こんにちは。ワケガイ編集部です。
相続した空き家の名義変更を後回しにしていると、「売却が進まない」「管理や税金の負担が増える」「相続人同士の合意形成が難しくなる」といった問題が起こりやすくなります。
空き家の名義変更は、被相続人から相続人へ名義を移す相続登記を行い、所有者を明確にするための手続きです。2025年現在、この相続登記は相続開始を知った日から3年以内の申請が義務化されており、従来のように放置することはできません。
名義が曖昧なままでは、売却・活用・解体などの判断も進めづらく、後の世代に問題を残す要因にもなります。
本記事では、空き家の名義変更を怠った場合のリスク、登記の具体的な進め方、費用、よくあるトラブルの解決方法、名義変更後の活用までを詳しく解説します。
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目次
2025年現在、相続登記は義務化されている!
相続した不動産を誰が正式に受け継ぐのかを明確にするため、相続登記は2024年の法改正で義務化されました。これまでは半ば「任意」のように扱われ、名義をそのままにしてもすぐに不利益が生じるわけではありませんでした。
(参考:東京法務局「相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)」)

(出典:東京法務局「相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)」)
しかし、全国で空き家や所有者不明土地が増え、自治体や近隣住民が管理に困るケースが急増したことを受け、放置を前提とする扱いは見直されました。2025年を迎えた現在では、名義変更は社会全体のトラブルを避けるための最低限の手続きとして位置づけられています。
相続登記の義務化は、「相続が発生した日」ではなく、「相続した事実を知った日」からカウントが始まります。ここでいう“知った日”は、一般的には死亡届の提出や、戸籍で死亡を確認した時点を意味します。その日から3年以内に名義変更を済ませる必要があります。
期限を過ぎると10万円以下の過料が科される可能性があり、従来のように先延ばしにしても支障がないと判断するのは危険です。
空き家の相続登記をしないとどのようなリスクがある?
空き家の相続登記を長期間放置すると、単に「名義が古いまま」という状態にとどまらず、さまざまなトラブルなどが発生する可能性があります。
ここからは、空き家の名義変更を怠った場合に生じやすい主なリスクを、三つの側面に分けて整理します。
- 法的リスク
- 経済的リスク
- 管理・トラブルリスク
それぞれ個別にみていきましょう。
法的リスク
相続登記を放置すると、まず問題になるのが法律上の扱いです。特に近年は所有者不明土地の増加が社会問題化し、国としても未登記の不動産を減らす方向へ政策が大きく動いています。
こうした背景の中で、相続登記を完了していない状態は“単なる手続きの遅れ”として片づけられなくなりました。法改正により具体的な義務と罰則が設けられたため、従来よりも対応の遅れが重大な不利益につながる状況になっています。
相続登記義務化の過料対象になる
義務化により、相続登記を3年以内に行わなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。過料は刑罰ではありませんが、期限の経過を放置していると行政からの照会が届くこともあり、対応を後回しにするほど負担が増していきます。
義務化前と異なり、名義変更を長期間放置することが前提ではなくなった点を理解しておきましょう。
売却・贈与・担保設定ができなくなる
名義が故人のままでは、不動産の所有者が法律上確定していない状態になるため、売却や贈与、担保設定などの手続きが進みません。
もちろん、買主側は登記簿で所有者を確認するため、名義が故人である限り契約の締結ができないままです。住宅ローンを組む場合も同様で、金融機関は名義が整っていない不動産を担保として扱いません。結果として、相続登記を終えるまでは、実質的に不動産の活用方法が制限されてしまいます。
二次相続で相続人が増え、手続きがほぼ不可能になる
