共有持分【基礎知識】

共有名義の不動産を「名義変更」する方法とは?

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相続や離婚、持分の売買などをきっかけに、共有名義の不動産を単独名義に変更する必要が生じるケースは少なくありません。

一方で、こうした場面では、「手続きの複雑さ」「他の共有者との合意形成」「税金負担」など、さまざまな問題が発生します。共有名義から単独名義に変更する上では、登記の種類ごとに必要書類や税金、注意点が異なるため留意が必要です。

そこで本記事では、共有不動産の名義変更に関する基本知識から、実際の変更方法、注意すべき法的・実務的ポイントまでを、具体例を交えて詳しく解説します。

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不動産の名義変更とは?

不動産の名義変更とは「登記簿に記載されている名義人を変更すること」です。「所有権移転登記」ともいい、不動産が誰の所有であるかを明確にする行為。

そもそも、登記とは不動産や債権などの権利関係を社会に公示する制度のため、法務局が管理している登記簿は誰でも閲覧できます。

不動産を相続・購入などで取得した場合、名義変更をしないと第三者に対して所有権を主張できません。使用する権利や管理をする権利がないため、不都合が生じたとしても請求や訴訟ができず不利益を被ることになるでしょう。

抵当権も設定できないため、ローンの担保にも使用することも不可能です。

関連記事:共有持分の一部移転登記はやめた方がいい?注意点や費用についてわかりやすく解説

 

共有名義の変更が必要になるケース

例えば、共有名義から単独名義に変更しなければならなくなるケースとしては、以下のようなものが考えられるでしょう。

  • ケース①:相続
  • ケース②:離婚
  • ケース③:売買や贈与

それぞれについて、個別に解説します。

ケース①:相続

「不動産の相続」とは、家や土地を所有している人が亡くなった際に、その所有権が子供などに引き継がれることです。被相続人(※故人)が不動産の共有持分を持っていれば、共有不動産をそのまま相続することになります。

また、被相続人が単独名義で所有していた不動産を2人以上で「共有状態として」相続することもあるかもしれませんが、権利関係が複雑になるため避けた方が賢明です。

関連記事:共有名義不動産を相続するのは危険?よくあるトラブルや手続き方法を解説

関連記事:共有不動産の相続税はどうやって計算するの?

ケース②:離婚

離婚後、どちらか一方が夫婦間で共有している不動産に住み続ける場合、名義人になっていない方が住むのであれば名義変更が必要です。

夫婦2人の共有名義であった場合も、住む方の単独名義に変更しなくてはいけません。ただし、ローンが残っている場合は、金融機関に相談する前に名義変更をしてしまうと契約違反となることもあるため、把握しておきましょう。

関連記事:離婚したら夫婦共有名義の不動産はどうすればいいのか?

ケース③:売買や贈与

共有不動産の売買や贈与が発生したあとも、名義変更が必要です。売買取引時に名義変更するためには、「対価を受け取った」などの売買の経緯を「登記原因証明情報」に記載しなければなりません。

金銭を受け取らずに譲渡する贈与の場合、契約書がないケースも多く、口約束でも成立はしますが、登記申請の際には「登記原因証明情報」に贈与の事実を記載する必要があります。

関連記事:共有持分も売却できる!4つの方法とトラブル例を解説

 

共有不動産の名義を変更する方法

実際、共有名義の不動産を単独名義に変更する方法としては、次のようなものがあります。

  • 方法①:共有物分割
  • 方法②:持分放棄
  • 方法③:持分の交換
  • 方法④:時効取得

以下より、それぞれ個別にみていきましょう。

方法①:共有物分割

共有物分割請求とは共有者の一人または複数が「共有状態を解消したい」と考えた際に、不動産を物理的または経済的に分けるための手続きです。

共有物分割には、主に以下の3つの方法があります。

現物分割共有持分に応じて物理的に現物を分ける方法。
代償分割第三者に売却して経費を差し引いて残ったお金を、共有持分に応じて分配する方法。
換価分割共有者の誰か1人がすべての持分を買い取り、他の共有者に

代償金を支払う方法。

これらの手段をとるには、共有者全員の同意が原則必要となり、状況によっては調停や訴訟に発展することもあります。特に現物分割や代償分割は、土地の形状や評価、利用状況によっては難航することも多く、その手続きも煩雑になりがちです。

