不動産の所有形態について考えるとき、資金面や相続関連の事情から、共有名義での所有を検討する方もいらっしゃるのではないでしょうか。
共有名義と単独名義との違いがどう影響するのか、それぞれのメリットやデメリットは何なのかを理解することが必要。適切な選択をすることで、自身の利益を最大限に引き上げられるでしょう。
今回は、共有名義不動産の概要について解説し、単独名義とは異なる特徴を明確にします。共有名義不動産のメリットやデメリットについても具体的に説明しますので、最善の選択をする助けとなれば幸いです。
目次
共有名義とは
共有名義とは、不動産を数人で所有する形態を示します。これは、夫婦が一緒に不動産を手に入れた時や、相続により一つの不動産を数人で獲得した際にみられる状態です。
複数の所有者が一つの不動産を持つため、各々は自己の持分に対する所有権を訴えることが可能。このため、不動産を売りに出す際には、全ての所有者からの同意が必要になります。
共有名義は税制面で利点があるものの、他の所有者の存在により問題が発生する可能性もあるため、留意しましょう。
「共有者」「共有持分」との違いは?
共有持分とは、数人が一つの不動産を共同で所有する際、各人がその不動産に対する所有権の比率を指す言葉です。例えば、夫婦が不動産を半分ずつ共有している場合、夫と妻が持つ所有権の比率(半分ずつ)を示します。
共有者とは、不動産を共有する人々を示す言葉です。例えば、AとBの夫妻が共に新居を購入する場合、ABの両者が共有者となります。
共有名義の不動産価値はどう決まる?
不動産の価格を評価するにあたって、多種多様な不動産評価基準が存在し、「絶対的な価格基準はない」と言えます。
例えば、固定資産税を課するためには、「固定資産税評価証明書」に記されている評価額が基準となります。
しかし、相続税に用いられる「路線価(相続税路線価)」や、売却価格の基準となる「市場価格(不動産業者が物件の立地や条件をもとに査定した金額)」などを用いるケースもあります。
関連記事:共有名義不動産の売却価格の決まり方とは?基準についてわかりやすく解説
共有名義のメリット
あえて共有名義不動産を取得するメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- 【購入時】各名義人で住宅ローンの控除を受けられる
- 【売却時】3,000万円特別控除をそれぞれの名義人が受けられる
以下より、それぞれについてみていきましょう。
【購入時】各名義人で住宅ローンの控除を受けられる
共有名義で不動産を購入した際、各々が住宅ローン控除を受けられます。
例えば、共働き世代の夫婦がペアローンで不動産を購入した場合、それぞれのローン残高に応じて、各々が控除を受けられます。
単独名義で不動産を購入した場合は、ローンを組んだ人だけが控除を受けられますが、共有名義で不動産を購入すると、より大幅な控除メリットを得られる可能性があるのです。
ただし、そのためにはいくつかの要件を満たす必要があります。
- 所有権の共有者全員がその住宅を主たる居住の用に供している
- 各名義人が個々に住宅ローンを組み、その返済に充てている
- 各名義人が個々に申告する
以上の条件を満たすと、各名義人は住宅ローン控除の対象となります。
住宅ローン控除は複雑な制度であるため、具体的な計算方法や控除額等については、税務専門家に相談しましょう。
【売却時】3,000万円特別控除をそれぞれの名義人が受けられる
自宅を売却し利益が生じた際、最大3,000万円まで課税されない「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が存在します。
この特例は不動産の名義人全員が受けられるため、不動産売却時の節税効果が期待できます。
例えば、夫婦が共有名義で不動産を所有し、その全持分を売却した場合、夫婦それぞれが3,000万円の特別控除の特例を受けることが可能。その結果、夫婦合計で6,000万円分の特別控除を受けられ、納税額を低減できる可能性があります。
共有名義のデメリット
以上のようなメリットがある共有名義での不動産所有ですが、次のようなデメリットもあります。
- 共有不動産の取り扱いには他の共有者の同意は必要
- 諸経費などは分担しなければならない
- 相続が発生すると権利関係が複雑になる
以下より、個別に解説します。
共有不動産の取り扱いには他の共有者の同意は必要