相続登記をしないまま時間がたつと、相続人がさらに増えてしまう「二次相続」が発生します。ひとりが亡くなるごとにその子どもや配偶者が新たな相続人となり、人数は数年で倍以上に膨らむことも珍しくありません。
相続人が増えるほど、遺産分割協議の合意形成が難しくなり、ひとりでも反対すれば手続きは進みません。最終的には誰も管理できない“所有者不明土地”と同じ状態に近づき、売却も活用も見通しが立たなくなってしまいます。
経済的リスク
相続登記を先延ばしにしてしまうと、法律上の手続きだけでなく、日常的な費用負担にも影響が及びます。空き家は所有しているだけで固定資産税がかかり、管理を怠れば倒壊防止の補修や草刈りといった支出が続きます。
名義が整っていない状態では売却や活用の判断が遅れ、結果として支出だけが積み重なりがちです。また、時間の経過とともに建物は老朽化し、周辺の不動産市場の動きによっては価格が下がることもあります。
固定資産税や管理費などの維持コストが継続する
空き家は使用していなくても固定資産税がかかり続けます。住宅用地特例により税額が抑えられている物件でも、管理が不十分と判断されると特例が外れ、税額が大幅に増えるケースがあるのです。
雑草の伐採や外壁の補修などの管理費も所有者の負担となるため、名義変更ができず売却や活用が遅れるほど支払いは積み上がっていきます。相続人間で費用をどう分担するか決まっていない場合、特定の人に負担が偏ることもよくあります。
資産価値が下落し、将来の売却価格に影響する
名義を整理しないまま数年がたつと、建物は劣化し、売却を検討する段階で修繕がほぼ必須になる可能性も考えられます。
立地や周辺環境によっては空き家が多い地域ほど価格が下落する傾向も指摘されており、判断を先延ばしにしたことで本来得られたはずの売却益が減ることもあります。
空き家特例や控除などの税制優遇が使えなくなる
相続した空き家には、一定の条件を満たすと譲渡所得が最大3,000万円まで控除される「空き家特例」があります。しかし、この特例を使うには「相続登記が済んでいること」が前提になります。
(参考:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)
名義変更ができていない状態では売却手続きが進まず、適用期限に間に合わなくなることもあります。売却益が出る物件ほど税負担に差が出やすいため、名義の整理が遅れたことで得られるはずのメリットを得られなくなる点には留意しておきましょう。
管理・トラブルリスク
相続登記をしないまま空き家を放置すると、管理に関する問題が急速に増えていきます。名義が整理されていない状態では、誰が責任を持って管理すべきかが曖昧になり、相続人同士で負担の押し付け合いが起こりやすくなります。
相続人が複数いる場合は特に、管理や維持の判断が後回しにされ、老朽化が進んでから初めて深刻なトラブルに気づくケースが多く見られます。倒壊の危険や雑草の繁茂などが近隣に迷惑をかけると、クレームや損害賠償につながることも避けられません。
共有者間の合意形成が難航し、管理責任が曖昧になる
相続人が複数いる状態で名義が整理されていないと、草刈りや修繕、清掃といった基本的な管理判断ができません。
「誰が費用を負担するのか」「どこまで対応するのか」が決まらないまま時間が過ぎることで、結局は誰も動かず建物の状態が悪化し、周囲から苦情が寄せられることすらあります。
「相続人の一人が遠方に住んでいて連絡がつかない」「一部の相続人が管理に非協力的」といった状況は典型例で、名義の曖昧さが管理不全に直結します。
老朽化・倒壊などにより損害賠償責任が発生する
空き家は放置するほど建物の劣化が進み、台風や地震の際に屋根材が飛散したり、外壁が落下したりする危険が高まります。こうした事故で隣家や通行人に被害が出た場合、所有者側に修繕費や損害賠償が請求されることがあります。
名義が整っていないからといって責任が免れるわけではなく、相続人全員が管理責任を問われることもあり、早期の対応が求められます。老朽化の兆候を見逃すと負担が突然大きく跳ね上がる点に注意が必要です。
特定空家等に指定され、行政指導・代執行の対象になる
自治体は倒壊の危険がある住宅や周囲に悪影響を与える物件を「特定空家等」として扱い、指導や勧告を行うことがあります。改善命令に従わない場合は行政代執行が行われ、解体費用が請求される可能性すら存在します。
