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しかし、離婚の際に財産分与をしたくない場合、具体的にどのような方法を取ればよいのか。あるいは、トラブルを避けるためにはどのような点に注意すべきなのかといった点については、わからないことも多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、離婚時に財産分与をしないための方法や、関連するトラブルへの対処法などについて、詳しく解説します。
離婚時に財産分与をしたくない場合は公正証書に残す必要がある

離婚時に財産分与をせずに終わらす方法もありますが、一般的にはトラブルになるリスクがあります。リスクを抑えるためにも、決め事は公正証書で残しておきましょう。
夫婦双方が財産分与をしないことに合意すれば、その内容に沿って離婚することは可能です。
財産分与をしない合意を成立させるために、公正証書の作成が法律上必須とされているわけではありません。
後から合意内容を巡って争いになるのを避けるには、口約束だけで済ませず、「互いに財産分与を請求しない」旨を離婚協議書などに明記しておくことが大切です。さらに公正証書として残せば、公証人が当事者の合意内容を公文書として作成するため、取り決めがあったことを証明しやすくなります。
財産分与として一定額の金銭を支払う場合には、強制執行認諾文言を含む公正証書を作成する方法もあります。所定の条件を満たせば、支払いが滞った際に改めて訴訟で債務名義を取得せず、強制執行を申し立てることが可能です。
(参考:日本公証人連合会「養育費、財産分与、慰謝料の支払を確保する方法として、公正証書の利用があげられると聞きましたが、どういうことですか?」)
公正証書へ記載する内容や、財産分与以外の慰謝料・養育費などを含めて取り決める場合は、合意する範囲を整理したうえで作成する必要があります。権利関係に争いがある場合は、弁護士への相談も検討するとよいでしょう。

丸岡 智幸
代表取締役 / 株式会社ネクスウィル
離婚に際しての財産分与は、夫婦それぞれに認められた権利であり、その行使は個人の判断に委ねられます。したがって、夫婦双方が合意の上で財産分与請求権を放棄することを選択すれば、分与を行う義務は生じません。ただし、この権利の放棄を一方的に強制することは許されず、もし一方が分与を望まない場合は、相手方を説得するしかありません。
出典: 丸岡智幸『拝啓売りたいのに家が売れません』
離婚時に財産分与をしなくてもよいケース
次のようなケースでは、離婚時の財産分与は必要ありません。
- 除斥期間を超えている
- 特有財産について揉めている
- 会社の財産を分与しようとしている
それぞれ詳しく解説します。
除斥期間を超えている

2026年4月1日以降に離婚した場合は5年、それ以前に離婚した場合は2年の申立期間が適用されます。
離婚後に財産分与について話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所へ調停または審判を申し立てられる期間には制限があります。
2026年4月1日以降に離婚した場合は、離婚した日の翌日から起算して5年です。一方、2026年3月31日以前に離婚した場合には、改正前のルールが適用され、期間は2年となります。
(参考:裁判所「裁判手続 家事事件Q&A」)
そのため、「現在はすべて5年」と考えるのは適切ではありません。自分がいつ離婚したのかを基に、2年と5年のどちらが適用されるかを確認する必要があります。
また、期間を過ぎると財産分与請求権そのものが一律に「完全消滅する」と表現するより、当事者間で協議がまとまらない場合に、家庭裁判所へ財産分与の調停・審判を申し立てられなくなると捉えるほうが正確です。
離婚成立日は離婚方法によって異なります。協議離婚では離婚届の受理日、調停離婚では調停成立日、審判離婚では審判の確定日、判決による離婚では判決の確定日を確認します。期間の経過が近い場合は、早めに手続の要否を確認することが大切です。
特有財産について揉めている

財産分与では、取得時期・資金の出所・取得経緯を確認して共有財産と特有財産を整理しましょう。
婚姻前から所有していた財産や、婚姻中に相続・贈与で取得した財産は、原則として財産分与の対象から外れます。こうした財産は一般に「特有財産」と呼ばれます。
(参考:法務省「りこんポータル|離婚を考えている方へ」)
ただし、特有財産を巡って意見が対立しているという理由だけで、財産分与全体をしなくてよくなるわけではありません。特有財産に当たる部分を財産分与の対象から外し、それ以外の共有財産について分与の要否や金額を検討します。
預貯金であれば婚姻前の残高や入出金履歴、不動産であれば取得時期や購入資金の資料、相続財産であれば遺産分割協議書など、取得経緯を確認できる資料を残しておくことが重要です。
また、2026年4月1日施行の改正後は、家庭裁判所が財産分与を判断する際、婚姻中に財産を取得・維持するための双方の寄与なども考慮します。単に名義だけを見るのではなく、取得経緯や維持への関与まで含めて整理する必要があります。
会社の財産を分与しようとしている
