相続時に、特に問題になりやすいのが「不動産」です。資産価値がある不動産であれば、すぐに相続人がスムーズに決まったり、売却益を分配したりできる一方、価値がない「訳あり不動産」の場合はトラブルに発展しかねません。
そこで今回は、訳あり不動産を相続する場合に備えて知っておくべき事柄を解説します。
相続したけれど「住まない」、または「売却が難しい」不動産の処分方法や活用方法、さらに相続前にできる不動産相続回避方法などについて紹介しますので、ぜひお役立てください。
訳あり不動産の特徴
いらない不動産を「どうにかして売りたい」と考えても、なかなか売れないケースがあります。売却が難しい理由としては、次のようなものです。
- 立地や周辺環境が悪い
- 土地の形が悪い
- 依頼した不動産業者と合わない
それぞれ詳しくみていきましょう。
立地や周辺環境が悪い
多くの人が避けるような立地条件を持つ不動産は、売却が難しくなりがちです。例えば、田舎に位置する土地や駅から遠い場所にある土地は、需要が低いため売却しにくいのが実情。
近隣にゴミ処理場や工場、保育園などがある場合、臭いや騒音の問題で敬遠されることがあります。さらに、墓地や火葬場の近くは心理的な抵抗から購入者を見つけにくいという問題も発生します。
土地の形が悪い
土地の形状が正方形に近いほど、一般的に価値が高まります。逆に、不規則な形状の土地や、公道に接する面が狭い「旗竿地」、狭く小さい「狭小地」などは、売却に際して価値が低くなります。
傾斜がきつい土地や段差が大きい土地も、買い手を見つけるのが難しい傾向にあります。
依頼した不動産業者と合わない
不動産業者によって得意とする物件の種類が異なるため、選択が重要です。大手であっても特定の種類の不動産を苦手とする場合があり、適切な買い手を見つけられないことがあります。
価格設定の誤りが原因で、本来よりも低い価格で売却されるケースも否定できません。過去の実績などを確認することが大切です。
訳あり不動産を所有し続けるデメリット
使うこともなく、売れもしない不動産を所有し続けるとどのようなことが起こるのでしょうか。主に考えられるデメリットとしては、次のようなもの。
- 固定資産税などの費用がかかる
- メンテナンスの手間がかかる
- 自分の子供や孫に迷惑をかける
以下より、個別にみていきましょう。
固定資産税などの費用がかかる
不動産の所有者は、毎年1月1日時点で固定資産税の支払い義務が生じます。場所によっては都市計画税も発生し、これらの税金の他に修繕費や損害賠償費用などの支出が発生する可能性もあります。
例えば、所有地のブロック塀が倒れて通行の障害となり、それによって人が怪我をした場合、所有者は修繕費用と損害賠償責任を負うことになるでしょう。
メンテナンスの手間がかかる
不動産の保有は、定期的なメンテナンス作業を必要とします。草取りや木の剪定など、放置すると近隣住民に迷惑をかけることがあります。
手入れが行き届かないと、ゴミの不法投棄などの問題が生じる可能性も。これらの作業を自分で行うか、費用をかけて専門の人に依頼するかは、所有者の判断となります。
自分の子供や孫に迷惑をかける
訳あり不動産を保有し続けることは、将来的に子供や孫などの相続人に負担をかけるリスクが懸念されます。
過疎化などにより不動産の価値が低下すれば、売却はより困難になります。これは次世代への不当な負担となる可能性が高いため、将来的な観点から慎重な管理が求められます。
訳あり不動産を相続した際の処分方法
相続したけれど「住まないし、必要ない」と考える場合、どのようにしたら手放すことができるのでしょうか。以下より、具体t形に解説していきます。
売却する
不動産を手放す最も一般的な方法は、売却です。不動産業者に相談し、売却のプロセスを進めることができます。訳あり不動産の場合、売却は容易ではない場合が多いです。売却方法には「仲介」「買取り」の2つの形態があります。
仲介は不動産会社が買主を探す方法ですが、これは時間がかかり、仲介手数料などのコストがかかる可能性も。
一方、買取は不動産会社が直接買い取る方法で、迅速な処理が可能ですが、買取価格は一般に仲介時よりも低くなりかねません。どちらの方法も、相続税の納税期限内に処理を完了させることが重要です。
寄付をする
不動産の寄付は実際には難しいことが多々ありますが、方法の一例として3つの寄付先をご紹介します。
- ①:自治体に寄付
- ②:隣人などに寄付
- ③:法人に寄付
まず①について、自治体ごとに設けられた条件を満たせば無償で引き取ってくれることがありますが、あまり多くありません。
なぜなら、自治体が土地を引き取ることで、今まで徴収できていた固定資産税が取れなくなるほか、管理費用なども自治体が負担することになってしまうからです。自治体側にメリットがある土地以外では、難しいでしょう。