(参考:e-Gov 法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」)
名義が未整理の空き家は管理が遅れやすく、特定空家の基準に該当しやすい点が問題です。固定資産税の住宅用地特例が外れることもあり、税負担が増える可能性も無視できません。
不法占拠や放火など第三者トラブルの温床となる
管理が疎かになった空き家は、部外者の侵入や不法投棄のターゲットになりやすい傾向があります。長期間誰も出入りしていない建物は人の目が届きにくく、悪意のある占有や放火のリスクが高まります。
実際に、自治体の空き家対策窓口では「深夜に人が出入りしている」「ゴミが持ち込まれている」といった相談が多く寄せられており、管理不全の空き家が地域の防犯上の課題となることが明らかになっています。
空き家を相続した場合の登記の流れ
相続登記は、一見すると専門的な手続きのように感じられますが、実際には順序さえ理解しておけば進め方は比較的シンプルで、以下の5ステップに分けられます。
- 手順①:登記簿と固定資産評価証明書の確認
- 手順②:相続人の確定と戸籍収集
- 手順③:遺産分割協議で名義人を決める
- 手順④:相続登記に必要な書類を揃える
- 手順⑤:法務局へ申請し、登記完了を待つ
次項より、詳しく解説します。
手順①:登記簿と固定資産評価証明書の確認
最初に行うべきことは、不動産の現状を把握することです。登記簿(全部事項証明書)を取得すれば、名義人が誰になっているか、抵当権などの権利関係が残っていないかを確認できます。
名義が故人のままなのか、あるいはさらに前の世代で止まっているのかを知ることで、必要な戸籍の範囲や今後の手続きの複雑さが見えてきます。また、固定資産評価証明書は登録免許税の計算に使うだけでなく、売却や相続税の検討にも関わる基本資料となります。
市区町村役場で取得でき、建物と土地の評価額を把握することで、手続きに必要な費用の見通しが立ちやすくなります。
手順②:相続人の確定と戸籍収集
登記簿で名義人を確認したら、その名義人に対して誰が相続人になるのかを確定します。相続人の範囲は民法で決められており、配偶者、子、兄弟姉妹など、状況によって変わります。
確定のためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍をそろえ、婚姻歴や子の有無を確認する必要があります。相続人が多い家庭や、前婚の子がいるケースでは、予想外の相続人が見つかることも珍しくありません。
相続人が確定すると、各人から署名や押印をもらう段階に進めるため、戸籍の収集は相続登記の基盤となる作業です。市区町村役場での発行請求は郵送でも可能ですが、古い戸籍が他県に点在していると時間がかかることがあります。
手順③:遺産分割協議で名義人を決める
相続人が確定したら、不動産を誰の名義にするのかを相続人全員で話し合います。遺産分割協議は形式ばった会議をする必要はなく、電話や書面でのやり取りでも成立しますが、最終的には全員の合意を一つの書面にまとめる必要があります。
空き家の場合、「誰が管理を引き継ぐのか」「売却を前提にするのか」といった方向性が決まっていないと協議が停滞しやすいため、今後の扱いについても含めて話しておくと進めやすくなります。
相続人の中に遠方在住者がいる場合や、久しぶりに連絡を取る相手が含まれる場合には、署名と押印の回収に時間がかかることがあります。
手順④:相続登記に必要な書類を揃える
名義人が決まったら、登記申請に必要な書類を集めていきます。代表的なものは、遺産分割協議書、被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍、住民票、固定資産評価証明書などです。
これに加えて、協議の内容や相続形態によっては印鑑証明書や代襲相続に関する戸籍が必要になることもあります。各書類は発行元が市区町村や法務局など複数に分かれており、郵送請求を利用すると日数がかかることも珍しくありません。
特に古い戸籍は保管先が変わっている場合もあるため、順番に追っていく根気が求められます。書類が一つでも不足していると登記が受理されないため、申請前に一度整理して確認する時間を確保しておくと安心です。