会社名義の預金、不動産、設備などは、経営者個人の財産とは区別して考える必要があります。
会社法上、会社には経営者や株主とは別の法人格があるため、会社自身が所有する財産をそのまま夫婦の財産分与の対象にするのが原則ではありません。
(参考:e-Gov法令検索「会社法」)
一方、夫婦の一方が所有している会社の株式や持分は、個人が保有する財産です。婚姻中に夫婦の協力によって取得・維持された株式などであれば、財産分与を検討する際の対象となる可能性があります。財産分与の対象には株式も含まれます。
そのため、会社経営者の離婚では「会社の預金を半分にする」と考えるのではなく、経営者本人が所有する株式・持分、会社に対する貸付金など、個人に帰属する財産を確認します。会社資金を私的に使用していたという事情だけで、会社所有の財産が当然に夫婦の共有財産へ変わるわけではありません。
財産分与をするなら損をしないために知っておくべきこと
万が一財産分与が発生したときのために、以下の点について把握しておきましょう。
- 相手方の財産
- 特有財産の証明
次項より、個別に解説します。
相手方の財産
適切に財産分与を行うには、預貯金、不動産、株式など、財産分与の対象となり得る財産を双方で確認する必要があります。
まずは相手方に財産資料の開示を求め、預金通帳や残高証明書、不動産関係資料などを確認します。話し合いだけでは財産の全体像を確認できない場合には、家庭裁判所の手続を利用する方法があります。
2026年4月1日施行の法改正により、財産分与に関する裁判手続では、家庭裁判所が必要と認める場合に、当事者へ財産情報の開示を命じられるようになりました。正当な理由なく情報を開示しなかった場合や虚偽の情報を開示した場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。
金融機関など第三者が保有する資料については、裁判所による調査嘱託が利用される場合もあります。ただし、相手方が申し立てれば無条件ですべての財産情報を取得できる制度ではありません。必要性や対象となる情報を踏まえて裁判所が判断します。
特有財産の証明
財産分与の交渉で自分に有利な結果を導き出すためには、特有財産を主張することも効果的な方法の1つです。
特有財産とは、夫婦のどちらか一方に帰属する財産を指します。具体的には、婚姻前から所有していた財産や、婚姻中に相続や贈与によって取得した財産などがこれに当たります。
財産分与の対象となるのは、あくまでも夫婦の共有財産です。したがって、特有財産に該当するものは、原則として財産分与の対象から除外されることになります。
ただし、ある財産が共有財産なのか特有財産なのかを判断することは、それほど簡単ではありません。財産の取得時期や経緯、名義、資金の出所などを詳細に調査し、特有財産であることを証明しなければならないのです。
相手方から財産の開示を求められた場合の対応法
もし、離婚の相手方から自身の財産の開示を求められた際には、次の対処法を採りましょう。
- 相手方と話し合う
- 弁護士会照会制度の活用
それぞれ詳しく解説します。
相手方と話し合う
相手方から財産の開示を求められた場合は、まず財産分与の対象となり得る財産と、特有財産として主張する財産を整理します。
預貯金、不動産、株式などについて取得時期や残高を確認できる資料を準備しておくと、話し合いを進めやすくなります。
当事者同士の任意の話し合いと、家庭裁判所から情報開示を命じられた場合は区別が必要です。現在は、財産分与の裁判手続で家庭裁判所が必要と認めれば、当事者に財産情報の開示を命じることができます。
(参考:法務省「財産分与に関するルールの見直し」)
そのため、「財産の開示を求められても拒否する権利がある」と一律に考えるのは適切ではありません。裁判所から開示命令を受けた場合、正当な理由なく開示しなかったり、虚偽の情報を開示したりすると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
財産分与の対象かどうかで争いがある財産についても、存在そのものを隠すのではなく、取得経緯などを示したうえで特有財産に当たることを主張する方法が適しています。
弁護士会照会制度の活用
財産に関する情報を確認する手段として、弁護士会照会制度が利用される場合があります。
弁護士法23条の2に基づき、弁護士が受任した事件について必要な情報がある場合、所属する弁護士会へ照会を申し出て、弁護士会から公私の団体などへ報告を求める制度です。
ただし、弁護士が希望する情報を自由に取得できる制度ではありません。照会の必要性や相当性について弁護士会による審査があり、照会先から必ず目的どおりの回答が得られるとも限りません。
財産分与で相手方の財産を確認したい場合には、任意の資料開示、家庭裁判所の情報開示命令、調査嘱託、弁護士会照会など、それぞれの制度の利用条件を踏まえて方法を検討します。
(参考:日本弁護士連合会「弁護士会照会制度(23条照会)」)
離婚で財産分与をしない場合の公正証書についてよくある質問
離婚で財産分与をしない場合の公正証書についてよくある質問は、以下のとおりです。
- 離婚調停で財産分与をしないためにはどうすればよいですか?
