共有持分を手放す方法としては、売却や譲渡以外に「放棄」という選択肢もあります。共有持分の放棄は、財産分割や遺産相続などの際によく利用される手法。
しかし、持分を放棄すると課税されるため、なるべく損をしないためにもしっかりと知識を蓄えておく必要があります。
そこで今回は、共有持分を放棄する際に発生する税金関連の基礎知識について、詳しく解説します。これから共有持分の放棄を検討しているなら、ぜひ参考にしてください。
目次
共有持分の放棄とは?
不動産を他の人と共有している際、共有持分を放棄する行為が「共有持分の放棄」と呼ばれます。つまり、自分の持つ部分を他の共有者へ渡すことを指します。
共有者の意思によらず、自己の決断で放棄が可能です。共有者が反対しても、関係はないのです。
法的根拠
共有持分放棄は、自身の意志によるもので、他の存在が関わらない法律行為となります。これにより、他の共有者の同意は不要で、放棄の判断はいつでも自己決定できます。
ただし放棄を他の共有者に伝えるだけでなく、登記も行う必要があります。
共有持分の放棄が向いているケース
共有の不動産は、共有者全員で維持管理を進めていく必要があります。それが何らかの理由で困難な場合、共有持分の放棄が望ましい選択肢となり得るでしょう。
具体的には、以下のケースが考えられます。
- 共有者との人間関係が不和で、共有している不動産の維持管理が困難な状況
- 不動産の売却を希望しても、共有者が売却に協力しない場合
- 例えば、郊外の農地など、手放すことが難しく所有そのものが重荷となっている場合
上記のような状況に遭遇した場合、共有持分の放棄を考えることは、1つの手段かもしれません。
共有している不動産の売却は、全ての共有者の同意が必要。1人でも売却に反対すれば、売却は不可能となります。そのため、共有している不動産の売却は難しい場面もあるのです。
共有持分を放棄した場合に発生する税金
共有持分の放棄に関わる税金としては、以下のようなものが考えられます。
- 登録免許税
- 固定資産税
- 贈与税(※取得者のみ)
- 不動産取得税(※取得者のみ)
次項より、個別にみていきましょう。
登録免許税
登録免許税は登記に関わる費用で、登記申請時に法務局へ支払う税金です。
金額は不動産の「固定資産税評価額 × 登録免許税率」で算出可能。共有持分移転登記の場合、持分の割合も計算に含まれるため注意が必要です。
登録免許税率は下記のとおりですので、登記が発生する前に概算しておきましょう。
相続人による相続の場合 | 4% |
---|---|
贈与の場合 | 2% |
遺贈の場合 | 2% |
離婚による財産分与の場合 | 2% |
譲渡所得税
固定資産税は土地や建物などの固定資産を所有している人が納める市町村税です。所有者は毎年1月1日に納税義務が定められています。
税額は不動産の「固定資産税評価額」に対して、土地・建物ともに1.4%の税率を適用して算出されます。ただし、自治体によっては1.4%以上の税率を適用している場合もあるため、各市町村で確認が必要です。
贈与税(※取得者のみ)
贈与税は無償で財産を受け取った際にかかる税金で「土地や建物の譲渡」「購入資金の援助」などが対象となります。平成27年以降、贈与税率は「一般贈与財産」「特例贈与財産」に分けられています。
それぞれの税率は以下のとおりです。
<一般贈与財産用(一般税率)>
課税価格範囲(基礎控除後) | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
200万円超〜300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円超〜400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円超〜6,000万円以下 | 30% | 65万円 |
6,000万円超〜1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円超〜1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
1,500万円超〜3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
<特例贈与財産用(特例税率)>
課税価格範囲(基礎控除後) | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
200万円超〜400万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円超〜600万円以下 | 20% | 30万円 |
600万円超〜1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,000万円超〜1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
1,500万円超〜3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
3,000万円超〜4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
不動産取得税(※取得者のみ)
不動産取得税は不動産を購入・贈与で取得した際に、都道府県から課される税金で、相続による取得は対象外です。
取得後6ヶ月から1年半ほどで都道府県から納税通知書が届き、金融機関で納付します。税額の計算方法は以下のとおり。
- 固定資産税評価額 × 4%(標準税率)
しかし、2024年3月31日までの特例措置では通常の4%の部分が3%になっています。また、宅地評価の土地の場合、特例により固定資産税評価額を半額にして計算しますので、留意しましょう。
なお、住宅については建築経過年数に応じて固定資産税評価額から一定額(新築の場合1,200万円)を控除した上で税額が計算されます。
共有持分の放棄する際の登記者と必要書類について
共有持分の放棄に伴う持分移転登記は、司法書士への依頼が推奨されます。一般の方が直接行うには難易度が高く、何かしらのトラブルが生じる可能性があるためです。
共有持分の放棄は個人の判断で行うことも可能です、登記は他の共有者との共同申請が必要。すなわち、放棄した事実を他の共有者に知らせ、登記への協力を得なければならないのです。
共有持分放棄に伴う持分移転登記に必要な書類は以下の通りです。
- 登記申請書
- 登記原因証明情報
- 登記識別情報または登記済証
- 固定資産評価証明書
- 持分を放棄した人の印鑑登録証明書
- 持分を取得した人の住民票
共有者から登記への協力を得られない場合、登記申請ができず、登記上は共有のままとなります。つまり、それは実際の持分放棄と登記記録が一致していない状態を意味するもの。
その際、登記の当事者は他方の当事者に対して、登記を請求する権利を有します。
具体的には、登記引取請求訴訟を通じて確定判決を得れば、持分の放棄者は単独で登記申請を行えます。ただし、訴訟を経ることで放棄する価値があるかどうかは慎重に検討するべきでしょう。
共有持分を放棄する際の注意点
共有持分を放棄する際には、合わせて以下の点にも留意が必要です。
- 分譲マンションでは敷地利用権の放棄も必要
- 売却の方が利益は残りやすい
以下より、個別に解説します。
分譲マンションでは敷地利用権の放棄も必要
分譲マンションでは通常、建物(専有部分)と敷地の利用権が一体となっており、専有部分のみや敷地利用権のみの持分放棄ができない規定があります。
したがって、専有部分の持分を放棄すると、それに連動して敷地利用権の持分も放棄することに。
ただし、すべてのマンションがこのルールに従うわけではありません。一部の古いマンションでは、専有部分と敷地利用権が別々に登記されている場合も存在。そのようなケースでは「専有部分の持分放棄」「敷地利用権の持分放棄」の両方が必要です。
売却の方が利益は残りやすい
共有持分を放棄するよりも、「売却」を選択する方がより利益を得やすい可能性があります。特に、専門の買取業者へ売却するケースです。
共有持分の放棄を選ぶと、他の共有者に登記への協力を求める必要があります。しかし、専門の買取業者に売却すれば、業者が共有者との権利調整や交渉を行ってくれます。
そのため、他の共有者と関わることなく、共有持分を手放すことが可能。さらに、買取業者から買取金額を受け取ることができますので、恩恵が大きいといえるでしょう。
まとめ
共有持分の放棄をスムーズに進める上では、税金関係の知識を蓄え、しっかりと対応できるようにしておかなければなりません。特に、放棄する側にも登録免許税は放棄する年までの固定資産税が課税されますので、放棄にあたっては適切なタイミングを選定する必要があるといえます。
不安がある場合は専門家にも相談しつつ、適切に共有持分を手放しましょう。
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