相続物件

不動産の「相続税評価額」はどう計算すればいい?固定資産税評価額との違いとは

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相続税の申告や相続対策で、「相続税評価額」という言葉を目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。相続税評価額とは、被相続人が残した財産の価額を、国税庁が定めた方法で評価した金額を指します。

しかし、この相続税評価額がどのように計算されるのか、固定資産税評価額とはどう違うのか、具体的なイメージがつかない方も少なくないでしょう。

実は、相続税評価額の計算方法は、土地や建物などの財産の種類によって異なります。適用される特例や減額要因によっては、相続税の負担を大きく軽減できる可能性もあるのです。

そこで本記事では、不動産を中心に、相続税評価額の基本的な考え方から計算方法、さらには節税につながる減額ポイントまで、わかりやすく解説します。

相続税評価額とは

相続税評価額とは、相続税や贈与税を計算する際に基準となる財産の価額のことです。相続税は、被相続人(亡くなった方)が残した財産の価値に対してかかる税金ですが、現金や預貯金といった金銭と違い、土地や建物などの不動産の価値を正確に把握するのは容易ではありません。

そこで、国税庁が定めた「財産評価基本通達」という評価方法に基づいて、土地や建物、有価証券などの相続財産の価額を算出したものが相続税評価額です。

この相続税評価額の合計額から基礎控除額を引いた金額に税率をかけることで、相続税額が計算されます。

固定資産税評価額との違い

固定資産税評価額は、毎年1月1日時点の土地や家屋の価格を評価し、その価格に基づいて固定資産税が課税されます。一方、相続税評価額は、相続開始日(被相続人が亡くなった日)時点の財産の価額を評価します。

土地の評価額については、固定資産税評価額が「公示価格の7割程度」とされているのに対し、相続税評価額は「公示価格の8割程度」とされています。

固定資産税評価額は概ね3年に1度見直しが行われますが、相続税評価額は毎年1月1日時点の価額に見直されます。このように、評価時点や評価額の算出方法が異なるため、同じ不動産でも固定資産税評価額と相続税評価額は一致しません。

関連記事:固定資産税評価額とは?調べ方や計算方法をわかりやすく解説

相続税評価額の求め方

相続税評価額は、相続財産の種類や用途によって評価方法が異なります。代表的な不動産の評価方法について以下に解説します。

土地の相続税評価額の求め方①:路線価方式

路線価方式とは、宅地の面する道路の路線価(1㎡あたりの土地の評価額)に、奥行価格補正率や側方路線影響加算率などの補正率を乗じて、宅地の相続税評価額を求める方法です。

路線価は、その道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額として国税庁が定めたもので、毎年7月に公表されます。路線価は、地価公示価格の8割程度の水準で設定されています。

ただし、不整形地や無道路地、旗竿地などの特殊な土地については、さらに別の補正率を乗じるなどの調整が必要になります。路線価方式は、主に大都市の市街地など、宅地の取引価格の差が著しい地域に適用されます。

土地の相続税評価額の求め方②:倍率方式

倍率方式とは、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて、宅地の相続税評価額を求める方法です。この倍率は地域や用途地区によって異なり、国税庁が定めた「評価倍率表」で確認できます。宅地の固定資産税評価額は、各市区町村の固定資産税課税台帳や固定資産税の納税通知書などで確認することができます。

倍率方式は、路線価が定められていない地域に所在する宅地の評価に用いられます。土地の形状が不整形であったり、無道路地や旗竿地であったりしても、固定資産税評価額にはすでに価格の補正が反映されているため、別途補正をする必要はありません。

建物の相続税評価額の求め方

建物(家屋)の相続税評価額は、課税時期(相続開始日)における固定資産税評価額と同額とされています。

建物の固定資産税評価額は、各市区町村が固定資産税や都市計画税の課税標準とするために評価したもので、「固定資産税課税明細書」に記載されています。この固定資産税評価額をそのまま相続税評価額として用います。