手順⑤:法務局へ申請し、登記完了を待つ
必要書類がそろったら、法務局に相続登記を申請します。窓口に持参しても郵送でも手続きは可能で、近年はオンライン申請を選ぶ人も増えています。
書類に不備がある場合は法務局から問い合わせが入るため、迅速に対応できるよう連絡の取りやすい状況を整えておくとスムーズです。申請が受理されると審査が行われ、完了までの期間は数日から数週間ほどが一般的ですが、繁忙期や内容の複雑さによって変動します。
登記が完了すると、新しい名義人が記載された「登記識別情報通知」や「登記完了証」が発行され、名義変更が正式に終了します。
空き家の相続登記でかかる費用
相続登記を進める上で、多くの方が気になるのが「どれくらいの費用が必要なのか」という点なのではないでしょうか。相続登記でかかる費用は主に以下のものが必要になってきます。
- 登録免許税
- 各種証明書の取得費用
- 司法書士報酬
- 未登記建物の追加費用
- 遺産分割協議書の作成費用
それぞれ個別にみていきましょう。
登録免許税
相続登記に必ず発生するのが登録免許税です。これは国に納める税金で、不動産の固定資産評価額を基準に計算されます。
相続による名義変更の場合、税率は0.4%と定められており、例えば評価額1,000万円の土地であれば4万円が目安となります。
| 内容 | 税率 |
|---|---|
| 所有権の保存 | 0.4% |
| 売買または競売による所有権の移転 | 2% |
| 相続または法人の合併による所有権の移転 | 0.4% |
| その他の所有権の移転(贈与・交換・収用等) | 2% |
(参考:国税庁「登録免許税のあらまし」)
評価額によって金額が変わるため、手続きの前に固定資産評価証明書を取得しておくと、全体の予算を把握しやすくなります。
また、建物と土地は評価額が別々に設定されているため、両方がある場合はそれぞれに税金がかかります。相続登記を行う際には必ず必要となる費用のため、早めに確認しておくと安心です。
関連記事:登録免許税とは?計算方法と軽減措置、具体的な相場まで徹底解説
各種証明書の取得費用
相続登記には多くの公的書類が必要で、これらを揃える際の実費も必要。代表的な書類として、被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍謄本、住民票や固定資産評価証明書などがあります。
戸籍は1通あたり数百円ですが、出生まで遡ると複数の自治体に請求することになり「思っていたより費用が嵩んだ」という状況に陥りかねません。
特に、家族構成が複雑な場合や、古い戸籍が別の自治体に移動している場合は、請求先が増えて1万円前後になるケースも珍しくありません。固定資産評価証明書は市区町村役場で取得でき、300円〜500円程度が一般的です。
司法書士報酬
相続登記を司法書士に依頼する場合、報酬金の支払いが発生します。費用は事務所によって幅がありますが、一般的には5万円〜10万円前後が多くなっています。
相続人が多い、戸籍が複雑、登記内容が複数にわたるといったケースでは、作業量が増えるため上乗せされることもあります。司法書士に依頼する最大のメリットは、書類のチェックや不備の修正、法務局とのやり取りまで任せられる点です。
特に、出生から死亡までの戸籍が長く続く場合や、代襲相続が絡むケースでは、書類の整合性を取る作業に負担がかかりやすいため、経験のある専門家に任せることで手続きが停滞しにくくなります。
費用は発生しますが、全体の時間やリスクを考えると依頼した方がベターといえます。
未登記建物の追加費用
空き家のなかには、そもそも建物が登記されていないケースがあります。名義変更をするには、まず建物の存在を登記簿上に反映させる「表題登記」が必要で、この作業は土地家屋調査士が担当します。
費用は建物の規模や状況によって異なり、10万円〜20万円程度が目安です。古い家屋で図面が残っていない場合や、増築部分が未登記のまま残されている場合は追加で調査が必要となり、費用が上がることもあります。
未登記のままでは所有権移転そのものができないため、相続登記の前段階で避けて通れない作業です。
