不動産の共有状態が長期化すると、管理や処分をめぐって共有者間で深刻な対立が生じることがあります。その際に有効な解決策となり得るのが共有持分の換価分割です。
換価分割とは、共有不動産を売却し、その売却代金を各共有者の持分に応じて分配する方法です。この方法により、共有関係を完全に解消し、公平な分配を実現できる可能性があります。
しかし、換価分割にもさまざまな課題やリスクが存在します。そこで本記事では、共有持分の換価分割について、メリットやデメリット、具体的な手続き方法、よくあるトラブル例などを詳しく解説します。

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共有持分の窓口の詳細はこちら共有持分の換価分割とは
共有持分の換価分割は、複数の所有者が持つ不動産を売却し、その売却代金を各所有者の持分に応じて分配する方法です。
不動産の共有状態を解消する際、所有者間での話し合いがまとまらないケースは少なくありません。そのような場合、換価分割が選択されるケースが存在します。この方法の最大の特徴は、不動産そのものではなく、その金銭的価値を分配する点にあります。

丸岡 智幸
代表取締役 / 株式会社ネクスウィル
共有不動産の分割方法の一つである換価分割は、共有者全員がそれぞれの持分を同じ買主に売却し、その売却によって得られた金銭(換価代金)を、各共有者の持分割合に応じて分配する手続きを指します。この方法は、不動産そのものを物理的に分割するのではなく、その経済的価値を金銭として公平に分配することを目的としています。
出典: 丸岡智幸『拝啓売りたいのに家が売れません』
そのほかの共有持分の分割方法
換価分割以外にも、共有持分を分割する方法は「現物分割」「代償分割」が存在します。
現物分割は、共有不動産を物理的に分割して各所有者に割り当てる方法です。例えば、広い土地を複数の区画に分けて、それぞれの所有者に与えるといったケースが該当します。
この方法は、不動産の形状や立地条件が適している場合に選択されます。ただし、建物の分割は技術的に困難なことが多く、主に土地の分割に用いられます。一方、代償分割は、ある所有者が不動産全体を取得し、他の所有者に金銭で補償する方法です。例えば、3人で共有していた不動産を一人が取得し、残りの2人にそれぞれの持分相当額を支払うといった形です。
この方法は、特定の所有者が不動産の保有を強く希望し、かつ他の所有者への代償金支払いが可能な場合に適しています。
これらの方法と比較すると、換価分割は不動産を売却して現金化するため、より公平な分配が可能となる利点があります。しかし、各所有者の意向や不動産の性質によって最適な分割方法は異なるため、状況に応じた選択が求められます。
換価分割のメリット
換価分割は、共有不動産の問題を解決する上で、以下のようなメリットを持っています。
- 公平な分配を行える
- 共有関係が完全に解消される
それぞれ個別にみていきましょう。
公平な分配を行える

換価分割では共有不動産を現金化し、各共有者の持分割合に応じて売却代金を分配します。
換価分割の最大の強みは、不動産の価値を金銭に換算して分配できる点です。
これにより、各所有者の持分に応じた厳密な分配が可能となります。
例えば、ある不動産を3人で共有しており、持分比率が「5:3:2」だった場合、売却代金をその比率で分けることで、公平性を保つことができます。この方法は、不動産の一部を物理的に分割することが難しい場合や、所有者間で不動産の利用方法について意見が分かれている場合に特に有効です。
金銭での分配により、各所有者は自由に資金を使用できるため、新たな投資や生活設計の幅が広がります。
共有関係が完全に解消される
換価分割のもう1つの大きなメリットは、共有関係を完全に解消できることです。
不動産を売却し、その代金を分配することで、所有者間の権利関係が明確に終了します。これにより、将来的なトラブルの芽を摘むことができます。共有関係が継続すると、不動産の管理や処分に関する意思決定が複雑になりがちです。例えば、修繕や改築、賃貸、売却などの判断において、所有者全員の合意が必要となることがあります。
換価分割によってこうした関係を解消することで、各所有者は独立した判断で自身の資産を管理できるようになります。
換価分割のデメリット
換価分割には多くの利点がある一方で、注意すべきデメリットも存在します。具体的には、以下のとおり。
- 不動産が喪失する
- 市場価値以下での売却リスクがある
それぞれ個別に解説します。
不動産が喪失する
換価分割の最も明白なデメリットは、共有者全員が当該不動産を失うことです。
長年住み慣れた家や先祖代々の土地など、思い入れのある不動産の場合、この喪失感は特に大きくなります。
例えば、幼少期から育った実家を売却する場合、金銭的な価値以上の精神的な損失を感じる人も少なくありません。また、将来的な値上がりが期待できる不動産や、立地条件の良い物件を手放すことになれば、長期的な資産価値の観点からも不利益を被る可能性があります。
