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相続問題が発生した際、時折起こり得る問題が「遺留分の侵害」です。遺言書などで相続人が指定されている場合、本来受け取れるべき財産を、受け取れないケースが存在するのです。
本記事では、そのような問題を解決する上で有効な「遺留分侵害請求」の基礎知識について詳しく解説します。「なんとかして遺留分を取り戻したい」とお考えの方は、ぜひお役立てください。
目次
そもそも遺留分とは
遺産の分け方が故人の遺言や贈与により不平等であるケースはしばしば発生します。例として、遺言書に「財産はすべて長男に」と記載があれば、次男や長女の取得分はゼロとなります。
遺言書が存在すると、その内容に基づき遺産が分配されるのが基本。しかし、ある範囲の相続人には、最低限受け取れる遺産の割合が存在します。それが「遺留分」と呼ばれるものです。
遺留分は、遺言書の内容に関係なく、必要に応じて主張することで受け取ることが可能です。
遺留分が認められる相続人は以下のとおり。
- 配偶者
- 子ども、孫:直系卑属
- 親、祖父母:直系尊属
注意点として、兄弟や姉妹、さらには甥や姪への遺留分の認定はなされません。遺留分侵害請求の権利とその範囲を認識しておきましょう。
遺留分侵害請求とは?
遺留分が遺言や贈与で不平等に行われた場合、法定相続人は侵害された取り分を取り戻せる権利があり、この権利を「遺留分侵害額請求権」といいます。
例えば、全遺産が長男のものとする遺言が存在する場面で、次男や長女も「遺留分侵害額請求権」を使うことで、彼らの権利としての遺留分を保証できます。
請求権は遺留分に該当する資産を取り戻す権利であるため、次男の権利が500万円分侵害された場合、次男は長男に500万円を請求できるのです。
ただし、民法1048条にもあるとおり、遺留分侵害額請求権には時効が存在します。
遺留分を取り戻したいと考えれば、被相続人の死や遺留分の侵害事実を知った場合、1年間以内に請求が必要です。
さらに、相続が開始してから10年間が経過すると、それを知らなかった場合でも、相続開始から10年後には請求権が消滅します。
以上を踏まえ、遺留分を取り戻したいと考えた場合は早めに対応を心がけましょう。
遺留分滅殺請求との違い
2019年7月1日からの改正相続法により、遺留分の請求手段が「遺留分減殺請求権」から「遺留分侵害額請求権」に変わりました。
かつての「遺留分減殺請求権」では、遺留分は「物権的権利」として考えられ、侵害された遺産自体の返還を求めるものでした。具体的には、不動産を長男だけが相続した際、次男が請求権を行使すると、その不動産を長男と共有する形で取り戻すことができたのです。
しかし、争いが絶えない親族間での不動産の共有は多くの場合、望まれないものです。このため、法律の改正が行われ、「遺留分減殺請求権」は「遺留分侵害額請求権」へと改められています。
これにより、不動産そのものを共有する代わりに、当該額の請求が主となり、より実用的な制度となったといえるでしょう。
遺留分侵害請求手続きの流れ
遺留分侵害請求の流れとしては、次のとおりです。
- 手順1:相手との協議
- 手順2:内容証明郵便での請求
- 手順3:請求調停の申し立て
- 手順4:遺留分侵害額請求訴訟
以下より、個別に解説します。
手順1:相手との協議
まず最初に、被侵害者として直接相手に連絡し、遺留分の支払いを求めることを検討しましょう。親しい間柄であれば、このステップで問題が解決することもあります。
遺留分を受け取る際には、「遺留分侵害に関する合意書」の作成も忘れずに行う必要があります。。文書化しておくことで、将来の紛争を回避できます。
手順2:内容証明郵便での請求
相手が直接の交渉で応じない場合、内容を正式に伝える「内容確認郵便」を利用して請求します。
請求は、「相続と遺留分侵害の知識を得てから1年間」でなければなりません。内容証明郵便を使うことで、時効を止められますので、長引く交渉にはこの方法を取ることが勧められます。
手順3:請求調停の申し立て
もし対話や内容確認の郵送でも解決に至らない場合、家庭裁判所への調停申立てが次のステップとなります。
調停では裁判所が仲介役となり、双方の意見を交換し合います。調停委員は両方の立場を聞きながら調整を行うことが役割。直接の対面を避けることで、冷静な判断が可能になるでしょう。
調停による合意が成立すれば、正式な調停調書が作成されます。もし相手が調停内容に違反する場合、強制的な実行も選択可能です。
手順4:遺留分侵害額請求訴訟
調停での合意が成立しない場合、次の手段として遺留分侵害請求の訴訟が考えられます。請求対象額が140万円までの場合は簡易裁判所、それを超える場合は地方裁判所が対応先となります。
勝訴するためには、確固とした証拠と適切にまとめられた請求内容が必要。裁判の進行中には和解の提案も考えられます。和解で合意が得られれば訴訟は終了となりますが、合意に至らず判決が下された場合、控訴も考えられます。
もし遺留分侵害請求を受けた場合は?