遺産分割協議書の作成費用
相続人の人数が多い家庭や、相続財産が複数にわたる場合などは、遺産分割合意を「遺産分割協議書」としてまとめる必要があります。自分たちで作成することも可能ですが、内容に誤りがあると法務局で受理されないことがあり、その場合は修正に時間を取られてしまいます。
司法書士や弁護士に作成を依頼する場合、費用は2万円〜5万円前後が一般的です。相続人全員の署名押印を揃える段階で書式の違いが問題になることもあるため、専門家に依頼するとスムーズに運びやすくなります。
また、相続人の中に代襲相続がいる、前婚の子がいるなど家族関係が複雑な場合は、協議書の作成も難易度が上がるため、依頼する人が増える傾向があります。
相続登記ができないケースとその対処法
相続登記は、書類の収集や協議を着実に進めれば完了できますが、実際には途中で行き詰まるケースも珍しくありません。相続人の所在が分からない、協議がまとまらない、登記簿の内容が現状と食い違っているなど、想定していなかった問題に直面することがあります。
こうした状況を放置してしまうと、名義変更が何年も進まず、空き家の管理や売却を始めることすらできません。
ここからは、実務で多い4つのケースについて、原因と対処方法を順に整理していきます。
相続人の連絡がつかないケース
相続人の中に音信不通の人がいると、遺産分割協議が成立せず、名義変更の手続きが前に進みません。戸籍をたどることで当該相続人の最後の住所までは確認できますが、その後の転居や失踪までは行政が追っているわけではないため、戸籍調査だけで所在が特定できない場合もあります。
こうした状況では、家庭裁判所に申し立てを行い「不在者財産管理人」を選任してもらう方法があります。管理人が相続人本人の代わりに協議へ参加し、必要な手続きを進めていく仕組みです。相続人が海外にいるケースでも同様に、代理人選任の手続きを利用することで対応できます。
相続人の所在が確認できないまま放置すると相続人がさらに増え、状況が複雑化していくため、早めに対応するようにしましょう。
遺産分割協議がまとまらないケース
相続人同士で意見が一致せず、協議が長引くケースもよく見られます。空き家を売却したい人と残したい人が対立していたり、相続割合で意見が割れていたりすると、署名や押印を得られず協議書が作れません。
こうした場合は、家庭裁判所での「調停」を利用し、第三者の仲介のもとで話し合いを進める方法があります。調停でも解決しない場合には、裁判所が最終的な分け方を判断する「審判」に進むことになります。
時間と手間はかかりますが、対立が深い家庭では審判を通じてようやく手続きが動き出すことも珍しくありません。
関連記事:遺産分割協議の進め方とは?話し合いを綺麗にまとめるための必要知識
登記簿と現状が一致しないケース(未登記建物・名義が古いなど)
空き家の中には、建物自体が登記されていないケースや、何代も前の名義のまま相続が止まっているケースがあります。未登記建物の場合は、まず建物の存在を登記簿に反映させる「表題登記」が必要です。
これは土地家屋調査士が担当し、図面の作成や現地調査を伴うため、一定の時間と費用がかかります。古い家屋の場合、増改築部分のみが未登記で残っていることもあり、その整理が求められます。
一方、名義が古いまま数世代にわたり相続されていないケースは、相続関係を一から整理するため、戸籍収集が非常に手間のかかる作業になります。相続人が多数に増えてしまい、協議が事実上不可能になる例もあります。
必要書類が揃わないケース
相続登記では、被相続人の出生から死亡までの戸籍を連続して揃える必要があります。しかし、古い戸籍が廃棄されていたり、戦前の戸籍が別の自治体に移されていたりすると、請求しても入手できないことも珍しくありません。
こうした場合は、役場から「除籍簿の保存期間が過ぎたため現存しない」旨の証明書を発行してもらい、代替書類として提出する方法があります。また、亡くなった時期や本籍が複数回変わっている人は、戸籍が複雑に分散していることがあり、すべてを辿るまでに日数を要します。
書類が揃わず手続きが止まってしまうと、相続人の協力を得るタイミングを逃し、登記完了まで長期化することもあります。
相続登記した後の空き家はどうすればいい?