ただし、相続開始前3年以内に新築・増改築をしたり、滅失したりした建物については、別途再建築価額を求めて、これに法定の残存年数に応じた減価残存率を乗じるなどの方法により評価額を算定します。

評価額は「時価」よりも安くなる

相続税評価額は、相続財産の客観的な交換価値を表す「時価」よりも、通常は安く算定されます。土地の評価額でみると、路線価方式や倍率方式で算出された相続税評価額は、通常、実勢価格の8割程度とされています。

これは、実際の取引価格には、その土地の個別性に応じたさまざまな要因が反映されるのに対し、相続税評価額は、それらの個別性を捨象し、画一的な評価をすることで納税者間の公平性を確保するためです。

相続税評価額は、毎年1月1日時点の価額に見直されますが、地価の変動をタイムリーに反映できないことから、「時価」との乖離が生じることになります。

相続税評価額が安く抑えられる理由

相続税評価額が「時価」よりも安く算定される理由は大きく分けて2つあります。1つは、不動産には、金融資産のように換金性や流動性がないため、その資産価値を適切に評価することが難しいことです。

相続税の納税義務は、相続開始という予想外の出来事によって発生するため、納税資金の準備が間に合わないことも少なくありません。

そのため、相続財産を売却して納税資金を調達することも想定されますが、不動産は換金性に乏しいため、「時価」で売却できるとは限りません。したがって、相続税評価額を「時価」よりも低く抑えることで、納税者の負担に配慮しているのです。

もう1つの理由は、相続税評価額の算定基礎となる路線価等の指標は、地価公示価格の8割程度の水準にとどめることにより、徴税側の恣意性を排除し、納税者に有利に指標設定することで、納税者間の公平性を担保するためです。

相続税評価額の減額要素

被相続人が所有していた土地や建物の中には、その利用状況や形状等の特性から、一定の条件を満たす場合、相続税評価額が減額される場合があります。一例を挙げると、以下のとおり。

  • 貸家建付地である
  • 土地に借地権が設定されている
  • 土地面積が広いor歪な形をしている
  • 「小規模宅地等の特例」を利用できる

それぞれ詳しく解説します。

貸家建付地である

貸家建付地とは、被相続人が所有する土地に、貸家(賃貸アパート等)が建てられている場合をいいます。この場合、相続税評価額は、通常の宅地の評価額から20〜30%程度減額されます。

これは、貸家建付地の所有者は、借地権の設定により土地の自由な利用が制限され、賃借人の居住権を保護する必要があるため、一般の宅地に比べて資産価値が低いと評価されるからです。ただし、貸家の賃借人が親族等の場合は、この特例は適用されません。

土地に借地権が設定されている

被相続人が所有する土地の上に、第三者(借地人)が所有する建物が存在する場合、その土地には借地権が設定されているといいます。この場合、相続税評価額は、通常の宅地の評価額から30〜80%程度減額されます。

借地権とは、借地人が土地所有者との契約に基づいて、その土地を一定期間利用できる権利をいいます。

借地人は、建物を所有し、その敷地を利用する対価として、地代を土地所有者に支払います。借地権が設定された土地は、所有者の自由な利用が制限されるため、一般の宅地よりも資産価値が低く評価されるのです。

関連記事:借地権付き建物とは?メリット・デメリット、売却方法を詳しく解説

土地面積が広いor歪な形をしている

相続した土地の面積が広大であったり(=広大地)、道路に接する間口が狭かったり(=無道路地、袋地)、三角形や五角形など歪な形状をしていたり(=不整形地)すると、一般の宅地に比べて利用価値が低いと評価され、相続税評価額が減額される場合があります。

たとえば、「広大地」については、その面積に応じて、最大30%程度減額されます。「無道路地」「袋地」「不整形地」についても、それぞれ所定の計算式により評価額が減額されます。

