賃貸住宅ではなく持ち家に住んでいる場合、離婚をする際に悩むことの1つが「持ち家をどうするか」ではないでしょうか。
不動産を購入するとき、夫婦どちらか1人がすべて出しているケースもあれば夫婦2人でお金を出し合っているケースもあると思われます。
「住宅購入費用を自分の方が多く払っているから、財産の分与率は多くなる?」「住宅ローンが残っている場合はどうなるの?」など、離婚した際の不動産についてわからないことは多いでしょう。
そこで今回は、共有名義の不動産を持っているときの対処方法や自宅を売った後の財産分与について解説します。
目次
離婚したら持ち家はどうなる?
結婚生活中に夫婦が共同で獲得した財産(例:持ち家)は、離婚時の財産分与の対象となります。たとえ夫が会社員で妻が専業主婦で、家のローンを夫が単独で支払っていた場合でも、妻が家庭を支えていることが評価され、財産分与の対象になるのです。
では、実際に持ち家の財産分与はどのように行われるのでしょうか。以下より。その具体的なパターンを説明します。
パターン①:どちらかが住み続けてローンの残債を支払う
このパターンでは、夫または妻が家に住み続け、住宅ローンの支払いを引き継ぐことができます。
例えば、夫が支払いを続け、妻が家に住む場合、妻はこの住居権を慰謝料の一部として受け取れるのです。逆に、夫が住み続ける場合、家は夫に分与されることになります。
パターン②:売却してローンを完済し、残りを財産分与する
もう1つのパターンは、家を売却し、その売却益を夫婦で分割する方法です。分割の割合は、財産分与の合意によって異なります。均等に分割することもあれば、8:2などの異なる割合で分けることもあります。
財産分与とは
離婚をする際には、夫婦が共同生活を送る中で形成した財産は公平に分配しなければいけません。自宅などの不動産も同じで、これを「財産分与」といいます。
不動産を購入するとき、夫婦2人でお金を出し合ったりローンを組んだりして共有名義にすることがあります。
このとき、半分ずつの負担にすることもあれば比率が異なることもあるでしょう。「共有持分」が多ければ財産分与が多いのかというと、そうではないため注意が必要。
なぜなら、民法に以下のようなルールがあり「一切の事情を考慮する」からです。
【民法第768条】
- 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
- 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
- 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
離婚時には共有持分の割合は反映されない
共有持分とは、不動産などの共有財産において、各共有者が持つ所有権の割合を指します。通常、この割合は不動産の取得時に各人が負担した金額に基づいて決定されます。
しかし、離婚時の不動産売却においては、この共有持分が直接的に財産分与の割合として反映されるわけではありません。
たとえ購入時に夫が2/3、妻が1/3の割合で出資していたとしても、離婚時の財産分与は自動的にこの割合で行われるわけではなく、夫婦共有財産とみなされるためです。
夫婦が共同で形成した財産は、「一切の事情を考慮して」分配されるため、法律的な判断に基づいて個別に決定されます。このため、登記されている共有持分と財産分与は直接関連しないことが多く、場合によっては夫婦間で均等に分配されることもあります。
例えば、妻が専業主婦で夫が全ての費用を支払っていた場合でも、婚姻中に購入した不動産は夫婦共同で形成された財産と見なされ、妻にも公平な分配が認められます。
しかし、例外も存在します。夫や妻が特殊な才能や職業で通常よりもはるかに高い収入を得ている場合、財産分与の割合は変わることがあります。この割合は、双方の話し合いや裁判によって決定されます。こうした場合においては、夫婦間の収入格差や貢献度を考慮して、公平な分配を行うことが重要です。
住宅ローンが残っている場合の財産分与の仕方
ここからは、住宅ローンが払い終わっていない場合の分配方法をご紹介します。売却してもローンが残る「オーバーローン」か、売却すれば完済できる「アンダーローン」かどうかで方法は異なりますので、しっかりと把握しておきましょう。
「オーバーローン」の場合
オーバーローンとは、不動産を売却してもローンが完済できない状況を指します。この場合、不動産の資産価値がないとみなされるため、通常は財産分与の対象外になります。
住宅を引き続き占有する場合、ローンの名義変更が必要であり、代償金の支払いは求められません。
両者が住まない場合は、ローン残債を別途清算する必要があります。この際、「任意売却」を選択することが1つの手段です。任意売却は、競売よりも有利な条件で不動産を市場に出すことが可能で、引越し費用のサポートなど、後の生活をスムーズにする助けになる場合があります。
「アンダーローン」の場合
アンダーローンは、売却後に住宅ローンの残債が清算され、なおかつ余剰金が残る状況を指します。この場合、余剰金は財産分与の対象となります。
住宅を売却し、ローンを完済した後の残金を夫婦で分割します。通常、分割は均等(2分の1ずつ)ですが、個別の事情により割合が変更されることもあります。
一方が住宅を引き続き利用する場合、住宅の価値からローン残高を引いた額の半分を、住まない方に支払うことになります。この際、住宅とローンの名義を住む方に変更することが重要です。名義と実際の居住者が異なると、様々な問題が発生する可能性があります。
オーバーローンかアンダーローンかを調べる方法
「オーバーローンかアンダーローンか分からない」という方も少なくないかと思われます。そこで簡単な調べ方を、3つの段階でご紹介します。
手順①:住宅ローン残債を調べる
まず、住宅ローンの残高を確認しましょう。金融機関からのローン返済計画書や残高証明書により、残債額を知ることができます。
オンラインサービスを提供している金融機関も多く、そこで情報を得ることが可能です。不明な点は、直接金融機関に問い合わせるのもよいでしょう。
手順②:家の売却価格を調べる
次に、不動産の売却見積もりを取得します。周辺地域で同様の条件の不動産がどの程度の価格で売り出されているかを確認することで、大まかな市場価値を把握できます。より正確な評価を求める場合は、不動産会社に査定を依頼するのが効率的です。
手順③:住宅ローン残債と家の売却価格を比べる
最後に、住宅ローン残債と不動産の売却見積もりを比較します。残債が売却見積もり額を上回っていれば「オーバーローン」、売却見積もり額の方が高ければ「アンダーローン」と判断されます。
共有名義の持分だけを売ることはできないのか?