そのため、当事者間の話し合いが進まないケースや、どうしても名義整理を進めたいが合意形成が難しい状況では、現実的な打開策として選ばれることがあります。一方、円満な話し合いができる場合は、贈与や譲渡といった他の方法の方がスムーズなケースもあるため、状況に応じて選択肢を検討するのがよいでしょう。

関連記事:共有物分割請求とは?請求方法や流れを解説

方法②:持分放棄

不動産を共有状態で保有しているとき、共有者の内の誰かが「持分放棄」をすると、その持分は自動的に他の共有者へ移行します。

持分放棄は、共有持分権者に法的に認められた行為で、共有者の合意なしに行うことが可能。ただし、移転登記の際には他の共有者の協力が必要になるため、事前の確認が必要です。

名義変更という観点では、放棄された持分を登記上も移転させる必要があるため、登記手続きは不可欠です。

また、放棄を受けた側には贈与税や不動産取得税が課される可能性があるため、「無償でもらえた」としても手続きや税務面では意外と手間がかかる点には注意が必要です。

話し合いがまとまっており、「金銭のやりとりは不要なのでとにかく名義整理したい」という場合には有効ですが、節税目的や法的リスクを避けたい方は、事前に税理士等と相談したうえで選ぶべき選択肢です。

関連記事:【後悔しないために】共有持分の放棄をする際の判断基準を紹介

方法③:持分の交換

不動産を「交換」することでも所有権を移転できます。たとえば、兄弟で2つの不動産を共有している場合に「Aは兄、Bは弟」といった形で整理することができます。

名義変更という意味では、共有持分を丸ごと交換することで、結果的に単独名義へと移行させる方法のひとつです。

この際、一定の要件を満たせば「固定資産の交換の特例」を利用することができ、本来であれば発生する譲渡税の免除も可能です。

ただし、譲渡所得税の非課税措置を受けるには「用途や面積などの条件を満たす必要があり、実務的には慎重な準備が必要」です。

そのため、現金のやり取りが発生せず、かつ互いに保有したい不動産がある場合には有効ですが、税務面の確認が前提になります。

関連記事:共有持分の「交換」とは?共有関係を解消する方法を詳しく解説

方法④:時効取得

不動産を長期間所有している場合、所有権を持っていなかったとしても、所有権を得られる可能性があります。これは「時効取得」と呼ばれる制度です。

時効取得は、民法上で「他人の土地を20年間(占有開始時に善意無過失であれば10年間)、所有の意思を持って平穏かつ公然に占有を継続している場合に取得できる」とされています。

名義変更に直結する方法としては特殊ですが、「名義は共有のままだが、実際には自分が長年占有している」といった状況で、単独名義を法的に確定させたい場合の選択肢となります。

ただし、時効取得の主張には裁判所での確定が必要となるケースが多く、登記を伴う手続きはかなりの時間と手間がかかります。

したがって、他の方法では名義変更が難しいときの最後の手段として用いられることが多いのが実情です。

関連記事:共有持分の時効取得とは?成立条件や取得手順を詳しく解説

共有不動産の名義を変更するときの注意点

共有名義を単独名義に変更する際、以下のような点に注意しましょう。

  • 他の共有者の合意を得ておく
  • 住宅ローンが残っている場合は事前に金融機関に確認する
  • 申請書の目的欄は共有名義に合わせて記入する

以下より、それぞれについて解説します。

他の共有者の合意を得ておく

共有不動産を名義変更する際には、共有者全員の印鑑登録証明書が必要です。特に、単独名義に変更する場合には、事前の話し合いを慎重に行う必要があるでしょう。

なお、単独名義に変更するには、他の共有者が「自分の持分を誰に、どのくらい移転するか」について明確に同意し、署名・押印・印鑑登録証明書の提出が必要です。共有者の一部が協力に応じない場合は、共有物分割請求などの法的手続きを検討することになります。

特に相続や離婚を経た共有状態では、関係性が複雑なため、早期に調整を行っておくことが望ましいでしょう。

住宅ローンが残っている場合は事前に金融機関に確認する

共有不動産にローンが残っている場合、勝手に名義を変更すると契約違反とみなされる可能性があります。特に、夫婦共有の不動産で離婚に伴って名義変更を行うケースでは注意が必要です。

