共有持分【基礎知識】

私道持分がない不動産を売る3つの方法とは?スムーズに売却するコツも紹介

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私道とは、国や自治体ではなく、個人や民間が所有する道路のことを指します。この私道に接している土地を所有していても、「私道持分がない」状態であれば、思わぬ不都合が生じることがあります。

たとえば、水道工事や建て替えをしようとした際に、私道の所有者から掘削や通行の承諾を得なければならず、計画が進まないといったケースに至ります。

そのような事態を避けるために知っておくべきなのが、「私道持分がない」とはどういう状態か、そしてそれがどのようなトラブルにつながる可能性があるのかという点です。

そこで本記事では、私道持分がない状態におけるリスクと隣接する不動産の売却方法を解説します。

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私道持分とは?

私道持分とは、私道(個人が所有する道路)に対する所有権の一部を複数人で持っている状態を指します。

たとえば、分譲地内の私道が6軒の家に囲まれている場合、それぞれの家の所有者がその道路に6分の1ずつの権利を持っているようなケースが、私道の「共有持分」です。

この「持分」があることで、通行や水道工事といった利用を比較的自由に行うことができ、他の共有者に許可を得る必要がないケースも多くなります。

一方、持分がないと、通行や掘削のために別の所有者に毎回承諾を求める必要があるなど、生活や売却に支障が出る可能性もあります。

関連記事:私道持分とは?トラブルや税金、売却のリアルな実情を紹介

共有型私道

共有型私道とは、道路全体が1つの土地として登記されており、複数の所有者がその土地に対して一定の割合で共有している状態を指します。たとえば、私道全体の持分をそれぞれが6分の1ずつ持っているような形です。

この場合、私道に対する決定(たとえば舗装工事や水道の引き込みなど)には、原則として全共有者の同意が必要となります。1人でも反対する共有者がいれば工事が進められないケースもあるため、意見の食い違いがトラブルになることも少なくありません。

ただし、共有型の場合は「持分」が明確に存在しているため、通行や掘削といった権利主張がしやすいという側面もあります。

関連記事:私道の共有持分で発生するトラブルとは?対処法もセットで詳しく解説

持合型私道

持合型私道は、道路が複数の区画に「分筆」され、それぞれの土地所有者が別々に私道の一部を単独所有しているケースです。ぱっと見では1本の道に見えても、実際には複数の地番に分かれており、それぞれ異なる所有者がいます。

このタイプは登記上「共有」ではありませんが、実態としては私道を共同で利用しているため、やはり合意形成や通行・掘削に関する調整が必要になります。

「目の前の私道は自分の土地」だと思い込んでいても、実は隣人の所有地だったというケースもあり得るため、分筆された持合型私道では、登記上の区分をしっかり把握しておくことが重要です。

私道持分の調べ方

自分が所有する土地に私道持分があるかどうかは、いくつかの方法で確認できます。不動産の売却や建築を検討する際には、持分の有無が大きく影響するため、早い段階で確認しておくことが重要です。以下に、主な調査方法をまとめます。

方法調査内容
登記簿謄本(全部事項証明書)を確認する私道の地番を特定し、所有者や持分割合を調べることができる
公図を確認する接道する道路が私道かどうかを判別できる(地番の有無で判断)
役所で調べる建築指導課や道路管理課などで私道の種類や管理状況を確認できる
専門家に相談する弁護士・司法書士・不動産会社などに調査を依頼することができる

書類の読み取りや調査に不安がある場合は、専門家のサポートを受けながら進めると安心です。

関連記事:私道の持分を共有している場合、権利関係はどうなるの?

 

「私道持分がない」とは?

「私道持分がない」とは、自分の土地が私道に面しているにもかかわらず、その私道に対する所有権(=共有持分)を持っていない状態をいいます。たとえば、家の前の道路が個人所有の私道で、その持分を自分が持っていない場合がこれに該当します。

私道の通行や掘削は、本来その所有者の承諾が必要な行為です。持分があれば、他の共有者の同意なく通行や工事ができる場合もありますが、持分がなければ一方的に使用することができません。

つまり、日常的に通っている道路であっても、他人の土地を無断で使っている状態になっている可能性があるのです。

このような不安定な権利関係は、不動産の売却・活用・再建築において大きなリスク要因になります。

どういうときに起こる?

