誰も住んでいない空き家なら、火災保険は不要だと思っていませんか?
実は、空き家では放火・漏電による火災・自然災害による損壊・管理不備による第三者への損害など、予期せぬリスクに備えるには火災保険が必要です。
ただし、空き家の火災保険は一般の加入条件や保険料が異なるため注意しなくてはいけません。
本記事では、空き家の火災保険の必要性から選び方、保険料の相場、おすすめの保険商品まで具体的に解説します。
空き家の火災保険が重要な理由
空き家の火災保険が重要な理由は主に4つあります。万が一のトラブルを避けるためにしっかり把握しておきましょう。

空き家は放火魔に狙われやすい
空き家は人の目が届かないことが多く、周囲からも「使われていない建物」として認識されやすいため、放火の標的となりやすい傾向があります。
特に、夜間や人通りの少ないエリアでは、不審者が侵入して火をつけるという犯罪リスクが高まります。このようなリスクに備えるためにも、火災保険への加入は必要です。
悪天候による損害を受ける
台風や大雪、落雷といった自然災害も、空き家に被害をもたらす原因の1つです。
▼自然災害による被害の例
- 屋根が吹き飛ぶ
- 窓が割れる
- 火災に発展する など
住人がいれば事前に雨戸を閉めたり、倒れそうな樹木を処理したりと予防策を講じることができますが、空き家ではすぐ対応することができません。
自然災害の二次被害にも対応できる火災保険を契約しておくことが大切です。
漏電して火災が発生する
空き家に電気が通っている状態で放置されると、配線の劣化や湿気などによって漏電が起きることがあります。
漏電は見えないところで発生するため、気づかないうちに出火して建物全体に火が広がるかもしれません。
特に古い木造住宅は電気設備の老朽化が原因となって火災が起きやすくなっているため、定期的な点検とともに火災保険による備えが必要です。
火災後に数百万円の損害賠償が発生する
空き家で火災が起きても、隣家に延焼しただけで所有者が当然に損害賠償責任を負うわけではありません。
失火による延焼については、失火責任法により重大な過失がない限り、民法709条に基づく損害賠償責任が制限されます。
一方、管理が不十分な状態で外壁や屋根が落下し、第三者に損害を与えた場合などは、火災とは別に責任を問われる可能性があります。また、自分が所有する空き家の修繕費や解体費は、火災保険などで補償されなければ所有者自身の負担です。
そのため、空き家を所有している場合は、自分の建物に対する補償と第三者への賠償に備える補償を分けて確認する必要があります。
空き家の火災保険に加入するメリット
火災保険に加入するメリットは以下の3つです。

予期せぬ火災から建物を守れる
火災保険に加入する主な目的は火災による損害への備えです。
放火や漏電による火災だけでなく、隣家からの延焼被害なども保険の対象となります。
保険金は建物の修繕費用だけでなく、焼け残った建物の解体費用や、残存物の片付け費用にも充てることが可能です。実際の補償額は契約内容によって変動しますが、一般的な火災保険では建物の時価額を基準に算出された金額が支払われます。
自然災害による被害も補償を受けられる
火災保険は自然災害による被害も以下のように、幅広くカバーしてくれます。
| 自然災害の内容 | 保証内容 |
| 風災 | 台風や竜巻による屋根や外壁の損壊 |
| 水災 | 豪雨による浸水被害や土砂災害 |
| 雪災 | 積雪による建物の損壊 |
| 落雷 | 建物への直接的な被害や電気機器の故障 |
空き家は普段から点検することが難しいため、自然災害による被害が大きくなります。火災保険による補償があれば、突発的な災害にも対応することが可能です。
近隣への損害賠償リスクに備えられる
火災保険では、契約内容によって第三者への損害賠償に備えられる場合があります。
ただし、建物そのものを補償する火災保険に加入しているだけで、近隣への損害賠償まで自動的に補償されるとは限りません。
また、個人賠償責任特約についても、所有する空き家の管理に起因する事故が補償対象になるかどうかは契約条件によって異なります。空き家の外壁や屋根などが落下し、通行人や隣家に損害を与えるケースも考えられるためです。
加入時には建物への補償だけを見るのではなく、どのような事故で賠償責任補償が適用されるのかまで保険会社や代理店に確認しておくことが重要です。
空き家で火災保険に加入できないケース