ここからは、「遺留分侵害請求」を“受ける側”になってしまった場合を想定して、対応方法を解説します。
まずは相手が本当に権利者かをチェック
遺留分の請求権は、すべての相続人が持つわけではありません。
被相続人の兄弟姉妹や、相続権を失った者(相続欠格者、被廃除者、相続放棄者)などには、遺留分の権利が認められていないのです。請求者が本当に権利を持っているかを最初に確認しましょう。
侵害請求の時効についても確認
遺留分侵害額の請求には時効が存在します。具体的には、遺留分権利者が相続の開始や遺留分侵害の事実を知った日から1年以内に請求しなければならず、1年を過ぎるとその権利は消滅します。
さらに、相続の開始から10年が経過した場合でも、遺留分侵害額の請求権はなくなります。
遺留分侵害請求の内容が適切かをチェックする方法
もし遺留分侵害請求を受けてしまった場合は、その内容が正確かどうかを確認するために以下の点をチェックしましょう。
- 遺留分の計算方法
- 相続財産の評価
- 特別受益についてチェック
それぞれについて、詳細に説明します。
遺留分の計算方法
遺留分を確認する際、遺留分権利者が数名いるときの計算方法は、以下のとおりです。
- 遺留分全体(総体的遺留分)× 各相続人の法定相続分 = 各相続人の遺留分(個別的遺留分)
総体的遺留分とはm遺産の全額から見た遺留分の比率。被相続人の両親だけが相続人なら1/3、それ以外なら1/2となります。
例えば、父が亡くなり、相続人が兄弟2人だけのケースを考えてみましょう。遺言には全遺産は自分にと記されているなら、総体的遺留分は1/2、法定相続分は1/2です。
したがって、兄の遺留分は以下のようになります。
- 1/2(総体的遺留分)×1/2(法定相続分)=1/4(個別的遺留分)
もし、遺産全体が5,000なら、遺言で何も受け取れない兄も、その1/4、つまり1,250万円の遺留分が保障されます。
相続財産の評価
遺留分の金額、見た目上は明確な計算式から出るものと思われがちです。しかし、実際のところ、多くの点で議論の余地が生まれます。
例えば、相続財産に不動産が含まれていると、その評価方法には様々なアプローチが考えられ、結果としてその評価額に差が出ることも。ここで、相手が提示する不動産の評価額に異議を唱え、その額を減少させる戦略も可能です。
評価額を下げると、結果として遺留分侵害額も小さくなります。相手の示す評価額に盲目的に従わず、独自の鑑定や査定を基に適正な額を主張することは重要。これについては、専門家に依頼するのが賢明です。
特別受益についてチェック
被相続人から請求者への生前贈与がある場合、その中には特別受益を意味する贈与も考えられます。特別受益の範疇は「①:遺贈全般」に加え、②「婚姻・養子縁組を目的としたもの」や「③:生計資本としての贈与」が該当します。言い換えれば、日常の夫婦の生活維持や家族の支援を超える特別な利点と捉えられるのです。
生前贈与の中に特別受益が含まれると、その額を相続財産に足して、法定相続分を算出されます。
この過程で、先の贈与の金額が差し引かれ、その結果が具体的な相続分として認識されます。特別受益の存在を確認し、その上で適切に計算を行うことで、適正な相続分を計算可能です。
遺留分侵害請求を受けたら絶対に放置しないようにしよう
遺留分侵害額請求を無視する行動は、多くの不利益を引き起こす可能性があります。それには次のようなリスクが含まれます。
- 調停の放置とその結果
- 訴訟への対応の重要性
- 遅延損害金のリスク
調停を放置すると、不合意として終了してしまう可能性が高まります。ただし、これによって直ちに財産の差し押さえが行われるわけではありません。
ただし、放置の結果、訴訟が提起された場合、裁判所に出頭しないでいると、相手方の主張が認められてしまいます。この場合、強制執行によって財産が差し押さえられることが考えられ、最悪のケースとしては、不動産が競売にかけられかねないのです。
放置することで、本来の請求額に加えて遅延損害金が請求される可能性が増えますので、遺留分侵害請求を受けたらしっかりと対応しましょう。
まとめ
相続に関する問題は、家族間の関係や感情を損なうことも考えられるため、専門的な知識と対応が求められます。特に遺留分侵害請求を受けた際の対応は、適切に行わなければ、不利益を被るリスクが増してしまいかねません。
相続に関する問題や不安がある場合、適切な知識を身につけるとともに、具体的な手続きや相談内容については、信頼できる専門家に相談しましょう。
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