多くの金融機関では、ローン契約者を変更する「債務引受」や「借り換え」の手続きが必要となるため、名義変更に先んじて金融機関への相談が不可欠です。

勝手に登記変更を行った場合、ローンの一括返済を求められるリスクもあるため、事前の確認を怠らないようにしましょう。

申請書の目的欄は共有名義に合わせて記入する

登記申請書の「登記の目的」欄の記載方法が、単独名義の書類とは異なるため留意が必要です。単有の場合「所有権移転」と記載すれば問題ありませんが、共有の場合は「誰から、どれくらい移転したか」を記載することが必要。

例えば、Aの持分をすべてBに移転した場合、「A持分全部移転登記」と記載しましょう。

 

共有不動産の名義変更の手順

共有名義の不動産を単独名義に変更をするときの流れは、主に3ステップに分けられます。

  • Step1.司法書士への依頼
  • Step2.必要書類の準備
  • Step3.法務局での登記申請

以下より、それぞれの手順について説明します。

Step1.司法書士への依頼

不動産の共有名義を変更するためには、法務局にて所有権移転登記を申請しなければなりません。

登記申請自体は一般人でも可能ですが、申請内容に不備や誤りがあると、再申請を求められる。あるいは、余計に税金を支払う必要が生じますので、司法書士に委任する方がスムーズでしょう。

なお、不動産業者に相談し、共有不動産の全体や共有持分のみを売却する場合は、不動産業者提携の司法書士が手続きを請け負ってくれます。

Step2.必要書類の準備

次に必要書類の準備が求められます。司法書士が作成してくれる場合もあるため、依頼する際に確認するとよいでしょう。

主に用意するのは、以下の3種類です。

  • 登記原因証明情報
  • 権利証または登記識別情報通知
  • 固定資産税評価証明書

それぞれ個別にみていきましょう。

登記原因証明情報

登記申請の際には、理由を明確にしなくてはならないため、それを証明するための書類が必要です。登記原因証明情報は、大きく2つに分類されます。

既存文書活用型既存の書類を提出する方法。売買契約書と代金領収書、抵当権設定契約書などが該当する。
新規作成型新たに書類を作成する方法。登記に必要な情報のみを記載する。

権利証または登記識別情報通知

「権利証」とは、不動産の所有権保存登記などを行った際に法務局から交付される、登記完了を証明する書類のことです。

20年前の2005年に行われた不動産登記法改正以降は廃止され、代わりに「登記識別情報通知」という12桁の英数字が記された通知書が発行されるようになりました。

ただし、2005年以前に取得された不動産については、今でも「権利証」が有効な確認書類として利用されています。共有名義の名義変更を行う際には、どちらか一方を提出する必要がありますので、紛失していないかどうか事前に確認しておきましょう。

固定資産税評価証明書

「固定資産税評価証明書」とは、1月1日現在の所有者や所在地・評価額・課税標準額などが記載された証明書を指します。必要費用300円~600円ほどで取得可能です。

ほかにも、住民票や印鑑登録証明書が必要になることもあり、それぞれに発行手数料がかかります。

Step3.法務局での登記申請

必要書類を揃えたら、担当の司法書士が法務局にて、登記申請を行いましょう。法務局にて名義変更が済めば、登記完了証が交付されます。後日司法書士から受け取れば、名義変更の手続きは 完了です。

 

共有名義の名義変更で発生する費用

共有名義を単独名義に変更する際には、何種類かの必要費用が発生します。発生する可能性がある費用としては、以下のとおりです。

  • 贈与税
  • 相続税
  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 司法書士費用

次項より、それぞれについてみていきましょう。

登録免許税

登録免許税は、登記申請の際に法務局に支払う税金です。金額は、不動産の「固定資産税評価額」に登録免許税率をかけて算出します。

相続人による相続の場合4%
贈与の場合2%
遺贈の場合2%
離婚による財産分与の場合2%

共有持分移転登記の場合、持分割合も計算に含まれるため留意しましょう。なお、共有不動産の名義変更においては、移転対象となる「持分割合」に応じて課税額が計算されます。

たとえば、不動産全体の評価額が2,000万円で、1/2の持分を移転する場合は、課税対象額も1,000万円となります。

そこに該当の税率をかけて登録免許税を算出するため、移転する持分の大きさに応じて税額が変動する点には注意が必要です。

贈与税(※贈与による名義変更の場合)

名義変更の理由が「贈与」で、贈与される不動産などが一定金額を超える場合に贈与税の支払いが必要になります。

基本的には、受贈者一人につき1年間で110万円を超えた場合に、税金が発生。税率は以下のとおりです。 

200万円以下10%(控除なし)
400万円以下15%(控除額10万円)
600万円以下20%(控除額30万円)
1000万円以下30%(控除額90万円)