名義が自分のものに変更されてはじめて、空き家をどのように扱うのかを具体的に検討できるようになります。ただし、空き家の状況や家族の意向によって選択肢は変わるため、どの方向が適しているかを比べながら考えていくことが大切です。
具体的には次のような選択肢が考えられます。
- 選択肢①:リフォームして活用する
- 選択肢②:売却して現金化する
- 選択肢③:更地にして土地活用する
- 選択肢④:空き家バンク・自治体制度を利用する
- 選択肢⑤:管理委託して保有し続ける
それぞれ個別に解説します。
選択肢①:リフォームして活用する
建物がまだ十分使える状態であれば、リフォームを前提に活用方法を検討できます。賃貸物件として貸し出す方法は、毎月の収入が得られる点が大きな魅力で、立地や間取りが需要に合えば安定した運用が期待できます。店舗や事務所などの事業用物件として使う方法もあり、周辺に観光地や商店が多い地域では選択肢が広がります。
近年は二拠点生活や短期滞在向けの住まいとして利用する人も増えており、相続した空き家が新しい生活スタイルの拠点になる可能性もあります。
ただし、リフォームには一定の費用がかかります。老朽化が進んでいる場合は、耐震補強や水回りの改修が必要になることもあり、事前の調査で修繕内容を把握しておくと判断しやすくなります。
選択肢②:売却して現金化する
空き家の管理が難しい場合や、相続人が遠方に住んでいる家庭では、売却して現金化する方法が現実的です。維持費の負担がなくなるうえ、相続人間での分配がしやすく、今後のトラブルを避けやすいというメリットがあります。
不動産会社に仲介を依頼する一般的な売却方法のほか、建物が老朽化している場合は土地として売却する、あるいは空き家の買取専門業者に直接売却する選択肢もあります。仲介より価格は下がる傾向がありますが、買主探しや修繕の負担がなく、短期間で手続きが済むため、急いで処分したい場合に向いています。
売却を検討する際は、相続した空き家に適用できる税制優遇の有無を確認しておくと負担が軽くなります。条件を満たせば、売却益から最大3,000万円を控除できる特例があり、適用できるかどうかで手取り額が大きく変わるケースもあります。
選択肢③:更地にして土地活用する
建物の老朽化が進んでいる場合や、修繕費が大きく膨らむと見込まれる場合は、思い切って建物を解体し、更地として活用する方法があります。
更地にすることで選べる用途が広がり、駐車場として貸し出したり、小規模な事業用地として地元企業に貸したりするケースが代表的です。日当たりや地形に恵まれていれば、太陽光発電の設置が検討できることもあります。
解体には費用がかかりますが、老朽化した建物を維持するよりも長期的な負担が軽くなることも期待できます。更地にすると売却がしやすくなる地域もありますので「建物の状態が悪くて買い手がつかない」という悩みを解消できるでしょう。
選択肢④:空き家バンク・自治体制度を利用する
近年は、多くの自治体が空き家対策として「空き家バンク」や移住支援制度を整備しています。空き家バンクに登録すると、移住希望者や地域活性化に関心のある人に対して物件を広く紹介でき、通常の不動産市場では出会えない層にアピールできます。
地方では、古い家屋を活かしたカフェや民泊、地域コミュニティ拠点として再生される例も増えています。
自治体によっては、改修費の補助や移住者向けの支援金を用意している地域もあり、空き家を残しながら地域に貢献できる選択肢として注目されています。空き家の特徴や立地が地域のニーズと合えば、売却や賃貸では実現しにくい形で活用が進むこともあります。
選択肢⑤:管理委託して保有し続ける
すぐに活用の方針が決まらない場合は、管理だけ委託して空き家を保有し続ける方法があります。業者に依頼すれば、通気や簡易清掃、庭木の手入れといった定期的な管理を代行してもらえるため、遠方に住んでいても状態を保ちやすくなります。
