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金銭を支払うときや不動産取引をする際に「債務」と「債権」という言葉を聞いたことがある人は少なくないでしょう。債務と債権、言葉が似ていることから混合されがちですが、正しく理解していないと、いざというときに困るかもしれません。
そこで今回は、債務と債権の違いと付随して出てくる言葉の意味や、不動産取引での事例などをあわせて解説します。
目次
債務と債権の違い
債務とは、特定の人に対して行うべき行為や給付などの義務のことです。この義務を負う人を「債務者」と呼び、もし複数の人が同一の債務を共有する場合、これを「連帯債務」と称します。
一方、債権は特定の人から特定の行為や給付を請求する権利を意味します。この権利を持つ人は「債権者」とされます。
例えば、商品を購入する場合、売主は買主に対して代金の支払いを請求する債権を有し、買主はその代金を支払う義務、すなわち債務を負います。しかし、この関係は表裏一体で、売主は買主に商品を引き渡す債務を負い、買主は商品の引き渡しを請求する債権を持つことになります。
債務と債権は相互依存的な関係にありますので、取引において自らの立場を正確に理解することが重要です。
債務・債権と物権の違い
物権は、不動産や動産に対する所有権や使用権など、物に直接関連する権利です。例えば、自宅や車、スマートフォンなど、自分が所有し自由に使用できる物は、物権の範囲内にあるといえます。
対照的に、債権は他者に対して何かを請求する権利で、債務は他者に何かを提供する義務を指します。これらは、人間関係に基づくもの。
物権は「物」に直接的な支配権を指し、主に物との関係に焦点を当てています。一方、債権・債務は「人」に対する権利や義務であり、人間関係が根底にあります。
このように、物権と債権・債務はその対象とする範囲において根本的な違いが存在します。
債務と債権の関係
ここからは、債務と債権の関係について整理して解説します。
双務(そうむ)契約
双務契約は、契約の当事者が共に債権者であり債務者であるタイプの契約です。この類型には、売買契約、労働契約、賃貸借契約などが含まれます。
例として、売買契約では売主が商品の引渡しという債務を負い、買主は代金支払いの債務を負います。こうして、双方が同時に債務者であり、逆の視点から見れば債権者となるのです。
片務(へんむ)契約
片務契約は、契約の一方の当事者のみが義務を負う形式の契約を指します。典型的な例は贈与契約で、贈与者は物を贈る義務を負いますが、授与者は何の義務も負いません。消費賃貸契約も片務契約に分類されます。
これは、借主が貸主から物を借り、その物を消費する目的で使用し、後に同等の物を返す契約です。
例えば、AさんがBさんから1,000円を借り、バス代として使用した後に、再び1,000円をBさんに返すケースがこれに該当します。ここで、AさんはBさんに返金する債務がありますが、BさんにはAさんに対する債務はありません。
相殺(そうさい)
相殺は、互いに同種の債権を持っている場合に、債権と債務を相互に消滅させる法的行為です。民法505条では、双方の債務が弁済期にある場合、債務者は相殺によって債務を免れることができると規定されています。
ただし、債務の性質によっては相殺が許されない場合もあります。相殺の具体的な形態には、債権者と債務者が同一になる合併による相殺や、破産手続き中の相殺などがあります。
これらの契約形態や相殺の法理を理解することは、日常の法律取引において重要です。それにより、自分の権利や義務を適切に認識し、法的紛争のリスクを軽減できます。
債務・債権はいつ発生する?
債務と債権は、さまざまな場面で発生します。ここでは、その具体的な発生タイミングと事例について詳しく解説します。
債務や債権は、日常生活の中でも頻繁に生じています。例えば、コンビニでおにぎりを購入する場合、あなたはコンビニに対して代金の支払いという債務を負います。同時に、購入したおにぎりを受け取るという債権を得ることになります。
それ以外ですと、以下のようなケースが考えられるでしょう。
- 売買契約
- 労働契約
- 賃貸借契約
- 事務管理
- 不当利得
- 不法行為
次項より、個別に解説します。
売買契約
売買契約では、両当事者に債権と債務が発生します。不動産取引を例に取ると、売主は買主に対して不動産を引き渡す義務(債務)を負い、同時に代金を受け取る権利(債権)があります。
逆に、買主は売主に対して代金の支払い義務(債務)を負いながら、不動産の引き渡しを受ける権利(債権)を持っています。
労働契約
労働契約も債務と債権が発生する一例です。小売店の店長(雇い主)は従業員に対して労働を要求する権利(債権)と、労働の対価として給与を支払う義務(債務)を持ちます。
一方、従業員は給与を請求する権利(債権)と、給与に見合った労働を提供する義務(債務)を負います。
賃貸借契約
賃貸借契約では、物件を借りる人が賃料の支払い義務(債務)を持ち、物件所有者は使用させる義務(債務)を負います。
同時に、借りる人は物件を使用する権利(債権)、物件所有者は賃料を受け取る権利(債権)を持つことになります。
事務管理
契約外の状況でも債務・債権関係が生じることがあります。例えば、事務管理のケースでは、他人のためにその人の同意なく事務を管理する行為が含まれます。
隣家の災害時の修理や、迷い込んだ犬の保護などがこれにあたります。これらの行為は、特定の要件を満たせば、事務管理として債権・債務関係を発生させる可能性があるため、留意が必要です。
不当利得
不当利得とは、法的な根拠がなく他人の財産や労務から利益を得ることを指します。典型的な例としては、「過払い金請求」があります。これは、貸金業者に対して、過剰に支払った利息を返還請求するものです。