老朽化や管理不足、住宅用火災保険の条件を満たさない場合は、空き家が火災保険に加入できないことがあります。
空き家は基本的に住宅用の一般的な火災保険に加入することはできません。
空き家には誰かが居住しているわけではないため、住宅物件としてはみなされないからです。
保険会社によっては加入できるケースもありますが、空き家を火災保険に加入させるためには、専用の火災保険を選択する必要があります。
空き家はトラブルが起きるリスクが高いと判断されやすいため、一般的に火災保険の金額も高めに設定されている点に注意しましょう。
空き家で火災保険に未加入の場合どうなる?
空き家で火災保険に加入していない場合、以下のリスクが懸念されます。

火災や自然災害が起きた際に、損害をすべて自己負担しなければなりません。
全焼や屋根崩落など、大きな被害が発生すれば数百万円単位の修復費用がかかることもあります。
また、火災や崩壊によって近隣へ被害が及んだ場合、管理責任を問われ、損害賠償請求を受ける可能性もあります。放火や漏電が原因だった場合には、所有者の過失とされるケースも少なくありません。
火災保険に未加入のままでは、数多くのリスクに備えることができません。万が一に備えて火災保険があれば、最悪の事態でも経済的な損害を最小限に抑えられます。
関連記事:空き家の放置を続けるとどうなる? 行政代執行までの流れを解説
空き家の火災保険を選ぶ際のポイント
空き家の火災保険を選ぶ際に、チェックすべきポイントを紹介します。

補償範囲

空き家の火災保険では、建物への補償を基本に、風災・水災など必要な補償を選び、不要な補償は見直しましょう。
基本補償に含まれる項目は以下のとおりです。
- 火災・落雷・破裂・爆発
- 風災・雹災・雪災
- 水災(浸水・土砂災害)
- 建物の外部からの物体の衝突
これらに加えて、空き家特有のリスクに対応する特約も検討しましょう。例えば「個人賠償責任特約」は建物の管理不備による第三者への賠償に備えることができます。
また、地域特性に応じて水災補償の要否を判断するなど、リスクの実態に即した補償範囲の設定が求められます。
保険金額
保険金額は建物の実態に即して適切に設定する必要があります。
高すぎる保険金額は無駄な保険料負担につながり、低すぎると十分な補償が得られません。
以下を考慮して、保険料を設定しましょう。
- 建物の時価評価額
- 解体費用や残存物取片付け費用
- 近隣への延焼時の想定賠償額
空き家の場合、建物の老朽化による価値の低下を考慮する必要があります。
保険期間と保険料のバランス
保険期間は保険料に大きく影響します。一般的に長期契約では保険料の割引が適用され、年換算での負担を抑えられます。
2年から5年の長期契約であれば、年払いと比べて5〜10%程度の保険料が割り引かれる仕組みとなっています。
ただし、空き家の今後の利用予定を考慮しなければなりません。売却や取り壊しの可能性がある場合は、保険の長期契約縛りが足かせとなる可能性があります。保険料の負担と契約期間の柔軟性のバランスを見極めることが重要です。
空き家の火災保険加入時の注意点
空き家の火災保険に加入する際、3つの注意点があります。

保険料が居住物件より高くなる
空き家の火災保険料は、居住中の住宅より高くなる場合があります。
完全な空き家は、使用実態や管理状況によって住宅物件ではなく一般物件として扱われることがあり、住宅向けの火災保険とは保険料や補償条件が異なるためです。
実際の保険料は建物の構造や所在地、床面積、保険金額、補償範囲などによって変わります。
空き家の火災保険料を確認するときは一律の相場だけで判断せず、同じ条件で複数の保険会社から見積もりを取得すると比較できます。
保険会社の審査が厳しくなる
空き家の引受審査において、保険会社は建物の管理状態を重視するため、居住していない物件の場合、火災保険を引き受けてくれないケースもあります。
▼保険会社によるチェックポイント
- 定期的な見回りや換気はしているか
- 清掃などが行われているか
- 雑草は適切に管理されているか
- 不審者の侵入を防ぐ対策は十分か など
これらの条件を満たせない場合は、契約を断られることもあるため注意しましょう。
補償内容が限定される
一般の居住用物件と比べ、空き家の火災保険は補償内容が限定される傾向があります。
水災や盗難などの補償が付帯できないケースや、家財の補償が対象外となるケースも珍しくありません。
地震保険の加入が難しい場合もあるため、保証内容については十分に確認しておきましょう。
保険料の相場はどのくらい?
空き家の火災保険料は、一般的な居住用物件と比べて1.5〜2倍程度高額になります。
年間保険料は1万円から6万円程度が相場ですが、建物の状態や契約内容によって大きく変動します。主に「鉄骨造(M構造)」「耐火構造(T構造)」「非耐火構造(H構造)」によって異なります。