空き家は放置すると老朽化が加速しやすく、雑草や破損によって近隣トラブルにつながることもあるため、最低限の管理を続けるだけでも将来のリスクが大きく変わります。
管理委託を選ぶ人の中には、「売却のタイミングを見極めたい」「家族の事情で当面は動けない」といった事情を抱える人もいます。短期的に活用できない場合でも、状態を保っておくことで将来の選択肢が狭まらず、売却や賃貸への切り替えがスムーズに進みます。
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相続した空き家は、名義変更が済んでも活用方法が定まらず、維持費や管理の負担だけが続くケースが多くみられます。
特に、売却を急ぎたい場面や、相続人同士で方向性がまとまらない状況では、通常の仲介では買い手が見つからないこともあります。ワケガイでは、こうした“扱いづらい物件”を全国で検討できる体制を整えており、現況のままでの査定にも対応しています。
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FAQ:空き家の名義変更に関するよくある質問
空き家の名義変更にまつわる疑問は、相続の経験がない方にとって複雑に感じられることが少なくありません。特に「いつまでに名義変更を済ませればいいのか」「売却するときの特例は使えるのか」など、具体的な判断が必要になる場面では迷いやすいところです。
そこで、相続登記の実務でよく寄せられる質問を整理し、重要なポイントをわかりやすくまとめました。
親が亡くなった場合、名義変更はいつまでに済ませるべきなのか?
相続登記は、相続が発生した日ではなく「相続が発生したことを知った日」から3年以内に行うことが法律で定められています。死亡届の提出や戸籍で死亡を確認した時点が一般的な起算点となり、その日から期限が進んでいきます。
義務化以前は名義変更をしなくてもすぐに罰則が生じることはありませんでしたが、2024年の法改正によって状況が変わりました。期限を過ぎると10万円以下の過料となる可能性があり、名義を整理しないまま空き家を管理すると、その後の売却や解体の判断も遅れがちです。
相続した空き家を売却するときの「3000万円特別控除」とは何か?
相続した空き家を売却する際、一定の条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける制度があります。いわゆる「被相続人の居住用財産の譲渡所得の特例」で、昭和56年以前に建てられた旧耐震基準の住宅が対象です。
売却までに耐震改修を行うか、建物を解体して更地にすることが条件となり、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。
土地の名義変更を放置するとどのような問題が起きるのか?
土地の名義が故人のまま放置されると、売却や贈与などの手続きができないだけでなく、管理や税金の負担も曖昧になりがちです。名義人が亡くなるたびに相続人が増える「二次相続」が進むと、権利関係が複雑化し、話し合いによる整理が難しくなります。
相続人間で協議がまとまらず、名義変更が長期化するケースも珍しくありません。また、管理が不十分な状態が続くと、雑草の繁茂や老朽化による危険が生じ、近隣から苦情が寄せられることもあります。
まとめ
相続登記は名義変更のための形式的な手続きではなく、空き家を適切に扱うための「入り口」にあたります。名義が曖昧な状態が続くほど相続人は増え、協議や管理が難しくなり、空き家の老朽化や固定資産税の負担だけが積み重なります。
今回取り上げたリスクや手続きの流れ、登記が進まない場面での対処法を踏まえると、早い段階で状況を整理しておくことが後のトラブルを避ける近道になります。
相続した空き家の扱いに迷う場面では、まず名義を明確にし、そのうえで売却、活用、保有といった選択肢を比較し、負担が大きくなる前に方向性を決めていきましょう。