なお、贈与税は「相続時精算課税」制度を利用すれば支払額を抑えられます。相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母や祖父母から20歳以上の子や孫に財産を贈与した際に使える制度です。

これを選択することで、大幅に贈与税を抑えることも可能。しかし税務署に対して届出と申告をする必要があることに加え、「1年110万円まで非課税」の適用も受けられなくなります。

「贈与税が高いから、登記要因を売買にするために、低価格でお金を支払っておこう」と考えるケースがありますが、極端に安い売買は「贈与(みなし贈与)」と判断されてしまうことがあるので注意しましょう。

関連記事:共有持分を贈与する際の「贈与税の計算方法」をわかりやすく解説!

相続税(※相続による名義変更の場合)

相続税は、相続によって名義変更をしたときに発生する可能性がある税金です税額は相続した財産の合計金額が基礎控除額を超えた分に、税率を掛けて算出されます。

下記で算出した数字を下回る場合は、納付・申告の必要はありません。ただし、特例などを適用して税額が発生しない場合、申告が求められるケースもあります。

【基礎控除額】

  • 3000万円+(法定相続人数×600万円)
法定相続分に応ずる取得金額1000万円以下10%(控除なし)
法定相続分に応ずる取得金額3000万円以下15%(控除50万円)
法定相続分に応ずる取得金額5000万円以下20%(控除200万円)
法定相続分に応ずる取得金額1億円以下30%(控除700万円)

上記は、相続税の税率表の一部を抜粋したものです。相続税は6億円超まで最大55%の累進課税が適用されますが、共有持分不動産においてはそこまでの取得価格となるケースは稀であるため、本記事では一般的な範囲に留めて記載しています。

不動産取得税(※売買・贈与・交換など取得を伴う場合)

不動産取得税は、贈与や売買によって不動産を「取得」した場合にかかる税金で、名義変更後に1度だけ支払います

支払額は「固定資産税評価額」に「不動産取得税率」をかけたものです。

税率標準税率本則4%<税率の特例>

住宅及び土地3%(令和6年3月31日まで)

課税標準及び税額の特例<住宅・住宅用地の特例> 

  • 住宅 ・課税標準の特例措置

    新築住宅→1,200万円を控除

    中古住宅→住宅の新築時期により最高1,200万円を控除

  • 住宅用地 ・税額の減額措置(新築・中古とも)

    150万円又は床面積の2倍の面積(200m2限度)に相当する土地    の価格のいずれか大きい額に税率を乗じて得た額を減額

<住宅用地・商業地等の特例> 

  • 住宅用地、商業地等の取得に係る課税標準としての価格を、評価額の1/2に圧縮

共有不動産の移転登記では、持分割合も計算に含まれるため、念頭においておきましょう。

関連記事:共有持分を取得した場合にかかる「取得税」とは?節税対策もセットで解説

司法書士費用(※登記を依頼する場合)

司法書士に各種手続きを代行してもらった場合、1件あたり3~8万円ほどの報酬がかかるのが一般的です(※別途、登録免許税や不動産取得税などの実費)。

この費用の幅は、依頼する登記の内容や、必要書類の収集、事前の相談回数などによって変動します。

たとえば、単なる所有権移転登記に比べて、贈与や相続を伴うケース、共有持分の複雑な調整がある場合は、手間がかかるぶん費用が高くなる傾向があります。

 

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まとめ

不動産の名義変更は、単なる手続きのように見えて、実は法的なリスクや金銭的負担が潜む作業です。共有者の合意が得られないまま手続きを進めてしまうと、後にトラブルへと発展する可能性もあります。

また、贈与税や不動産取得税、登録免許税などの税負担も発生し得るため、「なぜ名義を変えるのか」「どの方法を選ぶべきか」を一つひとつ丁寧に検討することが重要です。

名義変更が必要になった際には、まず全体の流れを把握し、自分のケースに合った方法を選ぶこと。そして必要に応じて、早い段階から専門家の力を借りることで、円滑な手続きを実現しましょう。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

松本 大介(司法書士)

得意分野:相続全般、遺言書作成、不動産売却
お客様に「君にまかせてよかった」「君だから依頼したんだよ」そう言っていただけることを目標に、この仕事に誇りを持って取り組んでおり、お客様の立場に寄り添い考えるよう心がけています。

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