市場価値以下での売却リスクがある
換価分割では、売却方法や不動産の条件によって、想定していた価格よりも安く売却される可能性があります。
特に、裁判所の競売によって換価する場合は、通常の不動産売買とは価格の決まり方が異なる点に注意が必要です。
通常の売却であれば、共有者全員の合意のもとで売出価格を設定し、購入希望者と価格交渉を行えます。一方、競売では入札によって売却先と価格が決まるため、共有者が希望する価格で売却できるとは限りません。
また、競売では買主が物件の内部を十分に確認できない場合があり、物件の状態や権利関係への懸念が入札価格に影響することもあります。
ただし、競売だからといって必ず市場価格を大幅に下回るわけではありません。実際の落札価格は物件の立地や状態、入札状況などによって変わります。
売却代金が少なくなれば、共有者それぞれが受け取る金額も減少します。換価分割を検討する際は、通常の売却で得られる見込額と、競売になった場合の価格面のリスクを比較することが重要です。
(参照:e-Gov法令検索「民法第258条」)
換価分割の2つの手続き方法
共有不動産を売却して代金を分配する方法には、主に次の2つがあります。
- 方法①:任意売却
- 方法②:競売
任意売却は共有者全員の合意によって売却する方法です。一方、競売は共有者間で協議がまとまらず、共有物分割請求訴訟などを経て裁判所が競売を命じた場合に行われます。
必要な手続きや売却価格の決まり方が異なるため、それぞれの特徴を把握しておきましょう。
方法①:任意売却
任意売却は、共有者全員が不動産全体の売却に合意し、通常の不動産取引と同様に買主を探して売却する方法です。
まず、不動産会社に査定を依頼し、共有者間で売出価格や売却条件を決めます。その後、購入希望者を募集して価格や引渡し条件を調整し、合意に至れば売買契約を締結します。
売買代金の決済と、所有権移転登記に必要な手続きを経た後、取り決めに従って売却代金を分配します。
任意売却のメリットは、共有者が売却価格や買主、売却時期について話し合いながら決定できることです。価格交渉の余地があるため、競売よりも有利な条件で売却できる場合があります。
一方で、不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要です。一人でも売却に反対している場合は、任意売却をそのまま進めることはできません。
また、仲介手数料や測量費などが発生する場合もあるため、売却価格だけでなく、諸費用を差し引いた後の受取額を確認しておく必要があります。
なお、ここでいう任意売却は、共有者の合意に基づく売却を指しています。住宅ローンなどの返済が困難になった際に、債権者との調整によって行う任意売却とは区別して考える必要があります。
(参照:e-Gov法令検索「民法第251条・第256条」)
方法②:競売
競売は、裁判所の手続きによって不動産を売却し、その代金を共有者間で分配する方法です。
共有者全員で任意売却の合意ができない場合でも、共有物分割請求訴訟を通じて共有関係の解消を目指せます。
共有物分割請求訴訟では、裁判所が共有不動産の状況を踏まえて分割方法を判断します。民法第258条では、裁判所が現物分割や、共有者の一人などに他の共有持分を取得させて金銭を支払わせる方法を命じることが認められています。
これらの方法では分割できない場合や、分割によって不動産の価格が著しく下がるおそれがある場合には、競売が命じられることがあります。したがって、共有者間の話し合いがまとまらないからといって、直ちに競売を申し立てられるわけではありません。また、共有物分割請求訴訟を起こせば必ず競売になるとも限りません。
競売が命じられた場合は、判決に基づいて競売手続きが進められます。売却後は、競売手続きに必要な費用が差し引かれ、判決で定められた割合などに従って売得金が分配されます。
競売は共有者間で任意売却の合意が得られない場合の解決手段となる一方、売却価格を自由に決められず、訴訟や競売に時間と費用がかかる可能性があります。
(参照:e-Gov法令検索「民法第258条・第258条の2」)
換価分割を選択すべきケース
換価分割は万能の解決策ではありません。状況に応じて、その適否を慎重に判断する必要があります。
ここからは、換価分割を選択すべきケースとそうでないケースについてみていきましょう。
換価分割が適しているケース

不動産の保有を続けず、売却代金を分配して共有関係を解消したい場合に換価分割を検討できます。
換価分割が適しているのは、共有者が不動産を保有し続けることを望まず、売却代金を分配して共有関係を解消したい場合です。
共有者間で不動産の売却に合意できれば、任意売却によって手続きを進められます。話し合いがまとまらない場合は共有物分割請求訴訟を検討できますが、裁判所が必ず競売を命じるわけではありません。