- 公正証書で財産分与の取り決めはできますか?
- 公正証書を作成した後に離婚しなかった場合はどうなりますか?
- 取り決めた財産分与を支払わないとどうなりますか?
- 財産分与をしない離婚協議書はどう書けばよいですか?
- 離婚の公正証書は自分で作成できますか?
それでは、それぞれの質問とその回答を紹介します。
離婚調停で財産分与をしないためにはどうすればよいですか?
財産分与をしない内容で解決するには、原則として相手方との合意が必要です。一方だけが財産分与を拒否したいと考えていても、相手方に財産分与請求権の放棄を一方的に求めることはできません。離婚調停では、財産の内容や双方の事情を確認しながら合意を目指します。財産分与について合意できなければ、離婚後の財産分与調停・審判や離婚訴訟の中で判断される場合があります。
公正証書で財産分与の取り決めはできますか?
離婚に関する公正証書には、財産分与、慰謝料、養育費、清算条項など、夫婦が合意した内容を必要に応じて記載できます。財産分与として一定額の金銭を支払う場合には、強制執行認諾文言を設けることで、不払いが生じた際に公正証書を債務名義として強制執行を申し立てられる場合があります。不動産を財産分与する場合には、公正証書の作成とは別に所有権移転登記などの手続も確認します。
公正証書を作成した後に離婚しなかった場合はどうなりますか?
協議離婚について公正証書を作成しただけでは、離婚そのものは成立しません。離婚届が受理されて初めて協議離婚の効力が生じます。財産分与や養育費などの条項が、離婚しなかった場合にも何らかの効力を持つかは、公正証書の具体的な文言によって異なります。離婚を取りやめた場合は、公証役場や弁護士に内容を確認し、必要に応じて変更や合意の整理を行うとよいでしょう。
取り決めた財産分与を支払わないとどうなりますか?
財産分与として金銭を支払う取り決めをした場合、支払義務を一方的になくすことはできません。一定額の金銭支払いと強制執行認諾文言を記載した公正証書がある場合は、支払いが滞った際に強制執行を申し立てられる可能性があります。公正証書がない場合でも、調停調書や判決などの債務名義を取得したうえで強制執行へ進む場合があります。支払いが難しくなった場合は放置せず、支払時期や分割方法を相手方と協議し、変更に合意した場合は内容を書面に残します。
財産分与をしない離婚協議書はどう書けばよいですか?
財産分与を行わないことを双方が明確に確認できる条項を設けます。例えば、次のような形です。「甲および乙は、本件離婚に関し、互いに財産分与を請求しないことを確認する。」さらに、離婚協議書で定めたもの以外に相互の金銭請求を残さない場合は、清算条項を設けることもあります。実際の条項は、慰謝料や養育費、不動産、債務など他の取り決めとの関係によって内容が変わります。財産の範囲に争いがある場合は、定型文だけで処理せず、対象財産を確認したうえで作成することが大切です。
離婚の公正証書は自分で作成できますか?
公正証書そのものを当事者が作成することはできません。公正証書は公証人が作成しますが、夫婦側で取り決めたい内容を整理し、原案や資料を準備して公証役場へ相談することは可能です。また、夫婦双方が必ず公証役場へ出向かなければならないとは限りません。公正証書の種類によっては、本人から委任を受けた代理人による作成手続も認められています。離婚給付等契約公正証書では、本人確認資料に加え、戸籍謄本や、財産分与する不動産がある場合の登記事項証明書など、取り決めの内容に応じた資料が必要です。
まとめ
夫婦間の合意内容を公正証書で残すこと、除斥期間を意識すること、特有財産を適切に主張すること、相手方の財産状況を正確に把握することなどが、財産分与をめぐるトラブルを防ぐためのポイントとなります。
しかし、財産分与の問題は複雑であり、専門的な知識が求められるケースも少なくありません。
離婚時の財産分与について悩みや不安を抱えている方は、ぜひ弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
運営団体 2019年1月29日設立。訳あり不動産の買取を行う不動産会社。相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産を買い取り、法的知識や専門知識を以って、再度市場に流通させている。 訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を展開。 経済界(2022年)、日刊ゲンダイ(2022年)、TBSラジオ「BOOST!」(2023年)、夕刊フジ(2023年)などで訳あり不動産について解説している。2024年度ベストベンチャー100選出。 これまでの買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』(代表取締役 丸岡・著)を2024年5月2日に出版。 |