貸金業者は、過払い金の返還請求があれば、過払い利息を返還する債務を負うことになります。
不法行為
不法行為は、故意または過失により他者に損害を与えた場合のことを指します。不法行為を行った者は、損害賠償の債務を負います。
ただし、不法行為が成立するには、行為と損害の間に因果関係が必要であり、責任能力の存在、そして行為の違法性(正当防衛などでないこと)が求められます。
双務(そうむ)契約時の民法上の規定
双務契約は、契約当事者が互いに権利と義務を持つ契約形態です。不測の事態が発生した際に公平性を保つため、民法では特定の規定が設けられています。
危険負担
危険負担とは、双務契約成立後、債務者の責任外の理由で目的物が滅失・毀損した場合、どちらの当事者がリスクを負うかに関する問題です。
滅失は物が完全に失われること、毀損は部分的な損傷を意味します。例えば、不動産引渡し直前の地震による住宅の倒壊では、売主と買主のどちらがリスクを負うかが問題となります。これは契約の具体的な内容によって異なります。
特定物に関する物権の設定または移転を目的とする双務契約の場合
不動産の所有権移転などが該当します。目的物が滅失・毀損した場合、売主の責任外であれば買主(債権者)がリスクを負い、代金の支払いを拒否できません。
特定物に関する物権の設定または移転を目的とする双務契約が「停止条件付」である場合
「停止条件付」契約は、特定の条件成就時に契約が成立するものです。この場合、滅失時は債務者がリスクを負い、売主は買主に代金を請求できません。毀損時は債権者がリスクを負い、売主は毀損物を渡し、買主は代金支払い義務を免れないため、留意しましょう。
債務者が義務を果たさない場合の債権者の対応方法
もし相手が債務を果たさない場合、どうなるのでしょうか。債務不履行が生じたときの対応やリスク回避する方法もあわせて解説します。
債務不履行
債務不履行とは、債務者が故意または過失によって債務を適切に履行しない状況を指します。これには主に三つの形態があります。
【債務不履行の種類】
- 履行遅滞:債務の履行に遅れが生じること
- 履行不能:債務の履行が不可能になること
- 不完全履行:一応債務は履行されたものの約束した通りではなかったこと
債務不履行が起こった場合の対応方法
債務不履行が発生した場合、債権者は損害賠償の請求や契約の解除を求めることができます。
さらに、これらの要求が無視される場合には、裁判所を通じて強制執行を行うことも可能です。民法第415条によれば、債務不履行が債務者の責に帰すべきでない場合は、損害賠償を請求できない可能性もあります。
同時履行の抗弁権
双務契約の場合、相手方が債務を履行しない時には、自身の債務履行を拒否する「同時履行の抗弁権」が発生します。
例として、不動産取引において相手方が代金の支払いを行わない場合、不動産の引き渡しを拒否できます。この抗弁権がある間は、期限超過での債務履行がなくても履行遅滞とはならず、損害賠償や契約解除の義務は発生しません。
不動産取引における同時履行の流れ
不動産取引では、同時履行が特に重要です。代金支払いと所有権移転が同時に行われない場合、両当事者に甚大な損失が発生する可能性があります。一般的な不動産売買の流れは以下のとおりです。
【不動産売買時の一般的な流れ】
- 新規融資の金融機関(融資)
- 買主(代金支払い)
- 売主(借入金返済)
- 既存融資の金融機関
これと同時に下記の登記を行います。
- 既存の抵当権の抹消登記
- 所有権移転登記
- 新たな融資の抵当権設定登記
これらの手続きを同時に行うことで、売主と買主、それぞれの関係する銀行が自身の権利を確実に行使できるようになります。
債務を果たさないリスクとは
債務不履行は、債務者にとって重大なリスクをもたらします。主なリスクは以下のように構成されます。
- 財産差押え:債権者が裁判所を通じて債務者の財産を差し押さえる。
- 裁判への発展:債務不履行が解決されない場合、裁判に発展する可能性がある。
- 借金の会社への露見:借金問題が会社に知られることで、職場での信用を損ねるリスクがある。
これらのリスクは債務者の生活に深刻な影響を与え、財政的なだけでなく社会的な信用も大きく損なわれる結果につながります。
債務整理の効果
返済が困難な状況にある場合、債務整理が有効な解決策になります。債務整理とは、弁護士や司法書士などの法律の専門家を通じて、債務の総額を減額したり、返済計画を再構築したりするプロセスです。具体的な方法には「任意整理」「個人再生」「破産申立て」などがあります。
債務整理の効果として、債務者の返済負担が大幅に軽減され、経済的再生の機会が得られます。
これにより、債務者は借金問題からの脱却と生活の再建を目指せるようになります。債権者にとっても、一定の返済が見込めるため、双方にメリットがある解決策と言えます。
まとめ
債務と債権の違いや債権・債務関係が発生する事例などについて説明しました。上述したように表裏一体の関係であるために、両者がかみ合わなくなればトラブルに発展することも稀ではありません。
「金銭を支払ったのに目的物を引き渡してくれない」「不動産所有権を移転したのに金銭が支払われない」などの問題が起こることもあるでしょう。そのようなときはプロに相談することをおすすめします。
双方で解決できない場合、問題が複雑化してしまう可能性があります。第三者に介入してもらうことで精神的負担を軽減しながらスムーズに進めることができるため、抱え込まないようにしましょう。
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