なお、遺産分割が終わっていない場合には、原則として遺産分割手続きとの関係を整理する必要があります。既存の共有関係を解消する手続きと、相続人間で遺産を分ける手続きは同一ではありません。
(参照:e-Gov法令検索「民法第258条・第258条の2」)
換価分割が適していないケース
一方で、換価分割が適さないケースもあります。例えば、不動産に特別な思い入れがある場合です。
先祖代々受け継がれてきた土地や、長年住み慣れた家などを売却することに強い抵抗感がある場合、別の解決方法を検討すべきでしょう。
また、不動産市況が低迷している時期も、換価分割は得策ではありません。売却価格が本来の価値を大きく下回る可能性があるためです。さらに、共有者の中に現在その不動産に居住している人がいる場合、その人の生活基盤を奪うことになるため、慎重な判断が求められます。
換価分割に関してよくあるトラブル例
換価分割に関してよくあるトラブル例は、以下のとおりです。
- トラブル例①:売却価格で揉める
- トラブル例②:売却のタイミングで対立する
- トラブル例③:売却後の税金問題で混乱する
- トラブル例④:売却手続きの進め方で衝突する
- トラブル例⑤:売却代金の分配方法で争う
次項より、詳しく解説します。
トラブル例①:売却価格で揉める
不動産の適正価格をめぐる意見の相違は、共有持分においては多く発生します。
例えば「ある共有者は高値での売却を望み、別の共有者は迅速な売却を優先したいと考える」といったケースです。
このような場合、複数の不動産業者による査定を取り寄せ、客観的な市場価値を把握することが重要です。また、それぞれの共有者の事情を考慮しつつ、中立的な第三者(例えば弁護士)を交えて話し合いを進めることで、合意形成がスムーズになる可能性があります。
売却価格で揉める前に持分の価値を客観的に把握したいなら、まずは共有持分の簡易査定ができるので以下より試してください。

トラブル例②:売却のタイミングで対立する
不動産市況の変動や個人的な事情により、売却のタイミングをめぐって意見が分かれることがあります。
例えば、今すぐに資金が必要な共有者と、将来の値上がりを期待して売却を先延ばしにしたい共有者の間で対立が生じかねません。
この問題に対しては、不動産専門家による市場分析や将来予測を参考にしつつ、各共有者の事情を考慮した妥協点を探ることが大切です。場合によっては、一部の共有者が他の共有者の持分を買い取るなどの柔軟な解決策も検討に値するでしょう。
トラブル例③:売却後の税金問題で混乱する
換価分割で共有不動産を売却した際は、譲渡所得に対する所得税や住民税の負担をめぐってトラブルになることがあります。
特に、売却代金の分配割合と税金の負担について、共有者間で認識が異なる場合は注意が必要です。
共有不動産を売却した場合、原則として各共有者が自分の持分に対応する譲渡所得を計算します。
譲渡所得は売却代金の全額ではなく、売却金額から取得費や譲渡費用などを差し引いて算出する利益です。譲渡所得が生じた場合は、原則として各共有者が確定申告を行い、所得税などを納めます。
また、所有期間や適用できる特例によって税負担は変わります。共有者全員が同じ金額の税金を負担するとは限りません。
売却代金を分ける際には、仲介手数料などの諸費用と、各共有者が負担する税金を分けて考えることが大切です。税金を考慮せずに売却代金をすべて使ってしまうと、納税資金が不足するおそれがあります。
売却前に取得費を確認し、譲渡所得の見込額や利用できる特例を調べておくことで、売却後の税負担を把握しやすくなります。
(参照:国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」)
トラブル例④:売却手続きの進め方で衝突する
売却方法や仲介業者の選定、契約条件の詳細など、売却手続きの細かな点で意見が対立することがあります。
例えば、ある共有者は知り合いの不動産業者に依頼したいと考え、別の共有者は大手不動産会社を希望するといった具合です。
こうした対立を防ぐには、売却手続きの各段階で、全ての共有者が納得できる意思決定プロセスを事前に決めておくことが大切です。また、中立的な立場の専門家(例えば弁護士)を介して進めることで、より公平で円滑な手続きが可能になります。
トラブル例⑤:売却代金の分配方法で争う
換価分割では、売却代金の分配割合だけでなく、売却にかかった費用を誰が負担するかによってもトラブルが発生することがあります。
例えば、共有持分が2分の1ずつであっても、一方の共有者だけが測量費や売却準備費用を立て替えていた場合、売却代金を単純に折半すると負担に不公平が生じる可能性があります。
このような問題を防ぐには、売却前に持分割合と費用負担を確認し、売却代金をどのように清算するか取り決めておくことが重要です。
具体的には、次の項目を共有者間で確認しておくとよいでしょう。
- 売却代金を分配する割合
- 仲介手数料や測量費などの負担方法
- 一部の共有者が立て替えた費用の精算方法