昭和56年5月31日以前に建築された建物は、新耐震基準を満たしていないため保険料が割高になります。
例えば、木造住宅で築40年の空き家の場合、新耐震基準を満たす同規模の建物と比べて、保険料が30%程度上乗せされるケースもあります。
(参考:e-Gov 法令検索「建築基準法施行令」)
災害リスクの高いエリアでは保険料が上がりやすいです。具体的には、土砂災害警戒区域や浸水想定区域に指定されている場合、標準的な保険料から20〜40%程度上乗せされる可能性があります。
保険料を抑えるには、火災保険の契約期間を長めに設定することで年間保険料を10%程度削減できます。また、補償内容を必要最小限に抑えれば保険料の負担を軽減できます。
ただし、補償を削りすぎると、万が一の際に十分な保障が受けられないこともあるので、適切なバランスを見極めるようにしましょう。
代表的な火災保険4選
空き家でも加入できる主要な火災保険商品を紹介します。空き家の火災保険選びに悩んでいる方は、ぜひチェックしてください。
【損保ジャパン】企業総合補償保険

(出典:損保ジャパン)
損保ジャパンの「企業総合補償保険」は、事業活動に伴う財産などのリスクを補償する事業者向けの火災保険です。そのため、個人が所有する空き家であれば一律に加入できる商品とはいえません。
空き家に利用できる火災保険を探している場合は、建物の用途や現在の使用状況、今後の利用予定などによって加入できる商品が変わります。特に、完全に使用していない住宅と事業用の建物では取り扱いが異なる可能性があります。
「空き家だから企業総合補償保険に加入できる」と判断せず、対象となる物件かどうかを損保ジャパンや取扱代理店へ確認したうえで検討する必要があります。
【東京海上日動】トータルアシスト住まいの保険

(出典:東京海上日動)
東京海上日動のトータルアシスト住まいの保険は、火災保険だけでなく地震保険も合わせて提供しています。そのため、包括的な補償が受けられるのはメリットといえるでしょう。
しかし、完全な空き家の場合は保険に加入することはできません。別荘のようにシーズンごとに住まいで利用していて、家財が備えられている必要があります。
【あいおいニッセイ同和損保】タフ・すまいの保険

(出典:あいおいニッセイ同和損保)
あいおいニッセイ同和損保が提供しているタフ・すまいの保険は、空き家の環境に応じて補償内容を選択できるのが特徴です。
補償を手厚くすることも、保険料を抑えることも可能です。別荘のように一定期間は住まいとして利用している空き家であれば、加入ができます。
【三井住友海上保険】GK すまいの保険

(出典:GK すまいの保険)
三井住友海上保険が提供しているGK すまいの保険は、事故受付を24時間365日行っているのが特徴です。夜間にトラブルが発生した場合でも、サポートを受けられます。
別荘のように季節的に住居として使われている場合や、転勤で一時的に住んでいる人がいない空き家などは保険に加入が可能です。
空き家を所有し続けるデメリット
空き家を所有し続けるには以下のようなデメリットがあります。

