不可欠です。トラブルを防ぐためにも、立会いの日程調整は早めに行い、当日は和やかな雰囲気で進めることが大切です。境界が確定したら、隣地所有者から境界確認書にサインをもらいます。
Step4.分筆測量、分筆図面の作成
現地調査で得た情報をもとに、土地家屋調査士は分筆のための測量を行います。測量では、土地の形状や面積、境界線などを正確に測定し、図面化します。この測量図は、分筆登記の申請に必要な書類の1つです。
分筆図面は、法務局の審査で分筆の可否を判断する重要な資料となります。したがって、測量は精度が求められます。最新の測量機器を使い、誤差の少ない測量を心がける必要があります。
Step5.境界標の設置
分筆測量が完了したら、新しい境界上に境界標を設置します。境界標は、分筆後の土地の境界を明示するためのものです。
境界標の材質や大きさ、設置方法は、自治体の条例などで定められています。一般的には、コンクリート製や金属製の杭を地中に打ち込む方法が用いられます。
Step6.分筆登記申請書類の作成
分筆測量と境界標の設置が完了したら、分筆登記の申請書類を作成します。申請書類は、法務局に提出するもので、以下のようなものがあります。
- 登記申請書
- 登記原因証明情報(分筆理由を証明する書類)
- 地積測量図
- 分筆図面
- 境界確認書
- 委任状(代理人が申請する場合)
- 登録免許税納付用台紙
- 申請手数料
これらの書類は、法務局の定めた様式に従って作成する必要があります。記載内容に不備があると、申請が受理されない場合があります。
申請書類には、土地所有者の印鑑証明書や住民票などの本人確認書類を添付する必要があります。これらの書類は、発行日から3ヶ月以内のものを用意しましょう。
Step7.法務局での登記申請
申請書類が整ったら、土地家屋調査士が法務局に赴き、分筆登記の申請を行います。申請は、土地の所在地を管轄する法務局の出張所で行います。
法務局では、申請書類の記載内容や添付書類に不備がないかチェックします。問題がなければ、申請が受理され、登記官による審査が行われます。
審査では、分筆の理由や分筆後の土地の形状、面積などが、不動産登記法や民法などの法令に照らして適切かどうかが判断されます。審査の結果、問題がなければ、分筆登記が完了します。
登記が完了すると、分筆後の土地の登記簿が作成されます。登記簿には、土地の表示(所在、地番、地目、面積など)と所有者の氏名、住所などが記載されます。
登記済証の交付をもって、一連の分筆手続きが終了します。登記済証は、分筆後の土地の権利書となりますので、大切に保管しましょう。
分筆にかかる費用
分筆を行う際には、以下のような費用がかかります。
- 登録免許税
- 土地家屋調査士への報酬
次項より、個別にみていきましょう。
登録免許税
登録免許税は、不動産登記に課される国税です。分筆登記の場合、新たに作成される土地の登記簿1個につき1,000円の登録免許税がかかります。
例えば、1つの土地を2つに分筆する場合、分筆後の土地は2個になるため、登録免許税は2,000円となります。
登録免許税は、登記申請時に法務局に納付します。申請書類に、登録免許税を納付したことを証明する領収証を添付する必要があります。
ただし、登録免許税には、一定の免税措置があります。例えば、土地の分筆が公共事業のために行われる場合などは、登録免許税が免除されることがあります。
土地家屋調査士への報酬
分筆の手続きは、測量や登記申請など専門的な知識が必要なため、通常は土地家屋調査士に依頼します。土地家屋調査士への報酬は、以下のような内容で構成されます。
- 基本報酬:分筆の規模や難易度に応じて設定される報酬
- 実費:測量や交通費、印刷費など、分筆に必要な実費
- 諸経費:報酬の10%程度の事務手数料
土地家屋調査士への報酬は、分筆する土地の面積や形状、境界の状況などによって異なります。目安としては、30~50万円程度が相場です。
ただし、以下のような場合は、報酬が高くなる傾向があります。
- 分筆する土地が広大である
- 不整形な土地を分筆する
- 境界が確定していない、または境界トラブルがある
- 立会いや境界確認に時間がかかる
- 遠方の土地を分筆する
土地家屋調査士への報酬は、事前に見積もりを取り、納得のいく金額で依頼することが大切です。安易に安い報酬で依頼すると、手抜き工事になったり、トラブルに巻き込まれたりする恐れがあります。信頼できる土地家屋調査士を選びましょう。
分筆に関する注意点
分筆は土地の有効活用に役立つ手続きですが、次のような注意点があります。