- 売却代金を受け取る口座と分配時期
- 売却後に各共有者が負担する税金の見込額
通常は、売却に伴って負担する費用を清算したうえで、合意した割合に従って残額を分配します。
ただし、登記上の持分割合と異なる金額を分配する場合には、その理由や法的な取扱いを確認する必要があります。分配の内容によっては贈与税などが問題になる可能性もあるため、単に当事者が納得しているだけで税務上の問題まで解消されるとは限りません。
費用の立替額や分配割合を記録し、共有者間で合意内容を書面に残しておくと、売却後の認識違いを防ぎやすくなります。
(参照:国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」)
共有持分を素早く手放したいなら共有持分の買取専門業者にも相談しよう
以上のとおり、換価分割の手続きには時間がかかり、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。そのため「迅速に問題を解決したい」「他の共有者との交渉が難しい」には、共有持分の買取専門業者への相談も1つの選択肢となります。
訳あり物件に特化した専門業者は、複雑な権利関係や法的手続きに精通しており、迅速な対応が可能です。また、市場価値よりも低い価格での買取りとなる可能性はありますが、煩雑な手続きや他の共有者との交渉を避けられるメリットが存在します。
ただし、業者選びには慎重を期す必要があります。実績や評判を十分に調査し、複数の業者から見積もりを取るなどして、適切な判断をすることが大切です。また、売却前に法律の専門家に相談し、自身の権利を守りつつ取引を進めることをおすすめします。
共有持分の問題は複雑で、一筋縄ではいかないケースが多いものです。状況に応じて、専門家のアドバイスを受けながら、最適な解決方法を選択しましょう。
換価分割と共有名義についてよくある質問
換価分割と共有名義についてよくある質問は、以下のとおりです。
- 換価分割を行う相続人代表は誰が務めますか?
- 換価分割で相続登記を共有名義にするデメリットは?
- 換価分割で生じた譲渡所得税は誰が支払いますか?
それでは、それぞれの質問とその回答を紹介します。
換価分割を行う相続人代表は誰が務めますか?
相続した不動産を換価分割する場合、代表者となる相続人は法律で一律に指定されているわけではありません。代表者を置く場合は、相続人間で話し合って決めることになります。換価分割では、相続人の共有名義で登記して売却する方法のほか、相続人の一人が不動産を取得する形で登記し、売却代金を他の相続人に分配する方法もあります。代表者が単独名義で登記する場合には、売却代金の分配割合や売却手続きの進め方を遺産分割協議書などに明確に定めておくことが重要です。
換価分割で相続登記を共有名義にするデメリットは?
相続登記を共有名義にすると、不動産全体を売却する際に複数の相続人が手続きに関わる必要がある点がデメリットです。例えば、相続人が3人いる場合、不動産全体を売却するには3人全員の同意が必要になります。売買契約や登記に必要な書類の準備、本人確認などでも、各相続人との調整が発生します。また、共有名義のまま長期間保有すると、共有者が亡くなった際にその持分がさらに相続され、権利関係が複雑になる可能性があります。一方、共有名義にすることで、それぞれの所有割合を登記上明確にできるという面もあります。換価分割を前提とする場合は、相続人全員の共有名義で売却する方法と、一人が取得して売却代金を分配する方法について、それぞれの手続きや税務上の取扱いを比較することが重要です。
換価分割で生じた譲渡所得税は誰が支払いますか?
換価分割で不動産を売却して譲渡所得が生じた場合は、原則として、その所得が帰属する各共有者や相続人が所得税を負担します。すでに共有名義となっている不動産を売却する場合は、通常、それぞれの持分に対応する売却代金や取得費、譲渡費用を基に譲渡所得を計算します。相続財産を換価分割する場合は、売却時点で売却代金の取得割合が確定しているかどうかが重要です。売却前に遺産分割によって取得割合を定めていれば、その割合に応じた譲渡所得を各相続人が申告することになります。
まとめ
共有持分の換価分割は、不動産の共有関係を解消する有効な手段の1つですが、その実行には慎重な検討が必要です。
換価分割には公平な分配や共有関係の完全解消というメリットがある一方で、不動産の喪失や市場価値以下での売却リスクといったデメリットも存在します。
また、売却価格や手続きの進め方、代金の分配方法などをめぐって新たなトラブルが発生する可能性もあります。そのため、換価分割を選択する際は、共有者全員の事情や不動産の特性、市場状況などを総合的に考慮することが重要です。
さらに、法律や税務の専門知識が必要となる場面も多いため、弁護士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。




