「私道持分がない」という状態は、意外とよくあるケースです。典型的なのは、過去の売買や相続の段階で「私道持分を取得しなかった」「そもそも気づかずに取得していなかった」といった場合です。

たとえば、売主が持分を持っていたにもかかわらず、買主にはその情報が正確に引き継がれず、土地だけが移転されたという事例。また、私道の一部が相続されずに放置されてしまい、他の相続人が単独で所有しているケースなどもあります。

分譲住宅地では、開発業者が道路を整備したものの、個別に登記手続きを行わなかったことで、持分が設定されていないまま売買されたというケースも少なくありません。

一見、生活には支障がないように見えても、いざ再建築や売却をしようとしたときに初めて問題に気づく、ということも多くあります。

なぜ問題なのか?

私道持分がないと、私道の所有者の承諾を得なければ通行や掘削ができないという制約が生じます。

一例を挙げると、水道・ガス・下水などの工事を行うためには「掘削承諾」が必要ですが、それが得られないと、設備の新設・修繕ができない可能性があります。

また、建築基準法上の「接道義務」を満たせず、建物の再建築が認められないこともあります。さらに、金融機関が担保評価を下げたり、住宅ローンの審査が通らなくなったりするリスクもあるため、売却の際に買主が付きにくくなるというデメリットも無視できません。

特に問題なのは、私道の所有者と連絡が取れない、もしくは関係が悪化している場合です。このような状況では、通行も工事もできず、事実上「使えない土地」として資産価値が大きく損なわれることになりかねません。

 

私道持分がない不動産が売れにくい理由

私道持分がない不動産は、見た目には普通の住宅地にあっても、いざ売却しようとすると買主がつかず、長期間市場に残ることがあります。その背景には、法律上の制約や生活上のリスクが複雑に絡んでいます。

ここでは、なぜ「私道持分がない」というだけで売却が難しくなるのか、主な理由を3つに分けて解説します。

  • 理由①:通行や掘削に制限がかかるため
  • 理由②:建築・再建築に制約があるため
  • 理由③:住宅ローン審査に通りにくいため

これらの問題は、買主にとっての不安要素となるだけでなく、金融機関の評価にも大きく影響しますので、しっかりと把握しておきましょう。

理由①:通行や掘削に制限がかかるため

私道を通行したり、地中にガス管・水道管などのインフラを通したりするには、本来その道路の所有者の承諾が必要です。

私道持分がない場合、こうした利用に対して法的な権利がないため、口頭では黙認されていても、後から通行を拒まれるリスクがあります

さらに、インフラ工事には「掘削承諾書」が必要となることが多く、所有者が協力的でない場合には工事自体が不可能となるおそれもあります。こうした不確定要素は、買主の大きな不安材料となります。

理由②:建築・再建築に制約があるため

建築基準法では、建物の敷地が幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していることが求められています(接道義務)。

しかし、私道に接していても持分がない場合、その道路を建築基準法上の「道路」として扱えず、建築確認が下りない可能性があります。

この場合、新築や再建築ができず、実質的に“建て替え不可の土地”とみなされるリスクがあります。結果として、一般の買主は敬遠しやすくなり、市場価値が大きく下がってしまいます。

理由③:住宅ローン審査に通りにくいため

私道持分がない不動産は、法律上の不安定さや再建築不可の可能性があるため、金融機関が担保評価を下げやすくなります。その結果、住宅ローン審査が通らない、あるいは融資額が下がるといった事態に発展します。

買主が現金で購入する以外の選択肢が取りづらくなるため、買い手の層が狭まり、売却に時間がかかる原因となります。特に、初めて不動産を購入する層は慎重になるため、こうした物件は敬遠されやすくなります。

関連記事:共有持分のリスクとは? 共有状態はなぜリスクが高いのか?

 

私道持分がない不動産を売る3つの方法

私道持分がない不動産でも、必ずしも売却できないわけではありません。ポイントは、「買主が安心できる状態をどれだけ整えられるか」です。

私道に関する権利関係を整理したり、専門の選択肢を検討することで、スムーズに売却できる可能性は十分にあります。

ここでは、私道持分がない不動産を売却するための現実的な方法を3つご紹介します。

  • 方法①:通行・掘削承諾書を取得してから売却する
  • 方法②:私道持分を買い取ってから売却する
  • 方法③:訳あり物件専門の買取業者に売却する

以下より、個別にみていきましょう。

方法①:通行・掘削承諾書を取得してから売却する

最も基本的かつ有効なのが、私道の所有者から「通行承諾書」や「掘削承諾書」を取得することです。これらは、買主にとって「安心して家を建てられる」「水道やガスが引ける」と判断する上で、非常に重要な材料になります。