- 土地が狭小化・不整形化し、活用や売却が難しくなる恐れがある
- 地積が極端に小さくなると分筆自体ができない
- 節税目的の不自然な分筆は認められない
- 隣地との境界確定が必要で手間と時間がかかる
- 分筆後に建物を建てる際の制限に注意が必要
以下より、詳しく解説します。
土地が狭小化・不整形化し、活用や売却が難しくなる恐れがある
分筆によって土地が細分化されると、一つひとつの土地が狭小になり、活用が難しくなる恐れがあります。特に、奥行きが深く間口が狭い土地や、三角形や五角形などの不整形な土地は、建物の建築や駐車場の設置などに制約が生じます。
狭小な土地は、売却する際の需要が限られ、価格が下がる傾向にあります。不整形な土地も、有効活用が難しいため、売却には不利になります。
地積が極端に小さくなると分筆自体ができない
分筆後の土地の面積(地積)が極端に小さくなると、分筆自体ができなくなります。
不動産登記法では、土地の最小登記面積が定められており、原則として1㎡以上でなければ登記できません。ただし、土地の合理的な利用のために必要な場合は、例外的に1㎡未満でも登記できるとされています。
自治体によっては、条例で最小敷地面積が定められている場合があります。例えば、都市計画法による建築物の敷地面積の最低限度を定める条例などです。
こうした規制を考慮せずに分筆すると、分筆自体が認められなかったり、分筆後の土地が建築できなかったりする恐れがあります。
節税目的の不自然な分筆は認められない
分筆によって土地の評価額が下がり、固定資産税などが減税される場合があります。しかし、節税だけを目的とした不自然な分筆は、認められない場合があります。
例えば、以下のような分筆は、課税逃れとみなされる可能性があります。
- 極端に細長い土地や不整形な土地に分筆する
- 実態とかけ離れた地目で分筆する
- 建物と土地を不自然に分筆する
こうした不自然な分筆は、税務署から更正処分を受け、追徴課税される恐れがあります。分筆は、あくまで土地の有効活用を目的として、自然な形状で行うことが大切です。
隣地との境界確定が必要で手間と時間がかかる
分筆を行うには、隣接する土地との境界を確定する必要があります。境界確定とは、隣地所有者の立会いのもと、土地の境界を現地で確認し、了承を得ることです。
しかし、境界確定には、以下のような手間と時間がかかります。
- 隣地所有者の連絡先を調べる
- 立会いの日程を調整する
- 現地で境界を確認し、測量する
- 境界標を設置する
- 境界確認書を作成し、署名捺印をもらう
特に、隣地所有者が多数いる場合や、境界をめぐってトラブルがある場合は、境界確定に時間を要します。場合によっては、数ヶ月から数年かかることもあります。
境界確定は、分筆手続きの中でも最も重要な部分です。トラブルを避けるために、隣地所有者とのコミュニケーションを大切にし、粘り強く対応することが求められます。
分筆後に建物を建てる際の制限に注意が必要
分筆後の土地に建物を建てる場合、建築基準法などの規制に注意が必要です。
例えば、以下のような規制があります。
- 接道義務:建築物の敷地は、原則として幅員4m以上の道路に2m以上接しなければならない
- 建ぺい率:建築物の建築面積の敷地面積に対する割合の上限
- 容積率:建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合の上限
- 斜線制限:日照、通風、採光、防火などのために建築物の高さを制限する規定
- 用途地域:都市計画法による建築物の用途や形態の制限
分筆後の土地が狭小になると、これらの規制をクリアするのが難しくなります。例えば、接道義務を満たせず建築できなかったり、斜線制限により希望の高さの建物が建てられなかったりする可能性があります。
したがって、分筆後に建物を建てる予定がある場合は、事前に建築基準法などの規制を確認し、建築プランに支障がないか検討する必要があります。
まとめ
分筆は、土地の有効活用や相続対策に役立つ手続きですが、メリットとデメリットがあります。分筆によって、土地の権利関係を細分化し、売却や担保設定などの選択肢が広がる一方で、土地が狭小化・不整形化するリスクもあります。
分筆には測量や登記など専門的な知識が必要で、手続きにはそれなりの費用と時間がかかります。特に、隣地との境界確定には、トラブルを避けるために細心の注意が求められます。
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