共有名義の不動産において、自分の持分のみを売却したい場合、財産分与が終了していない限り、相手方の承諾が必要です。
例えば3,000万円の不動産で2,000万円分が自分の持分だとしても、夫婦共有の財産と見なされるため、勝手に売却すると後に損害賠償請求される可能性があります。
共有持分を自由に売却できる状態とは
しかし、必ずしも「持分を売ることができない」というわけではありません。自分の持分を自由に売却できる状態はおもに以下の2つです。
①:財産分与が終わった場合
財産分与が既に完了している場合、自分の持分については共有持分買取業者などへの売却が可能です。この場合、権利が確定しているため、相手方の同意なしに売却しても問題ありません。
②:離婚後、2年経過した場合
離婚時に財産分与に関する話し合いがなされなかった場合、離婚から2年が経過すると財産分与請求権は消滅します。この状況下では、自分の共有持分を自由に売却することが可能になります。
反面、財産分与を行いたい場合は、離婚後2年以内に家庭裁判所への申立てをすることが重要です。
どちらかが住み続ける場合、不動産名義と住宅ローン名義を変更しよう
オーバーローンでもアンダーローンでも、夫婦の一方が住宅に住み続ける場合、不動産の名義と住宅ローン名義の変更が必要です。不動産名義は、登記簿に記載された所有者を指し、住宅ローン名義はローンを借りている人を指します。
法律上、不動産名義と住宅ローン名義は必ずしも一致する必要はありませんが、一般的には同一人物であることが多々あります。夫婦で共同で資金を出し合い、住宅ローンを組む「ペアローン」のような共有名義の場合も。
離婚後、住宅を引き継ぐ人の名前で名義が統一されていない場合は、名義を変更する必要があります。名義変更がなされないと、支払いの問題や将来的に不動産を売却する際に合意が得られないなどの問題が発生しかねません。
不動産の名義を変更する方法
不動産名義の変更は、法務局での登記申請によって行われます。所有権の移転登記をするため、法務局に必要な書類を提出し、手続きを実施するのが一般的です。
住宅ローン名義を変更する方法
住宅ローン名義の変更方法は2パターンあります。1つ目の方法で名義変更ができない場合は、2つ目の方法を試すこともよいでしょう。
①:現在の金融機関の住宅ローン名義を変更する
夫婦のどちらかが住宅に住み続ける場合、まず現在の金融機関に住宅ローンの名義変更を依頼することが考えられます。
例えば、夫が2,000万円、妻が1,000万円のローンを共同で組んでいた場合、妻が住み続けるとすれば、妻名義で3,000万円のローンに変更することが可能です。
しかし、金融機関が妻の信用や支払い能力を考慮して変更に応じない場合もあり得ます。
②:別の金融機関でローンを組みかえる
もう一つの方法は、異なる金融機関で新たにローンを組むことです。この場合、家に住み続ける方が単独で3000万円のローンを組み、現在の金融機関のローンを完済します。
続いて、新しい金融機関へのローン返済を開始します。ただし、新しい金融機関でローンを組むことが可能かは、個人の信用状況や支払い能力によって異なります。
ローン名義の変更が困難な場合は、不動産の売却を検討するのがよいでしょう。アンダーローンであれば売却後に現金が手元に残りますし、オーバーローンの場合でも任意売却を行うことで残債を減らせます。
「1/2ずつは納得できない」という場合は話し合いを
共有持分の割合が大きい方が、「財産分与を1/2ずつ分ける」ことに納得がいかないケースもあります。
離婚時の財産分与は基本的に均等分割が原則ですが、夫婦間の話し合いで共有持分に応じた分割を決めた場合、それも有効です。
ただし、口頭での約束では将来的なトラブルの原因になり得るため、離婚協議書や公正証書の作成を通じて、合意内容を文書化しておくことが推奨されます。これにより、後に「半分にしてほしい」という要求があった場合でも、合意内容の効力を守れるのです。
まとめ
不動産は価格が高いことや共有名義等で対処方法が複雑な場合があることから、知識がない状態で売却や分配を進めるとトラブルになってしまいがちです。
夫婦2人が納得いく形にするためには、不動産のプロに頼ることをおすすめします。煩雑な手続き等もサポートしてくれる場合があるため、一度相談してみてはいかがでしょうか。
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運営団体 株式会社ネクスウィル 2019年1月29日設立。訳あり不動産の買取を行う不動産会社。相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産を買い取り、法的知識や専門知識を以って、再度市場に流通させている。 |