承諾は口頭ではなく、必ず書面に残すようにしましょう。可能であれば実印を押印してもらい、印鑑証明書を添えることで、より法的な信頼性が高まります。承諾書があることで、住宅ローン審査がスムーズに進む可能性もあります。

方法②:私道持分を買い取ってから売却する

私道の所有者が特定でき、交渉の余地がある場合は、私道持分そのものを買い取るという方法もあります。これは、特に再建築やインフラ工事を想定している買主にとっては、大きな安心材料になります。

持分を取得しておけば、自分の名義で通行・掘削の権利を主張できるため、売却時の交渉力が格段に上がります。ただし、所有者が複数いる場合は、全員との調整が必要になるため、事前に交渉のハードルを見極めておくことが大切です。

方法③:訳あり物件専門の買取業者に売却する

私道持分の取得や承諾交渉が困難な場合は、一般の買主ではなく、訳あり物件を専門に扱う不動産買取業者に売却する方法もあります。

こうした業者は、通行・掘削のリスクや再建築制限も織り込み済みで査定を行ってくれるため、交渉もスムーズに進みやすくなります。

価格は市場相場より下がる可能性がありますが、売却までのスピードや煩雑な調整の回避といったメリットも大きいです。「早く手放したい」「関係者と交渉したくない」という場合には、現実的な選択肢といえるでしょう。

関連記事:【2025年版】共有持分の買取業者のおすすめ厳選5社!今買取をお願いするべき専門業者とは?

 

私道持分がなくてもスムーズに売却するためにやっておいた方がいいこと

私道持分がない不動産は、そのままでは売却が難しいと思われがちですが、事前の準備次第で取引のハードルを下げることは可能です。具体的には、以下の取り組みです。

  • 私道の所有者を調べておく
  • 通行・掘削の実態を整理しておく
  • 承諾書の取得可否について事前に確認しておく

それぞれ個別に解説します。

私道の所有者を調べておく

まずは、接している私道が誰の所有なのかを明確にしておくことが基本です。法務局で登記簿謄本を取得すれば、所有者の氏名や持分割合を確認することができます。また、公図を確認すれば、その道路が私道かどうかを判断できます。

所有者が複数いる場合や、名義人がすでに亡くなっている場合など、交渉の難易度にも関わってくるため、売却の前にしっかり調査しておくことが重要です。

通行・掘削の実態を整理しておく

次に、現状どのように私道を使用しているのかを把握しておきましょう。具体的には、自動車での通行が可能か、水道・ガスなどの配管はどのように引き込まれているかなど、生活に直結するポイントを整理しておくと安心です。

これらの情報は、買主にとって「この家に安心して住めるか」を判断するための材料になります。曖昧な状態よりも、事実を明示できる方が信頼されやすく、交渉もスムーズに進みます。

承諾書の取得可否について事前に確認しておく

実際に通行や掘削を認めてもらうには、私道の所有者からの「承諾書」が必要になることがあります。売却をスムーズに進めたいのであれば、あらかじめ所有者に対し、承諾に応じてもらえる可能性があるかどうかを探っておくとよいでしょう。

承諾書の取得が難しそうな場合は、その事情を整理しておき、買取業者など専門の選択肢を検討する判断材料にもなります。事前に状況を見極めておくことで、後のトラブルや想定外の交渉を回避できます。

 

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私道持分がない土地は、通行や掘削の問題から売却が進みにくいケースも多く、個人での交渉や対応に限界を感じる方もいらっしゃいます。

ワケガイでは、こうした物件に特有のリスクを踏まえたうえで、査定から契約までを専門スタッフと士業がサポート。複雑な事情を整理し、最短1日での買取にも対応しています。

「個人で動くのは難しい」と感じたときには、ひとつの手段としてお気軽に無料査定をご活用ください。

 

まとめ

私道持分がない状態は、一見すると生活に支障がなくても、売却や建て替えの場面で突然問題化するリスクを含んでいます。とくに、通行や掘削の承諾が必要な場合には、私道所有者との交渉が前提となるため、想定外のトラブルに発展しかねません。

土地や建物を活用・処分したいと考えるなら、まずは私道の所有関係を調べ、必要に応じて持分取得や承諾書の取得といった対応策を検討することが重要です。

持分の有無は法務局の登記簿や公図で確認できます。売却や建築の予定がある場合は、できるだけ早めに状況を整理しておきましょう。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

松本 大介(司法書士)

得意分野:相続全般、遺言書作成、不動産売却
お客様に「君にまかせてよかった」「君だから依頼したんだよ」そう言っていただけることを目標に、この仕事に誇りを持って取り組んでおり、お客様の立場に寄り添い考えるよう心がけています。

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