共有名義の不動産を扱う際には、その持分に応じた行動制限が生じます。何か行動を起こす際には、他の共有者の同意が要求されるのです。
具体的には以下のようなシチュエーションが想定されます。
- 不動産全体の売却
- 長期的な賃貸契約
- 大規模な改築や新築、解体
- 抵当権の設定
- 分筆や加筆
共有名義不動産で、これらの行動を起こすためには、全員の了承が必要。交渉が困難な共有者がいると、問題が放置されがちです。だからといって放置してしまえば、固定資産税が毎年発生しかねません。
全体の不動産は個別のものではなく、各共有者のもの。そのため、共有持分者全員の了承がない限り売却は不可能と認識しましょう。
諸経費などは分担しなければならない
不動産を取得すると、税金やローンなど、さまざまなな経費が発生します。これらの経費は共有者全員に均等に負担義務が生じるため、初期費用は想像以上に高くなる可能性があるでしょう。
同一の不動産を取得しても、ローンを別々に組む、契約をそれぞれ締結する必要があります。これにより、全ての共有者に経費が発生します。
その結果、単独名義での不動産取得と比較すると、経費は驚くほど高額になることも考えられます。
関連記事:共有名義の「固定資産税」は誰が払うべき? 滞納した場合や支払いたくない場合はどうなる?
相続が発生すると権利関係が複雑になる
共有者が亡くなると、亡くなった方の持分は相続の対象となります。例として、夫婦が共有名義で不動産を保有していて、夫が亡くなった場合、夫の持分は相続の対象となり、相続税が発生することがあります。
共有者が兄弟や第三者の場合、自分が共有持分を取得することはなく、共有者が増える可能性があります。
関連記事:実家を共有名義で相続するとトラブルに?共有不動産の持つリスクについて論考
共有名義を「単独名義」に変更する方法とは?
不動産の名義変更とは、登記簿に記載されている名義人を変更する手続きです。これは「所有権移転登記」ともいわれ、誰が不動産を所有しているかを明示する行為。
登記とは、不動産や債権などの権利関係を社会に公示するための制度であり、法務局が管理している登記簿は誰でも閲覧可能です。
名義変更する方法
具体的に、共有名義の不動産を単独名義に変更する方法には以下のようなものがあります。
- 共有物分割
- 持分放棄
- 交換
長期間不動産を所有している場合、所有権を持っていなかったとしても、所有権を得られます。これは「時効取得」という制度。
他人の土地を20年間(占有開始時に善意無過失であれば10年間)、所有の意思を持って平穏かつ公然に占有を続けている場合に、所有権を得ることが可能です。
名義変更の手順
共有名義の不動産を単独名義に変更するための手続きは、大まかに3つのステップに分けられます。
- Step1.司法書士への依頼
- Step2.必要書類の準備
- Step3.法務局での登記申請
必要書類を全て揃えたら、担当の司法書士が法務局にて登記申請を行いましょう。
法務局で名義変更が完了すれば、登記完了証が交付されます。後日司法書士から受け取れば、名義変更の手続きは完了となります。
共有不動産の名義変更の方法については、以下の記事でも解説しています。こちらもあわせて、ご参照ください。
共有名義不動産は専門業者への売却も有効!
共有名義の不動産を売却する際、共有持分の買取に専門化した不動産業者に依頼することも有益な選択となり得ます。
このような専門業者は共有持分の買取に関する詳細なノウハウを保持しており、また共有者間での調整なども手がけてくれます。
共有名義の不動産はその利便性や節税効果から魅力的な選択肢に映る一方、その取り扱いには相応の注意が必要。各種経費の分担や相続問題、そして名義変更や売却に至るまでの課題を理解し、適切な手順を踏むことが求められます。
以上を踏まえると、専門業者への売却も恩恵があるといえるでしょう。
まとめ
共有名義の不動産は、単独名義と比べて所有権の形式が大きく異なります。共有名義不動産の保有を続けるか否かの決断は、共有名義の長所・短所をしっかりと理解し、個々の状況に応じて行うことが重要です。
適切な判断を下すためには専門知識が必須であり、不動産や法律に関しての専門家の意見を求めるべきでしょう。これにより、不必要なトラブルを避け、より安全で有益な選択を行えます。
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