固定資産税を支払い続ける必要がある
空き家であっても所有している限り、毎年の固定資産税や都市計画税を支払わなくてはいけません。
また、管理が行き届かず「管理不全空家等」や「特定空家等」として市区町村から勧告を受けると、住宅用地特例の対象から外れ、固定資産税などの負担が増える可能性があります。
2023年12月に施行された改正空家法により、「特定空家等」になる前の段階にある「管理不全空家等」も勧告の対象となりました。そのため、空き家を利用していなくても、適切に管理しなければ維持コストが増える可能性があります。
(参考:e-Gov 法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法/固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」)
定期的な管理の手間がかかる
空き家は定期的に掃除や通風、防犯の確認などの管理が必要です。
管理を怠ると劣化が進み、建物の資産価値が下がってしまうだけでなく、修繕コストも増加します。また、遠方に住んでいる場合や忙しい場合は、管理のための移動や手間も負担となります。
管理を怠るとトラブルの原因となる可能性がある
空き家の管理を怠ると、さまざまな近隣トラブルを招くおそれがあります。
- 雑草や樹木が越境してしまう
- 建物の一部が崩れて通行人や隣家に被害を与える
- 不審者が侵入して事件に発展する など
管理不足による問題が発生した場合、所有者が損害賠償責任を負う可能性があります。
利用する予定のない空き家は売却するのがおすすめ!
空き家は所有しているだけでトラブルの原因となります。
そのため、利用する予定のない空き家は売却することも選択肢の一つです。売却すれば空き家に関するトラブルが起こったとしても、責任を負う必要はありません。
不動産会社の中には空き家の買取を専門に行っている業者もあります。今後、空き家を利用する予定がない場合は売却も積極的に検討しましょう。
空き家の維持に負担を感じているなら、まずは空き家の簡易査定ができるので以下より試してください。

関連記事:東京都で空き家を買い取ってくれるおすすめ業者5選!買取相場や注意点も詳しく解説
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空き家の火災保険に関するQ&A
空き家の火災保険に関する質問は、以下のとおりです。
- 相続時の火災保険は名義変更だけでいい?
- 空き家は一般物件として申し込む必要がある?
- 火災保険の契約期間は何年がお得?
- 火災保険に入っていないと損害賠償はどうなる?
- 火災保険の1か月の相場はいくら?
それでは、それぞれの質問とその回答を紹介します。
相続時の火災保険は名義変更だけでいい?
「故人が加入していた火災保険をそのまま引き継げば良い」と考えがちですが、実はそう単純ではありません。空き家になることで建物の使用状況が変わるため、保険契約の見直しが必要になります。
空き家は一般物件として申し込む必要がある?
空き家の利用状況によって、住宅物件として扱われるケースもあります。ただし、完全な空き家で今後の利用予定がない場合は、一般物件として申し込む必要があります。
火災保険の契約期間は何年がお得?
一般的に、長期契約を選択すると保険料が割安になります。2年契約で年間保険料の5%程度、5年契約では10%程度の割引が適用されるケースが多く見られます。
火災保険に入っていないと損害賠償はどうなる?
火災保険に未加入の場合、空き家から出火して近隣に被害が及んだ際の損害賠償は、すべて所有者の自己負担となります。実際の賠償額は数千万円規模になることも珍しくありません。
火災保険の1か月の相場はいくら?
火災保険は年間契約や数年単位の長期契約でまとめて支払うのが一般的で、月払いの相場として明確な基準が示されているわけではありません。目安として、空き家の年間保険料が1万円〜6万円程度(平均3万〜4万円前後)とされていることから、これを12で割った金額が単純計算上の月あたりの負担感に近くなります。
空き家のリスクを理解した上で火災保険に加入しよう!
空き家の火災保険はコストではなく、将来のトラブルを防ぐために必要な保険です。
放置や誤解が原因で、思わぬ出費や損害賠償に発展するケースも少なくありません。加入の際は、建物の状態・所在地・利用予定を整理し、補償がどこまで必要かを具体的に見直すことが必要です。
もし見積もり段階で迷う場合は、「空き家専門の買取・管理サービス」や「火災保険の取扱代理店」へ相談しましょう。
リスクを「知って終わり」にせず、実際に動いて対策することが、空き家の資産価値を守る最も確実な方法です。
運営団体 2019年1月29日設立。訳あり不動産の買取を行う不動産会社。相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産を買い取り、法的知識や専門知識を以って、再度市場に流通させている。 訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を展開。 経済界(2022年)、日刊ゲンダイ(2022年)、TBSラジオ「BOOST!」(2023年)、夕刊フジ(2023年)などで訳あり不動産について解説している。2024年度ベストベンチャー100選出。 これまでの買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』(代表取締役 丸岡・著)を2024年5月2日に出版。 |