これらの特例の適用にあたっては、路線価方式と倍率方式とで、適用方法が異なるため注意が必要です。

「小規模宅地等の特例」を利用できる

「小規模宅地等の特例」は、一定の要件を満たす土地等について、相続税の課税価格の計算上、相続税評価額を最大80%減額できる制度です。特例の適用を受けるには、その土地等が「特定居住用宅地等」「特定事業用宅地等」「貸付事業用宅地等」のいずれかに該当する必要があります。

「特定居住用宅地等」とは、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、その面積が330㎡以下のものをいいます。「特定事業用宅地等」とは、被相続人等が事業の用に供していた宅地等で、その面積が400㎡以下のものをいいます。

「貸付事業用宅地等」は、被相続人等が貸付事業の用に供していた宅地等で、その面積が200㎡以下の状態です。この特例の適用を受けるためには、一定の要件を満たす必要があり、相続税の申告期限までに特例の適用を受ける旨を記載した届出書を税務署長に提出しなければなりません。

関連記事:小規模宅地等の特例とは?適用要件や計算例、必要書類をわかりやすく紹介

相続不動産を複数人で分ける場合の注意点

被相続人の所有する不動産を複数の相続人で分割する場合、その分割方法によっては、相続人間で不公平感が生じるおそれがあります。

たとえば、不動産の「時価」と相続税評価額とでは、その金額に大きな開きがあることから、単純に「時価」で按分すると、金銭的な分配を受ける相続人が不利になります。

不動産の「時価」を評価する場合、適正な評価をするために不動産鑑定士に依頼する必要がありますが、

その費用は数十万円程度かかります。したがって、相続人全員の合意のもと、相続税評価額を基準として、不動産の分割方法を決めることが望ましいでしょう。

関連記事:実家を相続することになったらどうする?失敗を回避する方法とは

訳あり物件の悩みを解決する「ワケガイ」の空き家買取サービス

相続した不動産が「訳あり物件」だと、相続税評価額が低く抑えられるメリットがある一方で、売却が難しいというデメリットもあります。共有名義の物件や再建築不可の土地、空き家やゴミ屋敷、事故物件など、通常の不動産市場では買い手がつきにくいのが実情です。

当社が提供する「ワケガイ」は訳あり不動産の買取に特化したサービスで、全国各地のさまざまな物件の買取実績を有しています。

面倒な売却手続きは専門スタッフにお任せいただけますし、最短即日の現金一括払いにも対応。他社で断られたような物件でも、まずは無料査定に申し込んでみてください。

まとめ

相続税評価額は、土地や建物などの相続財産の価額を評価する上で、非常に重要な概念です。路線価方式や倍率方式など、財産の種類に応じた評価方法を理解することで、おおよその相続税額を把握することができるでしょう。

貸家建付地や小規模宅地等の特例を適用できるケースでは、相続税の負担を大幅に軽減できる可能性があります。

ただし、これらの特例の適用には、一定の条件を満たす必要がありますし、複数の相続人で不動産を分割する場合には、適切な基準に基づいて分割方法を決める必要があります。

相続税の申告は、専門的な知識と経験が求められる难しい手続きです。「訳あり物件」のように、評価額が低くなるような物件を売却する場合も、専門家のサポートがあると心強いでしょう。

運営団体
株式会社ネクスウィル

2019年1月29日設立。訳あり不動産の買取を行う不動産会社。相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産を買い取り、法的知識や専門知識を以って、再度市場に流通させている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を展開。
経済界(2022年)、日刊ゲンダイ(2022年)、TBSラジオ「BOOST!」(2023年)、夕刊フジ(2023年)などで訳あり不動産について解説している。2024年度ベストベンチャー100選出。
これまでの買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』(代表取締役 丸岡・著)を2024年5月2日に出版。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

佐藤 丈太郎 (税理士)

税理士の職域に留まらず、クライアントファーストで多岐に渡る業務に従事。
大規模な相続対策や節税コンサルティングを得意としている。

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