次に②の個人に寄付をする方法もあります。しかし、売却ができないほどの土地を欲しいと考える人は少ないはず。唯一可能性があるとすれば、隣人が自分の土地を広げるために欲しい、というケースが考えられます。隣地の所有者に対して交渉してみるとよいでしょう。
③については、事業拡大や社員の保養目的として欲しいと考える企業があるかもしれません。しかし、管理や維持費用がかかるため、企業側によほどメリットがないと難しいと考えられます。
法人に寄付を行う場合は、一般企業よりも公益法人の方が可能性は高いかもしれません。
土地の所有権放棄はできない
現行の法律では、土地の所有権を単純に放棄することは認められていません。民法では、所有者のいない不動産が国庫に帰属するとされていますが、これは所有権の放棄を通じて国に移すことを意味するものではないため、留意しましょう。
訳あり不動産の活用方法
売却などの処分をする前に、相続した不動産を活用できる方法がないか検討してみましょう。具体的には、以下のようなもの。
- 収益物件化する
- 駐車場にする
- 空き家バンクに登録する
それぞれ、個別に解説します。
収益物件化する
住居として使用可能な不動産であれば、賃貸として貸し出すことが考えられます。これにより、賃料収入を得て固定資産税などの費用を賄うことが可能です。
ただし、新たにマンションなどを建築する場合は、高いリスクが伴うため、不動産投資について十分な知識と慎重な計画が必要です。
駐車場にする
更地の土地を相続した場合、コインパーキングとして運営するのは1つの有効な活用方法です。駐車場経営は、賃貸物件経営と同様に専門知識が必要ですが、適切な管理と運営により安定した収入を得られるでしょう。
空き家バンクに登録する
空き家バンクは、空き家物件情報を地方公共団体が提供し、利用希望者とのマッチングを行う制度です。
これは特に過疎化が進んでいる地域の活性化を目的としており、補助金を提供する自治体もあります。退職後の田舎暮らしを希望する人々には魅力的な選択肢となるでしょう。
訳あり不動産の相続を回避する方法
相続してから「どうしよう」と悩むと予想される不動産の場合は、相続前に対処しましょう。具体的には、次のような手法です。
- 遺産分割協議で「いらない」と主張する
- 相続放棄をする
- 法定相続人全員が相続放棄をした場合
以下より、個別に解説します。
遺産分割協議で「いらない」と主張する
法定相続人全員で行う遺産分割協議において、不動産を相続したくない意向を明確にできます。
ただし、この協議は全員の合意が必要であり、一部の相続人の不参加や反対がある場合、協議は成立しません。このような状況では、不動産は法定相続人全員による共有状態と見なされます。相続人が決定し、単独名義での登記が完了すれば、共有状態は解消されるでしょう。
相続放棄をする
相続放棄を行うと、相続人ではなかったと見なされ、他の相続人がその財産を分け合うことになります。これには不動産、預貯金、車、保険などの資産が含まれます。相続放棄は、プラスの遺産が多い場合でもそのすべてを放棄することを意味するため、慎重な検討が必要です。
相続放棄には「相続を知ってから3カ月」という期限が設けられています。この期限を過ぎると、家庭裁判所での受付が不可能になり、相続するほかなくなります。
相続放棄後も、次順位の相続人が財産の管理を始めるまで、元の相続人は一定の管理責任を負います(民法940条1項)。
法定相続人全員が相続放棄をした場合
もし法定相続人全員が相続放棄を行った場合、裁判所に対して相続財産管理人の選任を申し立てる必要があります。これには予納金の支払いが必要で、金額は事案によって異なりますが、数十万円から100万円程度が一般的。
予納金の支払いが高額であるため、相続した後に不動産業者に売却するという選択肢もあります。立地が悪いなどの問題がある不動産でも、専門の業者による積極的な買取が可能なケースもあるため、相談を検討する価値はあります。
まとめ
「他の相続人が相続を拒否する」「相続したものの、使い道がなくて困っている」「なかなか買い手が見つからない」など、相続した不動産でお困りの方は、プロに相談することをおすすめします。
一度売却して売れなかった不動産も、業者を変更したら売れたというケースはよくあります。長期間にわたって所有していると、税金や費用・手間などがかかり続けて負担も増していくので、できる限り早めに対処しましょう。
本ブログで情報発信を行っている「ワケガイ」は、訳あり物件を積極的に買い取っている専門業者です。空き家問題についてお悩みの方は、訳あり物件の買取に特化したワケガイに、ぜひお問い合わせください。
運営団体 株式会社ネクスウィル 2019年1月29日設立。訳あり不動産の買取を行う不動産会社。相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産を買い取り、法的知識や専門知識を以って、再度市場に流通させている。 |